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世界的ゲームクリエーター・小島秀夫が激白!6月29日に生誕100年となる“特撮の神様”レイ・ハリーハウゼンへの思い【前編】2020/03/27

世界的ゲームクリエーター・小島秀夫が激白!6月29日に生誕100年となる“特撮の神様”レイ・ハリーハウゼンへの思い【前編】

「特撮の神様」と呼ばれ、スティーヴン・スピルバーグやジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロンなど、数々の映像作家や技術者に多大な影響を与えてきたレイ・ハリーハウゼン(※1)。「メタルギア」シリーズなどで世界的に高く評価される、日本を代表するゲームクリエーターの小島秀夫も、ハリーハウゼンを尊敬する熱烈なファンだという。

世界的ゲームクリエーター・小島秀夫が激白!6月29日に生誕100年となる“特撮の神様”レイ・ハリーハウゼンへの思い【前編】

「確か僕がまだ子どもの頃、テレビの『おはよう!こどもショー』(日本テレビ系)という朝の子ども番組があって、そこの映画コーナーで『アルゴ探検隊の大冒険』を紹介していたんです。その時に見た骸骨の兵士たちがはい出てくるシーンが衝撃的で、今思えばそれがハリーハウゼンとの初めての出会いですね。ただ、当時は幼かったので、実際に映画本編を見たのは後にテレビ放送された時で、ハリーハウゼンという名前をちゃんと認識したのもだいぶ後になってからだと思います。そういえば、受験に失敗したその日に『タイタンの戦い』(※2)を見ました(笑)。落ち込んだ気分で映画館へ行ったら“あっ、ハリーハウゼンの映画やってる!”と気付いて。そんな思い出もありますね」。

 ハリーハウゼン作品の魅力は、その卓越した職人技と高い芸術性にあると小島は語る。

「僕らが子どもの頃の特撮モンスター映画には、大きく分けて4種類あるんですよ。まずは『ゴジラ』のような着ぐるみ。次にジム・ヘンソン(※3)みたいなマペット(操り人形)。あとはアーウィン・アレン(※4)の映画みたいに、爬虫類など本物の生物にツノとかを付けて怪獣のように見せる“トカゲ特撮”。そして、ハリーハウゼンのように人形の動作や表情を1コマずつ動かして撮影するストップモーション・アニメ(※5)。その中でも、ハリーハウゼン作品に出てくるようなモンスターは、ストップモーションでないと表現できないんですよ。基本的に彼が演出しているのは特撮パートだけで、映画自体の出来は作品によって異なりますけれど、それでもハリーハウゼンの手掛けた部分はどれも突出している。完璧な職人技に圧倒されるんです」

「それから、ハリーハウゼンと同様にリスペクトされている特撮監督として円谷英二(※6)さんがいらっしゃいますけれど、円谷さんがあくまでも特撮の技法を編み出した人であるのに対し、ハリーハウゼンは技術面だけでなくモンスターのデザインから絵コンテ(※7)まで1人で担当している。そんな人はなかなかいません。それどころか、彼のように人形を動かせる人はほかにいない。ハリーハウゼンの映画に出てくるモンスターのような動作は、CGですら再現することが難しいんです。彼に影響を受けた特撮クリエーターは、フィル・ティペット(※8)をはじめ、大勢いますけど、誰もハリーハウゼンを超えていませんし、たとえ超えていたとしてもスタイルが違いますよね。まさに唯一無二の映像作家であり芸術家なんです。だからこそ、映画のオープニングでも彼の名前が大きくクレジットされていたんでしょうね(※9)」

「あと、彼の創り出したモンスターって、とても怖いかと思いきや意外と顔やしぐさがかわいいんです。どこか愛嬌があるというか。『タイタンの戦い』に出てきたメドゥーサは怖かったですけれど、『アルゴ探検隊の大冒険』のハーピー(※10)はよく見ると顔が憎めないですし。『地球へ2千万マイル』の怪獣イーマ(※11)なんか、確かにローマの街中で大暴れはしますけれど、その一方で人間に追い詰められてかわいそうなんですよ。そういう、なんとなく親しみの湧くモンスターの造形も魅力ですよね」

世界的ゲームクリエーター・小島秀夫が激白!6月29日に生誕100年となる“特撮の神様”レイ・ハリーハウゼンへの思い【前編】

※小島秀夫が同じクリエーターとしてハリーハウゼンから受けた影響を語る【後編】は4月3日に公開予定。

※1:1920年6月29日生まれ。アメリカ合衆国ロサンゼルス出身。少年時代に映画「キング・コング」(33年)を見てストップモーション・アニメーターを志す。人形の動作や表情を手作業で1コマずつ動かして撮影するストップモーションと実写映像を合成した、独自の「ダイナメーション」方式は、特撮映画の技術を大きく進化させた。2013年に死去。享年92歳。
※2:ハリーハウゼン最後の劇場用作品。81年製作。
※3:テレビ「セサミストリート」シリーズや映画「ダーク・クリスタル」で有名なマペットの第一人者。
※4:テレビ「宇宙家族ロビンソン」や映画「失われた世界」などをヒットさせた映画監督。
※5:ハリーハウゼンはストップモーション・アニメを発展させ、その手法は「ダイナメーション」と呼ばれた。
※6:映画「ゴジラ」シリーズやテレビ「ウルトラマン」シリーズで知られる特撮監督。
※7:撮影前に映像のイメージを具現化するイラスト。
※8:「スター・ウォーズ」シリーズや「ジュラシック・パーク」でオスカーを獲得した特殊効果アーティスト。
※9:当時のハリウッド映画で、オープニングに特撮スタッフが単独クレジットされることは、ハリーハウゼン以外にほとんどなかった。
※10:大きな翼を持った女性のモンスター。
※11:金星から地球へやって来た生命体。

【プロフィール】

小島秀夫(こじま ひでお)
1963年8月24日生まれ。東京都出身。乙女座。A型。87年に手掛けたゲーム「メタルギア」が人気を博しシリーズ化、9作に携わる。最新作にプレイステーション4用ソフト「DEATH STRANDING」。今年4月に英国映画テレビ芸術アカデミー(BAFTA)より映像メディアに多大な貢献をした人物に送られる「フェローシップ賞」を受賞。

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【番組情報】

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「シンドバッド7回目の航海」
シネフィルWOWOW 
3月30日 午前10:15~午後0:00

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「シンドバッド黄金の航海」
シネフィルWOWOW 
3月30日 午後0:00~2:00

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「シンドバッド虎の目大冒険」
シネフィルWOWOW 
3月30日 午後2:00~4:00

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「世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す[カラーライズ版]」
シネフィルWOWOW 
4月5日 午前5:00~6:30 ほか

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「地球へ2千万マイル[カラーライズ版]」
シネフィルWOWOW 
4月5日 午前6:30~8:00 ほか

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「アルゴ探検隊の大冒険」
シネフィルWOWOW 
4月5日 午前8:00~10:00 ほか

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「H・G・ウェルズのSF月世界探検」
シネフィルWOWOW 
4月5日 午前10:00~午後0:00 ほか



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