現代ミステリー好きこそハマる「木挽町のあだ討ち」がJ:COM STREAMで最速配信2026/07/22 10:15

映画「木挽町のあだ討ち」が、7月22日からJ:COM STREAMで見放題最速配信される。
ある冬の夜、芝居小屋・森田座のすぐそばで若侍・伊納菊之助(長尾謙杜)が、見事に父の敵を討った。多くの目撃者の前で起きた事件は、美談としてたちまち江戸中で評判になる。それから1年半後、1人の武士・加瀬総一郎(柄本佑)が江戸へとやってくる。彼の目的は、このあだ討ちの真相を探ることだった――。

関係者の証言を集める加瀬は、小さな疑問から鋭く推理を重ねていく。その加瀬に木挽町の面々は、どう対処していくのか。どんでん返しミステリーとしての面白さと、クセありありの人物を演じる名優たちと探偵役・加瀬との絶妙な駆け引き。時代劇初心者にもおすすめしたい、ぜいたくなエンタメ作品だ。
刑事コロンボか? 杉下右京か?
とぼけた主人公と共にたどる謎解きが楽しい!
ここで注目したいのは、加瀬のキャラクター。美濃の田舎から出てきた加瀬は、ほこりまみれでもっさりとした風体。おまけにすぐに腹をぐぐぐっと鳴らし、小屋の面々に飯の世話にもなる。早速、蕎麦(そば)を食わせた木戸芸者(呼び込み)の一八(瀬戸康史)は、江戸の蕎麦のうまさを絶賛され、つい口も軽やかになる。

風貌はさえないものの、相手が口にした何げない言葉から、ヒントや矛盾を見つけ、事件の核心に迫る。「確かこんな名探偵がいたような?」と思うミステリーファンは多いはず。加瀬を演じる柄本佑は、源孝志監督から「刑事コロンボ」を意識するよう言われていたと言う。確かに。相手の懐に入り、粘り強く質問を重ねることで、堅い壁を崩す過程は、現代ミステリーと同様。そういう目で見てみると、「腑に落ちないことがありましてね」と加瀬が指を1本立てて、「もう一つ」と質問をするしぐさは、「古畑任三郎」の田村正和や「相棒」の杉下右京(水谷豊)など現代の個性派刑事にも通じる気がしてくる。
渡辺謙、滝藤賢一、瀬戸康史ら豪華キャスト陣が演じる
くせ者キャラとそのチームワークが痛快!
一方、加瀬に対する芝居小屋の面々もタダ者ではない。色町育ちの一八、一流の剣士であり立師(芝居の立ち回り指導)の相良与三郎(滝藤賢一)、“二代目”の名に誇りを持つ女形で衣裳方・芳澤ほたる(高橋和也)、菊之助を長屋に住まわせていた小道具方・久蔵(正名僕蔵)、そして、元武士で菊之助の母と関りのある劇作家の篠田金治(渡辺謙)。

全員が人に言えない苦労の末に、芝居町に居場所を見つけた連中だ。悪所、吹きだまりと言われるこの町で、多くの人間を見てきた。それだけに、ほたるはすぐさま「ありゃ、うわべは人懐こいが……」と加瀬の人品を見破る。
「あいつは虫も殺せぬ優しい男でね」と自分が知る菊之助の人物像と「しかし、200人の証人がいる……」というあだ討ちの見事さにギャップを感じ続けている加瀬は加瀬で「芝居小屋の人間てのは……」と、彼らが内に秘めた思いや熱に感づいていく。
物語が進むごとに見え方が変化する真相と
かつてない伏線回収の妙
さてさて、ここで両チーム(と言っても、加瀬は一応1人ですが)の腹の探り合いマッチがヒートアップするのか? と思ったら、そうならないのが、この映画のすごいところ。なんと、森田座の面々は、うそ偽りない真実を示し、加瀬を納得させてしまうのである。彼らが一つ語るたびに、あだ討ちのあの日、いや、それだけではなく、菊之助がここで過ごした日々が違って見えてくる。しかも、伏線が回収され、全容が見えてこれで完結かと思った後から、胸にじんわりくるのである。

菊之助の母・たえ(沢口靖子)は、「掟(おきて)や意地のために息子が人を殺めなければならない……」と口にする。武士の世界では、親のあだを討つことは、子に課せられた使命であり、それがなされない限り、藩に戻ることや家名を維持することが難しいとされる。自前で費用を工面しながら何年もあだ討ちの旅を続けることが、どれほどの苦難であることか。
相良は武士だけに加瀬に対して「菊之助の見事なあだ討ちに傷がつくようなことはしないでほしい」と言う。菊之助のあだ討ちに決して曇りがあってはならないのである。
篠田は、芝居小屋は一時の夢を見る戯場であり、「戯場国」という国にも例えられると語る。菊之助は、この国の住人になることはない人間だ。あだ討ちが終われば、晴れて故郷に戻れる。その菊之助のために落ち着いたリーダーぶりを見せていた篠田は、土壇場で戯作者とは思えないとんでもない行動に出る。そんな篠田を見つめる相良も最高だった。こういう渡辺謙を待ってました! と思うシーンだったし、本人も楽しかったのではないかと思う。

ミステリーは、縛りがあるほど面白い。武士と町人、芝居小屋の夢舞台と裏方、節度や掟という縛りを守りながら、誰かを助けようと懸命になった人々の姿は美しい。
原作は、山本周五郎賞と直木賞をW受賞した永井紗耶子氏の人気小説。監督・脚本は時代劇撮影現場のリアルを描いたドラマ「スローな武士にしてくれ~京都撮影所ラプソディー~」やプレミアムドラマ「グレースの履歴」(NHKBS。第42回向田邦子賞受賞作)の源孝志氏。見終わった後、このタイトルの意味がもう一段深く伝わってくるはず。
さあ、「木挽町のあだ討ち」の幕を開けましょう!
【コンテンツ情報】
「木挽町のあだ討ち」
J:COM STREAM
見放題で最速配信中

<あらすじ>
ことの始まりは、ある冬の夜、江戸を代表する芝居小屋・森田座横の空き地で若い侍・伊納菊之助(長尾謙杜)が父・清左衛門(山口馬木也)の敵を討ち取った一件だった。敵はちかごろ評判の悪と言われる作兵衛(北村一輝)。終演直後の森田座から出てきた大勢の人々が見つめる中、堂々と名乗りを上げた菊之助は、大柄な作兵衛と対峙(たいじ)し、降り積もった雪と白装束を血に染める激戦の末、作兵衛を討ち取った。その首を手に番所に名乗り出て、正式にあだ討ちの成就を認められることとなる。
1年半後、森田座に、加瀬総一郎(柄本佑)が現れる。加瀬は、菊之助と同じ美濃遠山藩の元藩士で、菊之助の許嫁(いいなずけ)の兄だと名乗る。たまたま知り合った森田座の木戸芸者の一八(瀬戸康史)から、菊之助があだ討ちを果たすまでの半年間、森田座で世話になっていたと知った加瀬は、関係者に話を聞きたいと言い出し、菊之助と特に親しかった森田座の面々と会うことになる。
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文/ペリー荻野
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