「ばけばけ」板垣李光人が演じる雨清水三之丞“かわいそう”のその先にある強さ2025/11/07 08:15

ヒロイン・トキ(髙石あかり)の親戚・雨清水家の三男・雨清水三之丞を演じる板垣李光人さん。兄たちの死や奔走の末に、家督を継ぐことになってしまった三之丞は、第3週(10月3日~)で、父・雨清水傅(堤真一)が亡くなり、大きな試練を迎えた。母・タエ(北川景子)と2人きりになった雨清水家の行方、そしてトキとの関係は──。三之丞役を通して感じたこと、考えたこと、そして本作の魅力について板垣さんに話を聞いた。
──板垣さんが演じる三之丞は、第3週で人生の大きな岐路を迎えました。 “かわいそう”“気の毒”と言われる境遇の三之丞ですが、どう感じながら演じられましたか?
「トキが育った松野家は、雨清水家ほど裕福な家庭ではないけれど、家族が身を寄せ合って必死に生活し、その中で家族の絆を育んできました。一方の雨清水家は、広い屋敷の中で家族が強く交わることがなく暮らしています。放送を見て、その対比を台本以上に感じました。三之丞は、視聴者の方から見たら“かわいそう”と思われるキャラクターかもしれません。でも彼は彼なりに、必死に生きようとする。回を重ねるごとにその姿がどんどん強くなっていくので、三之丞のけなげさは『ばけばけ』の中での一つのスパイスになっているのかなと思っていました」

──里子に出されたトキが傅にかわいがられている様子を見て、「私もよそで育ちたかった」と三之丞が言うシーンはとても切なかったです。あのシーンにはどんな気持ちがこもっていましたか?
「あのセリフは、言い方次第で言葉の伝わり方がまったく変わると思っていました。それまでの三之丞の流れのまま言うと、雨清水家の家族のつながりがただ希薄だったと思われかねないなと…。三之丞と両親の間に親子の愛がまったくなかったわけでなく、時代に翻弄(ほんろう)された雨清水家だからこそ、すれ違いが生まれてしまったんだと思うんです。北川さんも『母親として息子に対して愛情がないはずがない』とおっしゃっていましたし、家族の気持ちをしっかりと芝居で見せたいという思いで演じました。三之丞は父と母のことが好きだったんですよ。だからこそあえてあの言葉を口にした。そんなセリフにしたかったんです」
──あのシーンでの堤さんとのやりとりについて、何かコミュニケーションはありましたか?
「『三之丞がこういうふうにそのセリフを言うのであれば、俺もこういう芝居にするね』とおっしゃってくれました。(病に倒れて)力がない中で手を伸ばしてくれたのが、その場面です。あの瞬間、家族3人が初めて一つの線で結ばれた感覚がありました。傅が事切れる直前で、悲しくもありながら、ちょっとした温かみのある場面になったと思います」

──トキへの複雑な思いも見ていてとても苦しかったですが、髙石さんとのお芝居はいかがでしたか?
「髙石さんは目がとても印象的です。直接対峙(たいじ)した時に感じ取れる“機微”があったと思います。だから、髙石さんのお芝居を受けて僕も芝居をするという感覚がいつも以上に強く、現場で生まれてくる感情に任せていた部分もありました」
──今後、「ばけばけ」という物語の中で、三之丞として見せていきたい思いとは?
「傅が亡くなり、これから、タエと2人でこの先をどう生き抜いていくか。三之丞は今後も“かわいそう”と思われるかもしれませんが、彼自身は必死に強くあろうとします。そんな三之丞と雨清水家は、ユーモアも入り混じった『ばけばけ』の世界観の中ではちょっと毛色が違う存在かもしれません。そのコントラストが今後より一層はっきりしていくと思います」

──三之丞の成長も見られたりしますか?
「三之丞は今後、タエと一緒に歩んでいきます。お互いに今まで抱えてきたものがあり、それをどう消化していくか。強くなっていくのか、受容する方向に進むのか、もしくはすべて手放すことになるのか──。北川さんとも話し合いながら、その波をしっかりと作っていくので、どうなっていくかはドラマを見ながら楽しみにしていただきたいです」
──「ばけばけ」のキャッチコピーは「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」。そんなテーマを持つ本作の魅力をどうお感じですか?
「うれしいことも楽しいこともあるし、いろいろな出来事が起こりますが、それを包んでくれる優しさがある。それがこの作品の最大の魅力だと思うんですね。その温かさが、今から学校や会社に行くという、今に生きる人たちを包んでくれる空気があるんですよね。僕はその感じが好きなんです。それと、 “この世はうらめしい(憎い、恨めしい)”のは人なんだと思わせてくれる感じも好きですね。そう思っていいんだよ、と感じさせてくれるのも魅力だと思います」
──最近、板垣さんが“うらめしい”と思ったことはありますか?
「僕、虫が苦手なんですが、ここのところ、木が多いところに行くことが多かったんです。最初は虫を見ては『わぁっ!』と驚いてたんですが、3日ぐらいたつと慣れるんですよね。ちっちゃい虫ぐらいだったら“かわいいな”と思うようになりました。うらめしいと思っているものほど、慣れるとなんとかなるものですね(笑)」

【プロフィール】
板垣李光人(いたがき・りひと)
2002年1月28日生まれ。2012年に俳優デビュー。2024年に公開された映画「八犬伝」「はたらく細胞」「陰陽師0」で、第48回日本アカデミー賞 新人賞を受賞。映画「ミーツ・ザ・ワールド」が現在公開中のほか、12月5日には声優を務めた映画「ペリリュー─楽園のゲルニカ─」が公開される。また、俳優業のほか11月6日に作・絵を務めた初めての絵本『ボクのいろ』(Gakken)を発売。
【番組情報】
連続テレビ小説「ばけばけ」
NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15 ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月~金曜 午前7:30~7:45
文/TVガイドWeb編集部
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