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「たとえあなたを忘れても」畑芽育を勇気づけた風間俊介の“ある言葉”とは？ 大躍進を遂げた2023年の活動も振り返る2023/11/26

　ABCテレビが4月から新設し、日曜夜10時の全国ネット連続ドラマ枠の第3弾として放送中のドラマ「たとえあなたを忘れても」。脚本家・浅野妙子さんが手掛ける本作は、夢を失った女性と、記憶を失った男性が奏でる切なくも美しいヒューマンラブストーリーです。

　ピアニストになるという夢を失った河野美璃（堀田真由）と、記憶を失った青木空（萩原利久）、ひょんな出会いから距離を縮めてきた2人ですが、空が子どもの頃の記憶と、父を亡くした時の記憶を思い出す展開が訪れました。第5話では、空がふさぎ込んでいたつらい過去が明かされ、その過去を受け入れたことで気持ちを確かめ合った2人は、再び前へと歩み始めました。

　それぞれが自分自身と向き合う中、空と同じように記憶障害を抱えている宮下茜も、今夜11月26日放送の第6話で自身の過去や記憶と向き合うことになります。その放送を前に、ここでは茜を演じる畑芽育さんのインタビューをお届け。記憶障害を抱えるだけでなく、関西弁をしゃべる茜の役作りにはかなり苦労しながらも、「本当にかわいらしい子」とその魅力を語ってくれました。

――作品も折り返しに入りました。ここまでの撮影はいかがですか？

「皆さん制作発表会見でもおっしゃっていましたが、神戸がすごく奇麗な街で、いいロケーションで撮影させてもらっていますし、毎日撮影後にホテルに帰ると、普段は実家で暮らしていることもあって、1人の時間があることがちょっと新鮮です。役に集中できる環境に身を置けているので、新しい自分で挑めていると思います。ここまで本当にあっという間で、基本的には風間俊介さん演じる（遠山）保先生とのシーンが多いのですが、ほかのキャストの方たちとも絡むシーンがだんだんと増えていって、すごく楽しいです」

――浅野さんの手掛ける脚本にはどんな印象を持たれましたか？

「浅野さんも『すごく純粋に美しいラブストーリーができた』とご自身でもおっしゃっていたのですが、その言葉の通りすごく奇麗で透明感のある美しいドラマができているのではないかと思います。映像もすごく奇麗じゃないですか？」

――人物描写だけでなく、街並み一つ切り取ってもすごく奇麗だなと感じます。

「どこを切り取っても奇麗ですし、役者陣はもちろん、制作スタッフの皆さんも撮影に一つも妥協していないといいますか。光の角度とかも5、6分ぐらい待って撮影を再開したりと、細かいところにもすごくこだわっているので、皆さんのこだわりが集結したドラマが完成していると思うと、『作品作りっていいな』とあらためて思います。そこにキャスト陣の仲の良さもあって、楽しい空間ができています」

――畑さんは今年、地上波の連ドラ出演はこれで8本目になりますね。作品の話が来た時はどんなことを感じましたか？

「8本もあったんですね…！　今までやってきた作品も、さまざまなハンデのようなものを抱えた役はあったのですが、今回は記憶障害のある女の子だったので、今までやってきた役とはまたテイストが違うというか。その点には少しだけハードルを感じていたのですが、監督やプロデューサーさんと話しているうちに、そういった分からないものに対する不安は徐々になくなっていきました。『思うようにやってみてほしい』と言っていただけたので、すごくやりやすい環境でお芝居をさせてもらえています。今回、オーディションを経て宮下茜という役を任せてもらえて、後からお話を聞いたのですが、『茜という役を任せて、そこから役の幅がすごく広がったんだ』とおっしゃっていただいて。茜に色をつけてあげられているんだなと思うことができて、とてもうれしかったです」

――今回はオーディションで役が決まったんですね。オーディションは振り返ってみるといかがでしたか？

「やっぱりオーディションは何回受けても緊張しますが、結構ワクワクしたりもするんです。オーディションは得意な方ではないのですが、一つの役をいろいろな人が演じているのを見ることができる機会ってなかなかないので、それもすごく面白いですね」

――オーディションに手応えを感じるということも特にはなく？

「正直、なかったです…。オーディションの台本の時点で茜は関西弁だったんです。だから『関西弁のオーディション初めてだな』と思いながら、右も左も分からないまま自分の勘だけで演じましたが、純粋にお芝居をすることができて楽しかったです」

――そんな中で勝ち取った宮下茜という役には、どんなことを感じていますか？

「本当にかわいらしい子だなと思っています。今回、関西弁ということもあって、セリフの覚えがものすごく悪くなったりテンポ感がつかめなかったりと、このお仕事を通して積み重ねてきたものを一から作ることになったと感じることもあって。ここでスイッチが切り替わるわけではないけど、全部が初めてだから、今回は特に新鮮な気持ちでお芝居をさせてもらっている感覚があります。茜は関西の女の子なので、カラッとした軽快な感じで演じているのですが、その中で記憶障害を抱えていたり、過去にいろいろなトラウマを抱えている女の子でもあるので、ところどころに影が見える細々としたポイントは、監督と『ここで暗い感じを出そう』『ここはもうちょっと振り切って明るくやってみよう』と相談をしながら、どれだけ茜という役を皆さんに愛してもらえるか、かわいらしく思ってもらえるかを考えながら演じています」

――最初は茜には明るいイメージを持っていたのですが、家族とのシーンを経て、彼女が抱えている暗い部分も見え隠れしていますよね。

「そうなんです。『なんかこの子引っかかるな』という演出が各話に散りばめられていて、第6話で茜の過去が明らかになるのですが、私はやっぱりこの茜という女の子が本当にいとおしいと思いますし、その感情で動いているのかなと思います。保先生への恋愛感情だったり、その関係も話が進むにつれて甘酸っぱい気持ちになるようなシーンも多いので、注目してほしいです」

――本作では関西弁にも初めて挑戦されているとのことですが、練習などで何か印象に残っていることはありますか？

「普段から自分のお芝居を見るのが苦手な方なのですが、関西弁でお芝居している自分は特に見るに耐えないというか…（笑）。『これで合ってるのかな』と思いながら、そのシーンの撮影の直前まで（方言の）先生にセリフを横でずっと言ってもらいながらセリフを吐き出しています。ちょっと歌を覚える感覚に近い感じで音を発しているので、『なんかちょっといつもと違うな』と思いながらも『私の思い描いている茜でいられているな』と感じているので、ギリギリ合格ラインなのかなと（笑）。もしかすると、関西のネーティブの方が見たら『違うな』と思うかもしれないのですが、ぜひ温かい目で見ていただけると…（笑）。でも、すごく印象に残っていることがあるんです」

――どんなことがあったのでしょう？

「いつも風間さんとのやりとりで関西弁をしゃべるので、ずっと隣で『関西弁難しいな…』と言っていると、風間さんは『僕は関西弁とか方言のことは全く分からないけど、茜ちゃんとしてのお芝居は200点だよ』と言ってくれたんです。もうそれがすっごくうれしくて！　その言葉をかけてくださってからは、関西弁の出来ばかりにとらわれずに、すごく気持ちがリラックスして、緊張せずに撮影にも挑めるようになりました」

――撮影を重ねてきたことで、関西弁のイメージも変わりましたか？

「変わりました！　私が今まで感じていた関西弁特有の強さみたいなものって、やっぱりイントネーションによるもので、その人の性格や感情が乗っているというよりは、ささいな音の違いで強く感じてしまったりするんだなと思いました。今回、関西弁を教えてくださる先生もものすごく優しい方ですし、関西で出会ったタクシーの運転手さんや店員さんが話す関西弁を耳を澄まして聞いて、いかに自然な関西弁を取り入れられるかというのを日々考えながら過ごしています」

――先ほど風間さんのお話もありましたが、風間さんの印象を教えてください。

「すごく誠実な方で、“初めましてだけど初めましてじゃない感覚”があります。私が小さい頃からテレビで見ていた方でしたし、テレビで見たままの温かい雰囲気をまとっていらっしゃるので、空き時間もたくさん話しかけてくださって。撮影初日は、私が誰が見ても分かるくらいすごく緊張していたのですが、その日は風間さんが好きな飛行機の話をずっとされていて、そういう趣味の話だったり神戸の話をずっとしてくださるので、すごく和みます。今では私が好きなパンについて語れる相手にもなっていただいて、うれしい限りです」

――風間さんが演じる保の魅力はどのように感じていますか？

「ちょっとずるいと思いますね。病院の先生だから誰にでも分け隔てなく接していて、だからこそ茜の本当の姿も認めてくれる。茜にとっては家族もすごく大事な人たちだけど、17歳までの記憶が全部なくなっているから、両親のことも周りの友達のことも全く思い出せない状態で、どこか他人のように感じている瞬間があると思うんです。そんな中で、茜が記憶をなくしてから初めて出会った保先生は、茜が歩む新しい人生においてすごくキーパーソンになる人で。そういう大事な瞬間に居合わせていたから、穏やかな保先生に特別な感情を持ったのだと思います。これはちょっと違うのかもしれないのですが、学校の先生って、少し憧れに近いような感覚があるんじゃないかなと思っていて。そういう憧れからちょっとずつ恋心が生まれていって、茜もきっと同じような感覚だったのではないかと思うんです。だから保先生と美璃ちゃんが一緒にいるのを病院で目の当たりにして、ちょっと嫉妬したりもする。そういう部分もかわいらしいですし、先生に振り向いてほしくてどうにかもがいている茜のかわいらしさを引き立ててくれているのは保先生なんです。手が届かないような憧れの存在だから、私にはずるく見えてしまう瞬間もあります」

――第3話で美璃と保の関係がいとこと分かった時の茜の安心しきった表情もすごく印象的です。

「本当にかわいいですよね（笑）。しかも、2人がいとこだと分かった後、ルンルンで歩くシーンもあって。『なんてかわいいんだ、この子は！』と思いますし、けなげで分かりやすくていとおしいです」

――今回、作品のテーマが“記憶”ということで、20年以上芸能活動をされてきた畑さんにとっての“忘れられない瞬間や記憶”を教えてください。

「4、5歳ごろに芸能活動している自覚が芽生え始めて、小さい頃はスチール撮影が多かったのですが、男性が苦手だったんです。お父さん役を務めてくれるモデルさんに抱っこされてギャン泣きして撮影を止めてしまったり、カメラを持ったおじさんが嫌すぎてギャン泣きして撮影を止めてしまったり、そんなことばかりでしたね（笑）。小さい頃は、大人が怖くてたくさん迷惑をかけてしまった記憶がすごくあります」

――そこから15年以上役者の道を歩んできて、ご自身の芸能生活を振り返るとどんなことを感じますか？

「いろいろな作品をやらせていただいて、その作品ごとの出来事はなんとなく覚えているのですが、特に印象的なのは、毎作品ごとのクランクアップの瞬間。うれしいことに花束をいただいて、皆さんの前で一言あいさつさせていただくことが多いのですが、その瞬間に気持ちがぐわーっとなるんです。幸せでもあり、悔しさもあったりする時もあれば、寂しいと思いながらも作品が終わった解放感もあったりすることもある。いつも感情がゴチャゴチャになってしまうのですが、いろいろな感情がめまぐるしく動く瞬間って、クランクアップの時だと思うんです。その瞬間が来るたびにちょっとずつ成長していると思いますね。それを積み重ねてきたことで、今やっとここまで来れたかなという感じです」

――2023年は写真集を出されたり、ドラマや映画にも引っ張りだこでしたが、特に成長したと感じたタイミングはありましたか？

「今年はいろいろありましたね。どの現場でもものすごく成長させていただきましたが、特に映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』の公開はものすごく大きかったと思います。プロモーション期間でいろいろなバラエティーに出させてもらいましたし、何より映画館に足を運んで見に来てくださったお客さまを前にごあいさつさせていただいて、その光景を目の当たりにした時に言葉では表せないような感動を味わいました。役者をやってきてよかったなと思いましたし、『ここからまたあらためてスタートする』というスイッチが入った瞬間でもありました」

――この作品が、畑さんにとって2023年を締めくくる作品にもなるかと思います。ドラマもクライマックスに差し掛かっていますが、見ている方にはどんなことを伝えたいですか？

「たくさんの方にこの作品を見ていただきたいという気持ちが一番です。今年は、1、2年前までは考えられないようなうれしい出来事がたくさん降り注いできた年だったので、今、このすてきな作品に参加させてもらって、皆さんと一緒に作品作りをさせていただいていることに感謝をしつつ、見ていただいている方にも、いろいろなキャラクターの人間関係や恋愛模様を最後まで楽しんでいただきたいです。私自身も役者として、『なんでこの作品に出させてもらえているのか？』『なんで自分が演技をしているのか？』とあらためて考えていきたいと思っています」

――クランクアップのお話もありましたが、今作のクランクアップの瞬間はどんな感情があふれるのか、楽しみですね。

「どうなんだろう…！　私、作品のクランクアップで泣いてしまうこともあって。なんというか、いろいろな感情がバーッとなってしまうというか。もうすでに撮影が終わるたびに達成感のある毎日を過ごさせてもらっているのですが、きっと（撮影が）終わる頃も、悔いはないんだろうと思います。いい涙が流せるといいな。この調子ですがすがしく作品を終えられるように、健康に気を使いながら皆さんと切磋琢磨（せっさたくま）して撮影していきたいと思います」

取材・文／平川秋胡（ABCテレビ担当）

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