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“伝説の監督”深作欣二の魅力を息子・深作健太が語り尽くす!2022/12/27

スペシャルインタビュー/深作健太

 東映チャンネルでは、深作欣二監督の没後20年メモリアルとして、2023年1月から9カ月連続で深作作品を総力特集することが決定。今回、深作監督の息子で、映画や舞台などを手掛ける深作健太氏に、父と、その作品の魅力について聞いてみた。

── 没後20年を記念して、1月から深作欣二監督作品が特集されます。多くの作品を撮ってきた欣二監督ですが、最初に見た作品は覚えていますか?

「5歳の時、東映京都撮影所の『柳生一族の陰謀』(1978年)の撮影現場に行って、父が楽しそうに現場を駆け回る姿を初めて目にしました。その次に父が撮ったSF『宇宙からのメッセージ』(同年)の現場も見学しました。初めて見た作品もそのどちらかだったと記憶しています。当時は8mmフィルムのソフトがあって、それを父が自宅で映写機にかけて見せてくれました。この年は『スター・ウォーズ』の公開年で、『宇宙からのメッセージ』の後に『スター・ウォーズ』を見ましたが、なんでこんなに違うんだろうとがく然としましたね(苦笑)。ただ、殺陣は日本映画の方がカッコいい、とも思いました。ダース・ベイダーより千葉真一さんや成田三樹夫さんの方が強そうだ、と」

── たくさんある作品の中で、一番好きな欣二監督の作品は?

「渡哲也さん主演の『仁義の墓場』(75年)です。主人公のヤクザは、父と同じ茨城出身で凶暴な一面と憎めない面白い一面があって、恋人や親分さんや、自分に近い人にほど迷惑をかけてしまう。あの在り方に、どこか父の青春像が重なって見えました。映画人として、はみだし者の世界への父なりの共感もあったと思います。映画監督も“堅気(かたぎ)”の仕事ではないですし」

──「仁義の墓場」もそうですが、欣二監督といえば、アウトローの生きざまを描いた作品が有名です。中でも代表的な「仁義なき戦い」シリーズを初めてご覧になった時は、どんな感想を持ちましたか?

「グレそうだった中学生時代に初めてビデオで見たんですが、弱者の側に立って映画をつくる深作欣二は、あらためて素晴らしい監督だと思いました。父は強い者と国家権力が大嫌いでした。15歳で終戦を迎えて、大人たちが言うことがそれまでとガラリと変わり、裏切られたと思った。以来、強いものに寄り添う人間を一切信じなくなった。『仁義なき戦い』(73年)では親分に利用されたチンピラたちが悲惨な死に方をしますが、あれは国によって戦場に送られ、死なざるを得なかった当時の若者への鎮魂歌でもあるし、父の作品を見直すと、ほぼすべてが青春賛歌になっているんです」

スペシャルインタビュー/深作健太

── 戦場に送られる10代というと、「バトル・ロワイアル」(2000年)を連想します。健太さんはプロデュースと脚本を担当されましたね。

「僕が原作本を買って机に置いておいたら、父が手に取ったんです。帯に『中学生42人皆殺し』と書かれていて、そこに興味をひかれたようでした。そして、読んで『面白い、これを撮りたい』と。学生が死体になっていく原作の描写に、戦時中の自分と日本の姿を重ねていたんです。でも、すぐには東映から企画にOKが出なくて、『撮るなら健太を人質に出せ』ということに。父は予算もスケジュールも守らない人でしたから(苦笑)、息子をプロデューサーにすればさすがに守るんじゃないかということだったんでしょう。しかも脚本家がなかなか決まらなかったので『これも健太が書け』と」

── 欣二監督は「バトル・ロワイアル」の続編に取りかかった直後に入院し、そのまま亡くなられました。それから20年経って、今回のような特集が組まれることについて思うことはありますか?

「生前、よく一緒に酒を飲むと、『映画は不滅なようだが、忘れられていく映画も、古くなっていく映画もある。映画監督が死ぬ時は、忘れられた時なんだ』とつぶやいていたことを思い出します。大好きな父親ですし、いなくなってしまったのは寂しいですけど、こうして20年経っても大勢の方に作品を見ていただいて、今回のような特集まで組んでいただいて、まだ見たことのない方が作品に触れる機会を作ってもらえる。深作欣二という監督は、つくづく幸福な監督だと思います。ご覧になったことがある方も、見直せば再発見があるはずですし、引き続き応援してくだされば。深作欣二の作品を、よろしくお願いします」

── ちなみに、ご自宅ではどんな方でしたか?

「『必殺』シリーズの中村主水みたいでしたね(笑)。夜に仕事に出かけて仕事先ではカッコいいけど、家ではおとなしくて奥さんに小言を言われてる(笑)」

◆深作家の正月の過ごし方は?

「僕が物心ついてからは、毎年、千葉真一さんとジャパンアクションクラブ(現ジャパンアクションエンタープライズ)の皆さんと一緒にスキー場で年を越していました。真田広之さんや志穂美悦子さんが一緒で。そこで映画に対する夢を語り合った。今では親父も千葉さんももういないので、お正月の過ごし方が分かりません(笑)」

【プロフィール】

深作健太(ふかさく けんた) 
1972年9月15日生まれ。東京都出身。O型。主な監督作品は、映画「バトル・ロワイアルⅡ【鎮魂歌】」(2003年)、「僕たちは世界を変えることができない。」(11年)ほか。主な演出作品に、舞台「里見八犬伝」(12~19年)、「火の顔」(21年)などがある。

取材・文/佐藤新 撮影/上野留加

■東映チャンネル 視聴案内 https://www.toeich.jp/guide/info



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