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堤幸彦が明かす「ノッキンオン・ロックドドア」を“質の高いミステリー”にするためのこだわり、そこに掛け合わさる松村北斗&西畑大吾の“真面目さ”とは2023/09/01

堤幸彦が明かす「ノッキンオン・ロックドドア」を“質の高いミステリー”にするためのこだわり、そこに掛け合わさる松村北斗&西畑大吾の“真面目さ”とは

 テレビ朝日系で放送中のドラマ「ノッキンオン・ロックドドア」。SixTONES・松村北斗さんとなにわ男子・西畑大吾さんがダブル主演を務める本作は、密室犯罪や衆人環視の毒殺など事件のトリック(=HOW)解明を得意とする“不可能”専門探偵・御殿場倒理(松村)と、ダイイングメッセージや現場の遺留品などから動機や理由(=WHY)を読み解く“不可解”専門探偵の片無氷雨(西畑)のダブル探偵が共同経営する探偵事務所「ノッキンオン・ロックドドア」を舞台に、さまざまな難事件に挑んでいく本格ミステリー作品だ。

 30分という短い放送時間の中でもSNSでは毎週盛り上がりを見せ、視聴者を魅了している本作。その要因の一つは、演出を手掛ける堤幸彦監督の存在だろう。「トリック」(テレビ朝日系)や「SPEC」(TBS系)などさまざまな作品で“凸凹コンビ×ミステリー”を手掛けてきた堤監督が、今回テレビ朝日で9年半ぶりにメガホンを取ることは大きな注目を集めた。いよいよ後半戦に突入する「ノキドア」、今後の放送をより盛り上げるべく、TVガイドWebでは堤幸彦監督へのインタビューを敢行。ここではその模様をノーカットでお届けする。

堤幸彦が明かす「ノッキンオン・ロックドドア」を“質の高いミステリー”にするためのこだわり、そこに掛け合わさる松村北斗&西畑大吾の“真面目さ”とは

――キャスティングや座組が決まっていく中で「こんな作品にしたい」という考えがあったかと思いますが、撮影を通じてうまくいったところ、難しかったところをそれぞれ教えてください。

「当初から非常にコンパクトで質の高いミステリーを作りたいと思っていました。30分枠という特殊性があったので、ギャグ要素やシュールな要素は今回は控えることにして。30分といえど、ちゃんと物語の始まりがあって、混乱と気づきがあって、最終的に謎を解くというパターンは、60分だろうが2時間だろうがちゃんとあるわけで。それを30分にまとめるとなると、あまり脇道にそれることができないんです。同時に、今回のドラマは主要な4人の人物の秘密みたいなものがあって、これが非常に大きいストーリーになっていく。それも含めて撮っていくには、ミステリーに対して真面目なドラマでなくてはならないと予想していました。案の定、撮り始めると若干クスッとできる部分も入れたのですが、主演2人を中心とする骨太のミステリー展開になってきて、30分という枠の中でも逆に強い主張を持つことができるようになったと思っています。『主要な人物がなぜこの4人でなくてはならなかったのか』『今後どうなるのか』みたいなことも、最終回に向けてきちんと語られていくので、そこは楽しみにしていただきたいです。こういうドラマって、主人公たちの持つある種の秘密みたいなものが、毎週話が変わるごとに推理と分離して考えられがちだけど、今回はそれぞれのキャラクターと彼らが持っている過去の秘密みたいなものを分離しなくても違和感なく見られるようになったので、とても良かったと思っています」

――メインストーリーの流れにサブストーリーをうまく組み込めた感覚でしょうか?

「そうですね。一つ謎が解けたと思ったら『え、これ来週分かるのか』『この人たちなんで首の傷を気にしているの?』と、いろいろなことが起こるわけで、それが毎週起きる事件ともそこまで違和感なく共通していて良かったなと。脚本が本当によく書かれていて、演出的には『ホンの文字を解釈して映像化することでイメージを広げていく』みたいなことがほとんどなくて。浜田秀哉さんのお書きになったホンは本当に素晴らしいと思っていて、そのまま朗読でもいけるのではないかと思うぐらいよくできた作品だと思っています」

――「質の高いミステリーにしたい」というお話もありましたが、青崎有吾先生が手掛けられている原作の印象を教えてください。

「今刊行されている2冊を最初に手に取った時に『すごく分かりやすい』と思ったんです。推理ものでもいろいろあって、何度か戻らないと分からなかったり、名前が分からなくなったりと、行きつ戻りつで攻め上っていくものもあるけど、サクサク読めるポップな作りの原作だなと感じまして。なぜかと思っていたら、青崎先生がとてもロックなリズム感をお持ちの方なんです。ドラマ中ではできなかったけど、チープ・トリックのことがちょっと書かれていたりモチーフになっていたり、その時代のポップカルチャーとリズム感が筆のノリとリンクしていて、サクサク読める理由はそこにあるのかなと思ったりしていました。純粋なミステリーマニアであると思うのですが、一度お会いした際に話した時もそういうロックの話で盛り上がって、ミステリー以外のリズム感みたいなものが小説にもすごく大きい効果と読みやすさをもたらしていると思ったので、ドラマ作りにおいてもそれをヒントにできればと思っていました」

――原作中のテンポ感は、文字から映像にするとまた変わってくるのかなとも感じるのですが、演出でこだわられた点はありますか?

「やっぱり、BGMを作っていただいているfox capture planという3人組のバンドの音楽をどう生かすか、というところですね。それと、松村くんと西畑くんが所属しているそれぞれのグループの音楽の使い方に対してもシンプルに集中できた。1時間のドラマを作ろうとすると、最初にいろいろな方向性の曲を40曲くらい考えてからオーダーして、それをどう張り付けるかがリズムを醸し出す重要な要素になっていくんです。でも今回は、30分に凝縮されたミステリーと過去の謎みたいなものをfox capture planと両グループの音楽のみで構成できるので、リズム感を出すことにシンプルで明快なパズルの答えができたと思います。こういった原作小説に加えて、非常に理知的でシンプルだけど的を得た脚本、fox capture planのような、音数は多くないけれど心地よいメロディかつ主張の強いバンドの音楽、そしてSixTONESとなにわ男子のドラマにピッタリとはまるように作っていただいた楽曲、これらのピースがガチっと合うことで、演出的にはとてもやりやすかったです。ほとんど悩まず、答えが明確に出るドラマでした」

――ちなみに、撮影に入る前はSixTONES、なにわ男子にはそれぞれどんなイメージをお持ちでしたか?

「SixTONESは、とにかく格好いいビデオを作る人たちだなと思っていて(笑)。『誰がSixTONESのMVの監督しているのかな』とすごく興味がありました。やっている本人たちは大変だろうとも思いながら、LEDの光の使い方や振り付け、カットワークがすごくよくて。SixTONESの都会的でポップな映像を醸し出すことは本当に大変だと思うのですが、非常にクオリティーの高いものを作っているから、とても格好いいなと思っていました。なにわ男子の皆さんは、個性がある。ライブも面白くて、関ジャニ∞とはまた違うかわいらしさや愛らしさも含めて、ちゃんと自分たちの攻めるところやポイントを分かっているので、面白い人たちだなと思っていました」

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