大泉洋インタビュー「俺たちの箱根駅伝」で笑いも追求「チャンスがあれば面白くしようとはしていた」2026/10/09 17:00

日本テレビ系では10月10日より新土曜ドラマ「俺たちの箱根駅伝」(土曜午後9:00)がスタート。池井戸潤さんの同名小説を原作に、正月の風物詩として多くの人に親しまれる箱根駅伝を、“走る側”と“伝える側”の両面から描く本作で、大泉洋は、箱根駅伝中継を担う大日テレビのチーフプロデューサー・徳重亮を演じる。
徳重は、長年受け継がれてきた箱根駅伝中継の現場で、伝統と視聴率、そして選手たちへの思いのはざまで奮闘する人物。池井戸作品への参加は2019年「ノーサイド・ゲーム」(TBS系)以来2度目となる大泉は、オファーを受けた時の思いを「もう一度、登板の機会をいただけたというのがすごくうれしかった」と振り返る。国民的行事ともいえる箱根駅伝を題材にした本作で、大泉が見つめたのは、選手たちの走りをいかに届けるかという“中継する側”の誇りと責任だった。
――まず、オファーを受けた時のお気持ちから聞かせてください。
「池井戸先生の作品に出させていただくのは2本目でしたし、先生からも『もしよろしければ、ぜひやってください』というようなご連絡をいただけたので、もう一度、登板の機会をいただけたことがすごくうれしかったです。箱根駅伝は、国民的な番組であり、お正月の風物詩のようなレースですから、その大作に携わらせてもらえるというのは、オファーをいただいた時からうれしい思いでいっぱいでした」
――池井戸先生からの言葉もあり、期待を受けて作品に入ることになります。そこに対するプレッシャーはありましたか。
「もちろん、オファーをいただくということは、何かしら期待していただいているということだと思うんです。だからこそ、どの作品でも“やらなきゃいけない”という思いはありますし、毎回同じだけの熱量で期待に応えなければいけないと感じています」
箱根駅伝中継を徹底研究「選手たちの頑張りをそのまま届けたい」

――徳重亮は、箱根駅伝中継を担うチーフプロデューサーです。役作りでは、実際の中継もかなり細かくご覧になったとうかがいました。
「今年の箱根駅伝を2日間サブコンを見学させていただいたことに尽きますね。実際にプロデューサーがどんな動きをするのか、中継している皆さんの雰囲気を、どれだけ自分が取り入れられるかだと思いました。全部の中継が終わった瞬間に、どんなふうに席を立つのかまで見ていました」
――現場の所作まで見ていたのですね。
「本来ドラマにはめったに関わらないスポーツ局のプロデューサーの方たちが、ドラマ撮影の前に、ほぼ付きっきりでサブコン(副調整室)にいてくださったので、『この時には、このスイッチを押したまま話すんですか』『このパソコンを見ながらでもいいんですか』『どんなモニターを見ているんですか』と、本当に細かく聞きました。プロのスポーツ中継の皆さんがそばにいてくださったので、『なるほど、ここをやっているんだな』と安心して演じることができましたし、自信にもつながりました」
――中継に携わる方々の姿から、どんなことを感じましたか。
「テレビマンの皆さんが、『これは学生たちのものなんだ、選手たちのものなんだ』という思いで中継なさっているんですよね。少しでも選手たちの頑張りをそのまま中継に乗せたい。まだ映っていない学生がいたら映してあげたい。その学校の情報をなるべく紹介してあげたい。そういう思いが伝わってきました。われわれテレビマン側からできることは、そこなのかなと。ドラマでも、その思いが出せればいいなと思っていました」

――普段、視聴者がなかなか知ることのできない中継の裏側も描かれます。
「CMの入れどころが本当にスリリングなんです。CM中に順位が入れ替わることは、なるべく避けたいわけですから。そのあたりは見ていても緊張感がありましたし、ドラマにも描かれるので、見どころの一つだと思います」
――池井戸作品ならではの熱さに加えて、大日テレビのパートには少し肩の力が抜けるような面白さもありますね。
「台本やセリフが、すでにエモーショナルでした。今回の大日テレビのパートは、原作よりもちょっと熱くなっているんです。台本作りの段階で意見を交わす中で、徳重が中継に懸ける思いなども、より伝わるようにできればという話はしていました。演じる上では、台本にある熱をそのまま出せばいいという感覚だったので、そこまで苦労はありませんでした。むしろ、読んでは意見を交わして、また読んで、という過程の方が大変だったかもしれません」
――テレビ局側のシーンでは、コミカルな部分も大切にされたのでしょうか。
「そうですね。ランナーたちの物語はどうしてもストイックになっていくので、テレビ局のシーンでは、少し息をつけるような空気も欲しいと思っていました。僕自身も、ちょっとでもチャンスがあれば面白くしようとはしていましたね(笑)。やっぱり、見ている方が少しホッとできる時間もあった方がいいので」
伊藤沙莉は「クールな役が向いている」山下智久は「孤高の天才」

――伊藤沙莉さん演じるセンターディレクターの宮本菜月も、大日テレビ側の物語を支える重要な人物です。大泉さんから見た伊藤さんの魅力を教えてください。
「沙莉ちゃん本人はとても明るくて楽しい人ですが、菜月はテキパキとした、ちょっとクールな役です。実は、沙莉ちゃんは早口なんですよね。そこが菜月に向いているんです。向いているというか、彼女がそう演じているのですが、スピードを上げてセリフをちゃんと言える役者って、実は少ない気がしていて。沙莉ちゃんは、ものすごくテンポを上げて芝居ができる方なので、見ていて小気味がいいんです。だから、クールな役が向いている人だな、かっこいいなと思いました」

――大日テレビ側の現場は、かなり個性派ぞろいです。
「本当に個性的な方ばかりでした。辛島文三役の竹中直人さんにしても、北村義男役の市川猿弥さんにしてもそうですし、黒石武役の高橋克典さん、畑山一平役の生瀬勝久さん、田村健一郎役の小日向文世さん……。本当にクセ強だらけでしたからね(笑)。日々、百本ノックを受けるような感覚で、濃い皆さんと共演できて楽しかったです。彼らのお芝居を見るだけでも面白いので、楽しみにしてください」

――山下智久さん演じる甲斐真人は、明誠学院大学陸上競技部を率いる新監督。大泉さんから見て、山下さんの甲斐監督はいかがでしたか。
「甲斐という人物は非常にかっこいい。セリフも胸に刺さることを言いますし、グッとくる言葉が多い役です。実際に共演させてもらった時も、説得力があるというか、『甲斐だ』という感じがして良かったですね。甲斐は実にクールな人物で、周りと一線を画すアウトローなところもある。孤高の天才のような雰囲気が山下さんから感じられて、いいなと思いました」
――山下さんが率いるランナーたちのパートは、どのように映りましたか。
「ランナーたちのパートは、本当にドキュメンタリーみたいでした。相当な緊張感の中で撮影していたでしょうし、映像を見ても『どうやって撮ったの?』というシーンが多いんです。実際に大掛かりに道路を封鎖して、ものすごい数のエキストラの皆さんに協力してもらって撮っていましたから、本当に箱根駅伝さながらの映像になっていて。みんなで見ていて『すごいな』と思いましたし、大変な撮影になっただろうなと感じました」
――若い頃の大泉さんにランナー役のオファーが来ていたら、挑戦されていたのでしょうか。
「来たらやるしかなかったでしょうけどね(笑)。ただ、かなり過酷だったとは聞いています。ランナーの体を役者が作るわけですから、食事制限もしていたそうですし、撮影現場に差し入れがあっても甘いものをあまり食べないと聞きました。食べている時はとても喜んでいたという話を聞くと、どれだけ大変だったかが伝わってきます。こんなことを言ったら怒られますけど、ランナー役じゃなくてよかったなって(笑)」
――その熱量を受けて、大日テレビ側のパートではどのような空気を作ろうとしていましたか。
「山下さん率いる感動的なランナーたちの物語があるからこそ、大日テレビのシーンでは少し肩の力が抜ける瞬間を作れたらいいなと。だから、チャンスがあれば笑いを取りにいっていました。ちょっとでも面白くなるなら、面白くしたいという気持ちで演じていました」
「箱根を変えちゃいけない」作品を通して深まった駅伝への思い

――今回、大泉さんがもしプロデューサーの権限で箱根駅伝中継に一つコーナーを加えられるとしたら、どんな視点を入れてみたいですか。
「いや、とにかく“箱根”を変えちゃいけないんです(笑)。そういうことを散々言ってきた役であり、ドラマでしたから、軽はずみに何か新しいコーナーを作るなんてことは絶対に許されない。『こんなことができたら楽しいですよね』なんて、考えられないですね。その伝統を受け継いだ上で、われわれにできることがあるとすれば、選手たちの走りやドラマをより深く伝えることだと思います。今ここでポンと思い付いて、『こんなことをしたいです』と言えるような気持ちはどこにもないです。今やもう、箱根駅伝を受け継いで、箱根を変えてはいけないというマインド一色になっていますから」
――今年の箱根駅伝を見る時は、これまでとは違うところにも目が行きそうです。
「撮影中に実際に行った場所もありますし、自分が走った場所もありますから、そこが映った時に『ああ、ここだ』と思いますよね。鶴見中継所だとか、『これ、僕が走った橋だ』とか。そういうところは見ちゃうんでしょうね」
――ちなみに、これまでの芸能生活を箱根駅伝の10区間に例えると、今はどのあたりを走っている感覚ですか。
「何区なんでしょうね。確実に折り返したなとは思います。もう復路には入ったなと。ただ、どのあたりなのかは分からないですね。体力的な衰えはやっぱり感じるので、昔は年間に主演の作品を何本撮れたかなと考えると、今はそうはいかないんです。自分の体力を考えると、年間やれて2本かなという感じになってくる。そうなると、今後、自分のキャリアの中で何本作品に出ていけるのかなというのは、ちょっと考えますよね」
――最後に、この作品をどんな方に届けたいかを聞かせてください。
「本当に広く、いろんな方に楽しんでもらえる作品だと思います。箱根駅伝が大好きな方にとってはもちろん面白いと思いますし、箱根駅伝自体のレースも、池井戸先生が作った物語として実にスリリングで面白い。さらに、普段なかなか見ることがない『箱根駅伝の中継ってどう撮っているの?』という裏側も楽しめる。そこには、池井戸作品ならではのテレビ局という企業の中のドラマもあります」
――箱根駅伝を見慣れていない方にとっても、入り口になる作品になりそうです。
「そうですね。このドラマを見たら、『箱根駅伝ってこんなに面白いんだ』と分かってもらえると思います。以前、同じ池井戸作品の『ノーサイド・ゲーム』に出させてもらった時も、ラグビーのルールが分からないから見てこなかったという方にとって、ドラマが入門のような役割になった部分があったと思うんです。今回もこのドラマを見ることで、箱根駅伝がどういう駅伝で、どんな面白さがあるのかを感じてもらえるはずです。多くの方に楽しんでいただけるドラマになっていると思います」

【プロフィール】
大泉洋(おおいずみ よう)
1973年4月3日生まれ。北海道江別市出身。演劇ユニット・TEAM NACSのメンバー。北海道テレビのバラエティー番組「水曜どうでしょう」(HTB)への出演をきっかけに人気を集め、俳優、タレント、歌手、司会など幅広く活躍する。近年の主な出演作は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(2022年/NHK総合ほか)、映画「かくかくしかじか」(2025年)、「映画ラストマン -FIRST LOVE-」(25年)、主演ドラマ「ちょっとだけエスパー」(25年/テレビ朝日系)など。26年12月25日には主演映画「BYE BYE LOVE 探偵はBARにいる」の公開を控えている。
【番組情報】
新土曜ドラマ「俺たちの箱根駅伝」
日本テレビ系
10月10日スタート
土曜
午後9:00~
(※初回放送40分拡大)
取材・文/斉藤和美
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