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山田裕貴、「どうする家康」で演じる平八郎と叔父・本多忠真との別れに「平八郎が初めて負ったのは、傷ではなく愛情だったと感じたシーンでした」2023/05/14

山田裕貴、「どうする家康」で演じる平八郎と叔父・本多忠真との別れに「平八郎が初めて負ったのは、傷ではなく愛情だったと感じたシーンでした」

 第18回(5月14日放送)の大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)では、徳川家康(松本潤)率いる徳川軍と武田信玄(阿部寛)率いる武田軍が三方ヶ原で一戦を交えた結果、徳川軍は総崩れし、大敗。しかし、武田軍は甲斐に引き返してしまいました。どうやら徳川軍は九死に一生を得たようですが、傷は深く、多くの別れがありました。平八郎(本多忠勝/山田裕貴)と叔父の本多忠真(波岡一喜)の別れもその一つです。平八郎にとって父親代わりの忠真は、悪態をつきながらもかけがえのない存在。そんな忠真との別れのシーンに心を揺さぶられた人も多いのではないでしょうか。

 今回は、平八郎を演じる山田裕貴さんに第18回の忠真との別れのシーンや、家康を演じる松本潤さんをはじめとする徳川家臣団とのエピソードを伺いました!

――SNSの盛り上がりや反響をどう受け止めていらっしゃいますか?

「放送後、気にしていますが、自分のことに関しては、どれだけ良いことが書かれていても慢心しないように気を付けています。作品が良いと言われることが一番うれしく、それは素直に喜んでいます」

山田裕貴、「どうする家康」で演じる平八郎と叔父・本多忠真との別れに「平八郎が初めて負ったのは、傷ではなく愛情だったと感じたシーンでした」

――第18回では、平八郎(忠勝)と叔父の忠真の別れのシーンがありました。撮影はいかがでしたか?

「お芝居とは思えないすごいシーンでした。リハーサルをせず、位置の確認だけを行ったのですが、その時点で涙があふれそうになってしまったんです。『やばい』と思って、波岡さんに『本番まで力を入れるのはやめましょう』と言ったくらいです(笑)。その後、撮影が始まるタイミングで、僕から『これまでかすり傷一つ負ったことのない平八郎が、叔父上に殴られたことで初めて傷を負うシーンを作りたい』と監督と波岡さんに提案したところ快諾してくださって、その形で演じることになったのですが、波岡さんが僕を殴った後にグッと抱きしめたんです。もちろんそれも台本にはなかったので、さらに気持ちがあふれてしまって。結果、本番一発で撮ることになりました。自分がそのアイデアを提案できたのも本当に良かったし、平八郎が初めて負ったのは、傷ではなく愛情だったと感じたシーンでした」

山田裕貴、「どうする家康」で演じる平八郎と叔父・本多忠真との別れに「平八郎が初めて負ったのは、傷ではなく愛情だったと感じたシーンでした」

――そうして迎えた本番はいかがでしたか?

「今作はいつ死んでもおかしくないという気負いと気合いと気概を見せなければいけないと思っているのですが、あらためて戦国の世の一日一日の重さを感じました。そして、忠真にグッと抱きしめられた時に、経験はしていないのに、子どもの頃からの思い出が相馬灯のように巡り、『この人に育ててもらったんだな』という思いが込み上げてきて、『平八郎として生きている』と思えたんです。自分でもなぜ叫びのような声を出したか分かりませんが、悲しいけれど、前に進んで殿(家康)を守らなきゃいけないと。あのシーンは叔父上がとてもいい顔をされていて、本当にすてきでした」

山田裕貴、「どうする家康」で演じる平八郎と叔父・本多忠真との別れに「平八郎が初めて負ったのは、傷ではなく愛情だったと感じたシーンでした」

――山田さんと波岡さんのこれまでの関係性も相まってのことだったんでしょうね。

「10年くらい前に僕が主演を務めた映画で波岡さんと出会っていて、それ以降、一緒の作品に出ていなくても気にしてくれていると感じていました。それが今作の忠真と忠勝の関係と重なっていると勝手に思っています」

――平八郎は「大好きな殿を守れ」という忠真の言葉を受けて、新たな覚悟が芽生えたのでしょうか?

「言葉よりも『ここで僕らはお別れなんだ』という思いの方が強かったです。あの感覚は不思議でした。言葉なんていらないんだなと。本当にすごい経験をしました。平八郎は後々大きな数珠を身に着けるんですが、それは自分があやめてしまった人や亡くなっていった人を背負って戦うという意味を込めて着けているんだと知り、同じように叔父上への思いも残したいと思って、ひょうたんを身に着けたいとお願いしました。忠真とのシーンもですが、ひょうたんを身に着けるアイデアも脚本の古沢(良太)さんに相談していないので、申し訳ないと思っていたのですが、後々の台本に平八郎が叔父上のひょうたんから水を飲むシーンが加えられていて、受け入れてもらえたんだとうれしかったです。言ってよかったと思えたし、『ナイスアイデア』と自画自賛しています(笑)。スタッフさんも『平八郎がひょうたんを見ているだけで泣けてくる』と言ってくれて。本当に節目の回になりました」

山田裕貴、「どうする家康」で演じる平八郎と叔父・本多忠真との別れに「平八郎が初めて負ったのは、傷ではなく愛情だったと感じたシーンでした」

――主君である家康について平八郎は最初の頃は全く認めておらず、徐々に認めていきます。何がきっかけになったと思いますか?

「平八郎には、いつか尊敬する主君を守って死にたいという思いがあるけれど、その相手が殿だと確信するところまで気持ちが伴っていませんでした。だけど、徐々に殿を認めていき、だんだん本当の意味で守らなければと思い始めるんです。最初は、第2回(1月15日放送)の大樹寺の墓前のシーンで殿の目を見た時に、『この人は何かを起こしそうな気がする』と思い、次は一向一揆で『俺はお前たちを信じる』と言われた時に平八郎の心が動いたんです。ほかにも、殿が瀬名(有村架純)を思う気持ちなど、一個一個の積み重ねで、第18回の時には殿のことをすでに認めていたんだろうと考えています」

――平八郎がどんどん好きになっていく殿を演じる松本さんの魅力を教えてください。

「やはり統率力です。そして、普段から家臣団への愛情も感じています。僕がほかの仕事で忙しい時には各シーンの状況を教えてくれたり、『疲れているだろう』と、殿がいつも飲んでいるドリンクをくれたりするので、その都度感激しています。自然とこの座長がいる大河ドラマが一番になればいいなと思えるし、そのお力添えができればと思っています」

――山田さんの松本さんに対する思いは、平八郎の殿に対する気持ちと同じなんですね。

「そうですね。殿は自然と僕を平八郎にさせてくれています」

山田裕貴、「どうする家康」で演じる平八郎と叔父・本多忠真との別れに「平八郎が初めて負ったのは、傷ではなく愛情だったと感じたシーンでした」

――では、家臣団の皆さんとの現場の雰囲気はいかがですか?

「鳥居元忠役の音尾(琢真)さんと石川数正役の松重(豊)さんがよくカメラの話をしていて、殿は車の話で盛り上がっていることがありましたが、最近はお芝居の話が多くなってきています。今さっき(取材時)も殿の声掛けで、みんなが一緒に本読みをする機会を作ってくれて。これから後半に向けてよりグッと気を締めなくてはいけないところと、チームワークで盛り上げるところがあるし、悲しいシーンも出てきます。みんなと意思疎通を図るために本読みの機会を設けてくれる殿に感謝しています」

――家臣団だけの時は、どなたがまとめ役ですか?

「酒井忠次役の(大森)南朋さんと音尾さんがものすごく話してくださって楽しいです。明日は仕事に行くのがしんどいなという時も、みんなに会えると思って行っています(笑)」

山田裕貴、「どうする家康」で演じる平八郎と叔父・本多忠真との別れに「平八郎が初めて負ったのは、傷ではなく愛情だったと感じたシーンでした」

――家臣団の中でも、杉野遥亮さんが演じる小平太(榊原康政)とは一緒にいるシーンも多いですが、演技について話をすることはありますか?

「この前、2人で散歩をしながらお話をしたんですが、彼は勝ち負けを決めることがすべてではないと思っているから、戦国時代の生き方が理解できないようでした。でも、僕にはものすごい戦いのオーラが見えると言ってくれていて。『ずるいよね。忠勝が着ているマントも格好いいじゃん』と言われました。『そこなの?』と思わず笑ってしまいましたが(笑)。だから、『平八郎は戦いのオーラを持っていないとダメだけど、小平太は違っていいと思う。それぞれが考える戦国の世の生き方を貫いて、一緒のシーンが来た時に交わればいいんじゃないか』と提案しました。自由にやろうとも話しています」

――共通認識を確認し合ったんですね。

「そうですね、さっきまでしていた本読みでも、『平八郎とは思いが違ってもいいですか』と言っていました。僕にはめちゃくちゃ戦いの精神があるんです。名古屋から出てきた時から、俳優になれなかったら生きている意味はないくらいの覚悟を持っていたので、前世はきっと武士だったんじゃないかな(笑)」

――対照的なところがいいですね。

「もしかしたら、杉野くんのように戦国時代にも勝ち負けじゃないと思っていた人がいたかもしれませんよね。小平太がざるに“無”と書いた旗を持っていましたが、勝ち負けや生き死にではなく、ただ、生きていたらいいという意味の“無”に見えたら面白いんじゃないかと思っています」

山田裕貴、「どうする家康」で演じる平八郎と叔父・本多忠真との別れに「平八郎が初めて負ったのは、傷ではなく愛情だったと感じたシーンでした」

――今後、物語でシビアなシーンも増えていきますが、ズバリ、見どころをお願いします!

「殿がしんどくて、見ているだけでつらいです。『どうする』どころではなくなるから、タイトルも『どうなる家康』に変わるんじゃないかな(笑)。家臣団が『どうなっちゃうの、これ』と思う時が来るんですよ。その時の平八郎の気持ちがつらくて。そのシーンをどう演じようかと考えているんですけど、それもつらいです。さらに戦いが増えていきますし、織田信長(岡田准一)や豊臣秀吉(ムロツヨシ)などいろんな人物が変化していくさまや、争って敗れていく姿にも注目です。そうはいっても、殿のドラマなので見どころは殿です。殿と家臣団をちょっとえこひいきしていただいて、徳川軍を一番に思って見てもらえたらうれしいです」

――ありがとうございました!

※5月17日一部修正

【プロフィール】

山田裕貴(やまだ ゆうき)
1990年9月18日生まれ。愛知県出身。おとめ座。2011年、特撮ドラマ「海賊戦隊ゴーカイジャー」のジョー・キブケン/ゴーカイブルー役で俳優デビュー。ドラマ、映画や舞台などでも幅広く活躍。現在、TBS金曜ドラマ「ペンディングトレインー8時23分、明日 君と」で主演を務めるほか、毎週月曜「山田裕貴のオールナイトニッポンX」(ニッポン放送)に出演。さらに、上映中の映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-運命-」でドラケン役を演じる。また、映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-決戦-」の公開が6月30日、映画「キングダム 運命の炎」の公開が7月28日に控えている。

【番組情報】

大河ドラマ「どうする家康」 
NHK総合 
日曜 午後8:00~8:45ほか 
NHK BS4K
日曜 午後0:15~1:00ほか 
NHK BSプレミアム 
日曜 午後6:00~6:45

NHK担当/K・H



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