山口馬木也、柴田勝家の原点は「豊臣兄弟!」仲野太賀&池松壮亮への嫉妬心「才能が憎い」2026/08/30 20:45

現在放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK総合 日曜午後8:00ほか)で、柴田勝家を演じる山口馬木也のインタビューをおくる。
豊臣秀長(小一郎)役の仲野太賀が主演を務める大河ドラマ第65作で描くのは、強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた弟・秀長(仲野)、兄・秀吉(池松壮亮)の“兄弟”の物語。「秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は安泰だった」とまで言わしめた天下一の補佐役・秀長の目線で戦国時代をダイナミックに描く波瀾(はらん)万丈のエンターテインメントだ。脚本は連続テレビ小説「おちょやん」(NHK総合ほか)や「半沢直樹」(TBS系)などで知られる八津弘幸さんが手がけている。
物語は信長亡き後、天下統一を巡る重大局面に。清須会議後の秀吉の行動が織田家中に波紋を広げる中、市(宮﨑あおい)は秀吉に対抗するため勝家に嫁ぐ。勝家を“親父殿”と慕う前田利家(大東駿介)は、敵対する秀吉と勝家の間で揺れ動く中、勝家と剣を交える。そして、両雄は賤ヶ岳で対峙(たいじ)し、勝家は市の待つ北庄城へ敗走することになる。
“鬼の柴田”を見事に演じきった山口に、勝家の最期の舞台裏、“妻”宮﨑への思いなどを聞いた。さらに、仲野・池松への率直な思いも赤裸々に語ってもらった。
――第32回、利家との一騎打ちのシーンは印象的でした。脚本を読んだ時、どのように演じようとプランを立てましたか?
「大河ドラマで鎧(よろい)を着けた者同士の一騎打ちは印象にないんです。だから脚本を読んだ時にどんなシーンになるのか想像がつかなかった。実際に演じてみると、長いチャンバラの中で複雑な感情が生まれてきて……」
――どのような感情だったのでしょう?
「順番が前後してしまうのですが、第33回のお市様と食事するシーンの時に幸せを感じて、勝家はもう最前線の人ではないのかなと……。当初は、勝家を演じるなら最後まで“最強の老害”でいてやろうと考えていたんですが、この食事の場面をきっかけに、もう最前線に立つ人間ではないんだ、次にバトンを渡さないといけないんだなっていう心境になりました。なので、利家と刀を交わし『親父殿とともに、新しき世を作りとうござりました』と言われた時に、申し訳ない気持ちと、これからはお前らが作っていけという感情が生まれました」
――勝家にとっての分岐点だったのですね。天下を目指す選択肢はあったと思いますか?
「勝家は天下人になる欲がない人だと捉えていました。誰かのために動く人であり、でも自分が天下を目指すことは利家たちのためにもなる。どちらの道を選ぶのか初めて揺れたのではないでしょうか。その中で、利家に対し『織田家家老、柴田勝家じゃ』というセリフがあります。名字が織田家家老、名が柴田勝家じゃないですけど、織田信長(小栗旬)あってこそというのは揺るがなかった」

――緊迫したシーンにそんな裏側があったとは……。そして、勝家は市とともに天守から身を投げます。演じきっていかがでしたか?
「脚本をいただいた時にプレッシャーを感じたんですが、宮﨑さんに大変助けられました。切腹ではなく身を投げるというのは、画が見えなかったんです。なぜ二人はその決断をしたのか。どう演じようか迷って、準備するよりもその場で発見するしかないなと思ったシーンでした」
――どのように探っていたのかなど、そのシーンの撮影を振り返っていただけますか。
「まず、お市様と手をつないでの立ち回り。当初は、お市様を安全なところに置いて立ち向かう予定だったんですが、監督から「つないだ手をどうしても離したくないと勝家は思っているはず」言われたんです。なんとか離さないまま立ち回りができないかという熱い思いがあって……。狭い場所で、鎧を着け、刀を持つ中、さすがに厳しいと思いながらも監督の思いに応えたいと演じ始めたんですが、その時に逆に宮﨑さんに守られているなと感じたんです」
――どのような心境から守られていると感じられたのでしょうか?
「何があってもお市様にけがをさせないことが最優先でしたが、『俺、守られているな』と、つないだ手に感じて……新鮮かつ不思議な体験でした。勝家の感情にうそなく演じられたのは、宮﨑さんのおかげです」

――宮﨑さんとはこのシーンについて何かお話されましたか?
「いえ、話はしていないですが、『守ってあげた』という意識は宮﨑さんの中でもあったと思います。もし間違っていたら、僕のアンテナが死んでいます(笑)」
――また、その直前の市との食事のシーンも見逃せません。
「お市様が生まれて初めて作る料理なので、脚本では“まずい”と書いてあるんです。でも、僕はこの料理を“まずい”と思わないだろうなと思ったんです。なので、用意する料理もあからさまにまずいものではなく、いいあんばいにしてもらうようお願いしました」
――実際召し上がってみていかがでしたか?
「本番もテストもきれいに食べきったんですが、最後の一粒まで米粒を食べたんです。宮﨑さん演じる“市”の愛を感じた瞬間でした」
――宮﨑さんとは初共演になりますが、印象をお聞かせください。
「家族全員、宮﨑さんが主演された大河ドラマ『篤姫』(2008年/NHK総合ほか)が大好きだったんです。ですので、初対面の際は『宮﨑あおいだ!』ってなりました(笑)。そんな方と添い遂げるのは緊張しました……」
――憧れの存在と分かると、よりシーンへの理解度が深まりますね。では、“鬼の柴田”とも言われる勝家の役作りについて、ちまたでは肖像画とうり二つだと絶賛されています。ビジュアル面でこだわった部分はありますか?
「(山口が演じる勝家は)もともとは、シュッとしていて格好良かったんです。でも、僕の中の勝家は肖像画のような貫禄のあるイメージだったので、衣装も含めて近づけてほしいとお願いしました。出来上がりを見た時に、『役作りなしで完成したかも!』と思いました(笑)。勝家ならこういう所作をするかなと考えましたが、時代劇の経験を生かしながらインスピレーションを大事に演じていました」
――もともとはシュッとしていたとありましたが、どのように肉体を近づけていったのですか?
「体を大きく見せるようなことはしていないです。動ける体にしておかないといけないと思ったので、人生で初めて鍛えて撮影に臨みました。後半になるにつれ、年齢を重ねるのでシャープな方がいいかなと気休め程度に鍛えたくらいです」
――普段の山口さんとは体つきが全く違い、驚きました。その他、役作りのために取り組んだことがあれば教えてください。
「福井にある勝家ゆかりの地を回りました。この景色を勝家は見ていたのだろうなと思いを巡らせてみたり……。それから西光寺にある勝家とお市様のお墓を訪問しました。最期のシーンで、『この先ずっとここでお市様と一緒に居られるんだ』と思えたのが、身を投げるきっかけになりました。史実とされていることとは違う結末ですが、“走馬灯の材料集め”としていい旅になりました」

――“鬼の柴田”を演じるにあたり、不安はありましたか?
「そもそも顔が鬼みたいなので……悩みはないです(笑)。唯一不安だったのは、お市様との関係性ですね。お市様は浅井長政(中島歩)と一度夫婦関係を築いているわけで、その後、勝家と夫婦になっていき、どういう心境で勝家と添い遂げようと思うのか……。年齢的にも離れているので、自虐ではないですが、年の離れたカップルを視聴者の方々が受け入れてくれるだろうかと」
――先ほど「“最強の老害”になってやろう」とおっしゃっていましたが、演じる中で共感した部分や、逆に自分とは違うと感じた部分はありましたか?
「僕自身は意外と老害ではないんですよ。僕らは叱ってくれる大人たちがいて、飲みに行くのが嫌だなという時代に育ちましたが、意外とそういう場でのことの方が覚えていて、身になっているなと最近気付くんです。プライベートではできないから、勝家を通して老害になってやろうと」

――主演の仲野さんとのお芝居はいかがでしたか?
「仲野さんは、芝居で人を感動させるんです。ひょうい型と評する人もいますが、彼と言葉を交わすと何げないセリフでも泣けてくるんですよね、心を射抜かれたような……演技ではなく人柄が表れているんだろうなと。彼の良さは言葉では表現できなく、肌で感じないと彼のすごさは分からないです」

――一方、秀吉役の池松さんとは敵対する関係性でしたが、難しさはありましたか?
「池松さんは、いつも皆のことを考えてくれている良い方なんです。そんな池松さんを憎まないといけないので……でもよくよく考えたら、仲野さんや池松さんの才能に僕は嫉妬していたんです。年齢は関係ないと思いながらも、彼らと同じ年齢の時に僕は同じように演じられただろうか、今の僕はできるのだろうかと……。こんな素晴らしい芝居ができて憎たらしいな、恨んでやろうって(笑)。それが役作りのきっかけになりました。1年かかって、ようやく彼らにバトンを渡そうと素直に思えました」
――嫉妬心から生まれた“勝家”だったのですね。では、「織田家家老」として仕えた小栗さんの信長はどんな存在でしたか?
「小栗さんと言えばカリスマじゃないですか。若い頃から第一線に居続けている方ですし、今回は大河ドラマ最年少“とめ”(出演番手で最後に記される役者)ですから。そんな“小栗信長”に仕えることに一点の曇りもありませんでした。信長に蹴られるシーンも、みんな『蹴られたいな』と言っていたくらいです(笑)」
――信頼されていたのですね。クランクアップ直後にも関わらず、インタビューさせていただきましてありがとうございました。今後の活躍も期待しております。
【プロフィール】
山口馬木也(やまぐち まきや)
1973年2月14日生まれ。岡山県出身。98年のデビュー後、映画「侍タイムスリッパー」(2024年)で主役を務め、第48回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど注目を集める。大河ドラマには「八重の桜」(13年/NHK総合ほか)、「鎌倉殿の13人」(22年/NHK総合ほか)などに出演。11月に舞台・劇団☆新感線「髑髏城の七人」LAST STANDの公演が控えている。
【番組情報】
大河ドラマ「豊臣兄弟!」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後6:00~6:45
取材・文/S.Kirinuki
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