東京オリンピックの競技を解説【スポーツクライミング】金メダル候補筆頭の楢﨑智亜。原田海、野口啓代、野中生萌と日本は実力者ぞろい2021/07/19
今大会で初採用されたスポーツクライミング。さまざまな形、大きさのホールド(突起)が設置された壁を登る技術や速さを競う。自然の岩場を登るロッククライミングに起源があり、競技化され、国際大会が開かれたのは20世紀後半から。1991年に「リード」種目のみの世界選手権が初開催された。今大会はそのリードに、「ボルダリング」「スピード」を加えた3種目の総合成績で初代メダリストの座を争う。男女ともに20人で予選が行われ、上位8人が決勝に進出する。予選、決勝はそれぞれ1日で3種目を行い、各種目の順位を掛け算して出した総合得点の少ない選手が上位に。たとえば各種目の順位が1位、4位、6位なら24点、すべて3位なら27点。どれか1種目でも1位になれば有利になる。
スピードは同じ条件で設置された高さ15m、95°に前傾した壁を2人の選手が同時に登り、タイムを競う。男子のトップ選手になると平均5~6秒、女子でも7~8秒ほどで駆け上がる。初めて見ると驚くこと間違いなしのスピードだ。ボルダリングは課題が設定された高さ4mほどの壁を、4分以内にいくつ登れるかで順位が決まる。どのホールドならつかむことができるかなど自分の能力を把握したうえで、攻略ルートを組み立てる知力と判断力が必要になる。リードは高さ12m以上の壁を、6分以内にどの地点まで登れるかを競う。途中で落下した場合はその地点が記録になり、完登同士、または同じ高さの場合はタイムで順位が決まる。ボルダリングとリードは自分が登る前は、ほかの選手のクライミングを見ることができない。攻略ルートを考える際の参考材料になってしまうためだ。競技前の選手は隔離されていて、競技開始直前に全員に数分に限りルートを見る時間が与えられる。この間、選手同士が相談することも許されている。
日本代表男女各2人は実力者ぞろい。中でも楢﨑智亜は、2019年世界選手権男子複合で優勝。金メダル候補筆頭の呼び声が高い。原田海も2018年世界選手権のボルダリングで優勝し、女子の野口啓代、野中生萌も、それぞれ2019年世界選手権女子複合2位、ボルダリングワールドカップ総合優勝などの実績がある。ただ、いずれもボルダリングの実力は世界トップ級だが、スピードがやや苦手な傾向がある。スピードで外国勢との差を少なくできるかがメダルへの鍵になりそう。外国勢は2019年世界選手権男子複合2位のヤコブ・シューベルト(オーストリア)、3位のリシャト・ハイブリン(カザフスタン)、女子複合優勝のヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)らがメダル候補だ。
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