橋本愛&瀬戸康史共演「にこたま」で示す“新しい家族のかたち”2025/12/16 17:00

FODとPrime Videoで12月26日から配信がスタートするオリジナルドラマ「にこたま」。恋愛や結婚、家族の価値観が多様化する現代において、“新しい家族のかたち”を問いかける物語として注目を集めている。原作は、身近な関係性を繊細に描いてきた漫画家・渡辺ペコ氏による同名コミック。2009~12年の連載ながら、今の時代にも通じる普遍性を持ち、今回の映像化にも期待が寄せられている。
物語の舞台は東京・谷中。弁当店「よねすけ」で働く浅尾温子(橋本愛)は、目の前の生活を丁寧に積み重ねながら、自分らしい“選択”を模索している。一方、弁理士として働く岩城晃平(瀬戸康史)は、穏やかで誠実な性格の持ち主。2人は大学時代から交際し、長年同棲中。結婚をしないことも、子どもを持たないことも自然に選び取ってきた関係のかたちだった。そんな穏やかな暮らしに影響を与えるのが、晃平の同僚・高野ゆう子(比嘉愛未)。難しい案件も確実にこなす優秀な弁理士でありながら、内側には繊細なもろさを抱えており、彼女の存在が3人の関係に新たな緊張を生み出していく。

キャスト陣の演技も見どころだ。橋本は温子が抱える価値観の揺らぎを微細な表情と所作で表現し、生活者としてのリアリティーを体現。瀬戸は晃平の“軽さ”と“誠実さ”という相反する側面を自然体で演じ分け、長年の関係に特有の複雑さを柔らかくにじませる。比嘉は、強さともろさを併せ持つゆう子役に静かな存在感を与え、物語に奥行きをもたらしている。本作の映像化を手がけたのは、「PARKS パークス」「ジオラマボーイ・パノラマガール」「違国日記」などで知られる瀬田なつき監督。日常の空気感を丁寧にすくい上げる演出を得意とし、人物の距離や揺れを繊細な映像で描くクリエーターだ。

そして、「にこたま」では、“食”が登場人物の生活と感情をつなぐモチーフとして随所に登場する。弁当店で働く温子にとって、食は日々の営みそのもの。食卓に並ぶ料理や、場に流れる空気の変化が、言葉にできない喜怒哀楽や関係性の揺れを静かに映し出していく。こうした食を通した感情のレイヤーは原作ならではの魅力であり、ドラマにもしっかりと継承。店の風景や食卓の場面が、温子と晃平の関係をさりげなく照らし出し、作品全体に豊かな生活感と余韻を与えている。

第1話の終盤では、積み重ねてきた日々が、一つの出来事をきっかけに大きく揺らぎ始める。ドラマチックな演出に頼らず、日常の延長線上にあるゆがみをにじませる構成は、視聴者の感情に寄り添いながら物語へと誘う力を持っている。関係性が動き出す導入として、先の展開を知りたくなる幕開けとなっている。

今作は、“正しさ”ではなく“どう生きたいか”という問いを軸に、30代男女が抱える選択と揺れを丹念に描き出す挑戦的なラブストーリーだ。登場人物たちの心の機微を感じさせるアプローチは、原作の本質を誠実に受け継ぎながら、現代の視聴者にも深く寄り添う。3人がこれからどのような“家族のかたち”を選び取っていくのか。続く物語を見届けたい。
【コンテンツ情報】
「にこたま」(全8話)
FOD、Prime Video
12月26日午後8:00から第1・2話配信(以降、金曜午後8:00に最新話を配信)
※配信日時は予告なく変更になる場合あり。
※FODでは1話無料。
※Prime Videoでの視聴には会員登録が必要。

文/杉嶋未来
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