山中柔太朗×髙松アロハW主演映画「純愛上等!」八重樫風雅監督が込めた思いと“純愛”の本質とは2026/02/12 18:00

山中柔太朗(M!LK)と髙松アロハ(超特急)がダブル主演を務める映画「純愛上等!」が、2月13日に全国公開。敵対する高校のトップを張る佐藤美鶴(山中)と亀井円(髙松)が、不器用ながらも真っすぐな思いを交錯させるさまを描き出す。笑いあり、ときめきあり、そして迫力のアクションが融合した新感覚のラブストーリーだ。
そんな本作で監督を務めたのが、ドラマ「ひと夏の共犯者」(テレ東系/2025年)や「ひだまりが聴こえる」(テレ東系/24年)など、数々のヒット作を手掛けた八重樫風雅さん。八重樫さんは山中さんや髙松さんらとどのようにこの作品を作り上げたのか? キャスト陣の印象や交わしたやりとり、制作秘話や監督のこだわりなどをたっぷり聞いた。
――まず、本作で監督を務めると知った時のお気持ちを教えてください。
「企画書をいただいた時に“ヤンキー×BL”という題材に新鮮さを感じて、これまでに見たことのない作品を作れるのではないかとワクワクしました。実写化にあたっては、映画尺にする上でどうしても多少は脚色をしなくてはいけないのですが、どのキャラクターもすごく魅力的なので、特にマインドの部分などは解像度を上げて、できるだけ映画にも落とし込みたいなと思いました」
――原作を読まれて、どのような部分に魅力を感じましたか?
「敵対する高校のヤンキー同士のヒリヒリと、恋愛の駆け引きから生まれるドキドキ……いろいろな“緊張感”が掛け合わさることで、各シーンでいい相乗効果が生まれているなと。そこはこの作品の個性の一つでもあるのかなと思いました」
――主人公である美鶴と円の印象はいかがでしたか?
「美鶴も円も、かっこ良くて強い、華やかなキャラクターだなと。でもそれだけでなく、2人ともどこか感情に蓋をしてしまっているけれど、それを無理やり開けるのではなく、気付いて寄り添える繊細な優しさも持ち合わせている、すてきな関係性だなと思いました。山中さんとアロハさんはビジュアルとしても映えますし、感情の機微や繊細な部分、ディテールまでこだわって演じてくださって。すごく温度感のある美鶴と円になりました」

――今回、監督は山中さん、髙松さん共に初タッグとなります。それぞれの第一印象を教えてください。
「まず山中さんと最初にお会いしたのは、撮影前に行っていたアクショントレーニングの時でした。当時役作りのために増量に臨まれていて、お話を聞いているだけでもハードで大変なメニューをこなされていたのですが、そういうつらさを表に出さず、真剣にトレーニングに取り組まれていて。お会いするまでは寡黙でクールな方なのかなと思っていたのですが、お芝居やアクションなど、細かいところまで何度もこだわってチャレンジしてくださる姿に、熱い方なのだなと感じました。さらにはユーモアもあり、周りを巻き込んで面白いことをやろうといろいろ考えてくださって。会う前と会った後では、いい意味でガラっとイメージが変わりました」
――例えば、“周りを巻き込んで”というのはどういうシーンで発揮されていたのでしょうか?
「美鶴は1匹狼なところがあるのですが、円軍団の輪の中に入っていった時の、周りを絡めたお芝居みたいなところは、いろいろ細かく考えてくれました。ちょっとした小道具を手にして、“これで遊んでみようかな”とか、座る場所も“ここに入っていこうかな”とか。“この中にいる時はこういう距離感かな”みたいなことを、皆さんと話しながら決められていた印象があって。それこそ最初はあまりお話ししない方なのかな、と思っていたのですが、今は全く逆で、コミュニケーションを大切にされる方という印象です」
――それでは、髙松さんはいかがでしたか?
「アロハさんはすごく明るくて、キラキラの太陽みたいな方だなと。撮影前に超特急さんのライブに行かせていただいたのですが、表情の表現がすごく豊かで、特に目力が強く、彼のクローズアップを撮りたいという欲求にも駆られました。ライブが終わった後、楽屋にあいさつに行かせていただいたのですが、そこで『表情の表現が多彩で素晴らしかったです』というふうにお伝えしたら、『いや、こんなもんじゃないです』と答えてくれて、これは頼もしいなと思って。円はさまざまな表情を見せるキャラクターなので、役を作っていく上でも、これは心強いなと思ったことを覚えています」
――その後、実際にご一緒されてどういう印象を受けましたか?
「僕とアロハさんの中でのゴール地点が合わさるまでに最初こそ時間はかかったのですが、撮影を進めるうち、どんどん円像みたいなものの解像度が一致していって。そこに向かっていく姿勢もそうですが、アクションシーンの撮影時など、とにかくタフな方だなと感じました。円は美鶴に比べてアクションシーンが多い上、寒い環境の中、雨に濡れながら戦うような過酷なシーンもあったのですが、言葉にせずとも、自ら楽しむ姿勢でキャスト、スタッフをけん引していて。人としてのリーダー気質も感じられ、かっこいいなと思いました」
――役作りをする上で、事前にお二人に何かリクエストなどはされたのでしょうか。
「円で言うと、撮影前に円軍団みんなに集まってもらって、リハーサルみたいなことをやりました。幼なじみという関係性を演じる上で、うわべだけでなく、実際に関係値を深めるための何かができないかと思ったんです。結果、高校のクラス発表があった日という設定で、一つエチュードみたいなことをやらせていただいて。『俺、お前と同じクラスだ~』みたいなところから始まって、円とネギシ(宮脇優)、ボン(小平大智)とヤマ(高橋璃央)で話したり、露木(嵐翔真)と誰かが話しているところに円が入っていったり……そういうコアを作っていく作業をいくつかやっていきました」
――山中さんとのエピソードもありましたら教えてください。
「山中さんは撮影前にお会いできるタイミングが多くはなかったのですが、アロハさんもご一緒に、お二人で読み合わせみたいなことをやらせていただいたことがあって。その時に、美鶴が家族というものについてどう考えているか、美鶴が思う家族とはどういうことなのかを現場で一緒に考えていきましょうとお話しました」

――公開前より、“冷蔵庫ドン”や唇に付いたアイスを指で拭うなど、数々の胸キュンシーンが話題に上がっています。監督が特にこだわったシーンを挙げていただくと?
「僕個人としては、美鶴と円が一緒にご飯を食べるシーンがすごくすてきだなと。そして、後にも先にも、あんなに回したのはあのシーンだけだと思うんです、あのシーンの撮影を序盤にやったというのもあるのですが、多分10テイク以上やっていて……。美鶴と円の心が少しほぐれて、距離が縮まって、背負っているものに触れ合う。この空気感をきちんと作らないと、この先2人が向かっていくところがはっきりしないんじゃないかな、と思ったんです」
――その奮闘の結果が、あの温かな食事のシーンにつながったわけですね。
「『こういうパターンで』『ここの間をもっと作りたい』など、いろいろご相談をしながら、何テイクもやらせていただいたのですが、OKテイクでは2人がすごく生き生きとしていたといいますか、“生きていた”ように感じたんです。その後『美鶴と円が生きているように感じました』とお礼をお伝えしたら、お二人も『何度もやってくださって、ありがとうございました』というふうに言ってくれて。お二人と僕、そして現場において、どういう美鶴と円にしていくか、どういうところに向かっていこうかというコンセンサス、全体の共通認識みたいなものも固められた、本当に大切な時間になりました。他のシーンを後日に回したり、いろいろご迷惑もおかけしたのですが……。それもあって、今でもあのシーンを見ると、僕としてはすごくグッときます」
――例えば、この時にどのようなことをお二人にリクエストされたのでしょうか。
「話さない時間もあっていいんじゃないかなと。何もしない瞬間、間があるのも人と人だと思うので、そこを恐れずにチャレンジしてみましょう、ということをご相談させていただきました」

――それでは、監督が苦戦したシーンを一つ挙げていただくと?
「一つは円の弟の樹(白鳥晴都)がかめいやにやって来て、美鶴が住む2階の部屋に円と初めて3人で上がっていくシーンです。亀井兄弟の関係値もそうですが、樹が美鶴をどう迎え入れるか、見ているのかということ、3人だからこその空気感みたいなものをどう作ろうかと思い、ここでもエチュードのようなことをやらせていただいて。一度本を忘れて、部屋に初めて入った時の素直な気持ちや、いわば異物が入ってきた樹の感情、兄弟の互いに対する態度など、そういうものを全部ひっくるめて自由にやってみましょうと。それが関係値を作る一助になればいいなと思っていたのですが、それを経て、美鶴から『いい部屋だな』という言葉がふと出てきたり。映画にも使われていますが、このセリフはアドリブなんです。山中さん演じる美鶴だから出てくる言葉や、アロハさん演じる円だから飛び出す反応、白鳥くん演じる樹だから感じるものがあると思っていたので、結果としてそこをくみ取ることができてうれしかったです。最初の頃は、そうやってみんなの関係性を作るというところに一番苦戦したかもしれません」
――そうやって緻密に関係性を作った上で撮影をされていたと知って、より作品への興味関心が深まりました。
「緻密といいますか……皆さんにはご迷惑しかおかけしていないのですが(苦笑)。もっと撮影以外のとこでやってくれよという感じですが、その場に立って分かることもあって。そして、作品を作っていくさまを、キャストのみならず、スタッフの皆さんにも見ていてほしかったんです。この作品に可能性を感じて参加されている方ばかりだったので、そういう皆さんの気付き、どう見ているかということも大切にしたくて。僕とキャストの皆さんのみならず、チームとしての一体感にもつながればいいなと思い、最初の頃は特にそういったお時間をいただきました」
――印象に残っているシーンとして、ご取材時、山中さんはかめいやの2階の部屋から外にいる円と話すシーンを挙げていました。
「このシーンは多分、樹がいることが大きくて。美鶴が“家族”に触れているということが大きいのかなと思います。物語の後半、美鶴が円に自身の思いを告白するシーンがあるのですが、その時に山中さんとお話ししたのは、恋愛感情だけではなく、人としての感情をどんどん表に出せるようになっていったのも円のおかげなんじゃないかなと。つまり、あの時に出た美鶴のほほ笑みはせき止めていないものといいますか、感情を出せるようになったきっかけのシーンでもあるので、山中さんの中にも印象に残っているのかなと思います」
――対して、髙松さんはアクションシーンを挙げていました。特に終盤のゲームセンターでのアクションシーンは息もつけない数分間が展開します。
「アクションブロックについては、アクション監督の鈴村(正樹)さんがコーディネートしてくださっているのですが、ポイントとしては“魅せる”ということと、“けんかをしない”という円の正義です。今の円のマインドが見える、過去の戦い方との違いみたいなものをどうしたら表現できるか、というところを考えてくださって。戦っているけれど、過去と今では全然違う、円の変化を感じられる演出をしてくださっています。魅せるところももちろんありつつ、しっかり感情が乗っかっているので、見ていてすごく面白いなと思いました」
――監督の中で心に残っているシーン、お気に入りのシーンを挙げていただくと?
「さっきお話ししたご飯のシーンもそうですし、冒頭で2人が地面に名前を書いているところも好きなシーンの一つです。田舎の風情といいますか、情緒ある町並みの中、小さな子どもたちとヤンキーが地面にお絵描きをしている図がいいですよね。実はこの時、アロハさんが現場にあったけん玉でたまたま遊んでいたのですが、すごくお上手で、それが円らしいなと思い、あのシーンに取り入れたという裏話もあって。このシーンは撮影の後半に撮ったのですが、長く一緒にいたからこそ生まれたものがたくさんありました。あとは、高校の屋上のシーンもお気に入りです。屋上で仲間たちといる、必ず終わりが来る時間を謳歌(おうか)している。そこに美鶴が混ざり、やがて輪になっていくところは青春映画ならではだなと思いましたし、『純愛上等!』という作品の魅力でもあるなと。美術も含めてこだわり抜いて作っているので、ぜひ屋上のシーンにもご注目いただきたいです」
――それこそセットやレトロな雰囲気などの映像美も見どころの一つです。作り上げていく上で、何かテーマなどはあったのでしょうか?
「画(え)作りの面で言うと、三つコンセプトを作っていて、“天気”と“平成感”と“対比”です。展開に比例して雲行きが怪しくなったり、悲しい出来事を思い出す時には雨が降ったり、気持ちが晴れた時には太陽が出たり。シーンと天気を掛け合わせた画作りというのは、どうしても全部はできないのですが、ピックアップしたシーンだけでもやっていきたいとリクエストをしていました」
――“平成感”を目指したのにはどういう意図があったのですか?
「この作品はどこかファンタジーでもあると思っていたので、隔離された世界観みたいなもの表現したいなと。なので、あまり現代物を出さないようにしたんです。都会の建物もそうですが、スマートフォンやパソコンも出てきません。電話も黒電話ですし(笑)、駄菓子屋というのもみんながどこか懐かしさを感じる場所。『純愛上等!』という作品を、どこか童心に戻れるような場所にしたかったというのもあります」
――最後に、監督がこの作品を通じて伝えたいこと、込めた思いを教えてください。
「当初『純愛上等!』というタイトルを聞いてから、“純愛ってなんだろう”とずっと考えていたんです。その中で、美鶴と円の姿を追っていって、純愛というのは決してきれいなものだけではなく、大切な人を思うからこそ生まれる弱さや葛藤、そういうことから逃げずに、傷つくことを恐れずに、彼らのように真っすぐに向き合い続けることを選択すること……その強さや覚悟の根源なのかなと。それがこの作品で描いている“純愛”の本質なのかなと思いました。向き合い続ける覚悟や強さ、彼らの勇気から、見てくださる皆さんにも何か届くものがあれば幸せです。あとはとにかく、このラブストーリーをエンタメとして目いっぱい楽しんでいただけたらうれしいです」

【作品情報】
映画「純愛上等!」
2026年2月13日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
監督:八重樫風雅
脚本:川崎僚
原作:七緒「純愛上等!」(BeSTAR comics)
キャスト:山中柔太朗(M!LK)、髙松アロハ(超特急)
白鳥晴都、嵐翔真、浅野竣哉、小平大智、高橋璃央、宮脇優
那須ほほみ、山中聡、オラキオ
堀夏喜(FANTASTICS)
主題歌 :鶴 and 亀「LOVE 2000」(SDR)
配給・宣伝 :S・D・P
©映画「純愛上等!」製作委員会
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