リリー・フランキー&斎藤工「ペンション・恋は桃色」1~3を振り返り! 人生の笑いと切なさと温かさ2026/07/28 18:00

東京の外れの外れにある、少し古いペンション「恋は桃色」。テキトーなオーナー・シロウ(リリー・フランキー)と、しっかり者の娘・ハル(伊藤沙莉)、ひょんなことから住み込みで働くことになったワケあり青年・ヨシオ(斎藤工)を中心に、訪れる“ちょっと訳あり”な人々との日々を描いてきた「ペンション・恋は桃色」が、season4となって帰ってくる。
2020年の深夜に始まった本シリーズの魅力は、細野晴臣の名曲「恋は桃色」が流れる穏やかな時間の中で、登場人物たちの関係が少しずつ、しかし確実に移ろっていくところにある。何げない雑談の中に本音がぽろりとこぼれ、ふざけたやりとりの向こうに、恋、家族、老い、別れ、自立といった人生の機微がにじむ。台本とアドリブの境目が分からなくなるような生々しさこそ、シリーズを重ねても変わらない「恋は桃色」らしさだ。7月31日にFODで始まるseason4の一挙配信を前に、これまでの見どころを振り返っておきたい。
振られても、また恋する……シロウと「家族」の物語
妻に逃げられた過去を持ち、ほれっぽくてちょっとスケベなシロウは、シリーズを通して恋をしては振られ続けてきた。season1では宿泊客のカズハ(筧美和子)や施設職員のマキ(三倉茉奈)と付き合うも実らず。season2では、逃亡してきた大物歌手・サエキ(関智一)を連れ戻しに来たマネジャー・クドウ(剛力彩芽)にほだされる。

そしてseason3で心を奪われたのが、焼き芋店で知り合った色っぽい女性・アカネ(MEGUMI)。「カレシ」と紹介されて舞い上がるシロウだったが、アカネの側には別の思惑もあったようで、その心は必ずしもシロウだけに向いていなかった。相手の事情など知る由もなく本気で浮かれるシロウの姿は、おかしくも、どこか切ない。

だが、この物語の底に流れているのは、笑いよりも深い「家族」のテーマだ。season1の終盤では、施設で暮らすシロウの父・キヨシ(細野晴臣)の死が描かれる。肩の力が抜けたやりとりで進んできた物語に、親を見送ること、残された家族がどう日常を続けていくのかという問いが差し込まれ、作品の奥行きは一気に深まった。取り乱すハルのそばにヨシオがいたことも忘れがたい。
さらにseason2の終盤、シロウはペンションをたたむことをハルに告げる。寂れたペンションを舞台にした物語でありながら、その場所さえも永遠ではないと突きつけられる。この場所を誰が、どう守っていくのか。season4にも続く、大きな宿題だ。
ハルとヨシオ。まだ名前のつかない距離
住み込みで働き始めた当初のヨシオは、イケメンなのに人付き合いが苦手で、話が長くて気難しい、どこか頼りない青年だった。テキトーなシロウに振り回されながらこの場所になじみ、巻き込まれた他人はいつしか家族に近い存在になっていく。ペンションをテキパキ切り盛りするハルとの間には「付き合っちゃえば?」という周囲の空気が漂うものの、当人たちは兄妹のような距離を保ってきた。そんな中、season2でヒカリ(山口智子)から「ヨシオくんってハルのこと好きでしょ」と指摘されたヨシオは、平静を装いつつも、その言葉を意識せずにはいられなくなる。

そして関係が大きく揺れるのが、season3だ。ハルがSNSのファンアカウントで知り合ったケイタ(稲垣吾郎)が突然ペンションに現れる。好きなキャラクターも、デザートも、靴下の柄まで一緒。運命を感じて舞い上がるハルを、ヨシオは複雑な面持ちで見ている。それはもう兄の顔ではなく、嫉妬をにじませたまなざしだった。ハルが熱を出せば献身的に付き添い、ただそばにいるだけの人から、ハルのために動く人へと変わっていく。恋なのか、家族のような情なのか、仕事仲間の絆なのか。名前のつかないまま進んできた2人の関係の先がどうなるのかも、season4でのポイントとなりそうだ。

次は誰が来る? ペンションを彩る珍客たち
誰も彼も受け入れてしまうシロウのもとには、どこかネジの飛んだ客が次々とやって来る。season1のカズハや、season3まで毎回登場する常連(大水洋介/ラバーガール)に始まり、season2ではサエキとクドウの珍道中がペンションをかき回した。

中でもシリーズの鍵を握るのが、season2から登場する自由奔放な女性・ヒカリだ。ひと夏の台風のように突風とともに現れるヒカリは、実はハルと浅からぬ縁を持つ人物。その存在は、ハルの前に「東京で暮らす」という新たな選択肢を差し出し、ペンションという居場所と彼女の人生を大きく揺さぶった。

season3では亡きキヨシに線香を手向けにきた叔父・タカシ(鈴木慶一)も加わった。彼らはただ騒ぎを起こすだけのゲストではない。客たちの恋や孤独、身勝手さや不器用さは、シロウ、ハル、ヨシオの隠れた感情をあぶり出す“鏡”でもある。season4のドアをたたくのは、いったいどんな珍客だろうか。
居酒屋で交わす、オチのないおしゃべり
ペンションの外にも、このシリーズならではのいとおしい時間がある。ヨシオが行きつけの居酒屋で友人たちと過ごす、脱力のひとときだ。毎回顔をそろえるJOY演じる友人を軸に、これまで石田たくみ、竹内まなぶ(カミナリ)、眉村ちあき、益子卓郎(U字工事)、岩崎う大(かもめんたる)ら、さまざまな面々が卓を囲んできた。

ペンションで起きた出来事とどこかリンクした話題をヨシオが切り出すと、うんちくがありそうでなさそうな、オチがつくのかつかないのか分からないおしゃべりが続く。収拾がつかなくなってくると、ヨシオがおもむろに「トイレ行ってくる」と席を立つ。この間の外し方が、たまらなくおかしい。
しかもseasonを追うごとに、ここで語られる言葉が“ヨシオ”のものなのか、演じる斎藤工自身のものなのか、境目が溶けていく。役と俳優が一つに混じり合っていくような感覚は、即興を積み重ねてきたこのドラマだからこそ。物語が大きく動く場面ではないけれど、ヨシオの素顔がのぞく場面だ。このさりげない時間も、作品の大切な魅力となっている。
そして、season4へ――
season1で家族のような関係が芽生え、season2でペンションの未来が揺らぎ、season3ではハルとヨシオの関係が動き出した。のんびりして見えて、実は少しずつ確実に変わってきた「ペンション・恋は桃色」の世界。
人生のどこかで立ち止まった人たちを何となく受け入れながら、シロウ、ハル、ヨシオはまた、ささやかで忘れがたい時間を紡いでいく。切なくて、温かくて、少しおかしい。そんな「恋は桃色」のひとときに、season4でも立ち会いたい。

【コンテンツ情報】
「ペンション・恋は桃色」
FOD
season1~3は配信中、season4は7月31日午後8:00~全5話一挙配信

文/斉藤和美
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