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「わたし、定時で帰ります。」「きのう何食べた?」ほかに見るドラマの多様性 ~録画視聴データから見た4月クールドラマ分析~2019/07/30

 今回は、4~6月の連続ドラマを視聴者たちがどう見たのか、どう楽しんだのかを、関東約36万台超の東芝レグザ録画視聴データを基に毎週発表している録画視聴ランキングから探っていきたいと思う。さまざまなタイプのドラマが話題を集めた4月クール。世帯視聴率だけでは分からないドラマファンの視聴動向が見えてくる。

 まずは4~6月クールに放送された地上波の連続ドラマを、各放送回単位で集計したのが以下のランキングである(ポイントは1位を100とした場合の割合を表す。以下同)。

地上波春ドラマ放送回ランキング(上位50位)

※データ集計期間:2019年4月2日~7月5日放送分(以下同)

 この4月クールは、TBSで放送された吉高由里子主演の「わたし、定時で帰ります。」が放送された全10話すべての週の「週間録画視聴ランキング」でトップを獲得した。従って放送回ランキングも当然ながら同作が上位を独占、と思いきや、2位にフジテレビ月9「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」の最終回が飛び込んできている。5位にはTBS「インハンド」の第8話もランクインしており、上位は僅差の接戦だったことが分かる。「わたし、定時で帰ります。」が、最終回に向かって上昇曲線を描いていくという“勝者の王道パターン”ではなく、初回から最終回までほぼ同ポイントで推移するという異例の作品だったことが混戦の原因であろう。想定された視聴者には大きな支持を得たが、新たな視聴者層を獲得するには至らなかったというところだろうか。その意味でクライマックスに向けて巧みな展開で支持者を増やしていった「ラジエーションハウス」や「インハンド」の健闘は称えられるべきだが、「わたし、定時~」には一歩及ばなかった。適材適所の好キャスティングに加え、最終的に働き方にも恋にも広い回答を用意して幕を閉じた「わたし、定時で~」の優しさと懐の深さが、多くの視聴者に受け入れられたようだ。

 続いて、4月クール各ドラマの録画視聴ポイントの全話平均を算出して数値の高い順に並べた平均録画視聴ポイントランキングを見てみよう(放送継続中の日本テレビ「あなたの番です」とテレビ朝日「科捜研の女」は、6月放送分までの平均ポイントで算出している)。

春ドラマ平均値ランキング

「わたし、定時で帰ります。」「ラジエーションハウス」「インハンド」が順当にベスト3を占める。録画ポイントが高かったこれら3作は世帯視聴率でも9~10%前後をキープしており、4月クールの勝ち組ドラマと言える。そこで、いわば第2グループといえる4位以下を見てみると、世帯視聴率で上位を占める「緊急取調室」や「集団左遷!!」を尻目に、「俺のスカート、どこいった?」「あなたの番です」「白衣の戦士!」といった、日本テレビのドラマ群が健闘しているのが分かる。ドラマに関しては必ずしも世帯視聴率は狙わない(=若年層の個人視聴率に特化する)との方針に転換したとされる日本テレビの戦略が効果を発揮し始めていることの証左の一つと言えるかもしれない。逆に、世帯視聴率の平均が12%を超えるテレビ朝日の高視聴率ドラマ「特捜9」と「科捜研の女」の録画視聴ポイントは、同じテレビ朝日の深夜ドラマ「東京独身男子」や「家政夫のミタゾノ」の半分ほどしかない。ドラマのタイプが違うので一概には言えないが、世帯視聴率による評価はあくまで一面的な評価であり、さまざまな支持のされ方、視聴のされ方があるのだということは改めて強調しておきたい。

 続いて「最終回継続率(最終回のポイントを初回のポイントで割った割合)」による分析を行ってみる。初回より最終回のポイントが高い(=最終回継続率が高い)ということは作品内容に対する満足度が高い傾向にあるのではないかという仮説に基づき、各ドラマについての満足度を検証する試みだ。4月クールの「最終回継続率」のランキングは以下のようになった。

春ドラマ継続率ランキング

 100%を超えたドラマは全部で10本と少々少なめだったが、テレビ東京の「ドラマ24」枠の「きのう何食べた?」が首位に立つという結果になった。もともと、よしながふみの原作コミックが人気だったことに加え、西島秀俊&内野聖陽という奇跡のキャスティングが実現し当初から注目を集めていたが、次第にドラマ独自の魅力が広がりポイントも上昇していった。原作同様調理のシーンに多くの時間が割かれ、レシピドラマとしても十分機能したが、何よりゲイのカップルである主人公2人のたたずまいが見事に3次元化されていたことが、ファンにはたまらなくうれしかったに違いない。そして2位にはNHKの「よるドラ」枠で放送された「腐女子、うっかりゲイに告る。」がランクインした。「きのう何食べた?」では2人のベテラン俳優が繊細に丁寧に大人のゲイの日常を表現していたが、このドラマでは、金子大地、藤野涼子の若い二人がヒリヒリするような痛みと切実さとで、LGBTの現実に立ち向かう。回を追うごとに彼らの現在進行形の痛みが胸を締め付ける。作中にクイーンの楽曲がふんだんに使われていたことも話題となり、SNSなどでも大きな盛り上がりを見せた。さまざまなタイプのドラマがしのぎを削り合った今クールのドラマ群を象徴する、納得の継続率第2位である。

 小粒ながら、このクールもたくさんの魅力的なドラマに出合うことができた。今後も、楽しいテレビの見方をご紹介していくのでお楽しみに!

Text=武内朗
データ提供:東芝映像ソリューション株式会社

【ご注意】

・ランキングデータは、関東1都6県の東芝製テレビのユーザーから許諾を頂いた約36万台の視聴情報を、インターネットTVガイドが集計し、ランキング形式にまとめたものです。
・ポイント数は1位を100とした場合の比率となります。

武内朗(たけうちあきら)

TVアナリスト。東京ニュース通信社にて「TVガイド」「TVBros.」編集長ほかを歴任。現在株式会社ニュース企画代表。好きな言葉は博覧強記。3大フェイバリットコンテンツは、ビートルズ・ナイアガラ・魔法少女まどか☆マギカ。

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