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松村沙友理が“えりぴよ”を経て感じた“ファンの存在” 「うそじゃなかったんだと、実感できています」――「推し武道」ロングインタビュー2022/10/07

松村沙友理が“えりぴよ”を経て感じた“ファンの存在” 「うそじゃなかったんだと、実感できています」――「推し武道」ロングインタビュー

 岡山県で活動するマイナー地下アイドル・ChamJam(チャムジャム)と、彼女たちを熱狂的に応援するオタクたちの姿を熱く、切なく、尊く描く、ドルオタ青春コメディー「推しが武道館いってくれたら死ぬ」(テレビ朝日ほか)。“推し武道”の愛称で多くのファンから愛されている本作は、2015年より「COMICリュウ」(徳間書店)にて連載をスタート、20年1月にはアニメ化もされた人気作品です。 

 そして、10月8日から連続ドラマ版“推し武道”がいよいよスタートします。情報解禁から期待の声が上がっている本作で主人公・えりぴよを演じるのは松村沙友理さん。昨年7月に乃木坂46を卒業した元アイドルの松村さんが、お金も時間も、人生のすべてを推しの市井舞菜(伊礼姫奈)に注ぎ込むため、自分の服は高校時代の赤ジャージしか持たない熱狂的なアイドルオタク・えりぴよを体現します。 

 ドラマの第1話の放送を前に、ここでは主演の松村さんのインタビューをお届けします。元々感銘を受けていたという「推し武道」のドラマ化に対する思い、さらに乃木坂時代に松村さんを支えた“ファンからの言葉”についてのお話を伺いました。 

よりリアルにするため、「違和感を感じたら絶対に相談するようにしています」

松村沙友理が“えりぴよ”を経て感じた“ファンの存在” 「うそじゃなかったんだと、実感できています」――「推し武道」ロングインタビュー

――地上波連ドラ初主演となりますが、出演が決まった時の率直な感想を教えてください 

「この『推し武道』は、私がアイドルだった時代に原作を読んだりアニメも見ていて、ファンの立場に立つ作品に感動したというか、すんなり自分の中に入ってきたので、自分がアイドルを卒業してもアイドルというものに関われることに縁を感じましたし、すごくうれしかったです。でも、自分の中ではそんなに気負いすぎないで、共演者さん、スタッフさんに助けてもらいながらやっているという感覚です」 

――座長として緊張することもありましたか? 

「自分はまだまだ演技の世界で引っ張っていけるような立場ではないので、プレッシャーを感じて固くなるよりは、皆さんと話し合いながら自分たちなりに作品を作っていけたらいいなと思っていたので、純粋にえりぴよという役を楽しんでいけているかなと思います」 

――原作もアニメもご覧になったとのことですが、作品の魅力や面白さについて感じることを教えてください。

「なんだろう…(かなり悩んだ後に)ピュアな心なのかなと思います。えりぴよをはじめ、やっぱりオタクってピュアじゃないですか。推しがアイドルじゃなくてもそうだと思うんですけど、純粋な気持ちで何かを一生懸命応援してる熱さってやっぱり見ていて気持ちがいいし、気持ちの投影もすごくできる。本当に悪いことを考えている人がいないというか、みんな純粋に自分の推しが幸せになることだけを考えている平和な世界観もすごく魅力だと思います」 

――ドラマの台本を読まれて、作品の見方はあらためて変わりましたか? 

「原作とアニメはリアルなところと二次元っぽいところが上手に混ざっていると感じていて。その表現の仕方が派手だったり、鼻血が吹き出るところの表現は二次元っぽいけど、それぞれの人間の心情はリアルなところが合わさっているんです。今回監督さんともお話したんですけど、このドラマはそれを人間がやることを大切にしようと話していたので、“人と人”というやりとりは大切にしながら取り組めているかなと思います」 

――オタクの純粋さが描かれる中で、“泣ける場面”というのもありましたか? 

「ありました! アニメを見ている時もそうだったんですけど、そんなに泣けるようなシーンじゃなくても自然と涙が出てきたり、今回の台本でも『泣きながら言う』と書いてなくても、話していて自然と涙が出るシーンが多くて。ピュアだけど恋人とも家族とも違う、その距離感の難しさが作り出す感情の起伏はありました」 

松村沙友理が“えりぴよ”を経て感じた“ファンの存在” 「うそじゃなかったんだと、実感できています」――「推し武道」ロングインタビュー

――これまではトップアイドルとしてファンから推される立場でしたが、ドラマでは誰かを推す立場の役になります。えりぴよに共感できるところはありましたか? 

「やっぱり所々の気持ちとかは、アイドルを10年近くやってきた経験もあるので、よりリアルに感じられているのかなとは思いますし、セリフ一つ一つの意味も自分なりに深く考えられていると思います。自分がアイドルをやってきた分、“アイドルのファン”という立場は、より大切に演じていきたい気持ちがすごく強いです」 

――演じるにあたって、ご自身の経験を監督に伝えたりすることはありますか?  

「すごくそれはやっています。セリフ一つ一つも薄くなりたくないというか、その意味をちゃんと伝えたいなって思うし、握手会のシーンでも、私が言われたことのあるセリフもあったりしてリアルなのかなと思います。あとは、演出の中で『そのセリフはこうだけど、自分の体験はこうだったので、もうちょっと変えてみたい』と、自分が違和感を感じたら絶対に相談するようにしています」 

――具体的にはどんな相談をされたのでしょうか? 

「私がアイドル時代に言われたことがあるセリフがあったんですけど、それが台本の中では冗談っぽく書かれていたシーンがあったんです。実際にファンの方が泣きながら話してくれて、『そんなに軽いニュアンスのセリフにしたくない』って相談させていただきました。言葉の重さを一つ一つ大切にしていきたいとお話しました」 

――特に印象に残っているセリフを教えてください。 

「『人生で初めて胸がときめいたんだ 』というセリフ。あとは『私は舞菜と出会って、変わった』っていうセリフもすごく好きです」 

松村沙友理が“えりぴよ”を経て感じた“ファンの存在” 「うそじゃなかったんだと、実感できています」――「推し武道」ロングインタビュー

――えりぴよはかなり重めな推し方をするタイプのオタクですが、松村さんならどんな推し方をしますか? 

「私、結構ガチ恋系なのかなって(笑)。ずっと二次元が好きだったんですけど、1クール3カ月ごとに自分の好きな人が変わるってずっと言っていて。アクリルスタンドとか画像とか、グッズも集めたり、その3カ月は毎回恋をしているぐらい好きでした。乃木坂の時も、現場でアニメを見ないメンバーにも『〇〇くんがね!』っていう話をしてました(笑)」 

――特にハマったキャラクターを教えてください。

「アニメのキャラクターだと、『コードギアス』のルルーシュがずっと好きです。フィギュアも買ってましたし、10周年に映画が公開された時は何回も見に行って会いに行ってました」 

――松村さんが推したいと思うアイドルはどんな方ですか?

「皆さん毎回すごく魅力的だったんですけど、釣りとかしてくれるあざとい子はすぐ好きになってましたね(笑)。チョロい系オタクだったと思います」 

 ――舞菜のような一生懸命なアイドルはいかがですか? 

「ChamJamってみんなそれぞれ個性が違って、ダンスも踊り方が面白いぐらいに違うんですよ。舞菜ちゃんはちょっと恥ずかしがり屋さんであまりダンスもうまくはないけど、それが逆に目を引かれるというか、彼女なりの一生懸命さが伝わってくるので、めちゃめちゃ推せるなって思います」 

「“えりぴよ”という人間に寄り添いたい」――役作りの中にあるブレない考えとは

松村沙友理が“えりぴよ”を経て感じた“ファンの存在” 「うそじゃなかったんだと、実感できています」――「推し武道」ロングインタビュー

――えりぴよを演じる上で心掛けていたことはありますか? 

「声は低めにしようとずっと心掛けていました。やっぱりリアルな人間っぽさがいいなと思ったので、うそにならないように自分の声を作りすぎないというか、今話してるトーンと同じぐらいの声でっていうのはずっと心掛けていたところかなと思います」 

――現場に入ると、自然とえりぴよとしてのスイッチが入りましたか? 

「意外とそうでもなくて。現場にいるくまささん(ジャンボたかお)とか基さん(豊田裕大)と話していくうちにえりぴよになっていったなって感じがありますね。現場に入ったら自然とスイッチが入るというよりは、現場に入って監督さんとこれから撮るシーンの話をしていって調節している感じがあります」 

――衣装でもあるジャージ姿はある意味トレードマークだと思いますが、衣装合わせでご覧になった時はどう思われましたか? 

「あまり自分では『めっちゃえりぴよだ!』という感じが正直しなかったんです。自分の中で二次元の作品が実写化されることがあまりイコールしていないというか。『二次元の作品=実写作品』というのがあまり同じ世界線にないんですよ。だから、性格とか考え方とかは原作にできる限り寄せるけど、えりぴよのビジュアルをあえて完璧に寄せようとはあまり思っていないんです。『えりぴよに似てるね』と褒めていただけることはすごくうれしいですけど、それこそコスプレにしたくないというか。コスプレって見た目を似せるじゃないですか。そうじゃなくて、『“えりぴよ”という人間に寄り添いたい』と思ったので、 見た目よりも内面を近づけたい気持ちの方が強いですね」 

――そうだったんですね。人気作品の実写化ということでプレッシャーもあったのでしょうか? 

「最初にお話を聞かせていただいた時は、単純に好きな作品だったのですごくうれしかったんですけど、情報解禁された時の周囲の反応がすごく大きくて、その時に『あ、私はとても大変なことをしているな』って実感しました(笑)。やっぱり原作が好きだっていう方も多かったですし、『アニメがすごく良かったからドラマも期待したい』という声がたくさんあったので、プレッシャーではないですけど、自分の中では頑張らなきゃいけないなって思う要素だったと思います」 

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