「豊臣兄弟!」松下洸平インタビュー後編 最後まで“徳川家康”を演じ切る1年間の集大成2026/10/25 20:45

NHKで現在放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(日曜午後8:00ほか)で、徳川家康を演じる松下洸平に前後編でインタビュー。
豊臣秀長役の仲野太賀が主演を務める大河ドラマ第65作で描くのは、強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた弟・秀長(仲野)、兄・秀吉(池松壮亮)の“兄弟”の物語。「秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は安泰だった」とまで言わしめた天下一の補佐役・秀長の目線で戦国時代をダイナミックに描く波瀾(はらん)万丈のエンターテインメントだ。脚本は連続テレビ小説「おちょやん」(NHK総合ほか)や「半沢直樹」(TBS系)などで知られる八津弘幸さんが手がけている。
松下は、のちに天下人となる過程の家康を、つかみどころのない人物として魅力的に体現している。前編では、壮絶な過去を背負う家康の人物像や、“豊臣兄弟”との関係、幼少期から家康を支えた石川数正との絆、その役を演じる迫田孝也への思いを聞いた。
後編では、秀吉への臣従を経て変化していく家康を、松下がどのように捉え、演じているのかに迫る。さらに、織田信長役の小栗旬との忘れられない撮影秘話や、1年間ともに駆け抜けてきた仲野、池松への思い、そして家康を演じ続けた今だからこそ感じる役への思いを語ってもらった。
誰も演じていない“徳川家康”へのアプローチ

――家康を演じるにあたり、どのようなイメージを持たれていましたか?
「最初のイメージは、クールで腹の底が見えない人物……そこがかっこいいなと。僕もそういう家康になるのかなと思っていたのですが、非常にコミカルなキャラクターになりまして……。だからこそ、誰も演じていない“徳川家康”へのアプローチが見つかったような気がしています。とはいえ、のちの天下人ですから、本作では描かれていない残酷な面もあったかもしれませんし、そういう一面も演じてみたかったなという思いはあります」
――第41回では、若かりし頃に家康に芽生えた「奪われる前に奪う」という考えが再び描かれましたが、最終的には豊臣に臣従します。今後の家康をどのように演じていこうと考えられていますか?
「腹の底が見えない家康から、壮絶な過去が描かれて牙をむき出しにした家康。そして、第41回ではかみつきに行く家康。これを経て今、非常に丸くなりまして……。ここから最後まで、どういうキャラ作りをしていくか、日々悩みながら撮影はしています」
――何か見えてきた新たなキャラクター像はありますか?
「終盤に向けて、秀長と交流を深めるシーンがあるんです。当時の家康は40代後半から50代前半くらいで、大人になって友達ができるという家康が非常に面白かったです。秀長はグイグイくる性格ですから、うまく返せず苦笑いしている家康を楽しみにしていただければ」
小栗旬の織田信長に圧倒され、頭が真っ白に……

――家康、秀吉と並び、戦国の三英傑と呼ばれた織田信長(小栗旬)とのシーンも回顧してください。第15回「姉川大合戦」で信長から援軍を依頼されるも、わざと遅参し、信長から激怒される場面は印象的でした。
「普段はセリフが出てこなくなることはあまりないのですが、この小栗さんとのシーンでは……。信長にあの目でにらまれると、頭が真っ白になりました。『徳川家康、ただいま参上いたしました』というセリフなのですが、『あれ? セリフなんだっけ?』と……。小栗さんがすごく怖い顔で見ているので、一言も出てこなくて(笑)。信長の威圧感に圧倒されました」
――信長ににらまれた家康が慌てふためく姿はリアリティーがありました。小栗さんはどんな存在でしたか?
「信長から『ほかに申したいことはないか』と言われて、慌てるシーンは、半分お芝居で半分素でした。こちらが役を作る必要のないくらいの空気を小栗さんが提示してくださるので、『豊臣兄弟!』において小栗さんの存在は大きかったです」
――家康の肖像画では、晩年はふくよかな印象があります。見た目を近づけるプランはありますか?
「もう間に合わないと思うので……(笑)。でも、太賀くんも壮亮くんも肖像画の秀長・秀吉の像に今まさに近づけようとしているんです。なので、肖像に寄せるのは2人に託して、僕は僕のままでいきます。壮亮くんなんて、どんどん秀吉に似てきていてすごいなと。(似せるのは)任せた! と」
1年半演じても模索し続ける“家康らしさ”

――撮影期間を含めて1年半の間、家康を演じられて役がなじんできた感覚はありますか?
「どこに行っても皆さんが『家康さんだ!』と声を掛けてくださって、改めて大河ドラマはすごいんだなと。でも家康は奥の深い役なので、今でも家康らしさを模索しながら撮影しています。きっと最後まで『これでよかったのかな』と考え続けると思います。視聴者の皆さんに『この家康が天下を取る姿を見たい』、『江戸の時代を作り、生涯を全うする姿が見たい』と思っていただけるように、最後まで探し続けます」
――家康は秀長、秀吉の死後も生き続けます。本作を経験して、その先の天下人となった家康も演じてみたいと思いますか?
「(撮影期間を含めて)1年半、ここまで家康を演じてきたので、もしそういう機会があれば……。大人の方々、ぜひよろしくお願いします(笑)」
――1年間、同じ作品に出演されたことは貴重な経験だったと思います。
「ぜいたくな経験をさせていただきました。一つの作品でこれだけの名優の方々とお芝居させていただくなんて、大河ドラマ以外ないのではないかと思います。太賀くんや壮亮くん、小栗さんをはじめ、素晴らしいお芝居をこの目で見られたことがうれしいなと」
――主演・秀長役の仲野さん、秀吉役の池松さんの姿を、長期間にわたって見てこられたと思います。2人に変化は見られましたか?
「仲野太賀、池松壮亮にしか分からない、楽しかったことや苦しかったこと、1年半演じてきた人にしか分からないものがあると思うんです。2人はクランクインから今日まで、芝居への思いや取り組み方、現場の立ち居振る舞いが全く変わらないんです。それをそばで見られたことは勉強になりましたし、見習わないといけないことがたくさんありました」
――最終盤を迎える「豊臣兄弟!」ですが、最後に視聴者へのメッセージをお願いいたします。
「ゴールテープが見えてきているので、最後まで気を抜かず、視聴者の皆さんに楽しんでもらえるような作品にしたいです。まだまだここから多くのドラマが生まれますし、たくさんの涙と笑顔が詰まっているので、一緒に最後まで駆け抜けていってもらいたいです」
――今後も楽しみにしています。ありがとうございました。
【編集後記】
忙しい撮影の合間を縫って、取材に応じてくれた松下さん。「コーヒーをこぼしてしまって……」と、白いTシャツをびしょ濡れにして会場に現れる一幕も。その思わぬハプニングさえも笑いに変える自然体な姿が印象的で、家康役とはまた違った松下さんのチャーミングな素顔を垣間見ることができた。
【プロフィール】
松下洸平(まつした こうへい)
1987年3月6日生まれ。東京都出身。2008年に歌手デビューし、09年より俳優として活動を開始。連続テレビ小説「スカーレット」(19年/NHK総合ほか)で注目を集める。「最愛」(21年/TBS系)、「放課後カルテ」(24年/日本テレビ系)など数々の話題作に出演。大河ドラマ「光る君へ」(24年/NHK総合ほか)にも出演した。現在放送中の「LOST10」(26年/TBS系)では、北海道にある会社の代表取締役社長・登里を演じている。
【番組情報】
大河ドラマ「豊臣兄弟!」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後6:00~6:45
※NHK ONEで同時・見逃し配信中
取材・文/S.Kirinuki
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