波瑠×川栄李奈「フェイクマミー」、制作陣が語る最終回への思い「見た人だけのご褒美がある」2025/12/12 17:00

TBS系で、本日・12月12日に最終回を迎える連続ドラマ「フェイクマミー」(金曜午後10:00)。波瑠と川栄李奈がダブル主演を務める本作は、正反対の人生を歩んできた花村薫(波瑠)と日高茉海恵(川栄)が、禁断の“フェイクマミー(ニセママ)”契約を結ぶことからはじまるファミリークライム・エンターテインメント。
12月5日放送の第9話で、ついにニセママ疑惑が週刊誌に報じられ、物語は急展開を迎えた。茉海恵の娘・いろは(池村碧彩)が通う柳和学園小学校での糾弾、本橋慎吾(笠松将)による冷酷な「RAINBOWLAB」買収工作、そして公開の場での薫による捨て身の偽証と逮捕。衝撃のラストシーンに、SNSでは「まさか逮捕されるなんて」「薫の愛が深すぎる」と悲鳴に近い反響が相次いだ。
最終回を目前に控え、中西真央プロデューサー、嶋田広野監督、宮﨑萌加監督ら制作チームにインタビュー。波瑠、川栄らキャスト陣の知られざる演技プランや撮影裏話、そして本作が描こうとした「現代の子育て」への思い、さらには気になる最終回の見どころまでをたっぷりと語ってもらった。
波瑠、川栄李奈の自然体が支えた撮影現場

――主演のお二人とはどんなコミュニケーションを取っていましたか?
中西 「お二人のお芝居が素晴らしく、皆が絶大な信頼を寄せていました。なによりお二人が演じる薫・茉海恵がイメージそのものであり、正解に思えたので、台本をお渡ししてもまったく心配がなく、安心感がありました。それはお二人だけでなく、出演者の皆さん共通していました」
嶋田 「オリジナル作品だったので、主演のお二人とも一緒にアイデアを出して撮影を進めていきました。特に私の担当回は感情があふれるシーンが多かったので丁寧に相談を重ねていたと思います」
宮﨑 「お二人とも“そのままでいてくれるだけで薫と茉海恵”のような俳優さん。まずはドライ(撮影現場でのカメラを使わないリハーサル)で演じてもらうのですが、それを見るだけでも面白い。そこにこちらが演出を足した時に、返ってくる芝居が想像を超えてくるものばかりで、相乗効果が生まれていきました。
――波瑠さんの印象を教えてください。

中西 「クールなイメージを持っていたのですが、今作ではコメディ寄りなテンポ感でのツッコミやラブコメ的なツッコミなど、とても愛らしい姿をたくさん見せてくださったのがうれしかったです。面白くなるといいなと願って作った台本を、淡々とではなく“乗って”やってくださったのが、薫が愛されるキャラクターになった理由だと思いますし、薫をお願いできて良かったなと感じています」
嶋田 「『やり過ぎていたら止めてください』と仰ってましたが絶妙でしたね。個人的には“名探偵ササエル”(佐々木智也/中村蒼)へのツッコミの表情が大好きです。一方で、波瑠さんの“思いを打ち明ける姿”や、“涙を流す姿”はすごくリアルで、見るたびに心を奪われ、いつも泣かされていました」
宮﨑 「第3話の薫がいろはの作文に涙するシーンもすごくすてきでした。そのあと授業中のいろはにこっそり手を振るしぐさも、薫に生まれた母性があふれていて。毎話、独身女性として生きてきた薫の芯の強さや内面の変化を丁寧に表現してくださいました」
――川栄さんはいかがでしたか?

嶋田 「川栄さんは母娘のリアルな温度感や間合いを直感的にアウトプットしているようで、さすが“リアルマミー”だと感心しきりでした。持ち前の明るさと本能的な感性、そしてずば抜けた瞬発力には目を見張るものがありました」
宮﨑 「こちらが何も言わなくても茉海恵として成立する方。細やかな表情やニュアンスの表現がうまいですよね」
中西 「もう本当にたくさんあるんですけど、第1話で後続車にブチギレるシーンや、第6話で“三羽烏”とのお茶会での『グレてねぇ…です』の言い方など、台本や監督の意図を理解してくださった上で最高の表現を現場で提示してくれた時は、やっぱりさすがだなと。元ヤン設定なので口の悪いお芝居もたくさんやってもらったんですが、それでも絶対嫌われない、むしろ愛されてしまう魅力があるのは本当にすごいと思います」
嶋田 「波瑠さんも川栄さんも、“演技を感じさせない透明感”がすさまじいです。お芝居が素晴らしいのは当たり前のはずなんですが、その一挙手一投足があたかも空気や水のように自然に普通になじんでしまう。型破りな設定でも本作が受け入れられたのは、まさにお二人のおかげだと感じました」
自然体と感情表現の妙――印象的な演技エピソード
――日高いろは役の池村さんの印象や、特に印象的だったシーンはありますか?

嶋田 「こちらの意図を凌駕する“自然な子どもらしさ”をナチュラルに演じる姿には驚きました。こちらも負けじと、いかに“本物の親子”に見せるか、リアルママ(パパ)の実体験や“あるある”を盛り込んでいきました」
宮﨑 「天才的な頭脳を持つ難しい役どころでしたが、『いろはを演じられるのはあおちゃんしかいない』と現場で何度も感じましたね」
嶋田 「第3話で茉海恵が寝落ちしているいろはを運ぶ場面、最初は赤子を抱くように“横抱っこ”を想定していましたが、あおちゃんが意外に大きくて…、川栄さんが“縦抱っこ”してみると逆に赤ちゃんっぽくなり、自然な親子の空気が醸し出されました。第4話でいろはが学校の友だちとジュースを作るシーンで、台本には何も書いてなかったのに、娘の成長を見た茉海恵が涙を流していて驚きました。あれはどういう経緯だったんですか?」
宮﨑 「本来はいろはがジュースを作る姿と屋上にいる薫のカットバック(異なる場所で同時に起きている出来事を交互につなぐこと)の予定でしたが、川栄さんと相談して“いろはを見守る芝居”を足したんです。そうしたら楽しそうないろはを見つめて自然と涙を流してくださって。胸が熱くなりました」

嶋田 「とにかくお芝居に貪欲ですね。毎カット、モニターに出る映像をスマートフォンで撮影して、後で見返していると聞きました。海外の作品も経験されているからこそ、役作りに対する執念というか、経験値と真剣さがそのまま姿勢に表れていました」
中西 「現場ではいつも明るく、しんどそうな素振りは全く見せないのですが、マネジャーさんたちに聞いてみると裏では本当にたくさん練習してくださっているようでした。全力で竜馬というキャラクターに向き合ってくれてうれしかったです。竜馬はこれまで向井さんが演じてきた役柄とは少し異なっていて、悩まれることもあったと思いますが、今はもう向井さんが演じる竜馬が竜馬だなという安心感があります」

嶋田 「“表情の管理”も見事で、セリフのない時のまなざしがとにかく美しいんです。人物の心の揺れや成長を、ナチュラルににじませてくださっています。第8話の薫の母・聖子(筒井真理子)の手紙のシーンでは、1テイク目から涙を流していて。撮影の順番的に3回目に向井さんのお芝居を撮影したのですが、3回ともボロ泣きで。本番中は“演じている”というより、本当に“竜馬として生きている”んだなと感じました。向井さんもそんなことをおしゃっていました」
中西 「特に第5話、第6話あたりは、“向井さんの一番いい瞬間”が詰まっていると思います。あと、声の出し方も、普段とは違って、頼もしい感じの声で挑んでくださっていますよね」
宮﨑 「向井さんが撮影現場にいるだけで、その場の空気がより明るくなるんですよ。向井さん自身が、底抜けにいい人なんです。だからキャストもスタッフも自然と引き込まれる」
キャラクターを超えた俳優の個性
――佐々木智也役の中村蒼さんは?

中西 「本人は似ていないとおっしゃっていますが、われわれは結構ササエルと似ていると思っています」
宮﨑 「第4話の屋上シーンの名探偵的な動きもご本人のアドリブ。実は撮影はクランクインしたばかりの頃だったんですが、すごく面白いササエルを作り上げてくださいました」
嶋田 「ササエルがまさかトレンド入りするなんて思っていなかったですね」
中西 「友人からも“ササエルが好き”と言われました」
宮﨑 「あの面白さは中村さんの力だなと感じます」
嶋田 「子どもへの対応力や包容力がすごいです」
中西 「第7話で児童たちが一斉に『柳和サマーキャンプです!』と言ったあとの優しい『そうですね』というセリフも印象深いです」
――その他、印象的なエピソードはありますか?

嶋田 「第7話の笠松さんの“写真ばらまき”はどう決まったんですか?」
宮﨑 「ト書きに“ばらまく”と書いてあったので多めに渡したら、ドライで中村さんといろいろな芝居を試しながらあの量をばらまいてくれました」
嶋田 「鳥肌が立ちました」
宮﨑 「おおまかなイメージを話してお任せしたら、ご自身でどんどん膨らませてくれるタイプ」
嶋田 「第8話で、写真を取るのに、指の腹の皮脂で粘着させるというのも本人のアイデアでした。『ハエたたきみたいに取るのはどうか』と提案したら、『慎吾の茉海恵に対する今の感情だとこういうパターンはどうか』とアイデアをもらいました。回想シーンで梁(はり)に頭を強打するのもご本人のアイデア。本当に痛そうでしたけど慎吾の人間味が出ていて素晴らしかったです。毎回笠松さんと議論するのが実は一番楽しかったかもしれません」

中西 「いつも飄々(ひょうひょう)と現場に現れて、想像以上の面白さをお芝居で提案してくださるので、いい意味で毎回悔しかったです! 慎吾が登場するシーンが全部面白くて」
嶋田 「第9話の社長室で茉海恵と対峙(たいじ)する場面も、台本ではシンプルに冷酷無比な悪者として描かれていたのを、現場で深掘りして“茉海恵とよりを戻せると思って来たのに全く違う雰囲気だったので、全てを奪う方向へ切り替わる”という表現をすることで、奥深く見ていてクセになる本橋慎吾の人物像を浮かび上がらせていました」
親として考えるニセママ設定と現実の子育て

――このフェイクマミー契約について、親という立場からはどう感じますか?
宮﨑 「ニセママという設定は、扱い方が難しいところですよね。制作過程でさまざまな学校に取材する中で面白い話を聞きました。『本当にニセママがいたらどうしますか?』と聞いてみたら、とある学校の方は『特に問題はない』と答えたそうです。もちろん虚偽や偽装はダメですが、事実婚の方や再婚など必ずしも血のつながりがない家族も珍しくなく、学校として特別に確認する必要はないという考えから、そう答えられたそうなんです。こういう柔軟な考え方があるのかと、時代の変化を感じました」
中西 「柳和学園小学校はあえて保守的な設定にしていますが、お受験も時代に合わせて変わってきています。なので全10話で“ニセママが学校にバレるかどうか”を描くだけではなく、本橋家にバレるバレないという違う軸も増やすようにしたんです」
嶋田 「第7話で触れられた高梨由実(筧美和子)のワンオペ育児に苦労する状況に共感する方も多いと思います」
宮﨑 「共働き家庭では、親である自分たち以外のサポートをどう確保するかで生活や仕事のしやすさに差が出ます。さまざまな家庭環境や事情があると思いますが、家族に限らず、支え合う存在がいたら心強いと思います」
嶋田 「そうですね。近くに祖父母などがいてくれれば助かりますが、いなかったり、助けを求められない場合もありますから」

宮﨑 「ファミリーサポートなど支援制度も増えてはいますが、まだ使いにくい面もあります」
嶋田 「もう少し、ベビーシッターの利用が気軽にできるようになればいいですよね」
中西 「最初はどんな人に預けるのか少し不安がありますもんね」
宮﨑 「金銭面でも精神面でも、初めのハードルが高いんですよね。結局1人や2人で抱え込んでしまう人も多いと思います」
中西 「子育ての負担を軽くするという面もありますし、茉海恵さんにとって薫は“バディ”のような存在なのかなと思います。私自身、脚本の園村三さんの受賞作を拝読して、最初に少し連想したのは映画『マイ・インターン』(2015年/アメリカ)でした。誰かが別の角度から意見をしてくれたり、そばにいてくれることで人生が少しずつ好転していくような、ああいった存在に近いのかなと感じたんです。ニセママ契約の話からは少し逸れてしまうかもしれませんが、女性って結婚したり子どもができたりすると、独身の人、既婚の人、子どものいる人、いない人…と、なんとなく分断されてしまうところがあると思うんです。気軽にご飯に誘いづらくなったり、距離ができてしまったり。でも今回、いろはという存在を“2人でどうにか支えよう”とすることで、立場の違う人たちが一緒に生活していく。その状況そのものが、ちょっとした希望になり得るのかなと思っていました。子育ての中で孤立してしまう方もきっと多いと思うんですが、そういう時に“お母さん自身を支えてくれる誰かがいる”というのは、すごく心強いことなんじゃないか…そんなことを考えていました」
嶋田 「私立の小学校だけでなく、幼稚園、保育園の制度も、もう少し時代に合った形になれば子育てしやすくなるかもしれませんね」
中西 「私もこの作品を通して学んだことが多かったです。小学校を見学する中で、子どもにとって良い環境を整えることの大切さを感じました。そして、視聴者の皆さんの感想も拝見する中で、いかに子どもが尊い存在であるかを改めて実感したので、自分も子育てを頑張ろうと励みになりました」
予測できない展開に注目――見逃せない最終回

――最終回の見どころを教えてください。
嶋田 「本作では家族や親子の関係性を主軸に置いていますが、『シスターフッド』や『ママ友』の行く末にも注目してほしいです。普段から、妻にママ友事情を聞くことがあるのですが、『ママ友』って普通の友達とは違って、不思議な関係だなとつくづく思います。本作にもいろんなママ友が登場してきましたが、ドラマと同じような人間関係やトラブルが実際にも結構あったりして共感していただける部分も多いんじゃないかなと感じています。本橋さゆり(田中みな実)の状況って、現実で考えるとつら過ぎて耐えられないですよね。最終回でこのママ友関係がどのように動いていくのかは、見どころの一つです」

宮﨑 「どこに着地するのか分からないところも、最終回の魅力ですね。オンエア時にX(旧Twitter)で視聴者の皆さんの反応を見ていても、『どうなるんだろう』と注目しているのを感じます。ハッピーエンドになるのか、それとも予想外の結末なのか、ドキドキしながら楽しめると思います。突拍子もない設定ながら、女性の生き方や働き方、子育ての悩みといった部分に共感してもらえる要素も多いと思います。このドラマを通して『自分だけじゃない』と感じたり少しでも前向きになったり、視聴者の皆さんへのエールになればうれしいです」

中西 「第9話のようなハラハラする展開はもちろん、最終回では『フェイクマミー』らしい社会への問いかけとコメディの両立がしっかり見られます。キャラクターたちの魅力や俳優陣の個性が結末にどう影響するのかも楽しみにしてもらいたいです。波瑠さんや川栄さんのキャラクターの真っすぐさ、向井さんや中村さんのキャラクターの新しい一面、いろはちゃんの愛らしさ…そうしたキャラクターたちの魅力も、作品全体の大きな魅力です。サスペンス的な展開も楽しめますし、キャラクターの結末もぜひ見ていただきたいです」
嶋田 「ぜひ最後まで見逃さないでください。見た人だけのご褒美があると思います」
【番組情報】
「フェイクマミー」
TBS系
金曜 午後10:00~10:54
文/TVガイドWeb編集部
関連リンク
この記事をシェアする

















