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「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす2023/03/31

「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす

 ABCテレビでは、明日4月1日より「なにわの晩さん!美味しい美味しい走り飯」が放送スタート。食い倒れの街・大阪を舞台に、謎に満ちあふれたタクシー運転手・晩明が、さまざまな事情を抱えた“訳あり乗客”を最高の店へと連れて行く姿を描いた、1話完結型のグルメエンターテインメントだ。

 ドラマに登場する店はすべて大阪に実在しており、大阪のグルメとともに描かれるそのリアルさが見る人の心を癒やしていく。そんな本作に欠かせないミステリアスな主人公・晩を演じるのは橋本さとしさん。初回放送が迫る中、大阪での撮影を通して今何を思うのか。橋本さんを直撃すると、“大阪への思い”と“食への思い”を明かしてくれた。

「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす

 ドラマの醍醐味(だいごみ)はなんといっても大阪の街並み、そしてそこに隠れた知られざる逸品。全編大阪で撮影されたロケを振り返ってもらうと、「もうね、ほんとにおいしいんですよ!」とうれしそうな表情を見せる。

「このドラマに出てくるお店はどれも外れがないから、めちゃくちゃ食べさせられるんですよ。それも、リハの段階から(笑)。知り合いでこういうグルメドラマを撮っていらっしゃる方から話を聞くと、『本番1回しか食べない!』と決めているらしいんですね。そういう話を聞いていたけど、僕はあまりにもおいしくて、胃袋も脳みそも“おいしい”にいっちゃって、なんぼでも食べられました(笑)。食べているところは、本気でおいしいと思いながら食べていますね。第1話で出てきた肉吸いと卵かけご飯もね、最高なんです。肉吸い発祥のお店で、オリジナルの卵がけご飯用のしょうゆもあって。肉吸いのスープを卵がけご飯にちょっとかけて食べると、舞い上がりますよ。あれは天国の味です! 『なにわの晩さん』で紹介したお店は、ほんまに個人的にもう1回行きたいなという店ばかりです」。

「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす

 第1話では、忙しすぎる乗客・近藤(今井翼)から「パソコンの充電もできて、時間がかからず晩ご飯を食べられるお店に連れて行ってほしい」とお願いされるも、晩は提供に30分以上かかる天ぷらが名物の店へと向かう。そこでも店側のプロ意識の高さに感銘を受けたようだ。

「第1話で入った『天麩ら そば切り なか川』さんも、提供する食べ物の魅せ方、おそばの艶感にかなりこだわっていて。そばの喉越しや味はもちろんすごいですけど、何回か撮影しているとだんだん(そばが)乾いてくるじゃないですか。だから、毎回盛り付け直してくださって。ありがたいなと思いながらもこだわりを持つそのプロ意識は格好ええなと思いましたね」。

 一方で、そばのおいしさに感動しつつも、唯一“心残り”があると残念がる。

「ドラマで出てきたサツマイモ天が絶品らしいんですけど、食べられてないんですよ…。時間をかけてじっくりと揚げていくから、おイモも柔らかくて、甘みもあって。横で食べていたエキストラの方たちも『めちゃめちゃおいしい!』と言っているから、『このシーン終わってから食べてみようかな』と思っていたんです。そしたら、もうなくなっていて(笑)。おいしいから、皆さんどんどん食べちゃうんですよね。だからプライベートで絶対リベンジしようと思っています。サツマイモ天、食べたかった…」。

「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす

 ドラマに登場する店はすべて“大阪に実在している店”。だからこそ、どこの店にするか、どの料理にするかを徹底的にリサーチし、協議した上で脚本も手掛けられているという。そんな制作陣の姿勢に食を通して愛を感じたようだ。

「厳選されたお店ということで、“シンプルイズベスト”というか。第1話で出てくるおそばも、もちろんそばつゆにつけたりもしますけど、そばの本来の味って、結局、そばだけ食べた時の鼻からポンって抜ける香りが本当にあるんですよ。今井翼さんとも、カメラが回っていないところで2人で『これおいしいよね!』って言いながらバクバク食べていましたね(笑)。それほどお店のプライドと味が一致しているのは、第1話だけじゃなくて、全4話ともあって、ほんまにおいしいお店ばかりでした」。

 今回ドラマの舞台になった大阪は、橋本さんの生まれ育った街でもある。オール大阪ロケの撮影、生まれ故郷での撮影にはどんなことを感じていたのだろうか。

「協力してくださっているお店の方々がその地で育ってその地で働いて生活している方々だったので、久しぶりに生粋の大阪弁を聞くことができて。普段から大阪弁は抜けていないつもりではいるんですけど、人生の半分は東京にいるので、僕自身『ちょっと変な大阪弁になっているな。大阪弁ってこんなコテコテだっけ?』とも感じて(笑)。でもそこには、家族とワイワイしゃべっていた関西弁独特の温かさがあると思うんです。やっぱり、慣れ親しんだ雰囲気を感じて、『懐かしいな』という気持ちに浸っていましたね」。

「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす

 しかし、人生の半分を東京で過ごしても「僕は大阪人というプライドや誇りをずっと持ち続けている」と、真剣な面持ちで続ける。

「普段は芝居をやっている時以外はずっと関西弁なんです。新大阪駅で新幹線を降りて、一歩ホームに入った瞬間にも『あ、大阪や』みたいな空気はやっぱりあって。なんというか、空気の匂いが大阪なんだと感じるんです。帰って来ればいまだにほっとするし、実家に帰ってきたような気持ちになります」。

 そんな橋本さんにとっての“大阪での思い出の味”を伺うと、食への思い、そしてこのドラマを通して伝えたいメッセージが垣間見えた。

「僕が劇団をやっていた頃に食べていた“青春の味”というのは、そのお店が変わらず頑張ってくれているので、大阪に行ったら必ず行くところは何軒かありますね。若い頃に食べていたガッツリ系のご飯って、この年になると『俺こんなに食ってたっけ…?』というぐらいの量があったり、少し食べたらおなかいっぱいになってしまうんですけど(笑)、それでもやっぱりうまい。その時の自分に戻してくれる食事や味は、おいしいだけじゃなくて、自分のマインドも変えてくれるんだなと感じます。このドラマも、落ち込んでいようがいろいろな問題を抱えていようが、おいしいものを食べて自分の原点に帰れたり、ポジティブになれたり、そういうものを感じさせてくれると思います。出来上がった映像を見せていただいた時に『おもろいな。これめっちゃおいしそうやし、すごいわ』と、自分が出ているのを忘れるぐらい“食と人情”というものにどっぷり浸れる、そして自分と照らし合わせて見ることができるドラマになっていると思います」。

「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす
「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす
「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす

 ドラマでは、晩と乗客、さらには乗客同士が織り成す上質なテンポ感を含んだ会話劇も見どころの一つとなっている。各話に登場するゲストも個性豊かな面々が顔をそろえるが、第2話で登場する山本千尋さん、永田崇人さんをはじめ、ゲストから刺激を受けることも多かったという。

「第2話は、僕よりも山本さんと永田さんがすごくいいテンポ感を出してくれていて、カメラのカット割りも面白いシーンになっています(笑)。あの時の晩さんは、『とりあえず口挟んだらあかんな』と思ってバックミラー越しにじっと2人の様子を伺っているだけなんですけど、それだけでも本当に面白い。1話ごとに出てくる乗客たちもすごくチャーミングなキャラ設定になっていて、それをそれぞれの役者さんのフィルターを通して、愛着のある個性的なキャラクターになっているので、そこも見どころの一つです。晩さんが出会うのと同じように、視聴者の方も見ていればそういう人たちと出会っている疑似体験のようなものを感じてもらえて、よりドラマを楽しめるのではないかなと思います」。

 晩は、そんな“癖の強い悩める乗客を、最高の店に連れて行ってくれる”という特技の持ち主。晩の“食を通して客と向き合う姿勢”には共感できることが多いと語る。

「僕が出したアイデアではないので偉そうなことは言えないですけど(笑)、面白いところに目をつけたなと。晩というキャラクターは謎めいていて、つかみどころがない。一見こわもてだしとっつきにくいですけど、実はすごく優しいやつで、人と関わるのが意外と好きな男なんですね。そこのギャップに加えて、タクシー運転手という設定がいろいろな人たちとの出会いの土壌になっていて、ドラマのネタとしても面白いところに視点を当てたなと思います」。

「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす

 劇中では晩の運転するタクシーに、訳ありの乗客が乗り込むことで物語が進んでいく。橋本さん自身がもし晩のタクシーに乗り込んだら、どんな店や食事を希望するのだろうか。

 「タクシーが来たら、まず上げている手を引っ込めますよね。『このタクシーやばい』って(笑)」と笑いつつ「晩さんは肉食だと思う」とキッパリ。「いろいろな食べ物を知っているし年齢も僕と近いでしょうから、『あっさり系もいいけど結局肉やんな』って言うてそうですね(笑)。だから、お薦めの超絶品カツがあるお店がいいですね。あとは一緒に焼肉に行きたいです」。

 そして、「晩さんと共通するのは、“人にまみれて仕事をする”ところだと思うんです」と言う姿に、役者という仕事への向き合い方がうかがえた。

「晩さんはタクシー運転手でいろいろなお店も知っていて、その中でも人が大好きだからいろいろな人間模様も見てきている人で。僕は役者という仕事をやっていて、人を観察して自分の引き出しにしまいながら、役によってその引き出しから記憶をたどって、自分というフィルターを通す仕事をやっている。だから、晩さんが出会っためっちゃ面白かったお客さんベスト5みたいなのを聞いてみたいです。晩さんはいろいろネタを持っていそうですよね(笑)。たくさん刺激を受けると思いますし、それを自分の芸のこやしにしたいです。晩さんとは、そういう人の心についてずっと語り合えるような気がしていて。セリフを覚える時も、晩さんと会話しながら作って演じていたなと、『言われてみたらそうだったな』と今気づきました」。

「自分で見つけたものを人に教えるのが魅力であり、醍醐味なんちゃうかな」──「なにわの晩さん」主演の橋本さとしが地元・大阪への思いを明かす

 インタビュー中はスタッフとも撮影当時を思い出しながら話してくださる姿が印象的で、チームとしての一体感も感じられた。今回は全4話となっているが、続編についても「このチームでやりたいですね!」と笑顔を見せる。

「ハードだったり大変だったりはするんですけど、殺伐とした空気もなく、千葉行利監督を中心とした現場の和気あいあいとしたいい空気感が、そのままドラマになっていると思います。タクシーを運転している中の様子も撮っているので、『カット!』って言った後にカメラが回っていない時の僕の油断している表情も使われていて、うまいことつなげているなと(笑)。一話一話がほんまに愛すべきドラマになっていると思うので、ぜひ見ていただきたいです」。

 長く険しいコロナ禍を乗り越え、国内旅行の規制も徐々に緩和されつつある。状況が前向きに進んでいく中で、これから大阪へと行く人に向けた大阪の魅力を最後に伺うと“大阪への思い”を熱く語ってくれた。

「大阪はやっぱり食い倒れの街。街全体が食のアミューズメントと言っていいぐらい『大阪といえば食』というプライドをみんな持っているんです。もちろんみんなが知っている有名店や『ここおいしいよ』というお薦めのお店もたくさんありますけど、路地裏にあるような個人でやっているマニアックなお店もおいしいものがたくさんあって。役者仲間でも地方公演で大阪に行くと、どうしても『ここの店おいしいよ』ってみんなで紹介し合ったり『いや、知らんかった! こんな店』というのが結構あるんですよ。自分で探検して見つけたものを人に教えるのが大阪の魅力であり、醍醐味なんちゃうかなと。僕も『ここは誰も知らんやろ、めっちゃうまいで!』っていう会話がすごく楽しくて、それで紹介した人が食べに行って『めっちゃうまかったわ!』と言われるとうれしくなるんです。『ここ教えられて行った』というより、『自分で発見したここがおいしいぞ』というお店を発見してほしいですね」。

【プロフィール】

橋本さとし(はしもと さとし)
1966年4月26日生まれ。大阪府出身。89年、「劇団☆新感線」の公演でデビュー。その後、ドラマ「下町ロケット」「TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」(ともにTBS系)、NHK連続テレビ小説「なつぞら」、映画「七つの会議」(2019年)、舞台「ミス・サイゴン」(04年)、「レ・ミゼラブル」(07年)など、多くの作品に出演。今後は「劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」(4月28日公開予定)、「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」(2023年夏上演)などの出演が控える。

【番組情報】

「なにわの晩さん!美味しい美味しい走り飯」
4月1日スタート
ABCテレビ
土曜 深夜0:00〜0:30
※放送終了後、TVer/ABEMAで見逃し配信あり

取材・文/平川秋胡(ABCテレビ担当)



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