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嫌われてこそ成立!? 菅田将暉が挑む「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」2025/09/24

嫌われてこそ成立!? 菅田将暉が挑む「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」

 フジテレビ系では10月1日より、脚本家の三谷幸喜が25年ぶりに民放ゴールデン・プライム帯連ドラの脚本を手がける「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(水曜午後10:00、初回は30分拡大)がスタート。1984年の渋谷を舞台にした青春群像劇で、三谷の経験に基づく完全オリジナルストーリーだ。

 主人公は、自分の才能を信じ、昭和後期を駆け抜けた演劇青年・久部三成。菅田将暉が主演を務め、共演には、二階堂ふみ神木隆之介浜辺美波らが名を連ねる。

 三谷氏とは大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)以来、3年ぶり2度目のタッグとなる菅田が、三谷作品の魅力や本作の見どころについて語った。

「誰が主演か分からない」三谷幸喜が作り出す群像劇の面白さ

──三谷さんとの再タッグが決まった際の心境をお聞かせください。

「純粋にうれしかったです。『鎌倉殿の13人』で源義経を演じさせてもらって、すごく大変だったし難しかったのですが、本当に楽しかったんです。三谷さんの書くお話は、人間の感情が多面的に動いているのが魅力。今回も、コメディーとシリアス両方に触れるので『またそれができるんだ』とすごく楽しみでした。片方では爆笑して、もう片方では号泣しているようなシーンの連続なので、役者としては大変なのですが(笑)」

──その上で、脚本を読んだ感想を教えてください。

「最初からめちゃくちゃ面白かったです。登場人物みんなが慌ただしいんです。誰が主演かも分からない、その感じがすごく劇団っぽくて、三谷さんらしいなと思いました。個人的に三谷さんの群像劇が大好きなので、笑いと涙、いろんな感情がごちゃ混ぜになった感じに引き込まれました」

1984年の渋谷は“時代劇”

嫌われてこそ成立!? 菅田将暉が挑む「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」

──本作は、三谷さんの経験に基づく物語です。

「三谷さんご自身のことはもちろんですが、知らないことがたくさん出てきました。当時の渋谷の様子も新鮮でした。そこに、シェイクスピアのオマージュがちりばめられているのが新しいなと。三谷さんいわく、当時の人々は“何もないけど全部ある”ような、ポジティブで変なエネルギーに満ちていたそうです。その時代を演じるのがすごく楽しみでした」

──1984年の渋谷が舞台ですが、菅田さんが思うこの時代のイメージというと?

「撮影現場に当時の雑誌『anan』が置いてあって、おすぎとピーコさんの連載を見ると、めちゃくちゃ悪口を言いまくっていたんです(笑)。当時はそれが許されるというか、批評こそ愛、という時代だったんだなと感じました」

──今の時代とかなりギャップを感じる部分ですよね。

「今ってSNSでも匿名でしか発信をしないし、失敗や壁にぶつかる前に『そこには壁があるよ』と教えられる時代です。でも、当時の彼らは、ある意味盲目的に進んでいく力があったと思うんです。久部がもしSNSをやっていたら、炎上しまくって何もできずに終わる気がします(笑)。そういう意味で、久部のようなエネルギーがある人がいることによって、いろんな表現が生まれて生活が豊かになっていたんだなと感じます」

──当時の若者像と向き合う中で、意識されているポイントがあれば教えてください。

「本作は“時代劇”だと思って演じています。言葉の置き方やテンポ、少し粗暴な感じなど、現代劇にはない圧のあるテンションを意識しました。当時と今ではモラルも違いますし、タバコを吸う人、ポイ捨てをする人が当たり前のようにいた時代。感情表現や人との距離感も、今より荒いというか、アナログ的な部分が多かったんだなと。みんな声が大きくて、久部もテンションが上がると、とにかくうるさいです(笑)」

久部三成は「喜劇ではなく悲劇」

嫌われてこそ成立!? 菅田将暉が挑む「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」

──久部の人物像について教えてください。

「一言で言うと本当に“バカ”ですね(笑)。演劇や蜷川幸雄先生、シェイクスピアに対する熱量や愛情は本物なんですけど、それ“だけ”なんです。基本的には空回りしている人間。三谷さんからも、『もっと自分勝手でいい、あまり人の話を聞かなくていい』と言われました。ドラマの主人公は普通、どんな役でも好かれる存在だと思うんですけど、久部は嫌われるんです。途中、一瞬『いいやつかも?』と思わせつつ、でもやっぱり嫌われつつ、というふうに見ていただけたらいいなと思いながら演じています(笑)。これは喜劇ではなく、悲劇だと捉えてください」

──そんな久部を演じる上で、楽しさややりがいはありますか?

「めちゃくちゃ楽しいです。個人的に“みんなが自分勝手な作品”がすごく好きなんです。調和をとろうとしないからこそ、いろんな出来事が起きて、それぞれの個性が爆発していく。しかも今回は、普段ドラマではなかなか出会えないような方もたくさん出演されているので、今までになかった空気感を感じています」

──菅田さんから見て、久部は愛すべき人物ですか?

「僕的には愛すべき役だと思います。ただ、たまに自分でも『いい加減にしろよ』ってイライラしますけど(笑)。でも、人間として本当に駄目なことを全力やれるのってお芝居ぐらいじゃないですか。だから楽しいんです」

三谷幸喜が描く「人間」の魅力

──三谷さんが描かれる人物像、キャラクターの魅力についてどうお考えですか?

「三谷さんは、人を本当によく見ていらっしゃると思います。お話を聞くと、役者にあて書きで脚本を書いたら、その人そのものになってしまったということが結構あるみたいで。今回も、久部を含めてあて書きの人が何人かいるそうですけど、僕自身『こんなふうに見えているのか…』と少しショックを受けました(笑)」

──三谷さんの観察力がキャラクター作りに生かされているのですね。

「三谷さんも考えつつ、自然とその人物像が動き出して筆が進むことがあるみたいです。お芝居とはいえ、役者自身が持つ個性は必ず出てくるので、三谷さんはその人の“いい味”をうまく引き出しているなと感じます」

──久部の心の師匠は蜷川さんですが、菅田さんの心の師匠というと?
「僕は青山真治監督です。19歳の頃に出会って、映画の現場で怒鳴られながら教えてもらったのが、僕の原体験としてあります。蜷川さんともご一緒させていただいたことがあって、すごく記憶に残っています」

──当時の経験が、今回生かされていると感じる部分はありますか?
「あります。蜷川さんから『気持ちが昂ったら、とりあえず登れと言われたことがあって。気持ちが高揚した時は、高いところに行ってみろと。なので、今回も感情表現として無駄に立ち上がったり、高いところに上ったりしています。普段のお芝居より演劇的な要素を多くして、身振り手振りを大きく、ギリギリ違和感が出るくらいで演じようと意識しています」

「死んでもいいもん作るぞ!」という制作陣の情熱

──本作のために巨大なオープンセットが設置されたそうですね。
「すごいセットですよ。フジテレビさん本気です(笑)。『死んでもいいもん作るぞ!』という情熱が爆発したセットができあがっています。個人的には、今までやったドラマの中ではるかに一番豪華。当時の渋谷を忠実に再現していて、特にネオンが多い夜のシーンは本当にきれいです。路面が濡れると光が反射して艶やかな感じが、この時代の雰囲気を醸し出しています」

──特に、注目してほしいポイントがあれば教えてください。

「三谷さんのこだわりで、実際に当時あったものを置いているシーンが結構あります。お菓子のパッケージなんかもなるべく当時のものを使っていますし、当時を知っている方なら『こんなのあったな~』と懐かしく感じられるようなものがたくさん出てくると思います」

──細かい部分まで見どころになってきそうですね。

「この作品はファンタジーではあるけれど、あくまで三谷さんの実体験や経験がベースになった“架空の渋谷”なんです。だからこそ、こういった細かいディテールにリアルさを持たせることがすごく大事だと思います。そうしないと、全部がおとぎ話になってしまうので。そういったこだわりにもぜひ注目してほしいです」

──以前、テレビドラマの厳しい状況についてお話をされていましたが、今回の現場で何か感じたことはありますか?

「気持ちは変わっていませんが、今回の現場は希望があふれていました。巨大セットや三谷さんの脚本の力ありきですけど、撮影に入る前に台本が早めにそろっていたことで、スタッフも役者も準備に余裕を持つことができたんです。テレビドラマはギリギリで制作することが多い中で、前もって準備してくださったおかげでスムーズに撮影ができたことは、良い作品を作る上で本当に大事だなと実感しました」

嫌われてこそ成立!? 菅田将暉が挑む「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」

【プロフィール】
菅田将暉(すだ まさき)
1993年2月21日生まれ。大阪府出身。近年の主な出演作は、「3年A組 ―今から皆さんは、人質です―」(日本テレビ系)、「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系)、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)映画「花束みたいな恋をした」(21年)、「サンセット・サンライズ」(25年)など。現在は、Netflixで「グラスハート」が配信中。NHK放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK総合ほか)が12月に放送予定。

【番組情報】
「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」
フジテレビ系
10月1日スタート
水曜 午後10:00~10:54 ※初回は30分拡大



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