小栗旬の信長が“脚本を超えた”松川CPが語る「豊臣兄弟!」第6回の舞台裏と今後の展開2026/02/15 20:45

仲野太賀が主演を務める、大河ドラマ第65作「豊臣兄弟!」(NHK総合・日曜午後8:00ほか)。天下一の補佐役・豊臣秀長(小一郎/仲野)の目線で戦国時代をダイナミックに描く、夢と希望の下剋上サクセスストーリーだ。第6回「兄弟の絆」では、織田信長(小栗旬)と弟・信勝(中沢元紀)の対峙(たいじ)、そして小一郎(仲野)が命懸けで兄・藤吉郎(豊臣秀吉/池松壮亮)を守ろうとする姿が描かれ、視聴者に大きな衝撃を与えた。
制作統括を務める松川博敬チーフ・プロデューサー(以下、松川CP)に、第6回の舞台裏や今後の物語の行方について聞いた。
「脚本の想像を超えた」小栗旬の芝居

第6回で視聴者の記憶に刻まれたのが、信長と信勝の対峙シーンだ。弟を自らの手で葬った記憶に苦しみ、窒息するように喉を押さえる信長の姿。松川CPは息をのんだという。
「どこから出ているのか分からないくらいのうなり声で、予想外でした。現場ではなく編集室で見たんですが、『なるほど』と思いましたね。あの表現によって、信長という人物の一番深いところが示され、『豊臣兄弟!』における信長像が決定づけられたと思います」
冷たい目で見下ろす芝居もできたはずだが、小栗が選んだのは、そうではない信長だった。
「脚本だけでは想像できなかった、役者の力による表現だったと思います」
脚本には「不意に込み上げた衝動に絶叫する」といった趣旨のト書きがあったが、実際の芝居はそれを大きく超えていた。
「顔が真っ赤になるほど、その衝動を必死で抑え込もうとする姿は、脚本を読んでいた時の印象とはまったく違っていて、完全に想像を超えてきた芝居だったと思います」
「ふびんな弟役」の説得力。中沢元紀という選択
信勝役に中沢元紀を起用した理由について、松川CPは「申し訳ないほど単純な理由」と笑う。
「連続テレビ小説『あんぱん』(同局/2025年)の放送が始まる頃、キャスティングが進んでいた時期に、弟役として彼の芝居を見て『いいな』と思ったんです。あの作品で演じたふびんな弟役が、特に印象的でした。ふびんな弟役をやらせたら右に出る者がいないのではないかと」
短い出番ながら、信長という人物の造形において、とても大事な存在だと松川CPは強調する。
「中沢さんは小栗さんと同じ事務所の後輩でもあるので、先輩・後輩としての信頼関係もありましたし、現場での距離感もとてもよかった。お願いできて本当によかったと思っています」
第6回のもう一つの軸となった、大沢次郎左衛門(松尾諭)をめぐる物語。秀吉が大沢次郎左衛門を助けたという話は、どこまでが史実なのか。

「史実かどうかは別として、これは『太閤記』の中に近い記述にあります。そこでは、秀吉が大沢次郎左衛門を調略して一緒に小牧山へ戻り、信長に疑われて殺されそうになるのを秀吉が救う、という話になっています」
その後、さまざまな形にアレンジされ、「命がけで守った」といった描写も加えられてきた。今回はそこに小一郎を絡め、兄弟が一体となる構図に再構成している。
「小一郎や前田利家(大東駿介)が絡むこと、大沢次郎左衛門が仏門に入る描写は創作です」

数秒の出番に込めたぜいたく。麿赤兒の斎藤道三
第5回では、斎藤道三役として麿赤兒が登場した。わずか数秒の出番ながら、その圧倒的な存在感は強烈な印象を残した。このキャスティングは、松川CPがロケ現場でふと思いついたアイデアだったという。
「第1回で斎藤義龍をDAIGOさんに演じてもらったように、ワンシーンだけ登場する有名武将をどうキャスティングするかは本当に難しいんです。誰だか分からない人だと弱くなるし、お願いする以上は説得力がほしい」
現場で「道三を誰にするか」と話し合う中で、「中途半端な人は出したくない」という結論に至り、ダメ元で名前が挙がったのが麿だった。
「近年は舞台を中心にご活躍されている印象だったので、正直ご都合が合うか分からなかったのですが、ちょうど舞台が終わる時期で『出られるよ』と言っていただけた。数秒の出番でしたが、ご本人もとても前向きで、強烈なインパクトと説得力のある芝居をしていただいたと思います」
今後も1回だけなど短い登場ながら印象に残るキャスティングが控えているという。
主人公がいない回は「絶対にない」。秀長の最期まで

秀長(小一郎)は秀吉より先に亡くなる。その最期がどのように描かれるのかは、視聴者にとっても気になるところだ。
「よく聞かれる質問ですが、最低限言えるのは、主人公がいない回というのは絶対にないということです。最終回のどこかで秀長は亡くなります。やり方として、前半で亡くなって、後半は後日談を描くという形はあり得ると思いますが、かなり伝聞的な描き方になると思います。いずれにしても、最終回の前に亡くなって、秀吉だけで最終回をやるということは絶対にありません」
戦国ドラマとしては関ヶ原や大坂の陣にクライマックスを置く作品が多い中、秀長の物語はその前に終わることになる。「豊臣兄弟!」のクライマックスは、史実でいうとどのあたりになるのか。
「そこは難しいところで、『天下を取った』と言える時点にもいろいろな解釈があります。北条の小田原攻めをもって総仕上げと捉える人もいれば、家康が大坂城で頭を下げたところだとする人もいるし、関白宣下をもらった時点だという考えもあります」
一概には言えないが、物語としては兄弟が天下統一を果たしたところがピークになるという。
「ただし、それが最終回ではありません。その後も10回前後をかけて、秀吉の転落の兆しのようなものを描いていくことになると思います」

今後の注目キャラクター。竹中半兵衛、蜂須賀正勝、そして……
今後登場する人物の中で、特に注目してほしいキャラクターを尋ねた。
「ネタバレになるので言えないことも多いですが、竹中半兵衛を演じる菅田将暉さんは、とても面白いキャラクターになっていますし、ぜひ注目してほしいですね。近いところでは蜂須賀正勝役の高橋努さんも、独特の哀愁があって人間味にあふれています」
松川CPは「この作品はキャラクター勝負」と力を込める。
「毎回新しい人物が登場して魅力を発揮しています。王道と言われることもありますが、期待されている部分は裏切りたくない。有名武将には期待通りの活躍をしてもらいつつ、尺が足りないくらい充実した群像劇になっていると思います」
主演・仲野が体現する秀長の覚悟や、小栗の想像を超える信長の慟哭(どうこく)をはじめ、第6回は「豊臣兄弟!」の物語に確かな奥行きを与えた。兄弟の絆を起点に、戦国の群像はここからどこへ向かうのか。まだ序盤にして、先を見ずにはいられない展開が続いていく。
【番組情報】
大河ドラマ「豊臣兄弟!」
NHK総合
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後6:00~6:45
取材・文/斉藤和美
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