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新垣結衣が明かす、「鎌倉殿の13人」で八重が義時に心を動かされた理由2022/05/21

 第19回(5月15日放送)の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)では、後白河法皇(西田敏行)のたくらみによって、兄弟同士で争うことになった源頼朝(大泉洋)と源義経(菅田将暉)。彼らの仲裁役として奔走する北条義時(小栗旬)の姿がありました。そんな中、頼朝が御所の庭で偶然会った八重(新垣結衣)に本音をもらすシーンで、相変わらずの頼朝に対し、つれない八重。明らかに頼朝への気持ちが冷めていることが分かるシーンでしたね。

 今や義時の妻になり、穏やかな日々を過ごしている八重役の新垣結衣さんから、大河ドラマ初出演への思いや、八重への思い、撮影エピソードなどを伺いました!

――大河ドラマ初出演とのことですが、時代劇に対してどんなイメージを持っていましたか? また、出演後、どのようなイメージになりましたか?

「正直、時代劇をほとんど見たことがなかったんです。でも、撮影前に三谷(幸喜)さんが手掛けた2016年の『真田丸』を拝見して、すごく好きになって、最終回ではおえつしてしまいました(笑)。時代劇は、当時の価値観や当たり前だったことが理解できず、難しくて共感しづらいというイメージがありましたが、実際に参加してみて、価値観や当たり前が違っていても、身近な人が亡くなって悲しいことや死への恐怖もあって、嫉妬もするし、誰かを好きになる思いなども変わらないんだなと思いました。また、歴史上では“尼将軍”と言われている政子(小池栄子)も、八重と初めて対立するシーンで見せる顔は、まだ何者でもない1人の人間で、大事な人や好きな人がいる少女で…。どこかフィクション感があった歴史上の人物が生きていたことを実感しました」

――三谷さんの脚本が息を吹き込んでいる部分もあるのでしょうか?

「現代に寄り添ったセリフの言い回しなどを意識されていると思うので、そのおかげもあるのかもしれませんね」

――では、政子を演じる小池栄子さんとの共演はいかがでしたか? 最初は頼朝の前妻と本妻の立場で互いに対抗心を燃やし、のちに義時と八重が夫婦になってからは、関係に変化がありましたが…。

「初めて2人が対立するシーンでは、八重の立場が上で政子が下という状況でした。実際は逆で、栄子さんが先輩。演じている時は関係ないのですが、『八重という存在が政子に負けないようにしなければ』と、すごいプレッシャーを感じて緊張もしていたんです。でも、栄子さんが演じる政子が、1人で勢い込んで乗り込んでみたものの、目の前の前妻にちょっと恐怖を感じている普通の女性としていらして。最初は歴史上の政子をイメージしていたので、栄子さんが演じる政子のおびえているような表情を見た時に『あっ、そうだ。政子も人間だった。まだ何者でもない少女だった時代があったんだ』とあらためて感じて、感銘と刺激を受けたんです。その後、御台所になられて堂々としている姿の中にも、栄子さんが演じる政子ならではのかわいらしさや優しさをよく感じていました。『八重をそんなに寛大に受け入れてもらって本当にいいのだろうか?』とも思いましたね。政子に厨(くりや)で働くことを許してもらってからは、ずっと純粋に八重として政子に感謝の気持ちを抱きながらいましたし、その心の広さ、優しさ、深さ、かわいらしさは栄子さんが演じる政子だからだなと。今後、尼将軍となってどんなふうに変化するのか、オンエアをすごく楽しみにしています」

――八重は頼朝や義時、父の祐親(浅野和之)など、いろんな男性に翻弄(ほんろう)された女性ですが、彼女に一番影響を与えた人物は誰だと思いますか?

 「人生に大きな影響を与えたという意味では義時ですね。史実では、頼朝と別れて自害すると言い伝えられていますが、この物語の中の八重は義時と出会い、彼がずっとそばにいてくれたことで、たくさんのことを経験して、幸せな時間を過ごします。そういう意味では、義時の影響は大きかったんじゃないでしょうか。あと、視聴者の皆さんからは『八重の人格はすごくお父さんと似ている』と言われていて(笑)。台本を読んでいる時や撮影している時は意識していなかったのですが、『頑固さは、あのお父さんの娘だな』と言われると、『確かにそうだな』と共感しました(笑)」

――祐親に似ているという感想に共感したとのことですが、新垣さん自身の八重の印象を教えてください。

「頑固、言い方を変えると意志が強いというか。意志を強く持っているし、自分の思いに忠実に行動できる。行動できるというべきか、行動してしまうというべきかはちょっと迷うところなんですが(笑)。それだけ意志がしっかりしているのは良いところでもあるのかなと。史実に残っている八重と今回のドラマでは、八重の印象がだいぶ違うと思っています。ドラマの八重は生きることへの思いが強い。自分自身も周りの人に対しても、生きるということに対して強い意志を持っている印象があります。それはすごく良いことだと思いますし、そのためにすがるものを見つける力や諦めない力があると捉えています。また、八重の良いところは意志の強さなので、それは貫きたいです。もちろん台本次第ではあるんですが、自分の大事に思っているものに対しては揺るがない雰囲気を大事にできたらいいなと思っています」

――八重と義時が夫婦になるまでを振り返ると、いろんなことがありました。第2回(1月16日放送)では「なぜあなたも命懸けでうそをつかない」と義時に怒るシーンが印象的でしたが、あのセリフはどのように感じましたか?

「まずは…八つ当たり(笑)。八重と義時の関係だからこその甘えで八つ当たりです。頼朝が現れない悲しみや焦りなど、どこにぶつけたらいいのか分からない思いをぶつけたというのもあるし、中途半端なうそをつかれたことに腹が立ったのもあると思います。また、八重だからこそ、うそを見抜けたのかなとも思いました」

――八重は人を見抜く力があるということでしょうか?

「人を見抜くというか、義時と八重という昔から知っているっていう間柄で、2人の関係性や立場、その時の状況があって分かったんじゃないでしょうか」

――頼朝と別れた後、伊東の家人・江間次郎(芹澤興人)に嫁いだ八重が、夫に対して冷たい仕打ちをしていました。演じていた時は罪悪感があったりしたのでしょうか?

「すごくあります(笑)。台本を読んでいてもすでに罪悪感があったので、最初の芹澤さんとのシーンの撮影後に『お疲れさまでした。今後も八重さんが旦那さんに対してひどい仕打ちをしますが、すみません』と謝って(笑)。『思いっ切り冷たくします』とごあいさつをしました。受け止めていただいてありがたかったです」

――江間が亡くなった後、八重は義時のことをだんだん受け入れていくわけですが、心情の変化を演じるにあたり、意識していたことはありますか?

「幼いころから知っている親戚で、八重の方が年上で立場も上だったので、義時は恋愛の対象ではなく弟のようで、対等ではなく、ちょっと子どもだと思って過ごしていたんじゃないでしょうか。一方で、頼朝に関することで八重が『こうしてほしい』と義時にあれだけわがままを言えたのは、甘えていた部分もあるのかなと。その後、義時が真っすぐに好意を示すようになってからは、今までの関係性があるから素直に受け止められないし、その思いが信じられない。義時がお土産を持ってくる度に、ちょっと迷惑だとか怖いと言って、陰から見ていて『えっ?』って驚くシーンもたくさんありますが、ただの嫌悪っていうよりは、その思いを信じられない、戸惑いがあるんだろうなと思いながら演じていました」

――そうした戸惑いを経て、第13回(4月3日放送)でついに八重が頼朝を追い返した後、義時の思いを受け止めました。撮影を振り返っていかがですか?

「八重が義時に笑顔で『おかえりなさい』と言うシーンは、八重が初めて義時の思いを受け止め、2人の関係性が変わる大事なシーンだと思いながら撮影に臨みました。それまではほぼ笑顔を見せなかった八重でしたが、それ以降は笑顔が見えるようになってガラッと変わって。放送される前から、そのシーンの義時の表情がとてもすてきなので、ぜひ楽しみにしてくださいと言っていた通り、とてもすてきなシーンになりました」

――幾度となく義時からのプロポーズを断ってきた八重ですが、最終的に夫婦になりました。新垣さんから見て、義時の魅力はどんなところにあると思いますか?

「やはり真っすぐさだと思います。振り向いてくれなかったとしても、幼なじみとして昔から抱いてきた思いは変わらないし、大事にしたいと言ってくれて…。八重が義時に対してそっけなく対応したとしても、見返りを求めるわけでもなく尽くしてくれる姿に心ひかれて、思いを受け止めたんじゃないかと思います」

――義時の真っすぐさというのは、お芝居でのまなざしにも出てくるものですか?

「そうですね。ドラマの始まりから八重と夫婦になって間もないころまでの義時は、本当に純粋な目をしていて…。本当に少年のようなまなざしとあふれる爽やかさ、若々しさがあって、八重に対しては『分かってないな』と言いたくなるような未熟さがある。ほかにも、人から頼まれ事をされて振り回されても、それに精いっぱい応えようとするなど、いろんな面で本当に真っすぐで純粋なイメージがあります。その後、義時は頼朝からますます酷な仕事を任されるようになってしまいますが、葛藤しつつも、八重の前にいる義時はいつまでも変わらず純粋な人だったと思います」

――義時は八重に幸せになってほしいと思い続けていますが、八重がどんな時に幸せだったと思いますか?

「大事な人と過ごす穏やかな時間が何より幸せだろうなと思いました。八重は大事なものをどんどん失ってしまっていった人なので、自分の生きる意味を探しているというか、何かにずっとすがるというか、生きるための執着だとかそういったたくましさがあるというふうにも捉えているんですが、大事な存在と一緒に過ごす、一緒にいられる時間が幸せだったんだろうなと」

――小栗さんとは13年ぶりですが、久しぶりに共演されていかがでしたか?

「13年前は『スマイル』(TBS系)で共演して、あの時と役は全然違いますね。当時は共演シーン自体があまりなかったし、小栗さんに脅されている役で…(笑)。これだけ長い時間、一緒にお芝居ができるのは初めてだし、光栄だなと思いながら過ごしました。小栗さんは当時から周りを見てすごく気にかけてくださる印象があって、それは今も変わらないので、ありがたかったです」

――撮影の合間にお話されたのでしょうか?

「たくさん話しました。たわいもないことから、大河ドラマの主役が初めてで、役を受ける前に結構悩んで、大河ドラマの主役をされた方に意見を聞いたというコメントを見たので、『実際にそれから今、半分くらいたってどうですか?』とインタビューしたり(笑)」

――そうなんですね(笑)。そういえば以前、小栗さんから「新垣さんが早めに現場に入って、ほかの方のシーンをこっそりのぞいている」という話を伺ったのですが…。

「皆さんが朝からリハーサルをされていて、私が後から現場に入るスケジュールの時にちょっと早めに来て、出演シーンじゃないところを見学させてもらうということがありました。私自身が物語の中で絡まない方々のシーンを見ることができるので、『こういう雰囲気のシーンになるんだ』と楽しくて見ていました」

――特に印象的だった方はいらっしゃいますか?

「西田敏行さんが演じる後白河法皇が頼朝の夢枕に立つシーンです。ちょうどエアーで頬をたたかれるシーンだったので、みんなが笑っていて(笑)。それをオンエアより早く見られるのはすごくラッキーだったなと(笑)」

――では、ご自身のシーンで特に思い入れのあるシーンはどこでしょうか?

「今パッと浮かんだのは、第11回(3月20日放送)の父上の襟足をそるシーンです。物語が始まった時から、父上との関係はギスギスしたところがあったのですが、やっと親子らしいというか、家族3人で過ごせた唯一の穏やかな時間でした。あの時に見せた浅野さん演じる祐親の笑顔がたまらなくて。それまでは親子の対面シーンについて、お互いが大事に思い合っているのに、どうしてこんなふうになってしまうのかなという思いがあったのですが、そのシーンで素直に視線を交わせる瞬間があって、とても印象的でした。それと、今後、北条家が大集合するシーンがあるのですが、その時に家族で過ごしている感じがして、そこに八重としているのが幸せだったので、それも印象に残っています」

――やっと親子らしくなれた祐親も善児(梶原善)に命を奪われます。善児は遂行しているだけですが、八重として、新垣さんとして善児に対してどのような思いを抱いていますか?

「八重としては、最初のころは一雑色で身近な存在だったと思います。芹澤さんが演じる江間が身を呈して善児から守ってくれた時以外は、自分の家族がみんな善児に殺されていることを知らないと思うんですよ。千鶴丸(太田恵晴)が亡くなった時も、手を下したのは善児だとお兄ちゃんから聞きますが、指示したのはお父さんだったと告白されているし。ただ、オンエアを見て、新垣結衣としては、八重の大切な人がみんなやられてしまうので『なんて恐ろしい人だ』って(笑)。善児って何を考えているかも分からないし、趣味とかもなさそうじゃないですか(笑)。誰かに仕えるという以外に、自分の意志で好きなこと、気持ちが一喜一憂することって想像できない。誰かに仕えることが善児の生きている意味なのではないかなと思いますが、恐ろしい存在だなと思っています」

――初めての大河ドラマで女優として成長できたと感じた部分はありましたか?

「成長したかどうかは反省しかないので分からないです(笑)。一度、ファンタジー作品で戦国時代の姫の役をやったことはあるのですが、本格的な時代劇もNHKの連続ドラマに出演するのも初めてですし、経験としては自分の実になるものばかりでした。今回学んだ所作は、現代劇でも身のこなしの美しさにつながったり、着物が体になじんでいく感覚など、それは今後どこかに生きていくのかなと思います」

――自己評価としてはいかがですか?

「反省ばかりです(笑)。私が撮影を終えるころに三谷さんが感想をくださって、『自分が思い描いていた以上の八重さんだった』と言っていただいて、本当にそれで全部報われて、安心しました。反省の気持ちは消えないのですが、そう言っていただけてよかったです」

――八重を演じたことで、ご自身の人生、俳優としてでも1人の人間としてでも、勇気づけられたことはありますか?

「生きることに対しての執着やそれを大事にする思い、自分だけでなく周りにも芽生える思いを大事にしていきたいと思うようになりました」

――ありがとうございました!

【番組情報】

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」
NHK総合 
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム・NHK BS4K
日曜 午後6:00~6:45

NHK担当/K・H ヘア&メーク/藤尾明日香 スタイリスト/道券芳恵

 



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