祝! 特番復活「千鳥のクセスゴ!」総合演出・名城ラリータ氏が語る今後のビジョンとは2026/06/29 06:00

フジテレビでは、2025年3月に終了した千鳥(大悟、ノブ)がMCを務めるネタ披露番組「千鳥のクセスゴ!」が、7月4日に土曜プレミアム「千鳥のクセスゴ!」(午後9:00)として、1年4か月ぶりに復活を遂げる。芸人たちが次々と登場し、ほかのネタ番組では決して見ることができない渾身(こんしん)の“クセがスゴいネタ”を披露し、時には大暴走も!?
「千鳥のクセスゴ!」は、2020年5月に、「千鳥のクセがスゴいネタGP」のタイトルで単発放送。同年8月には早くも2回目の特番を放送して話題になった。そして、同年10月には、初回特番からわずか5か月にして、レギュラー放送をスタート。23年4月からは、タイトルを「千鳥のクセスゴ!」に変更、放送時間を木曜午後9時台から日曜午後7時台に移動した。そして、レギュラー開始から約4年半後の25年3月にはファンに惜しまれながら、いったん幕を閉じた。
「今輝く人気芸人たちが普段披露しているネタとは一味違う“クセがスゴいネタ”を披露する」をコンセプトに、斬新な笑いを届けてきた本番組では、コンビやグループの枠、さらにはジャンルの枠をも超えた“コラボレーション”も実現。人気芸人同士のコラボはもちろん、俳優やアイドル、アスリートなど、なかなかネタ番組で見ることがない豪華ゲストと芸人とのコラボネタも多数送り出してきた。今回の特番でも、スペシャルゲスト×芸人の新たな化学反応に期待が高まる。

そんな、1年4か月ぶりに繰り広げられる“クセがスゴいネタ”の祭典で、総合演出を務める名城ラリータ氏は、フジテレビのディレクターとして、「笑っていいとも!」や「SMAP×SMAP」などの国民的バラエティー番組を数多く手がけてきた。現在は「全力!脱力タイムズ」など、人気バラエティー番組を担当するプロデューサー兼演出家だ。そんなラリータ氏が、本作にかける思いや今後の目標など、さまざまな思いを吐露した。
──これまでのキャリアと、本番組につながる背景について教えてください。
「最初は『笑っていいとも』や『SMAP×SMAP』に関わって、アシスタントディレクターからディレクターになって、お笑いを基本にした番組を担当することが多くなりました。最近だと13年目を迎えた『全力!脱力タイムズ』(金曜午後11:00)を演出させていただいていて、バラエティーの中でもお笑いを主とする番組に携わってきました」
──そうしたご経験がある中で、「クセスゴ」の企画はどのように生まれていったのでしょうか。
「2020年、新型コロナウイルス感染症が流行し、どういうふうに番組を作ればいいのか、僕たちも危機感を覚えていた時、こういう時こそフジテレビらしくやっていこうという機運があったのですが、お客さんを呼んでネタを見せて笑い合うことが全くできなかったので、スタジオでネタを撮ってVTR化し、視聴者の方に見ていただくというフォーマットを作ろうということになったんです」
──その中で、千鳥さんの起用にはどのような狙いがあったのでしょうか。
「生でネタを見てもらうのではなく、VTR化することによってお客さんの熱が下がってしまう恐れがあったので、千鳥さんがゆるく解説することによってプラスになるかなと思ってお願いをしました」

――具体的に、どのような役割を期待されていましたか。
「千鳥の2人は、独特のフレーズや言葉を持っているので、芸人たちの何げないネタや表情、さらにコメントを全て拾い上げて笑いに昇華してくれるのでお願いしました。思っていた通り、僕らが気付かなかったことを千鳥が気付いて、ネタを披露中の芸人さんに愛あるコメントをワイプでコメントしていくというか、ネタ中にもかかわらず千鳥がガヤガヤ言っている状態という。コロナで自宅にこもっている人たちに、ネタはもちろんですが、千鳥のコメントや、ゲストが見せたことのない表情を楽しんでもらいたいと、バラエティー寄りの考え方で制作しました」
──コロナ禍ということもあり、苦労も多かったのでは?
「コンテンツ自体は、怖いもの見たさを含めて、見てもらえれば楽しんでもらえるという自信はありました。ただ一方で、当時は千鳥のコメントが『うるさい』と言われることもありましたね。でも、あえて千鳥のコメントを際立つように編集することで、スタッフもネタの順番や方向性を組み立てやすくなったので、そんなに苦労したとは感じていません。千鳥が出演をOKしてくれた瞬間、自分の中でオンエアの構成が見えたんですよ。セットも衣装もガチャガチャしていますが、パパパッとビジュアルが浮かんできました」
――そんな中で、どんなことを大事にされていたのでしょうか。
「ワイプのコメントをなるべく消さずにそのままオンエアしたかったんです。よく聞くと、ネタの音も千鳥の声も聞こえて、わちゃわちゃした感じなんです。だから、見ている人に『聞こえづらいな』と思われないようにしながら、ライブ感を味わってもらえる編集を意識しました。その意図を理解してもらえるようになるまでは、少し苦労しましたね」

──千鳥のお二人には、どのように伝えているのですか?
「通常は、作っている番組の意図を出演者さんにある程度説明をして、解釈してもらってから電波に乗せるんですけど、大悟さんにはコンセプトすらあまり言っていないというか……。大悟さんには申し訳ないのですが、芸人たちが披露しているネタを見て、瞬時にコメントしてもらうという、ある種、バトルをしてもらっている感覚なんです」
──かなり自由度の高いやり方なんですね。
「ノブさんは進行があるので、収録前に誰がゲストでどんな企画を用意しているのかなどを伝えるのですが、大悟さんには、『おはようございます』とあいさつをするだけなんです。打ち合わせは全くしません。本来は伝えるべきですけど、そうなると大悟さんもノブさんも不自然なコメントになっちゃうかなと」
──あえて“何も伝えない”ことが、狙いになっていると。
「そうですね。お二人がその場で感じたままのナチュラルな言葉は特殊で、僕らが思っていなかった方向に進むため、その後のストーリー展開が作りやすくなるんです。僕も、いち視聴者として、大悟さんとノブさんが何を言うんだろうとワクワクして見ているので、何も言わない。でも、楽しく収録してくれるので、本当に頼りにしています。お二人は、どんな場面でも笑いに変えてくれて、それも瞬時に変えてくれる能力の高い方々なので、今回の特番でも期待しています」
──今回は、1年4か月ぶりの復活になりますが、いかがですか。
「7月4日に放送することを解禁した時、『楽しみにしています』と言う声をいただきました。そこで、これまで放送してきた中からの懐かしいネタをベースにしたブロックと、新しい芸人たちのクセスゴのネタを集めたブロックの両方で構成します。スタジオゲストも長浜広奈さんや、のんさん、深川麻衣さんといった、初めてスタジオに登場する方を中心にキャスティングしました。昔のネタばっかりでも進歩がないですし、新しすぎるのも違うかなと思うので、その両方をうまくミックスできるように放送をしようかなと。もちろん、うちの特徴でもある、ネタにテロップを入れるスタイルも健在です!」

──今回、特番として復活しましたが、この番組の今後のビジョンを教えてください。
「例えば、イベントの企画などを含めて、もう少し大きな存在にしていきたいなとは考えたこともあります。でも今はそれよりも、なるべくネタを通して皆さんが楽しんでもらえる番組にしたいという思いの方が強いですね。約5年レギュラーでやらせてもらって、今回、特番で復活しました。番組が成長しているのを感じていますが、今、他局でもネタ番組がなかなかレギュラーで放送することが難しくなっていることを考えると、『クセスゴ』をどういうふうに次の時代につなげるかということは、ある種、僕らに課せられた新しい使命というか宿題だなと。テレビが、元気がないとか、予算がないと言われていますが、その中で、どういうふうに工夫してネタ番組を作っていくのかを考えなければいけないなと正直に思います」
──さまざまな番組に携わっていらっしゃいますが、番組作りで共通して意識されていることはどんなことでしょうか。
「自分が携わってきた番組って、タモリさんやSMAPさんなど、最前線で活躍している人たちとご一緒することが多かったんです。そういった方々とバラエティーを作るとき、演者さんが一番輝いて面白く見える番組を作りたいと思うので、その方の良さを理解して、その人が収録時にワクワクするようなものを制作するという気持ちで作っています。僕の使命は、その人のポテンシャルを引き出していくことだと思っているので……。って、かっこいいこと言っちゃいましたが、散々失敗もしてきたので(笑)、必ずこれが当たっているということではないのですが」
──もともとお笑いがお好きだったんですか?
「実は、そうではないんです。僕は、日大(日本大学)の芸術学部放送学科で岩井俊二さんの研究をしていたので、お笑いには全く触れてこなかったんです。周りには、ダウンタウンが好きだと言っている人が多かったんですけど、僕は『夢で逢えたら』(88年/フジテレビ系)を見ているくらいでした。あと、地元の沖縄で、『お笑いポーポー』(91年/琉球放送)という、ずっと方言でコントをするお笑い番組は見ていましたが、コントと漫才の違いも分からなかったですし、芸人さんの名前とかも知らなかったです。どちらかというとフジテレビの深夜に放送しているドラマがすごく好きで、岩井さんと高城剛さんに憧れてテレビ業界に入ったんです。だから、最初に『笑っていいとも!』に配属された時は『マジかよ……』と思いました(笑)」

──実際に現場に入ってみて、印象は変わりましたか。
「『違う、違う!』と思いながらも入ってみたら、初日に圧倒されたんですよね。朝9時半ぐらいに新宿アルタ(※『笑っていいとも!』生放送の会場)に入るんですけど、電車に乗って地下からアルタまで上がるまではただの通勤なんですよ。けど、スタジオに着いたら、どこにもない世界が広がっていると感じたんです。生放送だったので、予定していた出演者が来なくて、準備していた企画が変わることも。『どうしよう』って考える暇もなく、すぐに次のコーナーに転換するという、生放送バラエティーのダイナミックさに圧倒されました」
──番組制作の魅力に気付いた瞬間でもあったと。
「そうですね。『SMAP×SMAP』の人気コーナー『BISTRO SMAP』の豪華2階建てのセットも、収録が終わると何もないスタジオになっちゃう。あの頃、マドンナやウィル・スミスといった、豪華ゲストが来た空間が、一瞬で何もなくなるんです。そういうセットって収録の時しか建てないから、いつもあるものではない。要は、収録時にしか必要のないものを作っては壊す、という繰り返しだったんですよね。お笑いもそうで、僕らが、“世の中にない空間”を作っているんだということに、どんどんひかれていったんです。特にバラエティーはドラマと違って、今日企画したものを来週オンエアするというスピード感も大事なので、そういうことに楽しさを覚えてしまったという」
──その中で印象に残っている出来事はありますか。
「『SMAP×SMAP』での経験ですね。今でも覚えているのですが、自分が担当していた木村(拓哉)さんをどうしたら立てていられるかということばかり考えていたら、作家の鈴木おさむさんに、『これ、ゲストのこと考えているのかよ』と指摘されたことがあったんです。そう言われた時に、ずっと芸人さんにお世話になっているのに、こんなに自分が芸人さんに対する意識が低かったんだということに気付いて怖くなって、すごく反省しました」
──その経験は今にもつながっているのでしょうか?
「芸人さんと仕事する時に、自分の配慮が足りないんじゃないかと、不安に思うことは今でもあります。だけど、その時の経験が今につながっていると信じています」

──現在はどのようにお笑いと向き合われているのでしょうか。
「今では、仕事の範疇でもありますし、ある種ライフワークにもなっているので、お笑いに関するさまざまな情報をチェックしています。全くお笑いに触れてこなかった僕でも、ネタ番組を演出するまでになりました(笑)。僕自身もテレビに変えてもらったと感じているので、恩返しがしたいです」
──バラエティー出身の方がドラマ班に異動してヒット作を生んでいますが、もしそういう未来があったらいかがですか?
「ドラマですか? もちろん、やります。バッチリやります! どんな作品をやりたいとかも考えているのでバッチリやりますよ。フジテレビでもドラマとバラエティーのイベントを実施する時、ドラマ班、バラエティー班と分かれていますが、見ている人たちは面白ければ、ジャンルなんてどうでもいいんだろうなと。AI技術がどんなに進んでも、人は人に興味があると思っているので、人の良さや意外な表情・素顔を引き出す仕事をこれからも続けていきたいです。それが、どのジャンルでも関係ないと思っていて、そこに結果がついてくれればありがたいですし、支持してもらえるとうれしいです。そうすることによって、演者さんが違うフィールドをどんどん渡っていくということがあれば、僕もうれしいし、成長にもつながるなと」
──ラリータさんがプロデューサーでカンヌ俳優の大悟さんが出演するドラマの実現もそう遠くなさそうですね。
「そうですよね! 期待できるかもしれないです。そうなったら、また取材をお願いいたします。頑張ります!」

【番組情報】
土曜プレミアム「千鳥のクセスゴ!」
フジテレビ系
7月4日
午後9:00~11:10
取材・文/松下光恵
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