リリー・フランキー&長谷川京子が語る「ペンション・恋は桃色」自由な現場と“恋と人生”2026/07/30 18:00

東京の外れにある古びたペンションを舞台に、シロウ(リリー・フランキー)、ヨシオ(斎藤工)、ハル(伊藤沙莉)を中心とした、どこか不器用でいとおしい人々の日常を描いてきたドラマ「ペンション・恋は桃色」。そのseason4が、FODで7月31日から独占配信スタートする。
大きな事件が起きるわけではない。けれど、何げない会話の中に、親子の距離や恋の気配、人生のままならなさがふっとにじむ。笑って見ていたはずなのに、少しだけ胸がきゅっとする。その独特の余韻が、回を重ねても色あせない味わいだ。新シーズンには、長谷川京子がヨシオの元カノ・カコ役で参加。つかみどころのないヨシオの過去に触れる存在として、いつものペンションに大人の華やかさと、リアルな温度を運び込む。
自由な現場のムードと“部活感”が鮮度と名シーン(!?)を生み出す
長谷川は本作について、「ファンタジーなんですけど、ちょっと地に足がついているところもある。出演されている方も、作られている方も、もの作りがすごくクリエイティブで、ぜひご一緒させていただきたいと思いました」とひかれた理由を語る。さらに出演の決め手として、「リリーさんが出演されているというのも大きかった」と明かすと、リリーはすかさず「僕らが恋する話なのかなと思ってたんです」と反応。
これまでシーズンごとに、シロウは訪れる女性たちとの間に恋のきざしを漂わせてきた。それだけにリリーは、長谷川の出演を知り、「京子ちゃんが出てくれるのに、なんで俺との恋の話じゃないんだろうって」と冗談交じりにぼやく。長谷川が「でも、私とリリーさんだと、生っぽくなるんじゃないですか」と笑えば、リリーは「生々しいのがいい」と言い切る。けれど、本作でカコが向き合うのはシロウではなく、ヨシオだ。

リリーは、カコというキャラクターについて「コメディー色の強い京子ちゃんを見られるのは、ちょっとレアだと思います」と期待を寄せる。長谷川は「私は本当に何もしていないんですけど、周りの皆さんが面白がってくださって、それで成り立っていると思うんです」と謙遜するが、リリーは「この人がいると、画面に映っただけでもうドラマにしてくれる。華やかになる」と絶賛した。
その一方で、現場で長谷川が目にしたリリーの姿は、実に「恋は桃色」らしいものだったという。「ペンションを貸し切って撮影していたので、メイク室がお部屋なんです。ベッドも置いてあるんですけど、入ったらリリーさんが寝ていて。『居たんだ』みたいな(笑)。数秒ですぐ寝ちゃって、いびきもかいていて。大人としてきちんとされているけれど、人がいるところだと安心して寝るんだな、という子どもの部分を垣間見られました」。

リリーいわく、この現場には独特の熱量がある。撮影後も宿泊先で飲み会が始まり、共演の鈴木慶一や高木完らが「どれだけ遅く終わっても、飲まないと寝ない」のだという。「俺、沙莉、工くんが終わって戻ってくるのが夜中の1時とかなのに、『さあ、飲むぞ』って。逆に2人に飲ませないと寝ないから」と笑うと、長谷川が「寝かしつけですね(笑)」と重ねた。
そんな自由なムードの中で、長谷川が意識していたのは“余白”だった。「セリフをきっちり固めすぎず、7割ぐらいの感覚で現場に入ろうと思っていました。即興やアドリブも飛び交う現場だと聞いていたので、いかようにでも対応できるように。無理に私がアドリブで返す必要はないけれど、いじってもらえればいいなという緩さは持っていました」。長いセリフをワンシーン、ワンカメで撮ることも多く、「自分が入るタイミングが分からない時は、リリーさんが目で『今、言って』みたいに合図してくださるんです」と説明する。

リリー自身も、この作品の作り方に強い愛着を持っている。「基本的に、このドラマの作り方みたいにして物を作りたいなという気持ちが常にあるんです。仕事然としたところから生まれるものって、やっぱり“仕事っぽいもの”になる。この作品には、部活感というか、ものを作り始めた時の初期衝動があって、方法論から入りすぎないんです」。
脚本の打ち合わせをしていても、直前にセリフや設定を変えることがあるという。雪が降れば、スコート姿の主婦たちが雪の中でテニスに興じる(season1)。雨が降れば、ヨガのシーンを室内に移すのではなく、“カッパヨガ”にしてしまう(season3)。「その場でいろいろ考えていける現場がある方がいいんです」。リリーはこのテニスの場面を「令和の名シーンですよ。カルト映画です」と引き合いに出す。予定通りに整えるのではなく、目の前で起きたことを面白がり、作品の中へ取り込んでいく。そんな柔軟さが、この作品ならではの鮮度を生んでいる。
長谷川も「ドラマの現場はこうじゃなきゃいけない、という概念が通用しないところがすごく好きでした」と共感。「決まった世界の中だと、決まったものしか作れない。そこから生まれる新しいものって絶対にあると思うんです。『仕事だから頑張った』とか『大変だったから達成感がある』というより、『楽しかったでいいんじゃない』って、私も最近思えるようになって。楽しい現場が何よりだなと思いました」。
では、シロウはリリーへの当て書きなのか。そう尋ねると、意外な答えが返ってきた。「基本的にシロウさんは、監督の願望なんですよ」。監督自身の娘への思いや、真面目な人ゆえに抱く女性への憧れなど、さまざまなものが投影された“メタファー”なのだという。さらに、リリーは、ヨシオを演じる斎藤に関して「工くんは地に近いというか。あの役も本人も、つかみどころがなかなか難しい感じ」と愉快そうに話す。「でも、ヨシオはseason1からだいぶ人格が変わったよね。もっと暗かったもん。多分、毎回、工くんが前どうだったか忘れているんだと思う」。変わり続けることさえ、この座組では愛嬌(あいきょう)になるようだ。
長谷川演じるカコの登場で恋愛模様に変化が!? 自身の恋愛観も明かす
話は自然と、大人の恋愛観にも展開していく。カコは、あいまいなヨシオに歩み寄っていく人物だが、長谷川自身は「自分からぐいぐい行くタイプではない」ときっぱり。リリーから「自分から行かずに、どうやって来させるんですか」とツッコまれると、「一緒にいる時は目いっぱい楽しみます。そこに狙いはありません」と返す。リリーも「相手が自分に全く好意を持っていないだろうなという人に、ぐいぐい行くことは絶対できない。ご飯に誘うのもしんどい」とし、「恋愛感情じゃなくても、お互いに何か通ずるところがあると思えないと行けない。それは男友達でも食事に誘えない」と自身の感覚を明かした。

一方で長谷川は、恋愛において「必要な時に必要な言葉は欲しい」と女性側の思いを代弁。リリーが「男の人って、なるべくそういうありきたりなセリフを言いたくないっていうのもある」と話すと、長谷川は「女性は言わせたいんですよ」と力を込める。さらに、「分かっていても、言われるとうれしいっていう」と続け、2人の会話は“言葉にすること”をめぐる男女の感覚の違いへと広がっていく。
リリーは「日本における『愛してる』って、飛び抜けて変な言葉」としながら、「男からすると、一生に一度言うか言わないかの言葉」と表現する。長谷川も、海外ドラマにおける“I love you”の使われ方を例に挙げながら、「2人の仲が深まった時の一つのゴールというか、愛してると言ってもらえる関係になったんだ、ということだと思います」と受け止めた。
そんな会話を聞いていると、長谷川演じるカコが、ヨシオに踏み込んでいく理由も少し見えてくる。劇中でカコがヨシオに向ける印象的な「見つけた」というセリフについて、長谷川は「どういう意味の“見つけた”なのか、監督と答え合わせはしました」と振り返る。「ただ、その最初の出会いのシーンが一番最後の撮影だったんです。だから、ペンションを訪れて工くんに声をかける場面は、テンションを上げていきました」。かつての恋人であるカコが現れることで、これまで見えにくかったヨシオの心情にも、新しい揺らぎが生まれそうだ。
笑いの中に人生のせつなさがにじむシリーズの魅力
劇中には「絆が一番」「健康も一番」「お金も大事」という言葉も登場する。今の2人にとって一番大事なものを尋ねると、リリーは「健康はもちろん一番」と即答しつつ、「お金のことを考える才能を持っていないんです」と笑う。「でもお金がないと、おいしいものを食べられないし、健康さえ維持できない。ないがしろにはできないですよね」。長谷川も「若い時は寝不足でも気合で頑張れたけれど、今は寝不足だと頑張れない。健康があってこそのメンタルだと思うので、やっぱり健康が一番かも」とうなずいた。

くだらない話をしていたはずが、気付けば人生の話になっている。笑いながら聞いていたのに、ふと切なくなる。「ペンション・恋は桃色」の魅力は、まさにそこにある。
リリーはこの作品の脚本を「不完全極まりない」と評する。「どうやって撮るかを想定しないまま書かれている。でも、リビングに人が集まってぐしゃっとなる。今回も、工くんと京子ちゃんがキスするかしないかみたいなところを、周りでやんややんや言う。やってみなきゃ分からない脚本なんです。現場の人頼りに書かれているから、システマチックじゃない生々しさが出る」と、偶然や余地を抱え込む本作ならではの面白さを語った。
長谷川という新たな存在を迎えたseason4では、シロウ、ヨシオ、ハルの見慣れた関係にも、ほんの少し違う表情が生まれそうだ。ヨシオの元カノ・カコの登場によって、これまで多くを語られてこなかった彼の過去や、ハルとの距離がどう揺れるのか。相変わらず気ままで、どうしようもなくて、でも誰かのことを少しだけ大事にしたくなる。そんな「恋は桃色」ならではの時間が、また始まる。

【プロフィール】
リリー・フランキー
1963年11月4日生まれ。福岡県出身。近作は、映画「ルノワール」(2025年)、ショートドラマ「地下アイドルの方程式」(DMM TV)など。TBS系で放送中のドラマ「Tシャツが乾くまで」(金曜午後10:00)や、笑福亭鶴瓶と共にMCを務めるテレ東系のトーク番組「素っ頓狂な夜」(不定期で放送)にも出演。
長谷川京子(はせがわ きょうこ)
1978年7月22日生まれ。千葉県出身。「CanCam」の専属モデルとして活躍後、2000年に女優デビュー。ドラマ「ストロボ・エッジ」(WOWOW)などに出演するほか、自宅に友人を招いて日々思うことを自由にトークするPodcast番組「長谷川京子のうちにおいでよ」を配信している。
【コンテンツ情報】
「ペンション・恋は桃色season4」(全5話)
FOD
7月31日午後8:00~全話一挙配信
※season1~3は配信中。

取材・文/斉藤和美 撮影/蓮尾美智子
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