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主演・織田裕二&監督・若松節朗 最強のタッグが語る「北方謙三 水滸伝」の撮影秘話2026/03/01 12:00

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主演・織田裕二&監督・若松節朗 最強のタッグが語る「北方謙三 水滸伝」の撮影秘話

 WOWOW、WOWOWオンデマンド、とLeminoでは3月1日に、織田裕二主演の連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」(日曜午後10:00)の第3話を放送・配信する。壮大なスケールと緻密な人間描写で熱烈な支持を集める、巨匠・北方謙三さんの小説「水滸伝」(集英社文庫刊)を、映画「沈まぬ太陽」(2009年)をはじめ、数多の人間ドラマを描き「Fukushima 50」(20年)では、「第44回日本アカデミー賞 最優秀監督賞」に輝いた、名匠・若松節朗監督が、日本ドラマ史上“規格外”のスケールで描く叛逆(はんぎゃく)の群像劇だ。

 主人公・宋江役の織田と、本作で漢(おとこ)たちの熱き生きざまを映像化する若松監督は、フジテレビ系ドラマ「振り返れば奴がいる」(1993年)、「お金がない!」(94年)、「正義は勝つ」(95年)をはじめ、映画「ホワイトアウト」(00年)などを世に送り出したヒットメーカーコンビ。ドラマ「ガラパゴス」(NHK BSほか/23年)でのタッグも話題を呼んだ。

 表向きは下級役人でありながら、腐れた世の中を憂い、自らが筆を執って世直しの書「替天行道(たいてんぎょうどう)」を書き記すことで、仲間と共に国家権力へ立ち向かう宋江役を担った織田は、武力や知略など、秀でた特徴は持ち合わせないものの、どんな人間にもしっかり寄り添い、人情あふれる人柄で周囲を引き寄せていくという、これまで挑戦してきた役とは真逆のキャラクターに挑んだ。そして、そんな織田に絶大な信頼を寄せている若松監督。2人が撮影を振り返り、本作の魅力を楽しくトークしていく様子から、信頼関係の深さがうかがえた。

主演・織田裕二&監督・若松節朗 最強のタッグが語る「北方謙三 水滸伝」の撮影秘話

──この作品であらためてタッグを組むと決まった時のお気持ちをお願いします。

織田 「恥ずかしながら、僕は『水滸伝』について何も知らなかったんですよ。中国の歴史的な物語『西遊記』と『三国志』は知っているんですけどね……。でも、若松監督が演出すると聞いて出演を決めました。北方版の『水滸伝』でありながら、テレビドラマ化するにあたっては、また新たな作品になっていると思うので、その初見を大事にしてほしいと言われました」

若松 「企画書をもらった時、キャッチに『未来を切り拓け』と書いてあったんです。そういうワードに弱いので、このような話ができるんだったら面白そうだなと思いました。原作を読んだ時、宋江は織田くんに置き換えて読んでいたんです。ですから、織田くんは外せないなと思っていたんですけど、スケジュールもあるから実現するか分からないと思っていました。でも、織田くんに連絡したら、一発で『やります!』と言ってくれたので、これでもう勝負があったなと、このドラマは多分いけるだろうと思いましたね」

──その時に感じた手応えは、撮影が始まってからさらに強くなりましたか?

若松 「もちろんです。宋江は何にも武器を持っていないんです。ただ静かに人々に寄り添う男なんですね。織田くんが、この年齢になって見事にそういう部分が開花したなと実感しました」

織田 「今までの僕だったら戦う役なので、宋江以外のキャラクターが来たと思うんです。だから、『宋江をやるんですか?』と、自分でも驚きました。身体を使ってなんとかするタイプでも、強いリーダーシップを発揮して引っ張るわけでもない。この人は、ただただ人の痛みを感じて、それを代弁している。今の時代だから刺さったというか。いつの時代でも、人間のこういった一面は消しちゃダメだし、大事にしていかないといけないよねと感じたんです。それと同時に、『水滸伝』を今やる意味ってこういうことかと思いました」

主演・織田裕二&監督・若松節朗 最強のタッグが語る「北方謙三 水滸伝」の撮影秘話

──宋江という人物についてどう捉えていらっしゃるのでしょう。

織田 「みんなが、それぞれ思っていることを行動に移したいんだけど、相手はとてつもなく大きいから『無理でしょ』と普通は考えてしまう。それでも宋江はそこを無理と思わなかったんですよね。折れずに策を講じたから第一歩を踏み出せたんでしょうね」

若松 「僕たちはエンタメを作っている人間なので、いろいろな遊び心も含めて、織田くんだったらできるという自信がありました。いつも託しているんですが、今回も宋江は織田くん以外考えられなかったですね」

──宋江を演じるにあたって工夫された部分を教えてください。

織田 「宋江は、人々に寄り添う人物なんです。味方の人にも歯向かわれてしまい、『自分は敵じゃないんだけどな……』とがっかりすることもある。でも、それはしょうがないですよね。いきなり梁山泊に連れてこられて、こいつはすごい人間なんだと言われても理解できないですよ」

若松 「彼らはみんな、カリスマになっていかないといけない人たちなんですよね。そのカリスマの一人である宋江と、反町(隆史)くんが演じた晁蓋。この2人がどうしてカリスマになれたかというと、晁蓋は武力も力もあるけど、宋江は寄り添うということにものすごく長けているけど力はない。それと、人間的にはとてもおちゃめ。ここが、みんなに慕われるポイントなのかなと。この人のために何かしてあげたいとか、この人に褒められたいとか、そういうものを醸し出してくれる人間たちですね」

主演・織田裕二&監督・若松節朗 最強のタッグが語る「北方謙三 水滸伝」の撮影秘話

──織田さんはそういうおちゃめなところは意識されたんですか?

若松 「いやいや。織田くんは普段からおちゃめですよ(笑)」

織田 「最初の方で、『えっ!?』ってびっくりしました。台本で読んだ印象と全然違うキャスティングがされていて、年上かなと思っていた上司役が結構な年下で(笑)。その人に怒られているとか。その設定を持ってこられた瞬間に『あー、なるほど』って、これは『もっと遊べよ』とか『もっと楽しんでほしい』というメッセージなんだなって」

若松「そういうところは、ものすごくお上手なんですよ」

織田「いやいや、何をおっしゃるんですか……」

──豪華俳優陣とのセッションはいかがでしたか?

織田 「108人もの主人公たちが次々に出てくると、どうしても力が入っちゃうんですよね。テレビドラマなんだけど、まるで大作映画を撮っているような感覚でした。だからこそ、周りがこれだけ熱量を込めているのであれば、僕はあえて力を抜いてバランスを取らなきゃいけないのかなと思ったんです。ドラマを見ていて、『この人物は何をした人なの?』と分からないまま進む視聴者の方もいるはずですし、ずっと緊張感が続くと疲れてしまうと思うんです。だから宋江が登場した時には、少し肩の力を抜いて安心してもらえるような存在でいたい。ちょっと“抜けている”くらいでいいかなと感じました。『宋江って身近にいそうだね』と思ってもらえて、『明日の宋江はあなたです』というような感覚で演じようと考えていました」

主演・織田裕二&監督・若松節朗 最強のタッグが語る「北方謙三 水滸伝」の撮影秘話

──若松監督は宋江の生きざまなど、彼のどんなところを浮き彫りにしたいと意識されたのですか。

若松 「宋江は人々をまとめていく統率力がなければいけない。それと、梁山泊に一人ずつ集めて仲間を作っていくために『替天行道』という書物を書くのですが、カリスマでなければ意味がないから、たたずまいにブレがある人じゃ駄目なんです。背筋がピシッと伸びていて、それでいて面白いこともやる。非常に難しいんですけど、北方さんの水滸伝は群像劇でそれぞれキャラが立っているんですね。だから、見ている方が『あれっ、この人俺と似ている』とか、『これは、あの人じゃないかな』というふうに投影してみることができるんです。ちなみに僕はいつも、『宋江さんに似ていますね』と言われていたんですけど、すごくうれしかったですね」

織田 「宋江は、そんなことをプレッシャーに感じていたら潰されちゃいますね。結局のところ、彼も特別な存在ではなく“ただの人”なんです。実は僕、北方さんに初めてお会いした際、知り合いとそっくりだなと思ったんですよ。愛嬌(あいきょう)があって、どこかチャーミングで。失礼かもしれないけど、愛情を込めて言うと、男から見ても『かわいい』と思える方です。あえて“親父”と呼ばせていただきますが、その親父が、『お前の好きにしていいよ、俺が書くのはもう終わった。お前らはお前らで作れよ』と言ってくださるんです。その言葉を聞いて、時代をつくる人ってこういう人なんだなって納得しました。完璧じゃなくていい、むしろチャーミングさがすごく大事なんだと。穴のないリーダーが偉いんじゃなくて、穴だらけでも周りから突っ込まれるくらいのカリスマでいい。そういう人のほうが、ちゃんと人の声に耳を傾けられるし、『支えたい』と思わせるんですよ。宋江も若松監督もそうですが、気付けば周りの人たちが皆、自主的に動いてくれる。進むべき道を問われた時も、仲間の思いをくんで最善を選ぶ。『俺はこうしたい、こうなりたい』という自我の欲だけで動く人ではないんですよね」

──一番苦労した点や印象深かったことなどを教えてください。

織田 「ロケ場所が、日本にこんな場所あったのかと思うくらい、撮影以外では来ないであろう山奥なんです。近くにホテルがないので、朝はものすごく早く出発するんですよ。ホテルで準備した後、車で1時間半移動してメークと衣装を整えて、さらに1時間くらいロケ現場まで車で移動して、ようやく到着した時には疲れている(笑)。これが毎日だったからね。山奥まで来て、撮影するまでに半分疲れちゃって準備も大変だし。場所によっては5~6時間前から準備するんですよ。もう二度とないだろうけど、映画『ホワイトアウト』の時よりも大変でした。『ホワイトアウト』は、人気(ひとけ)のあるところでの撮影もたくさんありましたね。今回の方が寒かったかな(笑)」

主演・織田裕二&監督・若松節朗 最強のタッグが語る「北方謙三 水滸伝」の撮影秘話

──織田さんは、ほかのキャラクターと比べて作り込みが少なそうですが……。

織田 「そう思うでしょ。ところが、僕のカツラは一番時間がかかるんですよ。地毛とミックスしているので時間がかかってしょうがない。顔も一度きれいにした後にシミをいっぱいつけたりとかね。ナチュラルに見えているからよかったんですけど、実は意外と時間かかっているんですよ」

若松 「芝居で苦労した話もした方がいいよ」

織田 「芝居で、ですか……。一か所だけ困ったシーンがありましたけど、それは若松監督の回じゃないですよ。寒い石切場で弱みをさらす場面で、自分の思いを吐露するんですが、俺は役に立ちたいのに何もできないというジレンマを抱えているんです。とにかく耐えて待つ『巨人の星』の星飛雄馬の姉かって思いましたよ(笑)。みんなグラウンドで投げているんだから俺も戦いたいんだっていう時に戦わせてもらえずただ待つだけなんでね。そういう役だからしょうがないんですけど、つらかったですね。リーダーとして引っ張っていかなきゃいけない立場の男が、自分よりも若い子たちの前で弱みをさらすのは、どうやればいいんだろうって。ボソボソ言ったんじゃ二度とついてこないと思うし、どうしたらいいんだろうって」

若松 「お母さんが虎に喰われたとか、好きな女性が自害しちゃったとか、さまざまな事情を抱えている人たちと関わり合って、悲しみをなんとかほぐしてあげたいんですよね、宋江は」

織田 「どんどん重くなっていくんですよ。人の死やつらいことを背負わされていくので」

若松 「でもね、織田くんが演じた宋江は、重たくならないし、説教臭くもならないんですよね。ものすごく説教臭いセリフをどんどん吐くんですけど、そういう芝居を見ていると、普通だったら『もう分かったよ』って思うのに、織田くんだとそうならないのは、この人の芝居のさじ加減がうまいんでしょうね」

──印象的なセリフは?

若松 「織田くんはいっぱい言っていますよ」

織田 「宋江の『心を救う戦い。それが宋江の戦いだ』というセリフかな。彼が書き留めたかったことは自分個人の思いではなく、民の一人一人の思い。その声を一つにまとめて書いたのが『替天行道』です。罪人たちの心の中にも良心が残っているし、誰しも心の中に痛みや後悔、背負ったものがあると思うんです。宋江はそういうことをちゃんと受け止めて、傷口を包んでくれるんですよね。もう一度、ピュアな頃の人として理解してあげて理想に近づいていくような。看護師さんのような役割もあるのかな」

若松 「第1話で、女の子を抱きかかえるシーンなんかは、昔の織田くんではできなかったんじゃないかな。今は、どうやって抱えたらいいのか研究しているわけですよ。最終的にいいあんばいに収まったんですけど、これは多分、家庭を持って子育てを経験したからこそ、できるようになったんでしょうね。あの場面を見るだけで、ジーンときました」

織田 「ありがとうございます」

主演・織田裕二&監督・若松節朗 最強のタッグが語る「北方謙三 水滸伝」の撮影秘話

【プロフィール】
若松節朗(わかまつ せつろう)
1949年5月5日生まれ。秋田県出身。フジテレビ系「振り返れば奴がいる」(93年)、「お金がない!」(94年)、「正義は勝つ」(95年)、「やまとなでしこ」(00年)など数々のヒット作を演出。2000年には映画「ホワイトアウト」で監督デビューし、「沈まぬ太陽」(09年)、「空母いぶき」(19年)、「Fukushima 50」(20年)など大作を手がけた。

織田裕二(おだ ゆうじ)
1967年12月13日生まれ。神奈川県出身。1987年、映画「湘南爆走族」で俳優デビュー。フジテレビ系ドラマ「東京ラブストーリー」(91年)、「振り返れば奴がいる」(93年)、「お金がない!」(94年)、「踊る大捜査線」シリーズ(97年~)など多くの主演作を持つ。映画「ホワイトアウト」(00年)、「アマルフィ 女神の報酬」シリーズなど映画作品でも活躍。歌手としても「歌えなかったラヴ・ソング」「Love Somebody」などのヒット曲を持つ。

【番組情報】
連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」
WOWOW、WOWOWオンデマンド、Lemino
日曜 午後10:00~11:00

主演・織田裕二&監督・若松節朗 最強のタッグが語る「北方謙三 水滸伝」の撮影秘話

(織田)ヘアメーク/加藤まり子(MARVEE) スタイリスト/加藤哲也

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