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警察の闇に切り込む!「ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班」英国発・衝撃の汚職捜査ドラマ2025/12/12 12:00

警察の闇に切り込む!「ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班」英国発・衝撃の汚職捜査ドラマ

 かつて“海外ドラマ”といえばアメリカだった。でも今は、韓国や中国の作品が話題をさらい、選ぶ楽しみは何倍にも広がった。そんな中、あまり目立たないけれど、イギリスにも見逃せない名作がたくさんある。

 ベネディクト・カンバーバッチが名探偵シャーロック・ホームズに扮(ふん)して一躍ブレイクした「SHERLOCK(シャーロック)」、2026年には3作目の映画版も公開となる「ダウントン・アビー」など、世界的に大ヒットしてシリーズを重ねた作品も多く、「刑事モース」「名探偵ポワロ」といった刑事や探偵を主人公にしたドラマも長く愛されている。

警察の闇に切り込む!「ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班」英国発・衝撃の汚職捜査ドラマ

 そんな傑作・佳作ぞろいの作品群の中でも近年、海外ドラマ好きの間で特に注目されているのがBS11で12月14日から放送が始まる(毎週日曜 午前9:59~10:55)「ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班」だ。職務規定違反の不正、汚職の疑いのある警察官と、彼らを調べ摘発する捜査員たちとの熾烈な攻防を描いたクライムサスペンスで、本国イギリスでは英国アカデミー賞など数々のTV賞で栄誉に輝いているほか、シーズン6の最終回では、歴史的視聴率をたたき出したことで“英国で最も見られたTVドラマシリーズ”としても知られているメガヒット作だ。

 イギリスには本作の熱狂的ファンが多く、毎エピソード放送後にはSNSでは考察合戦が繰り広げられ、シーズン最終回をパブの大型スクリーンで仲間のファンと楽しむ人もいるのだとか。

作り込まれたキャラクター設定が物語に説得力と深度を与える

 ド派手なカーチェイスや大爆発、目の覚めるような華やかな容姿のキャストの登場などはない本作だが、それゆえに一層際立つ物語のリアリティーと、誰が善人で誰がヒールか最後まで分からないスリルが格別。主人公と共に疑心暗鬼の状況下で進んでいく腐敗の闇を暴く捜査とその結末に驚愕(きょうがく)させられる。「マイノリティーだから」「女性だから」悪役でないはず、という予定調和もなく、予想外な展開なのも魅力だ。ドキュメンタリーのような手持ちカメラでの揺れ動くカメラワークも多用され、極秘捜査や悪事をのぞき見しているような臨場感と不安感も特徴的。

 さらに本作は1シーズン6話(オリジナル版は5話)とコンパクト。疲れないうちに物語が完結するので長い話数は完走できないかも…という心配も無用だ。しかも1話ずつが毎回スリリングで少しずつ情報が明らかになり、登場人物への見方が変わってくるのでまったく飽きさせない。ハッピーエンディングとは言えないエピソードも盛り込まれ、登場人物の誰もが善悪両方の一面やウィークポイントがあるという白黒だけではないキャラクター設定は、状況や感情に左右される人間の心の複雑さを描いて徹底的にリアルを追求している。

 ちなみにタイトルの原題「Line of Duty」は直訳すれば「職務中」「任務遂行中」を意味する。つまり、警察官が“職務の線”の上に立ち、正義を果たすために行動している状態を指す言葉だ。しかしこのドラマが描くのは、その“線”を踏み外した者たちの物語。
 汚職、隠蔽、裏切り——職務の名のもとに行われる不正を暴く特捜班「AC-12」の戦いが、タイトルに込められている。さらに、「Line of Duty」に「Die」や「Death」が加わると意味は一変する。
 “Died in the line of duty”=「殉職」
この言葉は、シーズン1のクライマックスで印象的に使われ、職務に命をかける者と、職務を裏切る者の対比が鮮烈に描かれる。

レギュラー陣からゲスト俳優にも、演技派・実力派が顔を揃え、物語に厚みを加えている

警察の闇に切り込む!「ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班」英国発・衝撃の汚職捜査ドラマ

 全シーズンに登場する汚職捜査班のスティーブ・アーノットを演じているのは映画「アリス・クリードの失踪」のマーティン・コムストンだ。そして、物語の中心となる各話のゲスト俳優も映画やドラマでおなじみの実力派ばかりで、これがストーリーをけん引、本作のクオリティーを押し上げる大きな要因となっている。シーズン1ではドラマ「ウォーキング・デッド」のモーガン役で知られるレニー・ジェームズがトニー・ゲイツ警部役で全話出演。映画「ノッティングヒルの恋人」、ドラマ「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」のジーナ・マッキーも鮮烈な役どころを演じている。

 シーズン2以降もドラマ「MI-5 英国機密諜報部」のキーリー・ホーズ、映画「ミッション:インポッシブル2」、ドラマ「ER 緊急救命室」のタンディ・ニュートン、ドラマ「ボードウォーク・エンパイア」のスティーブン・グレアムなど、顔を見たら「あっ、知ってる!」となること間違いなしのパワフルな面々が重厚な演技を見せる。

 イギリスでは、21年にシーズン6が放送されて以来、続編が待たれていた本作だが、ついに26年、5年ぶりにシーズン7の製作が開始されるとアナウンスが! キャストやクリエーターたちがSNSやインタビューでうっかり(?)漏らした言葉の端々から新シーズンのヒントを探るファンたちも現れ、これまでのシーズンに出演していた人たちの去就が注目されている。

第1シリーズSTORY

警察の闇に切り込む!「ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班」英国発・衝撃の汚職捜査ドラマ

 若手刑事のスティーブ・アーノット(演:マーティン・コムストン)は、罪の無い一般人の命が奪われた誤射事件を隠蔽(いんぺい)しようとした上司の指示を拒否し、テロ対策班を追われる。異動先に命じられたのは通称AC-12と呼ばれる汚職特捜班。英国警察内でさまざまな不正・違反行為を行っている警官たちの聴取や証拠探しが任務のため、署内では裏切り者扱いで疎まれ嫌われる存在だ。

 着任早々、アーノットが目をつけたのがゲイツ警部(演:レニー・ジェームズ)。ずば抜けた犯罪検挙率で毎年表彰されており、仲間内で人望も厚い人物なのだが、アーノットはゲイツが罪状を水増しして報告しているのではと疑う。ゲイツの愛人の存在が発覚するなど怪しい点が多々見受けられるも、なかなか決定的証拠が見つからず、アーノットは署内で警戒される一方。そんな中、女性刑事のケイト・フレミング(演:ヴィッキー・マクルア)が潜入捜査官としてゲイツのチームに加入しアーノットに協力することに。

 誰が味方で、誰が裏切り者? 見れば見るほど深みにハマる、汚職と疑惑の渦に飛び込んだ特捜班の行方、あなたも見届けてみては。

【番組情報】
ヨーロッパミステリー「ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班」
BS11
12月14日 日曜スタート
毎週日曜 午前9:59~10:55
※放送後、TVerで見逃し配信。BS11公式動画サイトBS11+では、シーズン1〜5を配信中。

文/藤野貴子

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