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多部未華子、がんで余命宣告をされた夫を支える妻を熱演。「がん患者に寄り添う妻を演じるというのは、とても重みがありました」――「幸運なひと」インタビュー2023/03/31

多部未華子、がんで余命宣告をされた夫を支える妻を熱演。「がん患者に寄り添う妻を演じるというのは、とても重みがありました」――「幸運なひと」インタビュー

 多部未華子さんが生田斗真さんの妻を演じ、4月4日と11日に放送されるドラマ「幸運なひと」(NHK総合)。生涯に2人に1人が発症するといわれる「がん」。多くの人ががん患者やその家族になりますが、嘆き悲しむだけでは乗り切れません。いかに「笑って」生きることを追い求めるか、そんな命を生きつなごうとするリアルな姿を2人が演じる夫婦を通して描いていきます。

 突然がんを宣告され余命を告げられた体育教師の松本拓哉(生田)。妻の咲良(多部)と「子どもを持つかどうか」の選択を迫られるも「自分に残された時間が子どもを作るタイムリミット」という現実に直面。仕事も順調な咲良に嫉妬が抑えられない拓哉と、「子どもを諦め、自分の仕事を犠牲にして夫を支えていくこと」に悩む咲良は、一体どんな選択肢を選ぶのか…。

 放送に先駆け、松本咲良役の多部未華子さんに撮影中のエピソードや出演の感想をお聞きしました。

多部未華子、がんで余命宣告をされた夫を支える妻を熱演。「がん患者に寄り添う妻を演じるというのは、とても重みがありました」――「幸運なひと」インタビュー

――初めに台本を読んだ印象を教えてください。

「最初は暗い話になるのかなと想像していたのですが、台本を読んでみると前向きな夫婦の話だと感じました。だからと言って、がん患者に寄り添う妻を演じるというのは、とても重みがありました。自分が体験したこともなければ、身内にも同じ体験をした人がいなかったので、どういうふうに演じればリアルに演じられるかなというのを悩みながら読ませていただきました」

――咲良を演じる上で大切にしていたことはありますか?

「撮影中はワンシーンごとに悩みながら演じることが多かったです。1人の女性としてどういうふうに生きていきたいかということと、がんを宣告された夫にどんな表情と話し方で伝えれば咲良らしく見えるのかなというのは毎日の課題だったと思います」

――咲良を演じて共感した部分を教えてください。

「咲良の、がん患者の夫に気を使いつつも、最後は自分の意見をしっかり発言するというのは似ていると思います。でも、咲良と拓哉はがんになってからお互いに言い合えるようになった夫婦だとも思うので、自分の意見をきちんと言えるようになったのは彼女の成長だと感じています」

――撮影前にがん患者の妻だった方とお話をしたと伺いましたが、印象に残っていることはありますか。

「当時の状況をお聞きして、実際に何をしていたのか、どんなふうに心情が変化していったのか、旦那さまのご病気のことやがんが進行した際の配慮などの話をたくさん伺いました。お話させていただいた方は私と同世代の方だったのですが、見てきた世界が全く違うと衝撃を受けました。同時に、とても明るく力強い方だったのですが、その裏には計り知れない苦労や悲しみ、寂しさがあって、葛藤をしながら、今を大切にしながら闘病生活を支えてきたんだなというのを感じました。そのお話を事前に伺って、思いを感じることができたというのは大きなことだったと思います」

多部未華子、がんで余命宣告をされた夫を支える妻を熱演。「がん患者に寄り添う妻を演じるというのは、とても重みがありました」――「幸運なひと」インタビュー

――拓哉役の生田さんとの共演はいかがでしたか?

「2度目の共演だったので、初日から和気あいあいと撮影ができました。がんになってしまう役だからといって暗くなってしまうことはなく、撮影の合間にもお互い普通に会話をしながら過ごしていました。生田さんは本番が始まるとすぐに切り替えて演技をされる方で、私も基本的には同じだったので、楽しく撮影させていただきました」

――作品に映っていた景色もすてきでドラマを引き立てていた一部かと思いますが、印象に残っている場所を教えてください。

「神奈川・横須賀に住んでいる設定で、主なロケ地も横須賀でした。ドラマ中にも『坂が多い』というセリフが出てくるんですけど、とにかく多かったです。残念ながら私は天気のいい日に巡り合えなかったのですが、生田さんから『天気のいい日は本当に景色が良かったよ』と教えてもらいました」

――咲良のセリフで好きなものを教えてください。

「今回の作品でエゴという言葉がたくさん出てきて、とても考えさせられました。これだけエゴと言ったことは今までの人生にないと思いながら演技をしていたのですが、『これは私のエゴなんだ』というセリフは、咲良らしいなと思ったと同時に本音が出た一言だと感じました。これを受け止めてくれる相手がいる人生を歩める人は、拓哉や咲良のみならず、とても幸せな人なのかもしれないなと」

――演出の一木正恵さんには並々ならぬ思いがあると伺いましたが、撮影に挑む際に話し合ったことを教えてください。

「一木さんはとにかく熱い女性で、撮影に入る前からたくさんお話をさせていただきました。私は口下手でうまくしゃべれないので、演じる登場人物への思いをあまり言葉でやりとりできないのですが、一木さんの熱い思いはもちろん聞いて伝わっていたので、一木さんの咲良への思いを100%再現できたらいいなと思って、咲良というキャラクターと戦っていました」

多部未華子、がんで余命宣告をされた夫を支える妻を熱演。「がん患者に寄り添う妻を演じるというのは、とても重みがありました」――「幸運なひと」インタビュー

――咲良と同じような境遇になったとしたらどうしますか?

「本当に難しい問題だと思います。咲良の、自分のチャンスを逃したくないという気持ちも分かるし、年齢的にも子どもが欲しい、だけど拓哉のがんが判明して“自分が後悔しない選択肢は何なのか“ということは私もすごく悩むと思います。自分だったらどうするかというのは経験がない状況だったので、今回の撮影でOKが出ても『がん患者との向かい方ってこれで合っているのかな』と毎日悩んでいたので、答えが出ないくらい想像ができない環境だと感じました」

――ありがとうございました。

【番組情報】

特集ドラマ「幸運なひと」
NHK総合・NHK BS4K
4月4日、4月11日
午後10:00~10:45

NHK担当 S・A



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