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ディーン・フジオカが全身全霊をかけた初企画・プロデュースの主演映画「Pure Japanese」が公開2022/01/26

CULTURE INTERVIEW/ディーン・フジオカ(映画「Pure Japanese」)

 自身が企画・プロデュース・主演を務める映画が間もなく公開されるディーン・フジオカ。自身が演じた役柄に込めた思いや制作過程における苦労、作品の背景にある過去の経験などを赤裸々に明かしてくれた。

── 今回、出資者を説得するプロセスも経たそうですね?

「はい。企画を形にするには、自分の感覚で作りたいものを作るのと違い、相手に伝わるように客観的に伝えられないと意味がありません。そこが最初の大きな難関でした。実は既にいくつか企画を書いていましたが、最初に出資していただくことが決まったのが本作。決まるまでは本当に大変でした」

── それ以降は、スムーズに進んでいきましたか?

「いえ、フェーズごとに難関が待っていました(笑)。撮影に入ると、今度は主に役者として現場に立ちましたが、フィジカル面がめちゃくちゃ大変で…。アクションの撮影は時間が掛かる上、山奥なので低体温症のようになってしまいました。トレーニングを欠かさず続け、厳しい食事制限もしていた上、他のドラマの撮影も重なっていたので本当にキツかったです。ポストプロダクション(撮影後の仕上げ作業)では、もちろん松永大司監督や技術部にお任せしながらも、この作品の言い出しっぺとして最後まで現場をけん引しなければならず、音や色の調整から最終仕上げまで、全身全霊をかけました」

── 演じられた主人公の立石が、単純なヒーローではなく常軌を逸していく設定が斬新でした。

「彼の場合はアイデンティティーが不確かだったゆえに、“日本っぽいもの”にどんどん傾倒していきます。そして彼の暴力衝動とそれとがつながった時、爆発してしまうのです。彼の場合、誰かを傷つけるために暴力を使うのではなく、アユミ(蒔田彩珠)を守るために使います。でも、別の角度から見ると危なくて、手が付けられない狂気のようにも見えるんです。守りたい対象との関係では、とても誠実な思いがあるのですが…」

── 終盤に向かって彼の暴力、そして狂気は激化していきます。

「ピュアという言葉はかわいらしく聞こえますが、純化が行き過ぎると狂気になります。立石がなぜそういう人間になったかは、むしろ謎のままでもよくて、何かのきっかけで暴力が爆発する、その仕掛けが欲しかったんです。相いれない概念がぶつかり合い、不条理の中でひねりつぶされ、藻くずとなって消えていく…。立石は、いけにえのように見えたらいいなと思って作ったキャラクターですね」

── 立石は、アユミの祖父の死因に関しても持論を信じ込んでいますよね?

「はい。そんな立石はうそつきに見えるのですが、立石自身はうそをついていると思っていない気がします。言うなれば虚言癖ですが、立石はそういう言動を取ることで、生きるための調整をしているというか、つじつまを合わせているというか…。彼が傾倒する“日本っぽさ=Pure Japanese”という概念を突き詰めるために、編集段階では脚本を練り直す勢いで、劇中にさらにナレーションを入れて、重層的に仕上げました」

── ソードアクションをはじめとした数々のアクション、バイオレンスが散りばめられていますが、影響を受けたり参考にした作品はありますか?

「サンプリングとして取り上げた作品はパッと思い付きませんが、これまで見たすべてが糧になっています。特に、香港映画のアクションは世界トップクラスでしたし、影響を受けているのは間違いありません。香港で活動していた頃、俳優としてだけでなく、ずっと製作にも立ち会わせていただいたのですが、まるでフィルムメーカーになるための集中キャンプみたいでした(笑)。僕のデビュー作『八月の物語』(2005年)のヤンヤン・マク監督は、もともとウォン・カーウァイ監督作品の助監督で、チームがカーウァイ組でした。僕の美的感覚や世界観の構築、空気の作り方は香港映画のDNAでできていますね」

── その経験が今回も生かされたと感じますか?

「そうですね。僕がアクション映画に少しだけ不満を感じるのは、“アクション映画然”とし過ぎている作品が多いこと。香港にいた頃、いろんな監督から『見ろ』と言われたのがジム・ジャームッシュ、ヴィム・ヴェンダース、クシシュトフ・キェシロフスキ監督らの映画でした。なので、今回、彼らの作品の持つポエティックな要素を、暴力がテーマのアクション映画にも入れられないかと思いながら、配合を考えた部分もありました」

【MY『Pureな気持ちになる』MUSIC】

「『兎追いしかの山~』で始まる『故郷(ふるさと)』を聴くと、やっぱり自分の故郷である福島を思い出してピュアな気持ちになる気がします。『故郷(ふるさと)』や『赤とんぼ』といった童謡は、まさしく、ウルトラマンでいうところのM78星雲のような(笑)、自分の原点とも言える子ども時代を思い出させてくれますね。童心に返れます。故郷の福島では、幼少期よく祖父と川で釣りをしたのを覚えています。あまりに幼過ぎて、祖父とどんな会話をしたのか、まったく思い出せませんが…(笑)。多分、魚捕りに夢中になって、話なんてするどころじゃなかったんじゃないかな。山にも家族とよく遊びに出掛けました。活発な子どもだったのかは自分でもよく分かりませんが、外で遊ぶことは大好きでした。それと、自分の曲になってしまって恐縮ですが、故郷の福島を思い出しながら作った『Fukushima』という曲が、それこそ子どもの時に見た故郷の情景や子ども心を思い出させてくれます」

【プロフィール】

ディーン・フジオカ 
1980年8月19日、福島県生まれ。獅子座。A型。3rdアルバム「Transmute」が発売中。主演映画「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」が6月17日公開。

【作品情報】

CULTURE INTERVIEW/映画「Pure Japanese」

映画「Pure Japanese」 
1月28日公開

アクション俳優の立石(ディーン)は、訳あって日光大江戸村の忍者ショーで役者ではなく効果音を担当している。地元のヤクザに嫌がらせを受けている女子高生・アユミ(蒔田)を助けた立石に、アユミは懐くようになり…。

監督/松永大司 脚本/小林達夫  
出演/ディーン・フジオカ 蒔田彩珠 渡辺哲 金子大地 坂口征夫 村上淳 嶋田久作 別所哲也 ほか

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取材・文/折田千鶴子 撮影/トヨダリョウ 
ヘア&メーク/小林雄美 スタイリング/渡辺慎也(Koa Hole inc) 衣装協力/NIPOALOHA、ETHOSENSE



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