堤真一、NHKスペシャルのドラマ「大阪激流伝」で戦後復興を支えた町工場の職人を熱演2025/05/31
堤真一が、NHK総合で8月下旬放送のNHKスペシャルが制作するドラマ「大阪激流伝」（日時未定）で主演を務めることが分かった。
「2025年日本国際博覧会」の開催で熱い視線が注がれている大阪の知られざる戦後史を描く本作は、今や超高層ビルが林立する大阪城公園周辺の一帯が舞台。この場所には、かつて東洋随一の軍事工場「陸軍大阪砲兵工廠」があり、日清戦争以降、大型兵器の製造を担っていたが、太平洋戦争終戦の前夜に米軍の空襲で壊滅した。しかし、そこで働いていた工員や工廠（こうしょう）の下請けをしてきた町工場の人々の活躍によって、大阪の戦後復興は支えられてきた。
番組は、工廠跡地の戦後史や町工場への綿密な取材を基に、戦中に砲兵工廠で働いていたある町工場一家の戦後の軌跡をドラマ化。そこにバイタリティーあふれるタフな大阪の人々のドキュメントも織り混ぜていく。在日コリアンをはじめ、多様なルーツや異なった価値観が共存し、時にぶつかりあうことから生まれていった街の熱気と、大阪の知られざる横顔を描き出す構成となっている。
堤演じる主人公は、戦後の焼け跡の広がる大阪で、拾い集めた鉄くずからあっという間に鍋釜も三輪車も作ってしまう田口留蔵。砲兵工廠で金属加工の技を磨いてきた留蔵は、3人の息子のうち、2人は戦地から帰らず、末っ子は終戦前日の空襲で失うという悲劇を背負っている。喪失感を振り払うかのように目の前の仕事に打ち込む留蔵は、戦後の混乱で大企業がまだ稼働再開できない中、妻と2人、掘っ立て小屋から「田口鐵工所」をスタートさせる。
物語は、奇跡的に復員して跡を継いだ次男・雅征が家族のために朝鮮戦争で使う兵器を作るという苦渋の決断をする展開や、大阪万博（日本万国博覧会/1970年）開催が迫る69年に雅征の長女・ミチコが大学の仲間とともに戦争と平和の矛盾をめぐって葛藤する姿を通じて、親子3代のファミリーヒストリーからある大阪人たちの破壊と再生の80年をたどっていく。
作・演出を担当する佐野達也ディレクターは「堤真一さんを主人公にお迎えしての、大阪の物語。役者全員が関西出身。エセ大阪弁に厳しい大阪人を、きっとうならせるはずの大阪の物語」とコメント。大阪に何度も足を運び、戦後の大阪について学び、大阪の町工場の玄関をたたいて油まみれになりながら機械に触れ、ようやく決定稿に至ったという制作への思いを語っている。
今回のドラマでは“大阪城”が語り部を務めるという風変わりな手法を採用。佐野ディレクターは、取材中に出会った東大阪の町工場のおじさんの言葉からヒントを得たと明かす。「江戸時代の大阪の人口は40万人ほど。そのうち武士の数は、わずか2千人足らずやったらしい。これは、ごっつい城のある町としては、例外中の例外に少ない。大阪の街を創ったんは民衆や──なんて言うたら、なんやカッコよぉ聞こえるけど、とにかく大阪人は伝統的に”権力”ちゅうもんに対して、ナメてるところがありますねん」という言葉に感銘を受けたという。
後で調べると、これは司馬遼太郎の言葉をまねたものだったが、そのおじさんはさも自分の血肉から生まれた言葉のようにドヤ顔で語っていた。佐野ディレクターは「まあまあ、細かいこと気にすんな。こういうしたたかさも含めて『大阪やなぁ』と、思いました」と振り返り、大阪人の気質への深い理解と愛情を込めた作品への意気込みを示している。
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