檀れいが詠み人の心をたどる「旅する百人一首」京都&奈良で歌に宿る思いをひもとく2025/07/25

百人一首に収録された名歌の舞台を旅して、その歌に秘められた歴史や人生の物語を解き明かしていく番組「旅する百人一首~みやびな日本の情景~」(午後6:00)が7月27日にBSフジで放送される。この番組で、百人一首研究の大家・吉海直人教授と一緒に奈良・京都を旅した檀れいさんにインタビュー。撮影エピソードや、番組への思いを語ってもらった。
──百人一首をテーマに旅をする番組ですが、最初にオファーを受けた時の感想を聞かせてください。
「まず百人一首と聞いて『私、分かるかな?』と率直に思いました。私の中で百人一首というのは本当に遠い世界で。子どもの頃、お正月に競技かるたの模様をテレビのニュースで見るくらいの認識でした。ただ自分の知らない世界の扉を開けるのは、また一つ深く物事を知ることにもなりますし、ある意味楽しみでもありましたね。今回のお仕事は、私自身にとっても、見てくださる視聴者の皆さんにとっても、大きな意味を持つと思いましたし、日本の文化や歴史、美しさを多くの方に感じていただける番組になるだろうという確信がありました。なので、事前に百人一首のことを勉強して取り組もうと思いました。やっぱり日本の美しさを伝えたいですからね」
──もともと歴史や古典文学に関して、ご興味はありましたか?
「興味はありましたが、どこか難しさも感じていて…。自分がドラマや舞台などで歴史モノの作品をやる時には、それに関係する資料を読むなど、その世界をのぞくことはありましたけど、なかなか深いところまでは飛び込めなかったですね。なので、今回こういう形で百人一首の世界に飛び込むことができて本当に良かったですし、なぜもっと早く飛び込まなかったんだろうと思いました」

──事前準備として、何かお勉強をされたのですか?
「今回一緒に旅をさせていただく吉海先生の著書『読んで楽しむ百人一首』と、持統天皇の生涯を描いた里中満智子先生の漫画『天上の虹』1~3巻を読ませていただきました。3巻までとはいえ、かなりボリュームがあったので、読むのはなかなか大変でした」
──実際に2日間旅をされていかがでしたか?
「百人一首の世界とはなんと面白い、なんとすてきな世界なんだろうというのが率直な感想です。時代背景や人間関係といったことから、どういう思いでこの歌を歌ったんだろうと考えていくと、本当に面白い世界だなと思いました」
──番組では持統天皇、和泉式部、従二位家隆の歌を取り上げています。特に印象に残った歌やロケ地はありますか?
「どの歌も心に残っているので、一つに決めるのは難しいですね。例えば持統天皇の『春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天香久山』で言うと、この歌が詠まれた場所を訪ねて、奈良県橿原市まで赴きました。藤原京のちょっと小高い丘で『ここに玉座があったのではないか』という場所から景色を見たり、天香久山神社まで足を運んで天岩戸のお話を聞いたり…一つの歌からいろんな場所を訪ねて、日本の深い歴史に触れることができたのは本当に楽しかったし、濃密な時間を過ごせたと思います」

「また、高松塚古墳の壁画を修復している現場も見学させていただきました。今回特別に取材許可が出て、実物を見られたんですね。普通はできないことなので、すごく感動しました。皆さん、息を詰めて、修復の細かい作業をされているんですよね。ちょっとしたミスも許されない中、日本の貴重な文化財を守り、次の世代へとつなげるために作業をする皆さんの姿を見させていただいて、私はすごい場所にいるんだなと感じました」
──和泉式部の歌の新しい学説を聞いた時は、かなり驚かれていたようですね。
「そうですね。ただ31文字の字面だけを見るのでなく、その時代背景や、その人の置かれた状況など、いろんなバックボーンを踏まえて詠んでみると、歌の捉え方がどんどん変わっていくんですよね。和泉式部の『あらざらむ この世のほかの 思い出に 今ひとたびの 逢ふこともがな』という歌は、彼女が死ぬ間際に詠んだ歌だと言われていたそうですが、吉海先生から『自分が死ぬ時ではなく、恋人が死ぬ時の歌だったのではないか』という解釈を聞いて、なるほどと思いました。いろんな背景を考えると、そういう意味にも取れますし、多様な解釈の仕方ができるのが古典の面白さだなって思いました」
──ロケ中、吉海先生とはずっと和歌についてお話をされていたのですか?

「はい。その歌が詠まれた時代背景について『この時代はこうだったんですよ』と裏話的なことを教えていただき、私が分からないことがあると『先生、これはどういうことですか?』と聞いていました。先生は百人一首のコレクターでもあって、ご自身のコレクションの中から持統天皇のかるたをたくさん見せていただきました。百人一首の絵札に出てくる人は大体十二単を着ていますが、持統天皇はもっと前の時代の人なので、本来は装束が十二単じゃないんですよ。なのに、十二単で描かれているかるたもあるんです。特に持統天皇は、かるたによって装束のバリエーションが何種類もあるそうで、見せていただいて面白かったです」
──今回の旅を通して知った百人一首の魅力というと?
「その歌はどういう意味で詠まれたのかと考えるのも面白いですけど、それプラス、歌に縁のある場所を訪ねて、いろんなことを知ることによって、より歌の面白さが広がる気がします。やっぱり私は『この人は何を考えて、どういうふうに生きたんだろう。どういうことを感じていたんだろう』と探る癖があるんでしょうね。今まで演じるというお仕事をやってきているからこそ、その人の人物像を掘り下げて、より知りたいと思うんです。そういう気持ちで旅をしていると、とても共感する部分、納得する部分が出てきます」
──今回番組としては第1弾となりますが、もっとほかの歌でもやってみたいとか、夏以外の季節でもやってみたいと思いますか?
「思いますね。今後も続けられたら、私としても幸せですし、多くの皆さんに日本の古典文学、百人一首の世界を見ていただいて、より深く知っていただけたらうれしいです。とても美しい、すてきな世界だと思いますから」
──今回は4K番組なので、映像の美しさも魅力ですね。
「そうですね。今回、不思議なぐらいお天気に恵まれたんですよ。藤原宮跡には赤い柱が何本も立っているんですけど、地面の緑と赤い柱と、そして青空…あまりにも美しい景色で、それを見た瞬間、思わず駆け出していました(笑)」

──最後に、これから番組を見る皆さんへメッセージをください。
「私自身2日間、目いっぱい楽しんだ旅でしたが、きっと百人一首の面白さが画面から伝わってくると思いますし、見てくださる方にも『すてきな世界だな』と感じていただけると思います。4Kの美しい映像とともに楽しんでいただきたいですし、見てくださった皆さんには、ぜひその場所に足を運んでほしいなと思います」

【番組情報】
「旅する百人一首 ~みやびな日本の情景~」
BSフジ
7月27日
日曜 午後6:00~7:55
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