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YouTubeで話題!「メモ少年」の15年に及ぶ“ロバート愛”に直撃2022/06/08

インタビュー/篠田直哉「ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~」

 小学5年生でお笑いトリオ・ロバートの大ファンになり、ライブの内容を忘れずに持ち帰りたいという思いでノートに必死に書き留めていた少年。ロバートがそんな彼の姿を舞台上から見つけ、秋山竜次が「メモ少年」と命名した。以降、青春のすべてをロバートに捧げ、新卒でテレビ局に就職し、ロバートの番組を制作するという夢をかなえたのが、「メモ少年」ことメ~テレ(名古屋テレビ放送株式会社)の篠田直哉ディレクターだ。

 YouTubeチャンネル「テレビ局の生活」で、篠田ディレクターのこれまでの軌跡をまとめた動画「【ロバート秋山】元ストーカーがテレビ局員に。職権濫用で番組に呼ばれる」(https://youtu.be/sOqCuGZbnhI)を公開したところ、6月頭現在で558万再生超えとなる大反響を呼んだ。

 そんな篠田ディレクターが、ロバートと共に歩んだ15年間がつづられた書籍「ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~」が発売となる。一見偏ったテーマにも思えるが、本書は意外にもさまざまな社会的属性に刺さる内容になっている。“推し”を持つ人生の面白さ、そしてあふれ出るロバート愛についても、たっぷりと語ってもらった。

インタビュー/篠田直哉「ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~」

── YouTubeの動画で大きな注目を集め、本の出版へ…という怒濤(どとう)の流れですね。今の心境を聞かせてください。

「あの動画自体、誰も見ないと思っていたので“何でバズったんだろう?”と不思議だったんです。本が出ることも“誰が読むんだろう? 何が面白いんだろう”と思っていて、自分でもびっくりしています。こうして取材をしていただいている状況も、変な感じがするというか…。朝、取材現場に来て、今日の取材スケジュールを読み上げていただいたり、お弁当の好みを聞いていただいたり(笑)。いつもは自分が聞く側なので、その状況に笑っちゃいます」

── この書籍では、篠田さんの幼少期から、ロバートに出会った小学5年生当時、そしてテレビ局に就職してディレクターになり、ロバートの番組を制作するまでの軌跡がつづられていますね。あらためてご自身の歴史を振り返る作業はいかがでしたか?

インタビュー/篠田直哉「ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~」

「僕の人生の話で本ができるのかな…と思っていたんですが、思っていた以上に話すことがいっぱいありました。僕の人生の話をすると自然とロバートさんの話が出てきてしまうので、たくさんロバートさんのことをお話することができて、ただただ楽しい時間でした」

── その中で、ご自身であらためて「この時の自分の行動力はすごかったなぁ」と思ったことはありますか?

「すごいのはロバートさんなので、自分のことをすごいとは思っていないんですけど…。でもやっぱり、学園祭の実行委員をやって、ロバートさんを大学に呼んだ時は、広い意味で初めてお三方とお仕事をしたので、感慨深かったです。ロバートさんだけに来てもらうこと自体がありえないことだし、結局ロバートさんが『俺らが1時間のステージをやるよ』と言ってくれた優しさで実現できたことなんですけど。炎天下の屋外で、ファンの方だけではなくいろいろな人たちがいる前で、深夜番組でやるようなディープな内容のネタをやってくださったので、『それは後にも先にもないよ』とロバートさんも言っていました。ロバートさんにとっても二度とないお仕事で、きっと僕にしか企画できないようなライブになったので、とてもすてきな思い出です」

── その学園祭のお話も含めて、本当に“ロバート愛”が詰まっている圧倒的な内容でした。

「僕はファンだっただけで、何もすごいことはしていないんですけどね(笑)。ロバートさんはその間も『キングオブコント』で優勝したり、すごいことがたくさんがあったんですけど、僕はただテレビを見てライブに通っていただけなので。テレビ関係の仕事をしている方が本を出すことってあるじゃないですか。例えば、(テレビプロデューサーの)佐久間(宣行)さんとかは、作ってきた番組や、やってきた実績がすごい方だから、それを踏まえた経験を話せると思うんですけど。まだ何の実績もない僕がこの時点で本を出せるなんて、“やかましいな”と思いながら…(笑)、でもすごいことやなぁって思いますね」

インタビュー/篠田直哉「ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~」

── 篠田さんがいちずにロバートを好きで居続けられた理由は何だと思いますか?

「常にロバートさんが面白い企画やネタを出し続けてくださったからだと思います。それと、ロバートさんがほどよい距離感で、近すぎず、遠すぎず、ずっと“見守って”くださった…と言ったらおこがましいんですけど。僕にとってベストな、優しい形で接してくださっていたからずっと好きですし、好きだけじゃなくて“ロバートさんと仕事がしたい!”ということを目標にして行動することができたのかなと思います」

── “推し”を持つ生き方のよさを教えてください。

「行動力の源になったり、モチベーションになったりすることだと思います。僕が仕事をするようになってから感じたのは、この(ロバートについて書き留め続けた)メモが、仕事に生きることがあるんだなということです。僕は普段、音楽番組を担当しているんですけど、ロバートさんを見ていて面白いなと思ったことが、音楽番組で生かせたりして。そういうことも推しがいることのメリットなのかなと思います」

── もしロバートに出会っていなかったらどうなっていたか、想像できますか?

「僕はロバートさんを好きになる小学5年生までめちゃくちゃ暗くて引っ込み思案だったので、想像するとしたら、暗いままだったんだろうな…と。本当に出会えてよかったなって思いますね」

── 15年間追いかけ続けてきた中で感じる、ロバートの変化があったら教えてください。

「もともと、ロバートさんのコントには“原曲キー”があるんです。1980年代・90年代に好きだった歌手の方が最近テレビで歌っているところを見たら、キーが下がっていてちょっと悲しくなる…というのと同じ、と秋山さんが例えているんですけど。ロバートさんのコントも原曲キーから変わっていて。でもそれはそれで、おじさんのコントが年齢を重ねてまんまおじさんになっていたり、要はキーが下がっていても逆にそれが一番いい、という(笑)。あと、昔はカツラだったのに、秋山さんは地毛が長くなって、そのまま地毛でコントのキャラクターを演じるから“デフォルトでインパクトがあるキャラ”になっちゃってるんですよね(笑)。そういうふうにコントが変わっていくのを見て、毎回メモしています」

── 細かく見ていますね。

インタビュー/篠田直哉「ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~」

「お笑いの核のところでいうと、昔は“しっかりと作り込んだコントをやってみよう”、“シュールなコントをやってみよう”と試行錯誤していた時代があったと思うんですけど、だんだんとボケが一つしかないような形になっていって。『邪念0研究所』とか、『早口言葉を絶対にかまない技』とか、一つのボケをいかに15~20分間のコントに面白く広げるか、というネタだと思うんです。自分たちの一番やりたいお笑いを表現できるコントのフォーマットを作られたんだなぁという感じがしますね」

── すごい分析力ですね!

「人の芸風をこんな視点でしゃべるファンはいないですよね(笑)」

── そんな篠田さんの視点で書かれたこの本を、どんな方に読んでほしいですか?

「僕の人生の話なのに、気付くとなぜかロバートの話になるという気持ち悪い本なんですけど(苦笑)、世に1回しか出ていないようなロバートのエピソードも出てくるので、ロバートを好きな方にとってはもちろん面白いと思います。それから『“推し”とこういうパターンで仕事ができたりするんだよ』という意味では、好きな芸人さんやアイドルの推しがいる方にも読んでいただきたいなと思います。活字をほぼ読まず、仲のいいインパルス・板倉(俊之)さんの本しか最後まで読み切ったことがないという秋山さんでも読み切れたそうなので、普段そんなに本を読まない方でも読めるかもしれないですね」

── 読む人によっていろいろな印象を受ける本で、ロバートのコントをより面白く見るための指南書でもあると思います。

「そうなんですよ! 有名なコントや人気のコントが、実はロバート企画(ロバートが定期的に開催しているライブ)から派生していて…とか、生配信のノリでやっていたのがそのままコントになっていて…とか、その経緯が面白いんですよね。あと、(自分の)親世代の部長が読んだ感想が“泣いた”というものだったんです。何で!?と思ったんですけど、『子どもだったヤツが大人になって、仕事で夢をかなえていく姿に親目線で感動した』と。『お母さん世代が読むといいと思う』と言ってくださる方もいます」

インタビュー/篠田直哉「ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~」

── 育児書として読んでも面白いと思います。世のお母さんに刺さるのではないかと。

「意外です! そんな雰囲気は全く出ていないと思っていたので(笑)。あとは、マスコミの就活をしていて『どうやって自己PRを作るんだろう?』とか、『好きなことを仕事にするには?』とか、迷っている方に読んでいただくといいのかなとも思います」

── ノンフィクションですが、もはや壮大な人間ドラマですよね。

「ありがとうございます。うちの部長は『本が売れたらドラマ化する』と言っていました(笑)」

インタビュー/篠田直哉「ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~」

【プロフィール】

メモ少年こと篠田D/篠田直哉(しのだ なおや) 
1996年5月12日生まれ。大阪府出身。メ~テレ(名古屋テレビ放送株式会社)コンテンツビジネス局 コンテンツプロデュース部 兼イベントコンテンツ部所属。2019年にメ~テレに入社し、コンテンツビジネス局 映像コンテンツ部に配属され、1年間アシスタントディレクターを経験。その後、ディレクターとして映像番組、コンテンツ制作に携わる。これまでの担当番組は「デルサタ」、料理コーナー「ロバート馬場ちゃんの楽楽ごはん」(AD)、単発特番「唐沢佐吉のメ~テレ大爆発TV!!」「ロバート秋山の虚構ドキュメンタリー」(企画・演出)など。現在は、「BomberE」(隔週火曜深夜0:57。愛知・岐阜・三重の東海3県で放送)のディレクター、「LET’S HOT EVENT パパラピーズ」(火曜深夜1:29)のプロデューサーを務める。

【書籍情報】

「ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~」篠田直哉

「ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~」 
篠田直哉/著 
発売日:2022年6月25日(一部、発売日が異なる地域がございます) 
定価:1,760円 
発行:東京ニュース通信社 発売:講談社

ライブは録音・録画が禁止のため、ロバートのライブの内容を忘れずに持ち帰りたいという思いでノートに必死に書き留めていた篠田少年。ロバートが舞台上から見つけ、秋山竜次が「メモ少年」と命名した。学生時代のすべてをロバートに捧げ、メ~テレのディレクターとなってロバートと番組制作するまでに至った篠田直哉氏。“推し”を持つすべての人の心を動かす、“推し”への愛と行動力に満ちあふれた15年の軌跡が1冊の本に。

取材・文/依知川亜希子 撮影/尾崎篤志



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