Feature 特集

「ファイトソング」武田梓&岩崎愛奈プロデューサーに聞く! 主演・清原果耶が共感したシーンとは?2022/03/11

「ファイトソング」武田梓&岩崎愛奈プロデューサーに聞く! 主演・清原果耶が共感したシーンとは?

 いよいよ最終回を迎える火曜ドラマ「ファイトソング」(TBS系)。2021年にNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」でヒロインを務めた清原果耶さんが主演を務め、空手の日本代表を目指す主人公・木皿花枝を演じています。花枝は児童養護施設で育ち、持ち前の明るさとスポーツ根性であらゆる逆境を跳ね飛ばしていくポジティブな役どころ。そんな花枝が、ひょんな事から出会ったミュージシャンの芦田春樹(間宮祥太朗)と、幼なじみの夏川慎吾(菊池風磨)との三角関係の恋を繰り広げています。

 脚本は、連続ドラマ「この世界の片隅に」(同系)や映画「いま、会いにゆきます」など数々の名作を世に送り出し、19年に紫綬褒章を受章した岡田惠和さん。さまざまなラブストーリーを届けている火曜ドラマ枠で、岡田さんが不器用な3人の若者たちによるじれったくて切ない、けれどどこか笑えるヒューマンラブコメディーを紡いでいます。

 ここでは最終回を前に、本作のプロデュースを手掛ける武田梓さんと岩崎愛奈さんを取材。メインキャストの起用理由や現場でのエピソードはもちろん、あの“ムササビシーン”の裏話や最終回に向けての見どころなどをたっぷり語っていただきました。

――本作はラブストーリーという側面もありながら、ヒューマンドラマとしての一面も兼ね備えているところが魅力的です。今回「ファイトソング」という題材を選ばれた理由を教えてください。

武田 「誰でも音楽に力をもらって頑張れたり、背中を押された経験はあるんじゃないかなと思い、多くの人に共感してもらえるテーマなのではと思って選んだのが大きな理由です。このテーマを選ぶのであればやりたかったシーンもあって、それが第1話のピアノの弾き語りシーンでした。間宮さんは本当はギターが得意なのですが、どうしてもピアノがいいなと思っていたのでお願いしました。ピアノだと女の子に背を向けて演奏するので、不器用な男性が相手の顔を見ずに背中を押してあげるっていう演出ができていいなと。背中で語りかけるような優しい場面が作れたのではないかなと思います」

「ファイトソング」武田梓&岩崎愛奈プロデューサーに聞く! 主演・清原果耶が共感したシーンとは?

――主演の清原さんはじめ間宮さん、菊池さんを起用した理由も教えていただきたいです。

武田 「企画段階から、若い女性を主人公にした恋愛ドラマを作りたいという思いがあって、岡田さんの作る“説得力のあるストーリー”の主演に清原さんを据えることによってヒューマンドラマの側面を出すことができ、今までの火曜ドラマのテンプレート的なものをいい意味で裏切ってくれそうと期待していました。脚本は岡田さんというのは決まっていて、ヒューマンな部分も描けたらと思っていたので。そして、芦田という役は普通にやるととても難しい役柄なんです。芦田のキャラクター感も強いので、リアルになりすぎてもよくなくて。リアルな人物像とエンターテインメントとしてキャラクターを演じられる方ということで、間宮さんにお願いしました。菊池さんは、慎吾のキャラクターが固まった段階で誰にお願いするかを考えたので、慎吾という役がハマりそうな人という基準でお願いしました。第1話の台本が出来上がった段階で、オレンジの髪でめちゃくちゃいい人という設定も、主人公に片思いをしていてその思いを隠さずにどんどん言っていく性格というのも決まっていたので。もちろん期待していましたが、期待以上というより、本当に台本から出てきた慎吾そのままですね」

――“そのまま”という菊池さんのアドリブが多いと聞きました。脚本に縛られず、自由に作り上げていくような現場になっているのでしょうか?

武田 「そうですね。慎吾に関しては、クランクインの日がハウスクリーニングをするシーンで、その日からすでに監督から『ここちょっとアドリブで歌いながらやってみてくれない?』という指示があったんです。それからそういうシーンが連続したので、初日でかなり慎吾のお芝居の方向性が出来上がったなと思います。最初の頃の台本では『ご機嫌で掃除をする』という表現だったのが、中盤の台本が出来上がってくるあたりからは『キャバクラの歌を歌う』というように具体的に書かれるようになってきましたね。菊池さんのアドリブシーンを中心に、和気あいあいとした幼なじみの雰囲気が出来上がっているので、とても助かっています」

「ファイトソング」武田梓&岩崎愛奈プロデューサーに聞く! 主演・清原果耶が共感したシーンとは?

――その幼なじみ3人の片思いをはじめ、それぞれ複雑な思いが交錯していると思います。その“もどかしさ”の設定はどうやって決めたのでしょうか?

武田 「本作では大きい事件が起きるわけではないので、それぞれの心理的な部分を丁寧に描こうと決めていたんです。登場人物それぞれに好きな人がいて、それとどう向き合っていくかを描くことによって、ヒューマンドラマとしての部分も表現できるかなと」

――慎吾と萩原凛(藤原さくら)のシーンは、視聴者からも大きな反響がありますよね。

武田 「第8話では凛のうれしさと切なさがあふれる名シーンが生まれましたね。あの2人は本当にかわいらしいです。慎吾が花枝に対していちずなので、最初からラブコメで余りもの同士がくっついていくような、よくある展開で進めるつもりはありませんでした。でも、慎吾と凛がどんどん視聴者から愛されてきて、『この2人にくっついてほしい!』っていう声も届いていて。これはうれしい誤算ですね。あの2人の普段のやりとりもそうですし、キャンプで寝相が一緒なのが分かるシーンではビジュアルもかわいかったですし、一緒に育ってきた時間を感じることができたいいシーンだなと思いました」

「ファイトソング」武田梓&岩崎愛奈プロデューサーに聞く! 主演・清原果耶が共感したシーンとは?
「ファイトソング」武田梓&岩崎愛奈プロデューサーに聞く! 主演・清原果耶が共感したシーンとは?

――物語も佳境に入ったころから初々しい胸キュンシーンも増えてきますよね。そのようなシーンを作る時はどのような点にこだわっているのでしょうか?

岩崎 「2人とも恋愛初心者という設定を大事にしているので、ピュアな部分を大事にしています。不器用だけれど初めて知った恋。“この人を好きだ”という気持ちに初めて遭遇するので、今まで経験してこなかった相手をとてもいとおしく思う気持ちとか、それによって心が動く様子をとにかくピュアに描きたいなと思っています。普通だったら『キスしていいですか?』なんて聞かなくていいのに、あえて聞いてしまうかわいさがいいなとか。その後にちょっと照れてしまうという細かいリアクションも大切にしています」

――先ほど、岡田さんの作る“説得力のあるストーリー”とおっしゃっていましたが、そのセリフが多くの人の共感を呼んでいます。お二人が思う岡田さんの脚本の素晴らしさをあらためて教えてください。

武田 「岡田さんの台本は本当にセリフが全部素晴らしくて、私自身も共感ばかりです(と、しみじみ)。現場でも共感の声が上がっていて、清原さんは、第4話の冒頭で芦田にキスされそうになってパンチで撃退した後に『女の子はみんな同じじゃないんだからそういうので喜ぶと思ったら大間違いだ!』って語るシーンに共感されていました。第1話の芦田の告白を受けて、第2話で『好きな歌を歌ってもらった感動が今ので台無しだ』と言い返すシーンもありましたが、ドラマの中だとそのまま女の子がキュンとして話が進んでしまうような場面で、『普通はこんなのないよ』って言ってくれるのが岡田さんの台本のいいところで、共感を集める理由なのかなと思います」

岩崎 「岡田さんのセリフには、優しさや愛情があふれていると感じる瞬間が多いです。慎吾が気持ちをポロっとこぼす何げない一言でも、思いを積み重ねてきたからこそ紡ぎ出される言葉が使われていて、セリフの一つ一つにすごく背景が見えますし、思いがしっかりと乗っかっているのを感じます。そして、花枝や芦田や慎吾のセリフももちろんですが、それを見守る大人たちも同じように作ってくださっています。直美さん(稲森いずみ)、迫さん(戸次重幸)、葉子さん(石田ひかり)、弓子さん(栗山千明)それぞれの大人たちの言葉がとても優しくて泣けてくるんです。愛情を持ってそういう言葉を掛けてくれているのを感じることができるのが魅力だなと思います」

「ファイトソング」武田梓&岩崎愛奈プロデューサーに聞く! 主演・清原果耶が共感したシーンとは?

――一視聴者としても共感の嵐で、主人公と同世代の脚本家さんが書いているのではと思ってしまうくらいです。ちなみに打ち合わせの時点で、こういうセリフを入れたいと希望を出すことはあるのでしょうか?

武田 「こういうシーンを入れたいとか、この人にこういうことを言わせたいというのは打ち合わせでお伝えするのですが、こちらから一語一句このセリフを入れたいという希望は出していません。基本はお任せしている状態で、いつも素晴らしい台本になって返ってきます。例えば『こういう雰囲気にしたいので、慎吾っぽい言葉で花枝を励ましたい』と伝えると、それっぽいのがしっかり作り込まれて返ってきて。岡田さんがキャラクターをものすごく理解して書いてくださっているんだなと感じますし、本当にありがたい限りです」

――ちなみに、岡田さんが撮影でのアドリブを踏襲して台本に盛り込んでくることはありますか?

武田 「台本執筆も同時に進行しているので、岡田さんが放送を見て面白いと思ったアドリブを加えてくれています。実は第4話で芦田がムササビのまねをして跳ぶ動きは、現場で間宮さんが生み出したものなんです。岡田さんはそれを放送で知って、もう一回やってほしいって思ったみたいで、翌日に上がってきた台本には早速キャンプ場でのムササビシーンが追加されていました(笑)。他にもこのシーンが良かったという感想を毎週くださいます」

「ファイトソング」武田梓&岩崎愛奈プロデューサーに聞く! 主演・清原果耶が共感したシーンとは?

――どのようなシーンに感想が届くのでしょうか?

武田 「第4話の最後に、カフェで花枝に曲を聞かせている途中で芦田が寝ちゃうシーンとか、慎吾のアドリブ歌唱シーンなど、現場で生まれたシーンに関しては特に反応をいただいていると思います。台本にないところの工夫を見つけて褒めてくださいますね」

――そんな岡田さんのリクエストにより、再度ムササビシーンをやることになった間宮さんですが、本人や現場の様子はどうでしたか?

岩崎 「ちょっと照れていたかな(笑)。たぶん間宮さんは意外と照れ屋さんなんだと思います。でも、スベって気まずそうにしている芦田もまるっとかわいいというシーンを、動きや表情も含め間宮さんが上手に作ってくれました。岡田さんをはじめ、スタッフもみんなあのムササビシーンは気に入っています!」

――そうなんですね! 間宮さんといえば、本作で披露された歌声の奇麗さも視聴者にとって驚きだったかと思います。間宮さんのそういったスキルは以前からご存じだったのでしょうか?

武田 「全然知らなかったです。楽器を弾けることは知っていましたし、NHK連続テレビ小説『半分、青い』(2018年)で歌っているのも拝見していたので、多少なりとも歌える方だということは知っていました。ただ芦田は一発屋のミュージシャンで、今は売れていないという役。正直歌唱シーンがなくても成立させることができるというのを前提に話を進めていたのですが、事前に歌声をレコーディングして送っていただいたところ、すごくお上手だったので、これだったらいける!と思いました。それからしっかり歌うシーンを作る方向性に変わりました」

岩崎 「視聴者の方々と同じく、私たちもあの歌声の奇麗さにとても衝撃を受けました。声質の良さに加えて、俳優さんならではの表現力が歌に加わったので、私自身もすごく心が動かされました」

「ファイトソング」武田梓&岩崎愛奈プロデューサーに聞く! 主演・清原果耶が共感したシーンとは?

――TBSの火曜ドラマといえば恋愛ドラマやラブコメと表現されますが、本作ではそれ以外に血のつながりがなくても家族になれるという理想の家族像みたいなものを強く感じて、少し毛色が違うように感じます。最終回までを踏まえて、あらためて「ファイトソング」は“何ドラマ”だと思いますか?

武田 「当初からずっとヒューマンラブコメディーとうたっています。本作では、恋をしなくても生きていける女の子が、自ら積極的に恋愛をしていくというところがいいんですよね。『結婚しなきゃ!』とか『30代手前に恋愛しなきゃ!』という恋のへ義務感を感じている主人公ではないんです。そういう女の子があえて恋をしてみたいと思って、恋愛に飛び込んでいくところが見どころだと思います。だからこそ、恋愛以外の部分もしっかり描かないとその良さが伝わらないですし、恋愛以外にも向き合っている壁があるからこそ“別になくてもいい恋”がすごく輝いて見えるんです。それ全部を呼称しようとすると表現の仕方がなかなか難しくて…(笑)」

――確かに。もともと家族について書きたいという思いはありましたか?

武田 「最初はそこまで家族的なものを盛り込むことは考えていなかったのですが、岡田さんと打ち合わせしていくにつれて、恋愛相手だけではなくて、恋愛以外でも一緒に生きていける人を作れるという部分も描きたいと思うようになりました。主人公が児童養護施設で育ったという背景を入れようという話があがったこともあり、慎吾も凛も直美もそうですが、家族というよりは“一緒に生きていく人”という表現が正しいような気がします。そういう愛ある存在を、恋愛を通してだけではなく、1人の人間として別のところでも作れるということが大切なんです」

岩崎 「武田が言ったように、家族を描きたいというよりは、それぞれを思い合う気持ちを描きたかったんです。恋だけじゃなく、家族としての愛だったり、仲間としての愛だったり、兄弟のように育ってきた仲での愛だったり。その関係性自体を描くというより、登場人物の間に流れている相手を思う気持ちや、大きな意味での“愛”を描いていけたらいいなと思っていました」

――では最後に、最終回に向けての見どころや視聴者へのメッセージをお願いします。

武田 「最後は登場人物はもちろん、見てくださっている視聴者の皆さんが幸せになる結末にしたいと思っていますので、安心してご覧いただければなと思います(笑)。そのしんどさも含めて、大きく心が動くような作品にできるよう最後まで作っていければと思っていますので、お楽しみに!」

岩崎 「それぞれの登場人物に私たちもたくさん愛情を注いで描いてきたので、みんながどんな幸せをつかむのか、どんな未来に向かって歩いていくのかをぜひ見届けてもらえたらうれしいです!」

「ファイトソング」武田梓&岩崎愛奈プロデューサーに聞く! 主演・清原果耶が共感したシーンとは?

最終回(3月15日放送)あらすじ

 エレベーターに閉じ込められた花枝(清原)と芦田(間宮)、そして慎吾(菊池)。花枝がかたくなに守ってきた秘密を知ってしまった芦田は、空白の2年を埋めるかのように必死に花枝に話しかけます。ところが、芦田のある爆弾発言に、花枝は思わず反発。話は途中のまま、気まずい空気だけを残して花枝はその場を去ってしまいます。花枝への変わらぬ思いをあらためて自覚した芦田は、爆弾発言の真意を伝えたいと、あの手この手で花枝にアタックを開始。一方の花枝はなかなか素直に芦田に向き合えず、かたくなに芦田を拒否し続けます。それでも芦田はめげずに、なんとか花枝の心を開くべく、ついに最終手段としてある男に力を貸してほしいと願い出ます。その男とは、あろうことか長年、花枝を思い続け、芦田に「二度と関わるな」と言い放った慎吾で…。

【番組情報】 

「ファイトソング」 
TBS系 
火曜 午後10:00〜10:57 

TBS担当 A・M



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.