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「風、薫る」甲斐翔真インタビュー後編 上坂樹里と育んだ夫婦の絆、小川に生まれた“帰りたい理由”2026/08/26 08:15

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「風、薫る」甲斐翔真インタビュー後編 上坂樹里と育んだ夫婦の絆、小川に生まれた“帰りたい理由”

 NHK連続テレビ小説「風、薫る」(月~土曜午前8:00ほか)で、小川吾郎を演じる甲斐翔真前編では、訪問看護師として働く母との縁、映像作品への再挑戦、そして小川の人物像や役作りをひもといた。

 見上愛と上坂樹里がダブル主演を務める本作は、明治という激動の時代を舞台に、西洋式の看護学を学んだ一ノ瀬りん(見上)と大家直美(上坂)が、それぞれに生きづらさを抱えながら看護の道を切り開いていく物語だ。甲斐が演じる小川は、友人の見舞い先で直美と出会う陸軍二等軍曹。堅苦しい風貌とは裏腹に、愛情深く真っすぐな人物として、直美の人生に大きく関わっていく。

 後編では、大家直美を演じる上坂との共演を振り返る。撮影を重ねる中で育まれた夫婦の空気や、言葉にせずとも生まれたあうんの呼吸、何げない会話と動作が、2人を自然と夫婦へ近づけていったという。さらに、料理や歌の場面、出征を前に芽生えた“帰りたい理由”、朝ドラを通して得た俳優としての変化まで。小川と向き合った時間が、甲斐自身に何をもたらしたのかも見えてきた。

「風、薫る」甲斐翔真インタビュー後編 上坂樹里と育んだ夫婦の絆、小川に生まれた“帰りたい理由”

――直美を演じる上坂樹里さんと初めてお会いした時、どんな印象を持ちましたか。

「初めてお会いした時は、『あ、夫婦になるんだ』と。かれんで華があり、かわいらしい方というのが第一印象でした。でも、共演を重ねるうちに、芯が通っていて、内に揺るがないものを持っている方だと感じるようになりました」

――直美にも通じる芯の強さがあったのですね。芝居を重ねる中で、2人の呼吸にはどんな変化が生まれましたか。

「続けていくうちに、言葉では説明できないあうんの呼吸のようなものが、少しずつ生まれていった気がします。きっと、役がそこまで連れていってくれたんでしょうね。カメラの前以外では、特に芝居の話をするわけでもありませんでした。前室では、今では思い出せないような何げない話をよくしていました。物語が佳境に入り、重い空気のシーンを撮るようになると、そうした時間が生きてくるんです。『もうこの撮影も終わっていくんだ。かけがえのない時間を一緒に過ごし、関係を築いてこられたんだな』と感じながら撮影できました。上坂さんの存在には、役作りの面でもかなり助けられました」

――役と上坂さんご本人が、どこか重なって見えます。

「ご本人は役作りに苦労したとおっしゃっていましたけど、僕の中では当て書きのようなイメージでした。『風、薫る』で直美に選ばれるべくして、この世界に入られたのではないかと思わされるくらい、説得力のある直美でした」

「風、薫る」甲斐翔真インタビュー後編 上坂樹里と育んだ夫婦の絆、小川に生まれた“帰りたい理由”

――お二人の関係を象徴するような、印象的なエピソードはありましたか。

「意識的に変えたことは、特にありません。お互い、人との間合いが似ているのかもしれません。積極的に話しかけるタイプでも、極端に人見知りするタイプでもなく、なんとなく一緒にいる。そんな空気がずっと続いていました。物語が進むにつれて、役と自分たちがシンクロしていく感覚も芽生えました。例えばNHKの現場では、自分でマイクのオン、オフを操作するのですが、普通は一人ずつ踏むペダルを、自然と2人で一緒に踏むようになって。そうしたちょっとした行動の積み重ねが、少しずつ夫婦らしさにつながり、芝居の助けにもなりました。意識的に作ったというより、結果としてそうなっていったんです」

――劇中では、小川が歌う場面があります。撮影に向けて、どのような準備を?

「『うまく歌うな』と言われたんです。普段はミュージカルを中心に活動しているので、そんな指示を受けたのは初めてでした(笑)。ただ、小川は軍人であって、歌のプロではありません。それに、現代と当時とでは、日本語の発声法も全く違うんです。母音の発声や、音が移り変わる時の運び方など、今のポップスとは異なる部分をかなり特訓しました。『うまく歌わないで』というより、『今風にしないで』ということだったのかなと。歌唱指導の方に猛特訓していただきました」

――歌った「埴生の宿」には、どんな印象を持ちましたか。

「内容もすばらしい曲です。たとえ粗末な家であっても、豪華な家より自分の家がいい。それは高い、安いということではなく、そこに誇りがあるという歌なんです。小川らしく、彼が好きになりそうな曲だと感じました」

――劇中では小川が料理をする姿も。甲斐さんご自身も、料理はされますか。

「得意と言うと語弊がありますけど、やればできます。動画をぱっと見たら、ぱっと覚えて、ぱっと作れます(笑)。最近は体作りのためにも料理をしています。今年出演したNHKの夜ドラの時と比べると、体重が8kgくらい違うんです。軍人役ですし、小川は物語の結末も大変な役なので、塩分や油の量を調節するために、自分で作るようになりました。ちょうど料理を始めた頃に、劇中にも料理のシーンがあって。『よかったな』と。自分の人生と小川の人生がリンクした瞬間でした」

「風、薫る」甲斐翔真インタビュー後編 上坂樹里と育んだ夫婦の絆、小川に生まれた“帰りたい理由”

――直美と過ごす家庭での場面では、どんな瞬間に幸せを感じましたか。

「僕が料理を作っている背中に、直美が『今日は何?』『何を作ってくれるの?』『肉じゃが?』と話しかけるような、本当に何でもないシーンです。あの時間に幸せを感じました。『風、薫る』は生と死が関わる作品なので、現場も張り詰めた空気になりがちです。でも、僕たちのシーンを撮っている時は、みんなの口角が上がるという現象が起きていました(笑)」

――演じていて、特に心が動いた場面を挙げるなら?

「出征する時ですかね。今、自分の中で小川の感情を総まとめするようになぞっていますが、直美と出会う前は、国のために自分の身をささげるくらいの気持ちで、軍人として仕えていたはず。その気持ちが揺らぐ瞬間が訪れるんです」

――その中でも、子どもの名前を考える場面は、小川の気持ちをたどる上で重要だったのではないでしょうか。

「名前を考えることって、すごく未来のことじゃないですか。まだおなかの中に子どもがいて、自分がいつ出征するかも分からない。その中で名前を決めても、会えるかどうかは分からない。帰ってこられなかった時のことを、初めて現実として考えた瞬間だったのかもしれません。本来の小川は、帰ってこなくてもいいと考えていた人です。でも、帰ってこなくてはいけない理由ができた。もちろん、直美のために帰りたい気持ちもあったでしょうけど、心の髄から『帰ってきたい』と思ってしまった、あるいは思わされたのは、子どもの名前を考え始めた時だったのではないかと。あのシーンは心に残っています」

「風、薫る」甲斐翔真インタビュー後編 上坂樹里と育んだ夫婦の絆、小川に生まれた“帰りたい理由”

――初めての朝ドラで、これまでの舞台経験がどのように生きたのかも聞かせてください。

「仮面ライダーでデビューして10年たちます。最初の5年間は映像、その後の5年間は舞台を中心にやってきました。今年、夜ドラ、朝ドラと、久しぶりに映像作品に戻ってきたのですが、NHKの撮り方は舞台に近いんですよね。リハーサルがありますし、長回しで、カメラも3台ほどあり、さまざまな画角を撮るので、シーンの頭から最後まで一気に演じることが多い。そこで、『舞台をやってきてよかったな』と感じました」

――舞台で過ごした5年間が、朝ドラの現場へとつながったのですね。俳優生活10年目に本作と出合えたことを、どう受け止めていますか。

「5年前も映像の世界で頑張っていましたが、朝ドラを勝ち取るまでには至りませんでした。その後の5年間、舞台で鍛え、新しい世界に踏み入り、いろいろなものに出会い、探究心を持って歩んできた。その10年目に朝ドラと出合えたことには意味がありますし、『今でよかった』と心から思います」

――今回の朝ドラで、作品や役との向き合い方について、どんなことを学びましたか。

「一番大きかったのは、多くの方が見る作品の中で、自分がどう立ち回り、どう動くのが一番いいのかを考えるようになったことです。自分が『こうありたい』ということだけではなく、『風、薫る』を見てくださる方々が何を求めているのか。その視点を持ちながら台本を読み、撮影に臨んでいました。作品全体を広く見渡して向き合うことは、今回とても勉強になりました。今までは台本とにらめっこして、『こうしたらうまく見えるかな』『かっこよく見えるかな』『芝居がうまそうに見えるかな』と、ある意味、盲目的に考えていたところがあったかもしれません」

「風、薫る」甲斐翔真インタビュー後編 上坂樹里と育んだ夫婦の絆、小川に生まれた“帰りたい理由”

――朝ドラ出演後、これまでとは違う反響も届いていますか。

「SNSなどに、おばあちゃん世代の方々から、かわいらしいメッセージをいただきます。きっと、それまで僕のことを知らなかった方々ですよね。全国放送を通して、日本中の皆さんとつながれたような感覚があります。僕自身がおばあちゃん子なので、うれしいです。きっと頑張ってSNSを使い、思いを届けてくださったんだろうなと考えると、ほほ笑ましくなります」

――そうした声は、甲斐さんにとってどんな力になっていますか。

「かなり効きます。『見てくれているんだ。じゃあ、やらなきゃ』と気持ちが引き締まりますし、全国のおじいちゃん、おばあちゃんを喜ばせたいです」

――最後に、小川を見守る視聴者の皆さんへ、注目してほしいところをお願いします。

「小川は、世にも珍しいほど真っすぐな人。時代や文化、国、職業、育ちといったものをすべて取り払っても、美しい人。心から思うことを忘れがちな現代の人々にとって、彼はとても輝いて見えるはずです。それから、明治時代と今とでは、『尊敬』という言葉の捉え方も変わってきている気がします。『尊敬』は、尊び、敬うこと。今の人たちは敬うことはできても、尊ぶことは意外とできていないのかもしれません。僕自身についても、そう感じました。小川は、人を尊ぶことができる人。彼を通して、『尊ぶことの尊さ』が伝わればいいなと思っています」

【プロフィール】
甲斐翔真(かい しょうま)

1997年11月14日生まれ。東京都出身。2016年に「仮面ライダーエグゼイド」(テレビ朝日系)で注目を集め、その後はミュージカル「ロミオ&ジュリエット」、「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」など舞台でも活躍。近年はNHK夜ドラ「ラジオスター」(NHK総合/26年)に出演。

【番組情報】
連続テレビ小説「風、薫る」
NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15 ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月~金曜 午前7:30~7:45
※NHK ONEで同時・見逃し配信

取材・文/斉藤和美

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