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神木隆之介が“師匠”ビートたけしを見て思ったこととは?2019/11/16

神木隆之介が“師匠”ビートたけしを見て思ったこととは?

 11月10日放送(第42回)の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(NHK総合ほか)では、田畑政治(阿部サダヲ)が選手村の建設地を埼玉県から東京・代々木にしようと奔走し、ついに時の総理大臣・池田勇人(立川談春)を説き伏せることに成功しました。そんな田畑らの思いに反して、世間はオリンピックに無関心。ある日、何げなくテレビを見ていたら、見つけるんですよね。テレビ寄席で「オリンピック噺」を楽しそうに話している五りん(神木隆之介)を! 11月17日の第43回では、ついに落語パートと田畑パートがリンクします。そして、田畑からオリンピックの広告塔に任命される五りん。そんな彼を演じる神木隆之介さんにお話を伺いました!

── 五りんは、オリンピックを象徴する名前ですが、それを知った時はいかがでしたか?

「一人だけ浮かないかな? と思いました(笑)。象徴的過ぎて、『五りんって大丈夫なのかな』と。役割も教えてもらえず始まりは、『落語に興味がない弟子なんです』とそれだけで。『落語に興味ないけど弟子なんですよね? その中でどうやって生活していったらいいんですかね?』と、どういう立ち位置なんだろう?と思いながらやっていたら、落語をやることになり、時代をつなぐ人間になり、結果的にはうれしいなと思いましたけど、最初、宮藤(官九郎)さんには疑いの目しかなかったです(笑)」

── 第1回で古今亭志ん生(ビートたけし)の家に突然やって来るなど、謎が多い役でしたが、どこまでご存じだったのでしょうか? また、台本を読んで驚いたことはありますか?

「1部と2部で時代が変わる時に、時代を担うというか、つなぐ役割だということが徐々に分かってきました。その後、志ん生の弟子として、『オリンピック噺』を語っていくうちに、自分の先祖も分かってきて終わるのかなと思ったら、『違うぞ』と。最終回に近づいてくるにつれて、五りんというキャラクターが二転三転していって、こんなことも?という突拍子もないこともやるんですけど、それは彼の性格ともいえる、地に足がついてない感じから来ると思うんです。第1回から、ふらふらしていたので、余計に『何がしたいの? 本当はどこに行きたいの?』って、そのへんを台本で読んだ時は、僕自身、どこに着地をすればいいのか分からなくて動揺しました。でも、もっと進んでいくと、『なるほど、そういうことだったのか』と。結局、彼が目的を探すために必要なプロセスだったんですけど、驚きました。今後、五りんは意外な動きをするので、そこも作品の見どころの一つになっていると思います」

── 落語には興味はなかった五りんですが、二つ目になります。落語のシーンはいかがでしたか?

「個人的にはいっぱいいっぱいで、一生懸命やっていました。五りんは、みんなに話しながらも自分に聞かせているような、視聴者の皆さんが、オリンピックの歴史や関係性を知っていくと同時に五りんも知っていくようなキャラクターだなって思いました。最初、落語に興味がない役だと聞いていたので、落語をやらないと安心していたんですけど、やることになって『あれっ?』って(笑)。本当に大変なんですけど、一番皆さんの目線に近いキャラクターだと思うので、初めて聞いた人の新鮮度みたいなものが保たれていくように頑張っています」

── 五りんは古典落語はやりませんが、落語はどんな指導をされたのでしょう?

「落語は扇子や手ぬぐいの基本的な使い方や、しゃべる速度、みんなが分かるように“さげ”をいう方法など、基礎的なことを教えていただきました。僕はオリジナルキャラクターですが、(森山)未來さんが、何役もやっている姿を見て、『全然、違う人じゃん!』と思いました。しゃべり方が全然違うんですよね。未來さんが演じているのは、実在の方なので、ご本人の落語を聞いたことがある方もいらっしゃるんです。そういう人たちが少しでも首をかしげていると、『ヤバイ、どうしよう』って思うと話していて、求められているものが圧倒的に違うから大変だろうなと思いながら、オリジナルキャラクターはのうのうと見ていました(笑)」

── とても楽しそうに落語をしている姿が印象的ですが、エキストラである観客の反応はどんな感じでしたか?

「お客さんが芝居でも笑ってくれるとすごくうれしいんですよ。ノッてくるというか。芝居だけれども楽しさを共有するというのは、結束感や一緒のものを楽しめているという実感がすごくあるので楽しいです。五りんはオリジナルキャラクターだからこそ、楽しくやらなきゃいけないなと。元々、興味がないから仕方ないんですけど、最終的には落語をマスターできないまま終わるんです。でも、部外者だったのが、志ん生の目に留まり、今松(荒川良々)を超えて(笑)、二つ目になったわけですから、下手くそだけど、聞いていて楽しくなければいけないんだろうというのは絶対にあって。そのためには、自分自身も楽しまなきゃいけないと。かむことをおそれずに楽しんでやってみようというのを大事にしていました。それが見ているエキストラの方にも伝わっていたらいいなと思っています」

── 第39回(10月13日放送)では、五りんの父親が小松勝(仲野太賀)であることが明らかになりましたが、それを知った時の感想をお願いします。

「『太賀か!』 って思いましたね(笑)。なぜなら、映画『桐島、部活やめるってよ』で共演していたんですよ。『太賀をお父さんって呼ぶのか』って。『いだてん』では、時代的には会わないですけど、もし会ったら、『あ、お父さん』って言わなきゃいけない(笑)。不思議な雰囲気だなって。同級生が父親とかすごく複雑なんですよね。大河ドラマ『平清盛』の時も、僕より後に生まれた武井咲が母上で…(笑)。芝居なので、もちろんやるんですが、『なんかなぁ』って」

── 五りんは、家訓として頭から水をあびるシーンが何度もありましたが、これは、父親の勝と金栗四三(中村勘九郎)をどちらをイメージしてやっていたのでしょう?

「最初から金栗さんをイメージしていました(笑)。第1回に出てくるはがきに『小松』と書いてあったので、小松という名前だけは知っていたんですけど、そんなに重要視していなくて。スタッフさんから、『水をかぶる時の金栗さんの映像を見ます?』と言われたこともあって、『(五りんの関係者は)金栗さんなのか!』って思っていました(笑)。こんなに明らかな伏線を張ることはないなと思っていましたけど、最初の時点で僕は何も知らないまま撮影に入っているので。(スタッフの)狙い通りといえば、狙い通りなんですけど、金栗さんが関わっているんだろうなと思いながらやっていたので、水浴びは金栗さんをイメージしながらやっていました。僕が疑問に思うことなく、金栗さんをまねするルートにいたわけですから、余計に父親が太賀だと聞いて驚きました(笑)」

神木隆之介が“師匠”ビートたけしを見て思ったこととは?

── 志ん生役のたけしさんと共演することが多かったと思うのですが、印象はいかがでしたか?

「キャスト発表の時(体感でいうと10年くらいの話なんですけど(笑))に、『アウトレイジ』だ!と思って(笑)。世界の北野武監督ですし、芸人さんとしても偉大な方じゃないですか。だからこそ勝手に怖いというイメージも思っていたんです。でも、五りんは失礼な態度を取る役で、落語に興味がないから、志ん生がどのくらいすごい人か分かっていない。だからこそあんな態度ができるわけです。それを芝居でやるというのは、僕自身も『すごい、この人』という気持ちをなくさなければいけない。そうじゃないと、どこかで気を使った態度が出るなと。中途半端なことはしたくないと思ったので、怒られてもいいやと思って、僕から『(セットにいる文鳥を見ながら)文鳥好きですか?』『いつも何をされているんですか』とか、セットの中に将棋があったら『将棋ってやられるんですか?』と話し、『ここにいた方がツッコみやすいですか?』『どの位置にいた方がたたきやすいですか?』と積極的に聞いていました。たけしさんは、優しい方で質問に対して聞いている以上のことが返ってきますし、アドバイスもしてくださって、本当に器の大きさが無限大の方なんだなと思いましたね。師匠レベルの方って怖がられるけど、そんなレベルの人だからこそ許してくれる器があるんだなって思いました」

── 第42回(11月10日放送)では、そんな師匠をおんぶするシーンがありましたが。

「重かったです(笑)。五りんと師匠の関係性を第1回から見てくださっている方や2人を知っている方には、すごく感動するシーンにもなっています。穏やかに和気あいあいと進んでいくように見えて、お互いに覚悟を決める大事なシーンなんですが、下り坂だったので、『世界のキタノを背負っているんだ! どうなっても前に転ぶことだけは防がなきゃいけない!』と必死な思いでおぶらせていただきました。その後、『師匠、ちょっとずれてきたので上に行きますよ、せーの!』ってやったら、ちゃんと体を上げてくれて、すごくほっこりした気持ちになりました」

──「いだてん」の登場人物は熱いキャラクターが多い中で、五りんは涼しげなキャラクターに見えます。何か意識していることはありますか?

「正直、落語のパートと田畑さんのパートは別世界に思えて、やっていても会うことがないので、本当に『いだてん』に出ているのかなというくらいなんです。たくさんの役者さんが出ていらっしゃいますし、規模も大きいので、把握しきれないところもいっぱいあるんです。作品の中でこれといった意識はしていないですけど、一つだけ思っていることがあって。宮藤さんの作品には何回か出させていただいているんですけど、どれも人をムカつかせる役なんです(笑)。人を自然とカチンとさせる役が多くて、なおかつ宮藤さんにいじめられるんです。打撃系があって。今回は、東京オリンピックをPRするためのリポーターとしてバレーボールをぶつけられて、痛い思いをするんです。そういう役割なんだなと再認識して、宮藤さんが思う『自然と人をカチンをさせるけど、憎めないやつだな』と思ってもらえるような役割でなきゃいけないんだなと思っています。ムカつくけど如才ない、そういう役でありたいなという気持ちはあります」

── 今まで大河ドラマに4回出演されていますが、1年を通して出演されるのは初めてかと思います。そこに対する思いを聞かせてください。

「長いですね(笑)。今までは途中からの参加だったり、誰かの幼少時代であることが多かったので、最初から最後までって長いなと思いました。長いからこそ自分の役を見る余裕もあるし、どうやって育てていこうかという、より深いところまで考えられて、すごく愛情が湧きますね。自分もいとおしいキャラクターにしたいなという思いが強いですし、スタッフさんたちも五りんのことをこういうふうに演出したいとか、みんなが愛情を持ってそれぞれのキャラクターを見ているんだなと。それぞれが助け合っていて、作品への愛情をすごく感じる現場だなと、長ければ長くなるほど実感しています。これは貴重な体験で大事にしていきたいし、愛情を肌で感じるということが他の現場でも生かすことができたらいいなと思います」

── ありがとうございました!

神木隆之介が“師匠”ビートたけしを見て思ったこととは?

 第43回では、オリンピック開催まで2年なのに、国民のオリンピック熱は盛り上がりに欠けています。田畑は偶然見たテレビ寄席の「オリンピック噺」を語る五りんに目を付け、広告塔に任命。神木さんの話では、リポーターになり、バレーボールを投げまくられるようですが、どんな様子なのでしょう? 一方、組織委員会では準備が本格化し、アジア各都市を回る聖火リレーの最終ランナーの候補に四三が浮上します。四三は結構いい年齢になっていると思うのですが、東京の街を相変わらず走っているようでしたから、できないことはなさそうですよね。さて、五りんだけでは国民が盛り上がらないと考えたのか、田畑はジャカルタで開催されるアジア大会を席巻し、五輪開催に向け勢いをつけようともくろみますが、開幕直前に大問題が発生することに。ただ、スポーツの祭典をしたいだけの田畑なのに、なかなかうまくいきません。果たしてアジア大会で何が起きるのか。そして、五りんの活躍にも注目です。

NHK担当 K・H

【番組情報】

大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」  
NHK総合ほか 日曜 午後8:00~8:45
NHK BS4Kほか 日曜 午前9:00~9:45
NHK BSプレミアム 日曜 午後6:00~6:45



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