齋藤潤がTVアニメ「天幕のジャードゥーガル」で感じた“知ることと向き合うこと”2026/07/04 12:00

母を亡くした幼い少女・シタラが拾われたのは、学者一家の心優しい奥方・ファーティマ。そこで出会った学者を目指す息子・ムハンマドの「勉強して賢くなれば、どんなに困ったことが起きたって何をすれば一番いいのかわかるんだ」という言葉に、彼女の数奇な運命が動き出す――。中世のモンゴル帝国を舞台に、復讐(ふくしゅう)と絆を描く壮大な物語が紡がれるTVアニメ「天幕のジャードゥーガル」(テレビ朝日系)が、いよいよ本日7月4日より放送スタート。今回は、主人公・シタラに大きな影響を与える少年・ムハンマドを演じた齋藤潤さんに、本作の魅力を聞いた。
――齋藤さん演じるムハンマドは、主人公・シタラの今後の人生に大きく関わる人物。シタラを導くような穏やかな声が印象的でしたが、演じるうえでどんなことを意識しましたか?
「こだわって演じたのは、ムハンマドの優しさや穏やかさです。強い信念も持っている人ですが、まずは一人ぼっちのシタラに安心してもらえるように心がけて演じました。プロの声優さんのなかでお芝居することに対して、最初はいろんなことを考えて構えてしまっていたのですが、大切なのは、声をどうやって出すかとかではないんだなと感じました。声の表現や声をどう作るかを求められて、僕がここにいるわけじゃないなと思ったんです。それよりも、シタラに影響を与える人物として、その役目を全うすることが大事なのだと気付きました。マイクの前に立ってのお芝居は、経験はあってもまだまだ慣れていないですし、作中の状況や世界観を想像するにしても、普段映像でのお芝居とは使う回路が全く違います。それに無音の中でものすごくいいマイクを使っている分、いつもよりさらに繊細な部分まで録音されるんですよね。スタジオで撮ったばかりの自分の声を聞かせていただいた時も「こんな細かいニュアンスまで伝わってしまうんだ」と驚きました。声の持つ繊細さと情報量、声の重要さは、あまり意識していなかった分、今回アフレコを経験させていただいたからこそ感じることができました」
――シタラ役の関根明良さんとは、どんなお話をされたのでしょうか?
「実はシタラ役の関根さんと、取材のタイミングで初めてお会いしたんです。生でシタラのお芝居を聴くことができて、率直にうれしかったです(笑)。あと、ごあいさつさせていただいた時、関根さんが「ムハンマドだ!」と言ってくださって。ムハンマドはシタラの人生に大きく関わる役なので、どう演じるべきか悩みましたし、一体どんな声なんだろう? という不安もあったのですが、関根さんにそう言っていただけて、すごくホッとしました」

――齋藤さんは過去にも劇場アニメで声優を経験されていますが、声だけで演じることについて、どんなところにやりがいと魅力を感じましたか?
「自分の意識ではうまくコントロールできないような細かい部分まで伝わるところ、伝わってしまうところです。ほんの少しの差やニュアンスの違い、間の長さだけでも、聴こえ方がこんなにも違ってしまうんだなと。でも逆に、それを分かった上で演じることができれば、相手役の方がこのセリフをどう解釈したのか、どういう心情で演じているのかが、想像しやすくもあるんですよね。声優さんたちはそういうやり取りをされているので、まさにプロフェッショナルだなと感じました。いざ自分がマイクの前でのお芝居を経験してみると、普段いかに何気なくアニメを見ていたのかがよく分かるんです。それだけ繊細な表現で作り上げられているものなんだなと実感しました」

――原作の豊かな雰囲気が、そのままアニメーションでも表現されています。完成した映像をご覧になった感想を教えてください。
「砂漠の砂の質感や、モンゴルの大自然に映えるキャラクターたちの衣服の鮮やかさがとても印象的でした。僕は原作を読んで初めて、この時代のモンゴルの文化や生活を知ったのですが、それがそのままアニメーションになると、こんなにも豊かなんだなと。そこに音楽やカメラワーク、そして声優さんたちの声が合わさると、原作を読んで自分が想像していた世界より、何倍も豊かに感じることができました。詩的で無垢(むく)でかわいくて……でもその中に、しっかりと文化や文明、そしてキャラクターたちの身分や立場といった現実が描かれているんです。そこで生まれるドラマがあるからこそ、生きる強さにグッときたり、少し胸が締め付けられるような感覚もあって……。これは僕個人の感想なので、見ていただく皆さんそれぞれに、感じられるものがあると思います。それから、シタラの物語の始まりを感じる主題歌やエンディングテーマにも、きっとハッとするはず。これから始まる冒険を一緒に体験しているような気持ちになったので、ぜひ楽しみにしていてほしいです」

――「天幕のジャードゥーガル」という作品のテーマの一つは「知ること」。齋藤さんにとって、何かを知ったことによってご自身の世界が広がったと感じる瞬間や経験はありますか?
「僕自身は、知識よりも感情を大切にしています。その瞬間、その場所でしか生まれない感情や、学べないものが確かにあると思っていて。自分なりの考え方や意図をもって実行すること。そのうえで、返ってきた答えを自分の中でまた見つめ直すことで、今後のお芝居につなげていきたいなと考えながら演じています。あと個人的なことでは、4月から大学で映画を学んでいるので、そこで知ることも多くて。一つの作品も、ただ見ていただけでは気付けなかった部分――これだけ多くの方々が関わっていて、そこにいろいろな思いが込められたうえで世に放たれているんだと知るだけで、確実に視野は広がりますよね。今の僕には、そんな風に知っていくことが大事だと思っていて。表現につなげるためにも、表現の幅を広げるためにも、もっともっといろんなことを知っていきたいです」
――最後に、改めて「天幕のジャードゥーガル」は、齋藤さんにとってどんな作品になったと感じていますか?
「この作品に出会い、ムハンマドの言葉に触れて、僕自身も気付かされることがありました。例えば、周りからどう見られているかではなく、自分がどう思うかが大事だということ。自分の感情とちゃんと向き合うきっかけをもらえた作品との出会いは、とてもありがたかったです。役者という仕事をしていると、自分と向き合わなければいけない場面が多々あります。それは常に現在進行形で続いていて、答えは一生出ないのかもしれない。それでも模索し続けていくことが大事だと思うし、視野を広げるための知恵も必要。何かをやる前から意味を重要視するのではなく、まずは好奇心に身をゆだねていったほうが、のちのち気づけるものもあるのかなと。……こんな偉そうなことを言っていますが、本当の僕はもっと臆病なんですけどね(笑)。何事も、経験してみて初めて分かることが多いからこそ、とにかく何でもやってみること、飛び込んでみることが、自分の世界を広げる方法だと思います。僕がそれに気づけたのも、この作品と出会えたから。これから先も自分と向き合いながらお芝居を続けていくうえで、まず知ること。そして知ったことに対して、自分がどう感じるのか、どう自分の中に蓄えていくのか。自分なりの答えを見つけて、大切にしていきたいと思いました」

【プロフィール】
齋藤潤(さいとう じゅん)
2007年6月11日生まれ。神奈川県出身。近年の主な出演作は、映画「ストロベリームーン 余命半年の恋」、ドラマ「ちはやふる-めぐり-」、「コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店」、「田鎖ブラザーズ」など。ドラマ「ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-」が9月に放送を控えている。また、映画「時給三〇〇円の死神」が10月2日公開予定、「高校生家族」が27年1月8日公開予定。
【作品情報】
TVアニメ「天幕のジャードゥーガル」
テレビ朝日系にて7月4日放送スタート
毎週土曜 午後11:00~
※初回は、7月4日午後11:00~深夜0:00の2話連続放送
取材・文/実川瑞穂 撮影/尾崎篤志
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