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夏ドラマ総括!「19番目のカルテ」上位もTBSに誤算? テレ朝が躍進、フジは好調持続2025/10/30 10:00

2025年夏ドラランキングで常に上位だった日曜劇場「19番目のカルテ」/BRAND NEW TV WORLD!!【夏ドラマランキング2025】

 今回は恒例のドラマ総括企画。関東166万台を超えるレグザ視聴データをもとに、2025年7月クールの夏ドラマランキングを集計、発表していく。ひときわ暑かった今年の夏、最も熱く視聴者の支持を集めたのはどの作品だったのか。

 最初に紹介するのは、放送回ごとに「リアルタイム視聴」とタイムシフト(全録)を利用した見逃しや後日再生視聴を含む「録画視聴」の視聴人数を合算して多い順に並べた「放送回ランキング ベスト30」(7~9月の3か月間に放送が完結している作品を中心に集計。朝ドラや夜ドラなどの帯ドラマ、および大河ドラマは除いている)。ポイントは1位を100とした場合の割合である(以下同)。

2025年夏ドラマ/放送回ランキング ベスト30【BRAND NEW TV WORLD!!】

 1~8位を占めたのは、松本潤主演のTBS日曜劇場「19番目のカルテ」。総合診療医に焦点を当てた医療ドラマで、初回放送直後には参院選開票特番で放送休止、終了後には世界陸上の中継が控えるなど、決して恵まれた環境下ではなかったが、全8回が上位を独占して完全制覇を果たした。

 とはいえ、やはり指摘しておかなければならないのは、初回が第1位、2話が第2位と回を追うごとに順位が下がっていっているという事実である。しかもその下降度合いが結構激しい。最終回の第8話こそ7話を上回って7位に入ったが、この最終話は出演者の不祥事で突貫の再編集を余儀なくされた回であり、その話題性を考えればもっと上位も十分あり得た。この時点でかなり視聴者が離れていたと考えるのが自然だろう。上位独占を素直に喜べない部分が残る。

Snow Man・ラウールの好演が光った「愛の、がっこう。」も2025年夏ドラで大健闘!/BRAND NEW TV WORLD!!【夏ドラマランキング2025】

 これは逆に言えば、首位作品に誤算がありつつもほかのドラマが牙城を崩せなかったということでもある。9位以降、「しあわせな結婚」(テレビ朝日系)、「明日はもっと、いい日になる」(フジテレビ系)、「DOPE 麻薬取締部特捜課」「初恋DOGs」(ともにTBS系)、「放送局占拠」(日本テレビ系)、「愛の、がっこう。」(フジテレビ系)、「大追跡~警視庁SSBC強行犯係~」(テレビ朝日系)と多くの作品がランクインを果たしているが、すべて第1話が最高位を記録しており、この“初回=ピーク”の傾向が、夏クールの大きな特徴となっている。

 次に「平均視聴ランキング ベスト20」を見ていこう。こちらも「リアルタイム視聴」と「録画視聴」を合算した全話の平均視聴人数を集計し、高い順に並べたランキングである。

2025年夏ドラマ/ドラマ平均値ランキング ベスト20【BRAND NEW TV WORLD!!】

 「19番目のカルテ」が2位以下に差をつけての第1位。2位にはテレビ朝日「しあわせな結婚」、3位にはフジテレビ「明日はもっと、いい日になる」がランクイン。4、5位にも「大追跡~警視庁SSBC強行犯係~」と「愛の、がっこう。」が入り、ベスト5にそれぞれ2本ずつを送り込んだテレビ朝日とフジテレビの躍進が目立つ。ドラマでは他局に対して常に優位を保っているTBSは苦戦を強いられたといっていい(それでもプライムの3作すべてをベスト10にランクインさせてはいるのだが)。

阿部サダヲ&松たか子W主演のマリッジミステリー「しあわせな結婚」/BRAND NEW TV WORLD!!【夏ドラマランキング2025】

 テレビ朝日は、大石静脚本、阿部サダヲ・松たか子主演の軽妙なマリッジミステリー「しあわせな結婚」、大森南朋・相葉雅紀・松下奈緒主演でシリーズ化を目論む「大追跡」、韓国ドラマのリメークで永尾柚乃の好演が光った「誘拐の日」と野心作を並べて一定の成功を見たし、フジテレビも苦境の中、春クールに続いて好調をキープ。特に脚本・井上由美子、主演・木村文乃、共演・ラウール(Snow Man)「愛の、がっこう。」は、ホストと教師という正反対の世界を生きる二人を軸に、令和の純愛を誠実に描き、ラブストーリーの新たな可能性をうかがわせる快作だった。

 ここでちょっと視点を変えて、夏クールの深夜ドラマを見てみよう。午後11:00以降に放送されたドラマの「放送回ランキングベスト20」である。

2025年夏ドラマ/深ドラ放送回ランキング ベスト20【BRAND NEW TV WORLD!!】

 トップは人気の「奪い愛」シリーズ最新作「奪い愛、真夏」(テレビ朝日系)の第1話、2位は梅沢富美男主演「浅草ラスボスおばあちゃん」(フジテレビ系)の第1話と、プライムドラマ同様“初回=ピーク”の傾向が見られる。「奪い愛、真夏」は、途中順位が乱高下しつつも最終回を5位に送り込んだが、「浅草ラスボス~」は2話以降が完全にランク圏外に去っている。12位「北くんがかわいすぎて手に余るので、3人でシェアすることにしました」(フジテレビ系)、13位「リベンジ・スパイ」(テレビ朝日系)も初回のみのランクインと同様の傾向だ。

「奪い愛」シリーズ最新作も変わらぬ人気/BRAND NEW TV WORLD!!【夏ドラマランキング2025】

 中で気を吐いているのは、順位にバラつきはあるものの結果的にベスト20に最多ランクインを果たした「完全不倫-隠す美学、暴く覚悟-」(日本テレビ系)と、最終回が唯一のランクイン回となった「レプリカ 元妻の逆襲」(テレ東系)である(ちなみに平均値ランキングでは、「奪い愛、真夏」「完全不倫」「レプリカ 元妻の逆襲」がベスト3であった)。
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 続いて「最終回継続率ランキング ベスト20」。最終回のポイントを初回ポイントで割った数値によるランキングで、継続率が高い(初回に比べて最終回の数値が高い=100%を超える)ということは、作品内容に対する“満足度”が高い傾向があるのでは、という仮説に基づいた検証である。

2025年夏ドラマ/最終回継続率ランキング ベスト20【BRAND NEW TV WORLD!!】

 継続視聴率が100%を超えたドラマはわずかに3本。2位「母の待つ里」は昨年NHK BSで放送された作品の地上波リピートなので、この夏の新作で100%を超えたのはたった2本ということになる。平均視聴で2位に入り、継続視聴率も98.3%と高い水準を保った「しあわせな結婚」を筆頭に、平均と継続の双方でベスト10に入った「大追跡」「愛の、がっこう。」「誘拐の日」がこの夏の及第点ドラマだったと言えそうだ。

大森南朋・相葉雅紀・松下奈緒主演でシリーズ化を目論む!?「大追跡~警視庁SSBC強行犯係~」/BRAND NEW TV WORLD!!【夏ドラマランキング2025】

 一方で、「平均視聴ランキング」でベスト10に入りながら、「継続率ランキング」ではベスト20にすら入らなかったのが4作品。そのうち「19番目のカルテ」「DOPE 麻薬取締部特捜課」「初恋DOGs」の3本がTBSドラマであった。この夏、世界陸上で大成功を収めたTBSがお家芸ともいえるドラマで失速したのは皮肉なことではあるが、そんなTBSドラマの停滞が夏ドラマ全体の低調を導いたのではないか、という一面もまた否定できない。

 連続ドラマとは不思議なもので、同時期に好調な作品が揃うことで互いが数字を高めあうことがある。足を引っ張り合うのではなく、相乗効果でドラマシーン全体の活性化を望みたい。注目作品が顔をそろえる10月クールの秋ドラマの動向にも期待したい。

文/武内朗
提供/TVS REGZA株式会社

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