Feature 特集

「暴君のシェフ」イ・チェミン【今月のSPOTLIGHT】2025/09/29 12:00

「暴君のシェフ」イ・チェミン【今月のSPOTLIGHT】

 現代の韓国から朝鮮王朝時代にタイムスリップした一流シェフが、料理の腕を武器にサバイバルを繰り広げることになる「暴君のシェフ」。Netflixでの配信に伴い、グローバルな人気を博している同作で注目を集めているのが、タイトルロールの“暴君”こと王様のイ・ホンを演じるイ・チェミンだ。

陰を抱える若き王の“暴君”ぶりを絶妙に好演

 物語の始まりは、料理コンテストで世界一になるほどの腕前を持つシェフ、ヨン・ジヨン(イム・ユナ)がタイムスリップするところから。たどり着いた先は、500年ほど前の朝鮮王朝。そこはどうやら、歴史に悪名をとどろかす“暴君”の治世らしい。元の時代に戻る方法を探ろうとするジヨンは、意に反して暴君のイ・ホンと急接近。歴史の波に翻弄(ほんろう)されながら、陰謀渦巻く宮中をサバイブすることになる。

 では、その“暴君”がどれくらい暴君かというと、歴史書に記載されるほどなのだから想像もつくというもの。激高しやすく独善的なイ・ホンは、ゆくゆくは王の座を追われるほど悪政の限りを尽くした存在として語り継がれている。一方、やはり王様なのでいいものや美しいもの、おいしいものに当たり前のように囲まれており、絶対味覚を持つ美食家でもあるよう。となると、一流シェフのジヨンが王様の胃袋を満たし、心をつかむのに時間はかからず、物語はジヨンとイ・ホンのラブストーリーにも発展していく。

 イ・チェミンが「暴君のシェフ」で大きなブレークスルーを迎えたのはまさに、その暴君ぶりの絶妙さから。朝鮮王朝第10代王・燕山君をモデルにし、その設定をうまく利用したイ・ホンは、歴史上のイメージ通り激高しやすい王ではあるものの、ジヨンが実際に会ってみると魅力的で放っておけないところも。評判と実像が異なる人、意外といますよね。イ・ホンもそうで、物語が進むにつれ、ジヨンとの仲が深まるにつれ、彼のチャーミングな部分が顔を出してくる。どこか陰を抱えてはいるものの、それは最愛の母を亡くした暗い過去の事情から。さらに、感情の起伏が激しいのは若さゆえ。これには結果オーライもあったようで、当初は現在40歳のパク・ソンフンがイ・ホンを演じる予定だったものの、諸事情により降板。急きょ抜てきされた現在25歳、イ・チェミンのフレッシュさが、若き王のもろさを生み出した。それでいて、いいものを見極めることには長けた王が、未来人の作るおいしい料理の数々にうっとりする“未知との遭遇”もキュートだ。

 おそらく、イ・ホンを好きになり、イ・チェミンにも心奪われた視聴者は多いはず。「暴君のシェフ」は全12話で最終回を迎えるが(寂しい!)、彼の今後の活躍に期待を寄せる声は大きい。

【プロフィール】
イ・チェミン(Lee Chae-Min)
2000年9月15日生まれ。韓国出身。21年、「ハイクラス~偽りの楽園~」で俳優デビュー。22年9月からは音楽番組「ミュージックバンク」でMCを務め、注目を集めた。「イルタ・スキャンダル~恋は特訓コースで~」(23年)、「生まれ変わってもよろしく」(23年)、「ヒエラルキー」(24年)、「バニーとお兄さんたち」(25年)の好演でも評価されている。

【コンテンツ情報】
Netflixシリーズ「暴君のシェフ」(全12話)
Netflix
独占配信中

文/渡邉ひかる



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.