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兵頭功海、「いつか日曜劇場に真ん中で帰ってこられる役者になりたい」――「下剋上球児」インタビュー2023/11/19

兵頭功海、「いつか日曜劇場に真ん中で帰ってこられる役者になりたい」――「下剋上球児」インタビュー

 TBS系で放送中の連続ドラマ「下剋上球児」は、鈴木亮平さんが「日曜劇場」枠で約2年ぶり2度目の主演を務め、高校野球を通して、現代社会の教育や地域、家族が抱える問題やさまざまな愛を描くドリームヒューマンエンターテインメントです。

 ここでは、真面目で臆病なピッチャー・根室知廣を演じる兵頭功海さんにインタビュー。根室を演じる上で意識していることや現場でのエピソードはもちろん、本作で学んだことや球児キャストから受けた刺激についても語っていただきました。

――初めに、ここまで根室を演じてこられての感想をお聞かせください。

「毎日、朝から晩までグラウンドでドロドロになりながら野球をしているのが、学生時代に戻ったようです。この前もヘッドスライディングして泥だらけになるシーンを撮ったのですが、そういう一つ一つを楽しみながら撮影できています。いい意味で行きたくないと思ってしまうほどリアルな部活感覚があり、本当に毎日充実した日々を過ごせていると思います」

――野球強豪校出身とのことですが、あらためてご自身の野球経験について教えてください。

「10歳から高校3年生まで野球をやっていました。始めたばかりの頃は外野やキャッチャーもやったことがあるのですが、本格的に始めてからはずっとピッチャーでした」

――根室はサイドスローの選手ですが、ご自身と同じですか?

「僕はオーバースローで投げていました。高校の時にわざとサイドスローに変えて下半身の使い方を覚える練習をしたことがあったので、サイドスローの投げ方は自分の体が漠然と覚えていました。プロ野球選手の投げ方や打ち方をまねするのは“野球部あるある”なのですが、今回も、学生時代に同じチームにいたサイドスローのピッチャーの投げ方をまねして、根室の投球フォームを作り上げました」

兵頭功海、「いつか日曜劇場に真ん中で帰ってこられる役者になりたい」――「下剋上球児」インタビュー

――役柄と共通するところはどこですか?

「オーディション合格発表の時、新井(順子)プロデューサーからは『本人は王様タイプのキャラクター』と言われたくらいなので、似ているのかは分からないですね(笑)。でも、ずっと支えてくださっているマネジャーさんには『つらい環境でも分からないくらい、いつも笑顔でいるところはそっくり。ぴったりの役柄だね』と言ってもらいました。自覚はないのですが、日々近くで見てくださっている方が言ってくださったことなので、きっと正しいんだろうなと思います」

――今後、同学年の5人と一緒に成長していく過程も描かれるかと思いますが、どんなところで根室の成長が見られますか?

「根室は臆病なところがあるので、入学当初は楡伸次郎(生田俊平)を怖がっていたり、椿谷真倫(伊藤あさひ)のように優しそうな人にしか話しかけられない一面がありました。でも、学年が上がるにつれて、先輩にもツッコミを入れられるようになったり、日沖壮磨(小林虎之介)にも『怒りすぎや!』と注意することができるようになるのが面白い成長です」

――特にどういったシーンでそう思われますか?

「先生たちの後ろに映る際はアドリブでお芝居することが多いのですが、そういったさりげないシーンの端々で関係値の変化を感じています」

――塚原あゆ子監督から言われたことで印象に残っていることありますか?

「塚原さんはよく現場で『役をキャラっぽくしなくていい』とおっしゃっています。お芝居のテストが終わった後にも、『やりすぎなくていいよ。今のをもっと自分に落とし込んでみよう』と言いにきてくださるんです」

――その言葉が役に生きていると感じる瞬間はありますか?

「塚原さんからのアドバイスは、セリフのない箇所のナチュラルな会話につながっていると思います。役に成り切ろうとしすぎると言葉がどうしてもセリフっぽくなったり、固くなったりしてしまうなと。自分と役が近ければ近いほど素のままの言葉が出るので、そういう狙いもあって現場の空気を作ってくださっているのかな思います」

――現場全体にそういう雰囲気が漂っているんですね。

「そうですね。普通だったら本番の声が掛かる前にスイッチを切り替える人が多いと思うのですが、本作は本番直前の笑顔そのままで撮影が始まります。本作に関してはそれが一番自然でいいのかなと思います」

鈴木亮平らの妥協のない姿に「僕も先輩方のようにならなければ…」

兵頭功海、「いつか日曜劇場に真ん中で帰ってこられる役者になりたい」――「下剋上球児」インタビュー

――鈴木さんと2人でやりとりするシーンも多いかと思いますが、現場ではどのような会話をされていらっしゃいますか?

「奥寺佐渡子さんの脚本は、僕らに考える隙間をたくさん与えてくださるすてきな台本なのですが、その分、シーンごとの間に何があったのかさまざまな解釈ができ、考え方によって意味が変わることもあるので難しいなと感じることもあります。本番ではお互いに共通認識がないと統一感のないシーンになってしまうと思うのですが、鈴木さんが僕のような若手とも同じ目線で話して、シーンとシーンの間を埋めてくださるので、一つ一つのシーンがすごく丁寧に撮れていると思います」

――ワンシーンごとにこだわられているんですね。

「はい。第1話のフェリー乗り場で声を掛けられるシーンでも、亮平さんと塚原監督が何十分も話している姿を見ることができました。主演として毎日大変な撮影をしていたら、少しは妥協してしまうような瞬間も人間としてあって当然だと思うのですが、亮平さんにも塚原さんにも絶対にそれがありません。僕も先輩方のようにならなければならないと思える現場です」

――山住香南子役の黒木華さんとはどんな関係を築かれていますか?

「黒木さんは球児たちにとって寮母みたいな存在になっています。少し後ろに引いている時にも『しっかりやろう!』と現場を締めてくれますし、優しいまなざしで僕らを見守ってくれていて、相談にも乗ってくださいます。とてもフレンドリーな方なので、球児みんなでくだらないことを話している時にも『何話してるの(笑)』と聞いてくださいます」

――山下美月さんとのきょうだいらしいやりとりもすてきです!

「山下さんは人格者です。人として素晴らしい方で、壁が一切なく話しやすい空気を作ってくれます。きょうだい役ではありますが、正直、一緒に撮影する日数は多くなくて、たくさんお話できているわけではないんです。それでも本当のお姉ちゃんみたいな感覚があるんですよね。年齢も実は僕の方が1個上なんです」

――山下さんも年齢差についておっしゃっていました。当初は姉に見えるか不安に思っていたみたいです。

「本当ですか! 僕こそ山下さんの弟に見えるかどうか心配していたのですが、第2話で、山下さんが洗濯物を干している背中を見て、心から姉ちゃんだと思えました。お芝居はもちろん、持っている雰囲気も素晴らしい方なので、とても感謝しています」

「初めてドラマに出演するメンバーこそ自然な表情をする瞬間がたくさんある」

兵頭功海、「いつか日曜劇場に真ん中で帰ってこられる役者になりたい」――「下剋上球児」インタビュー

――放送後、周りからの反響はいかがですか?

「全国で放送されているので、地元の福岡の友人からも連絡がきました。特に多かったのは『南雲(脩司)先生、教員免許を持っていないのやばすぎる!』です。両親やほかの俳優さんを担当しているマネジャーさん、違う番組でお世話になったスタッフさんたちからも連絡をいただきました」

――日曜劇場でご自身がお芝居をしている映像をテレビでご覧になっていかがですか?

「誰もが知っている日曜劇場という大きな枠で、ピッチャーとして堂々と投げたり、亮平さんとお芝居していることを放送で見てあらためて実感しています。現場で変にプレッシャーを感じることはないのですが、すごい環境でお芝居をできていて幸せです」

――本作で、役者として学べたことや成長を自覚した部分はありますか?

「たくさんある中でも、時にはお芝居をしない方がいいこともあると、この現場で学びました。根室の役設定だけを見ると、臆病で暗いキャラクターを想像してしまいますが、実際はそういう人でも笑う時はたくさん笑うし、明るい一面もあります。それは普段の僕らと同じで、僕にも明るい時と家から出たくないと思う両方の側面があります。そういう人間らしい生っぽさを役でも出すためには、極論、お芝居をしないことも大切だということを、塚原さんの演出や亮平さんのお芝居を見て感じました」

――ほかの球児キャストの皆さんから刺激を受けることもあるのでしょうか?

「僕は役者を始めて5年目になりますが、本作には今回が初めてドラマにレギュラー出演するようなメンバーもいます。そういうメンバーこそ“この顔すごく自然だな”と思う表情をする瞬間がたくさんあって、僕も心のままに笑うお芝居をしたいなと思えます」

――本作がご自身にとってどんな作品になることを期待していますか?

「僕にとって、今年は初めて地上波のゴールデンプライム帯の作品に出させてもらった年になりました。出演作を見てくださった方に『こいついいな』と思ってもらえたかどうかは来年以降になって分かることだと思うので、今は根室という役を一生懸命演じて『下剋上球児を見たから一緒に仕事したいなと思った』と言ってもらえるように頑張りたいです。いつか、日曜劇場に真ん中で帰ってこられる役者になりたいと思います!」

――では、最後に第6話の見どころをお願いいたします。

「富嶋雄也(福松凜)と野原舜(奥野壮)たちの夏の大会が始まります。日沖誠(菅生新樹)の代で負けてから越山高校野球部がどう成長したのか、ストーリーはもちろん、野球の上達度合いや試合中の様子からも分かってもらえる回になっています。特に、富嶋、野原、紅岡祥吾(絃瀬聡一)の3人の先輩たちの背中には、根室としても僕としてもグッとくる瞬間がたくさんがあったので楽しみにしていてください。前半戦は気弱で球も遅い根室でしたが、後半になるにつれてどんどん成長してチームを支える存在に。犬塚翔(中沢元紀)にライバル意識を持てるぐらいには成長していくので、その過程を見守っていただけたらうれしいです!」

兵頭功海、「いつか日曜劇場に真ん中で帰ってこられる役者になりたい」――「下剋上球児」インタビュー

【プロフィール】

兵頭功海(ひょうどう かつみ)
1998年4月15日生まれ。福岡県出身。主な出演作は、「CODEー願いの代償ー」(日本テレビ系)、「騎士竜戦隊リュウソウジャー」(テレビ朝日系)、「ドラフトキング」「ドロップ」(WOWOW)。映画「消せない記憶」(2023年)では映画初主演を務めた。主演映画「18歳のおとなたち」が23年12月に先行上映、24年春公開予定。

【番組情報】

「下剋上球児」
TBS系
日曜 午後9:00〜9:54

文/TBS担当 松村有咲



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