間宮祥太朗と走り抜けた“感情の裁判劇” 畑中P&駒Pが語る「イグナイト」と最終回と制作の裏側2025/06/26 18:30

間宮祥太朗が主演を務めるTBS系のドラマ「イグナイト-法の無法者-」(金曜午後10:00)は、訴訟社会化が進む日本と飽和状態にある弁護士界のリアルを描いた、これまでのリーガルドラマとは一線を画す完全オリジナルのダークリーガル・エンターテインメント。
宇崎凌(間宮)と轟謙二郎(仲村トオル)が追う5年前のバス事故の闇。真実を求める者たちの熱い思いが交錯し、ついに物語はクライマックスへ。現場を支えたキャストたちの高い集中力とチームワーク、緻密に張り巡らされた伏線への視聴者の鋭い反応、そして“無法者”たちがたどり着く裁判の行方とは?
6月27日の最終回放送を前に、企画・脚本・プロデュースを手がけた畑中翔太さんとプロデューサーの駒奈穂子さんが、制作の舞台裏から最終話に込めた思い、そしてその先にある可能性について語った。
5か月の熱量と集中力で作り上げた現場
――まずは、全ての撮影を終えて、率直に感じていることをお聞かせください。
畑中 「とにかく『長かった』です。1月末にクランクインして、最初の撮影がバス事故の横転シーンだったんですよ。すごくダイナミックで緊張感のあるシーンからスタートして、そこから約5か月。本当に長くて、思い出深い日々でした」
――主演の間宮祥太朗さんについて、どのような印象をお持ちですか?
駒 「間宮さんが一番、負担もカロリーも高かったと思います。セリフも多くて、アクションシーンも続きましたし、彼が背負っている“過去”の重さも含めて、相当大変な役でした。でも一度も、熱量が下がったり疲れを見せたりすることがなかったんです。彼は『台本に書いてあるからやる』ではなくて、『宇崎という人間だったら、どう行動するのか』を本当に真剣に、熱量高く、ディスカッションしながら臨んでくださいました。最後までその姿勢を貫いて、チーム全体の空気を作ってくれた。感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです」
畑中 「クランクアップの時に、間宮さんに『タフネス過ぎますね』と声を掛けたんですが、まさにその一言に尽きます。アクションから法廷での頭脳戦まで、求められるものの振れ幅がとにかく大きかった。それでも一度も愚痴をこぼしたり、疲れた顔を見せることがない」
――現場での立ち姿や存在感については、どのように映っていましたか?
畑中 「背中で見せるタイプですね。声を張って現場を引っ張るのではなく、自分の仕事を淡々とやり切ることで、周りが自然と引っ張られていく。共演の仲村トオルさんも『間宮さんの熱量がまったく落ちない』と言っていましたが、それって実はすごく大変なことなんです」

――作品を通じて寄せられた視聴者の反応には、どんな印象を持ちましたか?
畑中 「視聴者の皆さんの考察力や“気付こうとする力”が実にすごくて、びっくりしました。たとえば第1話で、バス事故に遭う娘のスマホに轟のアイコンが一瞬、映っているんです。ちょっとした伏線でしたが、『あの娘は轟の娘なんじゃないか』と気付かれるのが早くて」
――予想以上の深読みが広がる中で、制作側としてはどんな心境でしたか?
畑中 「もう『どうしよう!』って、正直ハラハラしていました(笑)。考察の中で『この人当たっている!』って思うことも多くて、5年前の因縁や闇の部分に想像以上に強い興味を持ってくださっていました」
駒 「私たちは“6人のメインキャラクターを、どれだけ愛してもらえるか”をすごく意識して脚本を作っていました。関係性の考察や、『このキャラは過去にこんなことがあったから』といった深読みまでしていただけて、とてもうれしかったです」
――撮影現場では、俳優陣の間にどのような雰囲気があったのでしょうか?
駒 「長い撮影だったにもかかわらず、皆さん終始楽しそうでした。特にピース法律事務所の4人のシーンが印象的で、セッティングの間も外で休憩せず、それぞれの席に座ったまま、たわいない話をしたり、次のシーンについて話し合ったり。和やかに過ごしていました」
畑中 「4人が集まる時は、本当に“わいわい”していました。ただ撮影スケジュールの都合で、事務所のシーンが先に終わってしまって。後半はそろう機会が減って、『次はいつ会えるの?』って、みんなで会える日を楽しみにしていたのが印象的です」
――張り詰めたシーンの撮影では、どのような空気感がありましたか?
畑中 「第1話の車のシーンや第3話のワンカットのアクションシーン、第7話の電車内での緊迫したシーンなど、毎回皆さんがすごくアドレナリンが出ていて。俳優としての“プロ根性”で、緊張感あるシーンこそ逆にテンションが上がって楽しんでくれていました」
――物語が終盤に進む中で、役者の演技や現場に変化はありましたか?
畑中 「第9話以降は宇崎と轟の思いや過去が深く描かれる展開で、お芝居自体も今まで以上に“ずっしり重いもの”でした。特に第10・11話は裁判がメインになるので、公判での駆け引きや証拠の提示など、緊迫感ある演出が必要で、演じる側にも最終章に相応しい緊張感がありました」

――及川光博さんの役作りも話題になっていましたね。
駒 「及川さんは、変装や潜入が得意なキャラクターをご自身がすごく楽しんでくださって。『こういう癖をつけたら面白いんじゃないか』とか、役作りを毎回誰よりも楽しんで考えてくださっていました」
――仲村トオルさんも、深く役に入り込まれていたそうですね。
駒 「仲村さんが『この役は本当に大変だ』とおっしゃっていました。普段は場を和ませるユーモアでスタッフにも気を配ってくださるんですが、第9話の轟の過去を振り返る重いパートでは、撮影後に『もう二度と娘を失う役はやりたくない』とおっしゃっていました。想像するだけで本当に苦しい気持ちになっていたようです」
畑中 「現場でお話した時に『第9話、家族と一緒に見るか迷っているんです。もしかしたらつらいストーリーになってしまうかもしれないので』と話されていました。俳優としてだけでなく、一人の人間としても深く向き合ってくださったことに心から感謝しています」
――今だから話せる制作エピソードがあれば教えてください。
駒 「“ピース車”の話ですね(笑)。監督が『轟の趣味で買った中古車』という設定にこだわって探した一台なのですが、古い車でとにかく手がかかる! エンジンがかからなくなってスタッフ総出で押して移動させることもあって。途中で車を入れ替えたり修理したり、めちゃくちゃ手がかかりましたが、その分すごく愛着も湧きました」
畑中 「これはプチエピソードですが、裁判所のセットと事務所のセット、実は“真横”にあるんですよ。徒歩10歩もない距離なのに、『法廷の日』は現場がどこか緊張感が増して、『事務所の日』は一気に和やかモードに。同じ空間なのに撮影日ごとに空気が違うところが面白かったです」
キャラクターを育てた俳優陣の発想と熱意

――キャストからのアイデアや提案で、印象に残っているものはありますか?
畑中 「上白石萌歌さんが『伊野尾という役、現代的な子にしてみようかなと思っています』と。彼女の言葉を借りれば“ギャル弁護士”ですね。でもちゃんと頭が良くて複雑な事情も抱えている。彼女からの提案でセリフも一部変えて、結果的にキャラ作りにすごく効いていました」
――仲村トオルさんによるアドリブの工夫もあったそうですね。
駒 「仲村さんは台本上、真面目なセリフでも、リハーサルでユーモアを入れてきたり。ほかのキャストも『そこ乗っていいんだ!』という感じで、緊張感のあるシーンにも“くすっ”と笑えるエッセンスが入るようになりました」
――キャストの熱量が現場に与えた影響について、どのように感じていますか?
畑中 「面白いのは、宇崎のアクションシーンを見てキャスト陣が感化されたこと。(高井戸斗真役の)三山凌輝(BE:FRIST)さんに『俺、アクションないんですか?』って言われたり、(浅見涼子役の)りょうさんも『ちょっと動きのあるシーンやりたいな』って言ってきてくれたり(笑)。その声を受けて第10・11話に“動き”を加えました。俳優陣の“イグナイトされた”熱に応える形で脚本に反映させたんです」
――個性豊かな登場人物がそろった本作ですが、もし続編やスピンオフを作るとしたら、どのキャラクターの物語を描いてみたいですか?
畑中 「クランクアップの時にも、俳優陣が『シーズン2やろうよ』『映画もやりたいね』って言ってくれて。特定の誰かの過去を描くというよりは、『“無法者”なんだから、銃とか出したくない?』なんて監督と話しながら、海外や国際裁判を舞台にしたダイナミックなストーリーも面白いなと考えたりしていて。『オーシャンズ11』(2001年)的なエンタメ要素を持ったそんな作品にも広げられると思っています」
駒 「撮影の最後の1週間は、キャストもスタッフも毎日のように『スピンオフやりたい!』って話していました。今回登場したゲストキャラクターたちもとても魅力的だったので、彼らが再登場して、宇崎たちとともに“暗躍”するような物語も面白いと思います。例えば、第5話の健康食品会社社長・高島陽次(羽場裕一)など、どこかで“駒”として動いていそうな人物たちが再集結して、宇崎たちのチームと絡んでいくような番外編。そんな構想も、実際にキャストとよく話していました」

「無法者たちの正義」が交錯する最終回へ
――いよいよ最終回が放送となりますが、最終話に込めた思いを、あらためて聞かせてください。
畑中 「見どころは宇崎と轟の“正義”に軍配が上がるのかという点です。第1話から描いてきた“5年前の闇”。轟が事務所を飛び出して独立し、仲間を集め、浅見が警察内部で情報を探り、宇崎を引き入れて…。この5年間ずっと、その裁判に向けて準備を進めてきました。これまでの第10話で拾ってきたピースが第11話でついにそろって真実にたどり着く、その全てを見逃してほしくないです」
――長い物語の積み重ねが、感情のクライマックスを導くわけですね。
畑中 「そうした彼らの“思い”に、視聴者の皆さんもぜひ共感していただいて、まるで裁判の傍聴席にいるような気持ちで見守っていただけたら。相手は5年間かけてもなかなか倒せなかった強大な存在ですから、そう簡単にはいかない。彼らがどんな手段で、どんな証拠を見つけて、どう逆転していくのか。『イグナイト -法の無法者-』というタイトルに込めた思いを、最後の最後にぶつけるような展開を用意しています。心情に寄り添いつつ、スリリングな逆転劇としても、ハラハラしながら見てもらえるとうれしいです」

――感情と理性が交錯する裁判劇としても見応えがありますね。
駒 「弁護士監修の福島健史先生が『裁判は結局、人間の感情のぶつかり合い』とおっしゃっていましたが、それがこのドラマにも通じています。最終話で宇崎たちが戦うのは、とても強大で権力のある相手。でも、裁判という場で最終的に物を言うのは“感情”なんです」
――登場人物たちの心の変化も、見どころの一つでしょうか。
駒 「理屈や理性で仕事をしてきた高井戸や伊野尾たちも、宇崎の感情に触れていくことで、だんだんと自分たちの中にある怒りや悔しさを認識していきます。そしてその感情を、最終的に裁判という場でぶつけていく。その流れが、私たちが描きたかった“無法者たちの正義”なのだと思います」
――最後に、視聴者へのメッセージをお願いします。
駒 「『理不尽だ』『許せない』と感じる思いを重ね合わせながら、最後は熱い気持ちで見届けていただけたら。私たち自身がこの6人のキャラクター、このチームに深い愛着を持っています。最終話を見終わった時、『いつまでもこのチームを見ていたい』と思っていただけるはず。どうか、最後まで彼らの物語を見届けてください」

【番組情報】
イグナイト -法の無法者-
TBS系
金曜午後10:00~午後10:54
取材・文/斉藤和美
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