第一部から17年、7年ぶりに店を開ける「めしや」店主役の小林薫が語る“深夜食堂の奇跡”2026/10/26 17:00

TBSほかで7年ぶりに“開店”した小林薫主演のドラマ「深夜食堂 6」(深夜1:26=MBS制作)。この間、世の中はコロナ禍に見舞われ、飲食店は苦境を強いられた。そんなブランクを経ての「めしや」にはどんな変化があったのだろう。
久しぶりに入った「めしや」のセットで、主演の小林薫さんが感じたこととは。日本のみならず世界でも愛される作品に成長した「深夜食堂」への思いを語ってもらった。
7年ぶりの「めしや」で感じた変わらない空気

――「めしや」は7年ぶりの営業再開ですね。
「僕だけじゃなく、常連客役の人の中には初回(2009年)からレギュラーで出てくれている人たちが結構いるんですよ。皆さん、7年ぶりだけど躊躇(ちゅうちょ)もなく、いきなりセットに入って普通に演じていました。やっぱり、十数年積み重ねてきたものがあるからね。7年ぶりに思い出すというより、なじんでいるというか。それはやっぱり、このセットの作りが大きいですよね」
――とおっしゃいますのは?
「コの字形のカウンターをはじめ、めしやのセットは初回から使い続けているんですよ。ただ、建て込みをする場所の広さの関係で、街並みは拡大することもあります。初回はめしやと階段に向かう通路しかなかったんだけど、それがどんどん大きくなっていって。最初からよく計算していたんだなと感心します。美術チームの職人気質が見事。美術に限らずスタッフ全員にも言えるんですけどね。本当によくやっていると思います」
――そこには作品愛が?
「本当に頭が下がります。監督は、全話の内容を事前に吟味するんですよ。話にダブりが出ないように、脚本を書く段階でチェックを入れるんですが、通常、テレビドラマってもっと流れ作業のことが多いのかな、と。カメラマンも、ロケハン以外も衣装合わせにも立ち会っているから、忙しいと思います。スタッフの皆さんが『深夜食堂』のファンで、この作品を愛してくれているんだなとひしひしと感じます。そういえば、第1話から常連キャストで出演している松重豊くんが『小林さん、これ奇跡ですよ』と言っていたことがありました」
松重豊の一言で気付いた“深夜食堂の奇跡”

――どういった意味だったのでしょうか?
「最初はピンとこなかったんです。でも、少し時間がたって、松重くんが言っていたことの意味を実感するようになりました。正直言うと、深夜番組はゴールデンに比べて予算も少ない。そういう事情が画面に出てしまうことがあるんですが、このドラマは、松岡(錠司)監督が映画業界からスタッフを集めているので、プロフェッショナルぞろい。そんな彼らの『深夜食堂』に対する思い入れが画面にすごく出ているんですよね。だから、過酷なスケジュールや環境でも、現場はとても穏やか。そこで、松重くんが言う“奇跡”ってこういうことなんだなと思うようになりました」
――第六部の見どころをご紹介ください。
「7年ぶりに再開するにあたって、実際に起こったコロナ禍のエピソードをうまく取り入れているんですが、いいアイデアだなと思いました。コロナ禍にアクリル板を立てている場面が回想シーンとして出てくるんですが、いい入り方だなと思いました。実際、7年も休んでいたお店はないと思いますが、めしやは再開するのにちょっと時間がかかったんだろうなというふうに見える。そうやって、久しぶりに『めしや』をやる面白さがありますね。僕の頭も白くなっているし、みんな少しずつ変化はあるかな。松重くんの竜ちゃんも髪を染めずにそのまま出ているから、完璧に白髪だし(笑)」
――豚汁がさりげなく値上がりしていたりも。
「そうそう(笑)。諸物価高騰の折りみたいな感じで、それもエピソードの一つになっていますよね。実は、昔の値段にバツをつけて赤字で新しい価格を書くのはどうかって提案したんだけど、それより新しく描き直した方がいいと言われて。リニューアルにあたってメニュー書きも新しくして、再開するにあたり、必要なものをうまく並べていったんです」
世界で愛される「深夜食堂」とマスターへの思い

――そんな「深夜食堂」は、2019年にNetflixで配信された第五部「深夜食堂 -Tokyo Stories Season2-」など、世界的にも人気を博しています。国外でも愛される理由はどこにあると思いますか?
「それが分からないんですよ。最初はアジア圏の人たちの反応が早かったんです。いわゆる海賊版なんだけど、ハングルや中国語の字幕が入った動画が出てね。それからしばらくして、長いことパリに住んでいる日本人から『日本が懐かしい。鼻の奥がツンとくるような感じがする』という声が届いて。どうも、海外の人からすると、コの字形のカウンターで見ず知らずの人が隣に座る中で酒を飲む光景があまりないようで。居酒屋的な風景を、向こうの人たちは不思議な感覚で見ているんじゃないかな」
――その中心にいるマスター役は小林さんにとってどんな存在でしょうか。
「これはご縁ですから。役って、長くやろうと思ってできるものではないし、松重くんが言うところの“奇跡”なんでしょうね」
――その“奇跡”を支えているものは、何だと思いますか。
「この作品が成立しているのは、最初にも言いましたが、スタッフの集結に尽きます。映画業界で、それぞれの業種で一本立ちできる人たちが集まってくれている。ヘアメイクの豊川京子さんは、米国アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされていらっしゃいます。そんな方が深夜ドラマでメイクしてくれるなんて、考えられないですよ。それが長く続いていること自体がとてもありがたいけれど、見てくださっている視聴者の方々が喜んでくれていることが、一番なんでしょうね。それがあるから7年ぶりに再開できていますし、本当に奇跡なんだと思います」
【プロフィール】
小林薫(こばやし かおる)
1951年9月4日生まれ。京都府出身。近作は、特集ドラマ「憶えのない殺人」(2026年/NHK総合ほか)、映画「でっちあげ〜殺人教師と呼ばれた男」(25年/三池崇史監督)、連続テレビ小説「虎に翼」(24年/NHK総合ほか)、アニメーション映画「ホウセンカ」(25年)には声優としても出演。
【番組情報】
「深夜食堂 6」
MBS・SBC・TUT
火曜 深夜0:59〜1:29
TBS
火曜 深夜1:26〜1:56
RKB
火曜 深夜1:28〜1:58
CBC
火曜 深夜1:20〜1:50
HBC
火曜 深夜1:29〜1:59
SBS
火曜 深夜2:30〜3:00
RSK
火曜 深夜2:25〜2:55
tbc
火曜 深夜1:00〜1:30
RCC
火曜 深夜1:55〜2:25
BSN
火曜 深夜1:30〜2:00
取材・文/新井音羽
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