「転校生ナノ」ユ・ヨンソン監督×仲島有彩が作り上げた“ホラーなナノ”の秘密2026/05/01 12:00

世界中を熱狂させたタイの人気ドラマの日本版リメーク「転校生ナノ」が、FODで独占配信中。頭脳明晰(めいせき)で美しく、不敵な笑みを浮かべるナノが教師や生徒たちの欲望や嫉妬、疑惑や執着といった負の感情を呼び起こしていく禁断の学園ミステリー・スリラーだ。本作で俳優デビューとなる新星・仲島有彩が、謎が謎を呼ぶ数奇な転校生・ナノを演じ、アジアを代表する4人のトップクリエーターが全6話のエピソードを手がけることでも話題を集めている。
TVガイドWebでは、主演の仲島と4人のクリエーターのスペシャル対談を実施。第3弾では、episode3「女王の資格」、episode5「憎しみの壁」を担当した韓国の俊英ユ・ヨンソンに直撃! 仲島と共に、美への執着をめぐる嫉妬と欲望の行方を描いたepisode3、“願い”から転じた“呪い”が日常に侵食していく恐怖をテーマにしたepisode5の撮影を振り返ってもらった。
――ユ監督は、今回の日本版「転校生ナノ」への参加を最初に聞いたときはどう思いましたか?
ユ 「堤幸彦監督の『ケイゾク』や『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』(ともにTBS系)は韓国でも人気のドラマで、僕もそれを見て育った世代ですし、大学生の頃から堤監督の映画が大好きでした。そんな敬愛する堤監督と一緒にこのプロジェクトに参加できるのはすごく光栄なことだと思いました」
――撮影に入る際には、ほかの監督のエピソードは意識しましたか?
ユ 「特に気にせず、自分の作品を作ることだけに集中しようとしたのが、逆に意識したところです。私はまずヒロインのナノを“炎”のような存在だと考えました。“炎”は遠くから眺めているときは温かさを感じるけれど、近づくと熱いし、近づき過ぎるとやけどをしてしまう。そんな危険な存在としてナノを描こうと努力したんです」

――監督されたepisode3とepisode5では、具体的にナノのどんなところを引き出そうと思われたのでしょう?
ユ 「まず、ナノを、視聴者の目線にもなる、事態を冷静に見ているような引いた視線で描こうと思いました。自滅していく人間を客観的な視線で描いた方が分かりやすいし、冷酷さが増すと考えたからです。それとは別に、有彩さんと初めて会ったとき、なぜか分からないけど、“鞘(さや)に収まった刀のような人”という印象を持ちました。彼女は穏やかな雰囲気ですけど、刀のような鋭いものを内に隠しているようなイメージを抱いたので、それが“炎”のようなナノとも重なり、episode3とepisode5に共通した鋭利な表現になりました」
仲島 「今初めて聞きました。なるほど、私はそういうイメージだったんですね(笑)」
――episode5のエピソードタイトルが出るところは、まさにその鋭利な表現の最たるものですけど、仲島さんは本作のために弓道の練習をしたんですか?
仲島 「3日間ほど練習する機会を作っていただきました。ただ、ほかの2人のキャストさん(田牧そら、黎架)はすごくお上手だったんですけど、私だけ下手くそで。それこそ放った矢が照明さんのライトにパンッて当たったこともあって、『(完璧で隙のない)ナノなのに何をやっているんだ?』って感じだったんです(笑)。映像と編集の力で何とかさまになる形にしていただけました」
――episode3とepisode5は言葉(セリフ)で相手に圧をかけ、悩ませるナノの姿も印象的でした。
仲島 「ナノは相手に答えではなく選択肢を与える人物なので、重みのあることを語ってはいるんですけど、それをあまり感じさせないような言い方にこだわりました。でも、ユ監督のこの2作品では髪を指にくるくる巻きつけながらセリフを言うことが多いので、言葉に意味を持たせるように、わざとそのしぐさが視線に入るようにもしていて。そのバランスがすごく難しかったです」

――ユ監督のエピソードはどちらも韓国ホラーの要素が入っているような気がしたのですが、監督が今回の2作品を撮る上でどのようなことを意識されましたか?
ユ 「タイ版を初めて見たときにナノが日本のキャラクターみたいだなと思ったし、日本版のリメークが待ち望まれているような気がしましたので、日本人の感情をイメージしながら撮ったのですが、その作業は決して難しいものではなくて。『堤監督の映画が好きだった』と最初に言いましたが、大林宣彦監督や三池崇史監督の映画、日本のホラー映画も大好きなので、自分が影響を受けたそれらの作品の要素を少しずつオマージュ的に入れれば、日本らしい面白い作品になると信じていたんです。日本の文化、日本の映画が好きだったからこそ、韓国人の私でも作ることができたのかもしれません」
――ユ監督が思う、日本らしいキャラクターとは?
ユ 「日本のキャラクターは、今回のナノだけではなく、どれも強烈なイメージを持っているというのが私の印象です。日本人はすごく繊細で、ある意味まなざしが鋭い。そういったものが日本のドラマや映画、キャラクターの強みだと思っていたので、ナノにもそのイメージを反映させました」
――仲島さんがユ監督の現場で驚いたことやほか3人の監督とは違うと思うようなことはありましたか?
仲島 「先ほど言われたように、ユ監督の作品は今回の六つのエピソードのなかでもホラー感が最も強くて。照明にもすごくこだわられていたし、照明の当て方や一つ一つの小道具の扱い方だけで不気味さが増すのがスゴかったです。私もホラーが好きなので、楽しいホラーの世界に入らせてもらっている気分でした(笑)」

――episode3に登場した、全身から鍼がバッと出てきた人形自体が韓国のホラーっぽくて怖かったです(笑)。
仲島 「あの人形は、『3日かけて実際に木を掘って作った』と美術監督の藤原功全さんが言われていました。最初は『持って帰っていいですか?』って聞いたりもしていたんですよ。でも、それを聞いて、さすがにやめておこうと思いましたね(笑)。代わりに私の名前を掘った御札をくださったので、それが家にあります」
ユ 「申し訳ないけど、あの人形は私がもらいました(笑)」
仲島 「そうだったんですね!(笑)」
ユ 「本当に藤原さんは素晴らしかったです。ロケハンのときに、車の中で彼から『人形はどんなイメージですか?』『どんなふうに作ればいいですか?』っていろいろ聞かれて。私が自分のイメージを説明したら、移動中にそれを絵にして、その通りに作り上げてくれたので本当にスゴいと思いました」
――ちなみに、仲島さんが好きなホラー映画は?
仲島 「洋画は『ビバリウム』(2019年)が大好きです。日本映画は『犬鳴村』(20年)や『樹海村』(21年)などの清水崇監督の〈恐怖の村〉シリーズが好きですし、SF映画にもお気に入りのものが多いです(笑)」

――最後にユ監督から、これから監督の2作品をご覧になる視聴者の方にメッセージをお願いします。
ユ 「episode3とepisode5に共通するテーマは“欲望”です。“欲望”を暴走させ過ぎすると地獄になると思うのですが、現実の世界から逸脱したその恐ろしい地獄をこの2作品では描きたいと考えていました。ただ、地獄ではありますが、それを視覚的には美しく見せたいということもあって、自分の美意識やスタイルもふんだんに盛り込みました。欲望がどのように描かれているのかを自分の目で確かめながら、美しい地獄を楽しんでいただきたいですね」
【プロフィール】
ユ・ヨンソン
1975年2月13日生まれ。韓国出身。「ヨコクソン」(2018年)、「殺人女優」(24年)などを監督、また、「ディーバ 殺意の水底」(20年)の脚本を務めるなど、韓国で数々の作品を手掛けてきた。

仲島有彩(なかじま ありさ)
2005年9月30日生まれ。神奈川県出身。高校生の時に横浜中華街でスカウトされて現事務所に所属。特技は英語(アメリカ留学経験あり)、暗記。今作「転校生ナノ」が俳優デビュー作となる。
【コンテンツ情報】
「転校生ナノ」(全6話)
FOD
episode1~5 配信中
episode6 5月3日午後8:00から独占配信
※episode1は無料。
※配信日時は予告なく変更になる場合あり。
<episode3「女王の資格」あらすじ>

ナノ(仲島有彩)が転校してきた名門校では、亡きデザイナーが残した「女王のドレス」を巡る投票が始まる。容姿と人気で選ばれる女王の座に執着した美咲(ハリン)は、ライバルへの嫉妬とSNSの評価に追い詰められ、やがて禁断の方法に手を出してしまう。その選択が彼女の欲望に呼応するように暴走し、取り返しのつかない代償をもたらすことに。過熱する票と称賛の裏で、ナノはほほ笑む。欲望が暴かれたとき、女王になるのは――。
<episode5「憎しみの壁」あらすじ>

弓道部の春香(田牧そら)は、憧れの先輩・ミユ(黎架)の隣に立てる存在でありたいと願っていた。そんななか、ナノが弓道部に入部し、才能と存在感で瞬く間に人気者になっていく。強い嫉妬心を抱いた春香が、衝動のままトイレの壁に書いた“願い”は、やがて現実をゆがめ始める。的中する矢、逆転する評価、そして暴走する好意。言葉は次第に呪いへと変わり、春香の日常を侵食していく。すべてを見つめるナノのほほ笑みの意味とは――。

取材・文/イソガイマサト 撮影/尾崎篤志(仲島有彩)
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