スポーツ庁10周年 長官&堀島行真、谷真海らトップアスリートが描く「次の10年」2026/03/26

スポーツ庁は創設10周年を迎え、河合純一長官やフリースタイルスキー・モーグルの堀島行真、パラトライアスロン、パラ陸上の谷真海、デフ陸上の山田真樹、元体操日本代表の田中理恵さんらトップアスリートが登壇する記念イベントを開催した。これまでのレガシーを次世代へつなぐべく、国際大会の意義から部活動の在り方など、多岐にわたる議論が展開された。
国際大会の自国開催がもたらす「人」のレガシー

東京五輪2020大会などの自国開催について、パラ陸上の谷真海は「自国開催は体の調整がしやすく、家族にもキラキラした姿を見せられた」と振り返る。また、大会がもたらした変化について「全国の多くの場所で競技を知ってもらう機会になり、スポーツへの理解が広がった」と、次世代への教育的効果を強調した。

河合長官は「レガシーとは、建てられた施設のこととして言われることがありますが、出場した選手やスタッフ、ボランティア、観戦した人たちの心に残った思いこそが大きな力です。そのレガシーが世界陸上やデフリンピックにつながっています」と、無観客開催であっても「人」に宿るレガシーの重要性を説いた。
部活動改革 少子化という「転換点」への対応
中学校の部活動改革について、河合長官は「少子化により、チームスポーツの人数が集まらない現実がある。5人、6人いない中で活動する学校が増えている」と強い危機感を示す 。その上で「地域でスポーツを選んで持続できる形を残せるか、今が大きな転換点だ。トップアスリート育成だけが目的ではなく、体を動かす充実感を知ることで、大人になっても心身と向き合うツールにしてほしい」と、生涯スポーツの観点から改革の意義を語った。
元体操日本代表の田中理恵さんは、指導者の在り方に触れ「映像を見る機会が増えるなど、環境作りが子どもたちの分析能力を高めている。スポーツを通じて助け合いや応援し合うことを学んでほしい」と期待を寄せた。
女性のスポーツ継続「キャリアとライフイベント」の両立

女性のスポーツ実施率の低下について、河合長官は「中高生段階でのスポーツ離れや、共働きによる家事・仕事との兼ね合いで時間が取れないことが課題だ」と指摘。
実体験として、谷は「妊娠・出産は競技力が落ちる不安があるが、情報やサポートがあれば復帰は可能だ。10年前と違い、今は希望すればサポートが得られるという選択肢がある」と環境の改善を評価した。
一方、田中さんは「出産後にまたアスリートの体作りをするのは、相当な覚悟がいる。サポート環境がさらに増え、女性が自然に未来の体作りをできる環境になってほしい」と、心理的・肉体的なハードルの高さを率直に述べた。

堀島は「所属先などで選手と話す機会があるが、やはり少数である方々の声を届かせることが大事だ」と言及。特に「出産を超えながら長く競技を続けたい女性や、経験を積みたい障害を持つ方に、すぐに手を差し伸べられる環境を構築することが、結果として優しい社会になる」と、受け皿づくりの必要性を訴えた。
障害者スポーツの現状と「ロールモデル」の必要性

障害者スポーツについて、河合長官はこの10年で実施率が倍増したとしつつも「無関心層や自信がない層も多い。官民連携で場を作り、誰もが自分らしく生きられる社会を目指す」と述べた。
デフ陸上の山田真樹は、自身の経験から「子どものころにロールモデルとなる先輩に出会う機会がほとんどなかった。聞こえないという理由で、スポーツをしようという子どもたちが、スポーツを断られるのは悲しい。私自身が社会の選択肢を示す存在になりたい」と強い思いをにじませた。
人間性に通ずる「スポーツ性」

イベントの総括として、司会の山本浩氏は「人間には生まれながらにして走る、ボールを追いかけるといった『スポーツ性』が備わっている。それを大事にすることで、さまざまな障壁を乗り越える力が生まれる」と表現。
河合長官は「霞が関で最もインクルーシブな組織を目指す。子どもたちの思いを受け止めて政策に生かしたい」と締めくくり、SNSでの発信強化も含め、国民にさらなる応援を呼びかけた。
最後に、登壇者が「次の10年」への想いを記したパネルが公開された。
2026年には9月にアジア大会、アジアパラ大会が名古屋で開催される。アジアのトップアスリートのパフォーマンスに触れる貴重な機会となるだろう。

この記事をシェアする












