「今夜もシリアルキラーと待ち合わせ」坂本監督の演出論と情熱(前編)「あかりサーチ、一本!」2026/07/31 12:00

TVガイドWeb特派記者の佐藤あかりです。連載15回目の今日は私が1話にゲスト出演したカンテレ・フジテレビ系のドラマ「今夜もシリアルキラーと待ち合わせ」(水曜午後11:00)の監督をされている坂本栄隆監督へのロングインタビューをお届けします。連続殺人犯を追う本格サスペンスドラマでありながら、くすっと笑える要素も織り交ぜられているこの作品のバランスが最高で、本当に大好きなんです。これはもう監督に直撃するしかない! ということで本番直前の坂本監督に突撃してきました。インタビューの最後にはとんでもない秘密のキーワードも教えてもらっちゃいました! 考察班は大注目です。どうぞお楽しみくださいね。
それではいきましょう!
「あかりサーチ、一本!」
監督を目指したきっかけは少年時代に見たジャッキー・チェンの映画

――第1話の撮影ではお世話になりました! 今日はTVガイドWebの特派記者としてインタビューさせていただきます。よろしくお願いします。
「お帰りなさい! 連載で作品をたくさん取り上げてくれてありがとう。お願いします」
――まずは監督を目指そうと思った理由やきっかけになった作品などがあれば教えてください。
「子どもの頃にジャッキー・チェンやブルース・リーの映画が大好きだったんだよね。映画館には頻繁には行けなかったけど、テレビ放送や再放送をいつも楽しみに見ていてね。で、ジャッキー・チェンの映画って当時はエンドロールに必ずNGシーン集がついていたんだよ。それが『なんか楽しそうだなぁ』って思ったのがこの仕事に興味を持ったきっかけだね」
――ジャッキー・チェンさんのNG集ですか!?
「佐藤さんの年代じゃ知らないか。ジャッキーって命がけのスタントをたくさんするんだけど、その失敗シーンも隠さずに見せてくれる。で、高い塔から落ちたりした時にスタッフがバーッと駆け寄ってくるんだよね。もちろんジャッキーも大変だけど、それを見守ってるスタッフも命がけみたいな感じで。それを見て、本編よりNG集の方を楽しみにしていた節がある。これって僕だけじゃないと思うんだけどね。とにかく出演者だけじゃなく、スタッフも真剣に支えているんだっていうのがすごく伝わってきて、あの気持ちがこの業界に憧れを持ったきっかけだったと思う」


――すごく新鮮ですてきな理由ですね。あれ、なんだか監督がジャッキー・チェンに見えてきました。
「ちょっとやめてもらっていい?(笑)。実は『今夜もシリアルキラーと待ち合わせ』にジャッキーちゃんに出てもらったんだよ」
――えっ!?
「ものまねタレントのジャッキーちゃんね。すごく似ていたよ(笑)。どこで出てくるかは今後のお楽しみということで……」
――そういうことですか! ビックリしました!
「(笑)。ほかには小学校の低学年くらいの頃は2時間ドラマを見るのも好きだったね。サスペンスや殺人事件を見るのが楽しみで、誰が犯人かっていうのをノートに考察して書いていたんだよ。『この人はこういう理由で怪しい』とかCMの間に真剣に謎解きをして、犯人を当てるのが楽しみだったな」
キャリアの転機は? 「助監督時代」の過酷な教訓

――「ブラック・ファミリア~新藤家の復讐~」(2023年読売テレビ・日本テレビ系)、「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う」(2020年読売テレビ・日本テレビ系)、今年だと「鬼女の棲む家」(中京テレビ・日本テレビ系)など、たくさんの話題作の監督をされています。ここに至るまでのキャリアの中で、大きな転機となった出来事はありますか?
「これ難しくてね。今と違って、昔の助監督って結構ピエロ的な仕事も大事だったんだよ。もちろんしっかり仕事をこなすのが一番なんだけど、時には現場を盛り上げるために笑わせないといけない場面もある。僕がサード(助監督の3番手)だった頃とかは、お花見の時期になるとお昼休憩で出し物をやったり、地方ロケに行くと夜の食事で出し物をしたりしてたね」
――そうなんですね。私はまだ俳優のキャリアが浅いので、出し物は知りませんでした。
「いやいや、昔の話だから(笑)。クランクアップの時の打ち上げなんかもう大変だよ。演出部が中心になって出し物をするんだけど本気でやっていたから(笑)。2日くらい徹夜して本(脚本)を書いて、プロデューサーや演出部でしっかり芝居をつけてね。前日は1日リハーサルをして。ダンスしながら登場することが多かったから、踊りの先生を呼んで本格的な振り付けを覚えて(笑)。大変だったけどそれでウケると、すごくうれしいわけですよ。そういうつらさと楽しさの繰り返しで『真面目にやるところ』と『笑わせるところ』を学んだのは大きいかもしれないな。それが体に染み付いているね」
――リハーサルまで!? ドラマの本番みたいな緊張感ですね。
「同じくらい本気。全員で一生懸命仕事をしてきて、その打ち上げだからね。『つまらないものは見せられない』って勝手にプレッシャーを感じていた。『ドラマより面白いね』って言われないと嫌だったから、みんなで真剣にやっていたよ(笑)」
――今の現場でも、助監督さんはそういった出し物係をされているんですか?
「今はさすがにもうないからね。みんなでお仕事に集中して楽しくいい作品を作っています」
――でもすごいですね。それだけで現場の雰囲気が変わりそうです。
「それが当たり前の時代だったから。クランクインしてすぐに『クランクアップの出し物は何やるの?』って聞かれたりね(笑)。なので待ち時間には似ていないモノマネを必死で練習したりしていた。もちろん大変だったけど、そういうノリも含めて、ドラマに育ててもらったのかもしれないなって思っています。今はコンプライアンスも含めてなかなかそんなやり方もできないけど、誰が何を考えているかは何となく分かるようになってきたかな」
スタッフを守るために、現場に必要な厳しさ

――この現場が温かい理由は、坂本監督のこれまでの経験や観察力が生きているんですね。
「でも事故は絶対に防がないといけないからね。温かい現場って言っていただけるのはうれしいけれど、それは『緩い』ではダメ。ちゃんと厳しいところもないといけない。それはスタッフを守るためでもあるから」
――とても大切なことだと思います。
「よくサッカーに例えるんだけどね。罵倒するのはダメだけど、味方同士でなら必ずしもそうじゃないケースもあると思う。例えば試合中とかに連携ミスをして決定的なピンチに陥った瞬間とかに、いちいち丁寧な言葉で会話はしてないよね。ちょっと乱暴な解釈なのは分かっているけど、『仲間を守るため』だから、時には厳しいことも教えたり、伝えていかなきゃいけないなと思っています」
――それでも監督の現場はいつ来てもスタッフの笑顔が絶えません。伸び伸びと仕事に取り組めている中で厳しさがある環境はすてきです。では改めて、作品として転機になったものはありますか?

「この作品が転機ですって一つに絞るのは難しいね。自分なりに助監督から監督へ、ゆっくり一つずつ作品と向き合ってきたから。僕ってざっくりした人だと思われがちだけど、実はAB型なので細かいところは細かい。なので真剣な部分と楽しむ部分はメリハリをつけてやってこれたと思います」
――その経験が現在の監督業に生かされていると感じる部分はありますか?
「視野は広くなったと思いますよ。嫌な意味じゃなくて、進行のせいで『あ、役者さんがちょっとやりづらそうにしてるな』、とか『あ、スタッフが疲れているな』っていうのとか。動物的な勘で分かるようになったかもしれない(笑)」
あかりサーチ後記

前編はここまでです。インタビューで印象的だったことは「温かい」と「緩い」は違うという言葉でした。坂本監督がおっしゃる厳しさは、誰かを否定するものではなく、事故を防ぎ、仲間を守り、作品を守るために必要なもの。その根底には、人への深い愛情と責任感があるのだと感じました。俳優として撮影に参加した日も、このインタビューの日も、坂本監督は現場全体をよく見ながら、多くのスタッフの中心で締めるところはしっかり締め、でも、ふと何げない一言でスタッフさんやキャストの笑顔を引き出し、空気を和らげていました。その絶妙なバランス感覚があるからこそ、みんなが同じ方向を向き、安心して作品づくりに向き合えるのだと思いました。
ジャッキー・チェン作品との出会いをきっかけにこの世界を志した一人の少年が、今ではたくさんの人の心を動かす作品を生み出していて。そして、その作品に心を動かされた誰かが、また新たな夢を抱き、未来のクリエーターになっていく。人の情熱は、作品という形を借りて人から人へと受け継がれ、やがて大きなうねりになっていく。そんなエンターテインメントの持つ力を改めて感じたインタビューでした。
さて、来週の後編では「今夜もシリアルキラーと待ち合わせ」の監督から見た舞台裏や制作秘話をお伝えします。そして最初にお伝えした通り、この作品の考察の大ヒントになるキーワードを監督から教えてもらっちゃいましたので、皆さんどうぞ楽しみにしていてくださいね!
それでは最後にもう一度♪
「あかりサーチ、一本!」
【プロフィール】

坂本栄隆(さかもと はるたか)
1972年8月17日生まれ。テレビドラマ演出家。「鬼女の棲む家」(2026年中京テレビ/日本テレビ)、「地獄は善意で出来ている」(2025年関西テレビ/フジテレビ系)、「ブラック・ファミリア~新藤家の復讐~」(2023年読売テレビ/日本テレビ系)、「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う」(2020年読売テレビ/日本テレビ系)など多数の話題作を演出。

佐藤あかり(さとう あかり)
1996年2月23日生まれ。大分県出身。特技は剣道(3段)。インターハイ3位、全国大会優秀選手賞受賞。渡辺正行さん率いる剣道普及番組「剣道まっしぐら!」(YouTube/2020年~配信中)にレギュラー出演中。雑誌「B.L.T.」に「日本一かわいい剣道女子」としてグラビアに登場以来、剣道タレントとして注目を浴びる。B.L.T.Webにて「あかりくらぶ」連載中。
【Information】
「あかりサーチ、一本!」のスペシャル動画が公開中! インタビュートークに加えて、即興質問に5秒で答える「一問一本!」など見どころいっぱいです。YouTube「東京ニュース通信社チャンネル」でお楽しみください。
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