Feature 特集

世界で飛躍するスケートボード界の若きアスリート・堀米雄斗選手2019/04/30

Cheer up! アスリート2020!

 スケートボード界で偉業を成し遂げた堀米雄斗が、東京五輪の金メダル候補として一躍脚光を浴びている。しかし、堀米は周りに流されず、自らのスタンスである“楽しむこと”を忘れずに、ストリートを突き進む!

どれだけ楽しむか。楽しめるか。

 東京五輪で新競技に採用されたスケートボードで、世界から注目されている堀米雄斗。昨年にはストリート種目の世界最高峰であるストリートリーグで、日本人初優勝を果たすと、一気に3連勝する快挙を成し遂げた。

「ストリートリーグは小さい頃からの憧れのコンテストで、携帯でもプロスケーターの滑りを見ていました。いつか出たいと思っていたコンテストに出場できて、優勝できたのは本当に夢のようでした。やっぱり、他の選手がコンテストで出していないトリックを決められたのが、勝利の決め手になったと思います。次も優勝したいと思って3連勝できたことで、自分のベストの滑りができれば、優勝できると思えるようになりました」

 一方、今年初めのストリートリーグの上位選手らが出場するファイナルでは悔しい思いも。今大会から世界選手権を兼ねて開催されることとなり、名実ともに世界一を決める大会となった大一番で、優勝を逃した。

「自分のベストの滑りがまったくできなくて、準備不足だなって思いました。セクション(構造物)は毎回変わるので次はどうなるか分かりませんが、どんなセクションでも自分の滑りができるように練習あるのみです」

Cheer up! アスリート2020!

 堀米の魅力の一つが、ストリートリーグの勝因にも挙げた独自のトリック。日本人が海外で勝つためのこだわりでもある。

「アメリカに何万人とスケーターがいる中で、どうしたら日本人が目立てるかって考えた時に、人とちょっと違った技、動きをしないと目立てないし、コンテストでも勝てないと思いました。今も人が見たことのない新しいトリックを練習中で、完成度は70%ぐらいです。練習で成功率が100%でもコンテストでは80%ぐらいになってしまうので、練習で100%に持っていきたいですね。どんなトリックかは、今は言えないんですけど(笑)」

 強さの秘密がもう一つ。それはスケボーを始める子どもたちへのメッセージにもなる。

「上手くなるには、どれだけ練習を楽しめるかだと思います。バランス感覚などは、後から身に付いていくので、そういうところは考えずに、スケボーをみんなと楽しくやっていれば、レベルアップしていくはずです」

 本連載の第2回に登場した池田大亮や、拠点を移したアメリカでも仲間と切磋琢磨している。

「大亮は小さい頃から、一緒に海外のコンテストに出ている友達なので仲がいいですね。本当に上手くて、強い選手だと思います。僕が今アメリカにいるのであまり会えないですけど、会えば一緒に滑ったりしますね。アメリカでは友達とシェアハウスに住んでいて、その友達もスケボー仲間です。スケボーが中心ですけど色々話しています。みんな英語なので、おかげで英語が身についていっている感じです(笑)。アメリカには一流のプロスケーターが集まっていますし、スケートパークの環境もいいので刺激をもらえています。アメリカに行って、スキルアップできていると思います」

Cheer up! アスリート2020!

 スケートボード界に東京五輪という新たな目標が加わり、選手たちのモチベーションが上がっている。その一方で、ストリートの文化が失われ、競技化されることを懸念する声もある。

「友達と話していて、五輪が話題に上がることもありますね。五輪競技になったことで、五輪を目指して頑張るっていう選手がすごく多いです。五輪競技になるとは思ってなかったので驚きましたけど、やっぱりうれしいですね。五輪競技になったことに対して意見は分かれるかもしれませんが、僕はスケボーのストリートの文化を忘れずに、ストリートの文化も伝えながらコンテストの良さも伝えたいです。せっかく五輪競技になったので、いろんな人にスケボーの良さを知ってもらいたいです。日本のスケボー人口が増えて、いいスケートパークができたらいいなと思います。そうすれば新しい世代の上手いスケーターが、もっと出てきてくれますから」

Cheer up! アスリート2020!

 東京五輪では、ストリートだけでなく、パークも行われる。スノーボードで五輪2大会銀メダルの平野歩夢が、パークで東京五輪を目指すことでも話題に。

「歩夢とは、昔ですけどコンテストに一緒に出たことがあります。元々、スケボーがすごく上手いんです。アメリカで何回か一緒に滑ったりもしました。僕は今、ストリートがメインですけど、中国で去年行われたパークの大会に出てみたら結構滑れたので、パークも楽しみながらやっていきたいですね。五輪が近くなってきたので、今季の成績は重要です。五輪に出場できたら日の丸を背負うことになりますし、頑張りたいと思います」

Cheer up! アスリート2020!

【TVガイドからQuestion】

Q1 印象に残っているスポーツ名場面を教えて!
特にこれといってはないですけど、スケボーのコンテストとか、バスケで逆転しているシーンはいいですね。この間、初めてNBAの試合を見に行ったのも楽しかった。チームはバックス、選手はカイリー・アービングが好きです。

Q2 好きなTV番組/音楽を教えて!
テレビを見る習慣がそんなにないんですけど、ダウンタウンは好きで見たりしますね。音楽は、ヒップホップ、特にフューチャーが好きですけど、コンテストの前に聴く曲は決まってなくて、その時の気分でいろんな曲を聴いています。

Q3 “2020”にちなんで、“20”歳の間にやりたいことを教えて!
20歳はストリートでいいビデオパート(スケボーのパフォーマンス映像)を残して、コンテストも頑張りたいです。そうすれば目標である、みんなにリスペクトしてもらえる一流のプロスケーターに近づくことになると思います。

Cheer up! アスリート2020!

【スケートボードとは?】
1940年代にアメリカ西海岸で木の板に鉄の車輪を付けて滑った遊びが、スケートボードの起源とされ、90年代後半から音楽やファッションと結びつき、ストリートカルチャーの中心になる。競技ではトリック(ジャンプなどの技)を行い、難易度や高さ、スピードなどを採点して、その得点で競われる。東京五輪では新競技として採用され、街中を模したコースで行う「ストリート」と、湾曲面を複雑に組み合わせたコースで競う「パーク」の2種目が実施される。

【プロフィール】

堀米雄斗(ほりごめ ゆうと)
1999年1月7日東京生まれ。山羊座。


▶︎XFLAG所属。

▶︎「お父さんがスケボーをやっていたので、それについて行って始めました」と、父の影響で6歳からスケボーを始める。

▶︎初めはストリートではなくバーチカルをしていたが、「(競技人口が少なくて)1人で練習するのがつまらなくて、人がたくさんいるストリートに行きました(笑)」と種目を転向。「最初はコンテストでぼろ負けしました。悔しくて練習して、どんどんレベルアップしていった感じです」と徐々に頭角を現し、2014年、15年と日本で年間チャンピオンを獲得。

▶︎17年、ストリートリーグに初出場すると、「決勝に進出できるとはあまり考えてなかったけど、自分のやりたいトリックが上手くできた」と、3位に入り日本人で初めて表彰台に。18年はストリートリーグで日本人初優勝し、3連勝も達成した。



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