「今夜もシリアルキラーと待ち合わせ」坂本監督の演出論と情熱(後編)「あかりサーチ、一本!」2026/08/07 12:00

TVガイドWeb特派記者の佐藤あかりです。カンテレ・フジテレビ系のドラマ「今夜もシリアルキラーと待ち合わせ」(水曜午後11:00)の監督をされている坂本栄隆監督へのロングインタビュー後編をお届けします。作品の舞台裏からキャストへの思い、そして俳優のお芝居について監督が感じていることを皆さんにお届けしたいと思います。インタビューの最後にはドラマの秘密に迫るヒントも教えていただきました! どうぞじっくりお楽しみくださいね。
それではいきましょう!
「あかりサーチ、一本!」
監督としてのこだわり その中で軸にしてきたもの

――過去作から続いている監督のこだわりや共通する軸はありますか?
「全パートにこだわることかな。男性の監督だと、中には衣装やメイクをあまり気にしない方もいるけど、僕は役者のメイクが好きだし、それによって表情がよく見えたりするし、衣装も同じくです。照明や美術なんかもかなりこだわりたい。カメラに関しても写真学科を出ているので、絵として生理的に気持ち悪いものは嫌。だから美術打ち合わせの時に、ほぼ全パートに渡ってきちんと要望を伝えるようにしています」
――今回の作品の第1話でも、そのこだわりをさまざまな場面で感じました。冒頭の空気感や水槽の部屋の照明、シリアルキラーが後ろ向きに下がって振り返るシーンも衝撃で、とても印象に残っています。
「あれはマイケル・ジャクソンがモチーフなんだよね。『アオッ!』って言ったでしょ(笑)。本当はムーンウォークもしたかったんだけど、さすがにやりすぎかなと思って「アオッ!」だけにしました(笑)。シリアルキラーにとって最高のトランス状態を表現した演出で、後ろ向きに下がってきて振り向く方が衝撃的かなと思って作った映像だね。こだわりというか、僕の遊び心だけどね」
――とても面白かったです(笑)。ほかにも演出でこだわったポイントはありますか?
「瞬間的な映像が好きなんだよね。例えば第1話。佐藤さんが出演したティッシュ配りのシーンのあとに、ヒナタが振り返るところは、ハイスピードを使ったりCMのように風を吹かせたり、こだわって撮影しました。あとは台本から膨らませて、リアル感と遊びをミックスさせて、今の視聴者に届くように意識しています」
――台本から膨らませて演出することはよくあることですか?
「もちろん脚本は大切なもの。でも映像化していくにあたって、決して悪い意味じゃなくて『取り扱い説明書』って捉え方をした方がいい時もあると思っています。守るべきルールは大事にしながらも、監督として脚本に足したり引いたりはやっぱり出てくるからね」
――なるほど。では原作を最初に読んだ時の感想を教えてください。
「原作にはちょっとエッチなシーンがありますよね。これは誤解しないでほしいんだけど、男性として喜んでいるわけではなくて、その要素がストーリーを引っ張っていくフックになっていると思っていて。男女のニュアンスは作品において逃げられない部分なので、ヒナタにも原作通りミニスカートをはいてもらったりして“リアルな魅力”として表現してます」
大切にしているポリシー「長い物には巻かれにいこう」

――監督が作品作りの中でブレずに大切にしているポリシーはありますか?
「極端にいうと『長いものには巻かれにいこう』の考えかな」
――どういうことですか?
「コツみたいなものかな。今の時代は特にコンプライアンスも大事だし、この業界のルールや枠組みの中で、それをどうやってかいくぐっていくかってことだね。だけど、そつないことしかしないっていうのも面白味を欠くっていうのはあるからね。最初の時点で、みんなに『は?』って思われるような極端な提案をしておいて、本命として少し弱めた案を出して通すという攻め方をよくしていますよ」
――難しい時代だからこそ、大切なことですね。演出といえば2話の中華料理店でいきなりニワトリが飛び出してくるシーンはびっくりしました。制作発表で横山裕(SUPER EIGHT)さんも「ぶっとんだ演出」っておっしゃっていましたけど、あれは監督のこだわりだったそうですね。
「小さな頃にヒヨコを育てていたのでニワトリにはすごく思い入れがあって。こだわって本物のニワトリを使って撮影したんだよね」
――疲れてしまったニワトリ待ちが起きたとか(笑)。制作発表のニュースは話題になりましたね。私も笑いました。
出演者への思い 佐藤あかりの大貫役の採点は?

――横山さんや関水渚さん、キャストの皆さんとお仕事されて印象的だったことはありますか?
「横山くんとは何度か一緒に仕事をしたことがあるけど、あれだけ多忙だから、自分のリズムもしっかり大事にしながら、それでいて現場をまとめるのがとてもうまいと思います。いつもさりげなく現場を盛り上げてくれてるよね。ヒナタ役の関水渚さんは初めてのお仕事だけど、なんというか、みんなにこびない凛とした立ち居振る舞いが印象的だね。それって実はとても難しいことなんだけど、それが自然とお芝居に出ていてすごく良いと思っています」
――ちなみに今回、私が演じさせていただいた「大貫」という役についての一言いただけますか?
「そうだね、点数をつけるなら80点!」
――80点! 残りの20点はなにが足りませんでしたか?

「僕の80点は高いからね。あえて言うなら横山さんにほんの少し遠慮しちゃった距離感かな。お互いに話に食い付いた瞬間はもう少しガバッと近寄っても良かったかもしれないね。でも磯貝とヒナタを結び付ける本当に大切にしていたシーンだったから、うまく演じてもらえてすごく良かったと思っていますよ」
――勉強になります! 次回はもっと頑張ります!
監督と役者の芝居の捉え方 そして監督のプライベート

――役者がお芝居を学んでいく上で、大切な着目点はどこだと思いますか?
「セリフをうまく言おうとしたりするのではなく、自分なりに『この役はこうだ』と役を理解して堂々と演じる強みを持つことかな。現場にのまれることなく、セリフがなかったとしても、その場所に存在している雰囲気が大切だと思うよ」
――ありがとうございます。心に留めておきます。プライベートでリラックスする時間やハマっていることはありますか?
「プライベートな時間、仕事の時間ってあまり意識的な切り替えは考えてないかな。仕事は戦争みたいなものなので(笑)。でもお風呂に入っている時にアイデアが浮かぶようになった。これね、最近分かったんだけど、あれってお風呂でリラックスしているからじゃなくて、ちょっと湯船で身体が浮いているからなんだと気付いたんだよ!」
――浮いている感じですか! 私、大分県出身なので温泉には詳しいんです! 今度、浮かぶイメージの入浴剤を探しておきます。ほかになにか趣味はありますか?
「麻雀は好きだね」
――麻雀……。オセロとか将棋とか? チェスみたいなやつですか?
「……全然違う(笑)」
――すみません…。詳しくなくて。
「あの狭い台を4人で囲んで、向かい合って長い時間を一緒に過ごすっていうのが、なにか深く話せて相手のことも分かる感じがするんだよね。あの独特の空間が好きです」
――麻雀、調べておきます。では次にこの連載の定番コーナー、「1問一本」という即興質問をお願いします。
「はいどうぞ」
――撮影現場に必ず持っていくものは?
「タバコ」
――監督以外で就いてみたい職業は?
「うーん……。木こり、漁師、探偵」
――意外な答え!
「なぜか全部自信がある」
――マヨネーズとしょうゆ、どちらを信頼していますか?
「両方信頼してます」
――「シリアルキラーと待ち合わせ」の登場人物で1日入れ替わるなら?
「ヒナタ。特殊能力があるから」
――家庭菜園をするなら何を育てたい?
「キウイ」
――私もキウイ大好きです!「1問一本」ありがとうございました!
視聴者の皆さんへ 監督からの謎解きのヒントが!
――最後に、TVガイドWebの読者の皆さん、ドラマの視聴者の皆さんに向けて、ここに注目すると、さらにドラマを楽しめるというポイントを教えてください。
「これね、結構あるんですよ。まず中華料理店の店主さん。ピーパーさんっていうんだけど彼をよく見ておくこと。それから実はオープニング映像の中にもかなり重要なヒントが隠れています。あとはヒナタがシリアルキラーの手を触った後に出てくる『赤い部屋』のシーンですけど、あれも数字が出てくるところが印象的だけど、それ以外もよく見ておくといいですよ。これはたぶんまだ誰も気付いていないと思います。違った発見があるはずです」
――え! めちゃくちゃ重要なキーワードじゃないですか! これ記事にして大丈夫ですか?
「はい(笑)。楽しんでください!」
――楽しみにしています! 今日はたくさん楽しいお話をありがとうございました!
あかりサーチ後記

2週に渡ってお届けした坂本監督のインタビュー、いかがでしたか? 今回のお話で特に印象に残ったことは「長いものには巻かれにいこう」という言葉でした。お話を聞けば聞くほど、その言葉の本当の意味は全く違っていました。守るべきルールやコンプライアンスはきちんと守る。その上で、自分が表現したいものを実現するために、あえて最初は大胆な提案をして、譲らないところを見極めながら、自分の思いを形にしていく。その姿勢は決して器用に立ち回ることではなく、むしろ作品を守るための監督の強さなんだと感じました。
監督のお話には、そんな「柔らかさ」と「芯の強さ」が同居していて、そのバランスこそが、たくさんの作品を生み出してきた坂本監督の魅力だと感じました。そして、役者として参加させていただいた私にとっても、今回のインタビューは特別な時間でした。芝居はうまい下手ではなく、自分が思う役を堂々と生きること。監督からいただいた言葉は、作品の話を超えて、これから役者として歩んでいく私にとって、大切な指針になりました。
そして何より! まだ連載中の原作に対して、ドラマオリジナルの最終回を描くこともこの作品の話題の一つですよね。その考察の大ヒントとなるキーワードも教えていただけて、このドラマのファンとしてはこれはとっても大きなサプライズでした! もう一度、ドラマをくまなくチェックするしかありません! 皆さんも一緒に考察しましょうね!
それでは最後にもう一度♪
「あかりサーチ、一本!」
【プロフィール】

坂本栄隆(さかもと はるたか)
1972年8月17日生まれ。テレビドラマ演出家。「鬼女の棲む家」(2026年中京テレビ/日本テレビ)、「地獄は善意で出来ている」(2025年カンテレ/フジテレビ系)、「ブラック・ファミリア~新藤家の復讐~」(2023年読売テレビ/日本テレビ系)、「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う」(2020年読売テレビ/日本テレビ系)など多数の話題作を演出。
佐藤あかり(さとう あかり)

1996年2月23日生まれ。大分県出身。特技は剣道(3段)。インターハイ3位、全国大会優秀選手賞受賞。渡辺正行さん率いる剣道普及番組「剣道まっしぐら!」(YouTube/2020年~配信中)にレギュラー出演中。雑誌「B.L.T.」に「日本一かわいい剣道女子」としてグラビアに登場以来、剣道タレントとして注目を浴びる。B.L.T.Webにて「あかりくらぶ」連載中。
【Information】
「あかりサーチ、一本!」のスペシャル動画が公開中! インタビュートークに加えて、即興質問に5秒で答える「一問一本!」など見どころいっぱいです。YouTube「東京ニュース通信社チャンネル」でお楽しみください。
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