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「忘れていた時間がよみがえった」岡山天音主演「ひらやすみ」脚本家・米内山陽子が語る原作愛2025/11/29 12:00

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「忘れていた時間がよみがえった」岡山天音主演「ひらやすみ」脚本家・米内山陽子が語る原作愛

 NHK総合で放送中の夜ドラ「ひらやすみ」(月~木曜夜10:45)の脚本を担当している米内山陽子さんが、作品への思いや脚本化の工夫について語った。

 漫画家・真造圭伍さんの同名コミックが原作の同作は、阿佐ヶ谷の平屋一戸建てに住む主人公・ヒロト(岡山天音)と、いとこのなつみ(森七菜)、そして周囲の人々の姿を優しく描き出す物語だ。2023年「手塚治虫文化賞」マンガ大賞にノミネートされ、2024年にはイタリアで開催された「ルッカコミックス&ゲームズ」で最優秀連載コミック賞を受賞するなど国内外で高く評価されている。

 広島県出身の脚本家・舞台手話通訳の米内山さんは、これまでにTVアニメ「パリピ孔明」(シリーズ構成)、「ウマ娘 プリティーダービーSeason1,2」(脚本)、「スキップとローファー」(脚本)、「ゆびさきと恋々」(シリーズ構成)など、数多くのアニメ作品を手がけてきた。実写映画「思い、思われ、ふり、ふられ」やドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」ではCODA考証・手話指導も担当している。

「忘れていた時間がよみがえった」岡山天音主演「ひらやすみ」脚本家・米内山陽子が語る原作愛

――ドラマ化の脚本を依頼された時の気持ちは?

「ドラマ脚本のお話をいただいた時は天にも昇る気持ちでした。東京で一番長く住んだのが阿佐ヶ谷です。狭くて湿気ていて日当たりの悪いアパートで、百円ショップで買ったなめ茸の炊き込みご飯だけで空腹をしのいだ時期もありました。時間と野望があってお金だけなかった時代。戻りたくない、振り返るのもつらい。そう思ったまま年を重ねていました」

――「ひらやすみ」との出会いについて教えてください。

「2022年。『ひらやすみ』に出会いました。ページをめくるたびに、つらく苦しいと思っていた時代の、忘れていた良い思い出たちがぶわっとよみがえってきて、こっそりしみじみ泣きました。小さな炊飯器を大事に使っていたこと。百円ショップをうまく使って快適に暮らそうとしていたこと。家から出てきた千円札に大喜びしていたこと。なんだ、ちゃんと楽しく生きてたじゃん。居場所があったじゃん。だから今も生きてるじゃん。そんな生きていくことへの肯定にあふれた『ひらやすみ』が、ずっとずっと大好きでした」

「忘れていた時間がよみがえった」岡山天音主演「ひらやすみ」脚本家・米内山陽子が語る原作愛

――原作を実写化する上で、特に気をつけたことは?

「真造先生と初めてごあいさつしたとき、『ドラマなので、漫画っぽくなりすぎないようにしてください』というご意見をいただきました。『ひらやすみ』の原作は数ある漫画作品の中でも特に生っぽい生活の手触りがある作品で、行動もセリフも自然です。だからそこまで心配せずとも……と、正直思っていました。しかしすぐに実感しました。絵のキャラクターが話している説得力と、生身の人間が話している説得力は、全く種類の違うものです。これはどちらが良い悪いではなく、本当に使っている筋肉が違うようなものです。どうやってもっと生身に落とし込んでいくか、という勝負が始まりました。悲鳴の上げ方。笑い方。泣き方。語尾。原作のセリフの空気感は絶対に入れたい。その上で、生身の説得力を持たせること。やっていることは『あ!』を『あ……』にする、といった細かいことではあるのですが、一行一行、検証しながら進めました」

――映像作品ならではの工夫について教えてください。

「例えば、ばーちゃんがトンカツを切っている同じまな板で1年後、ヒロトがトマトを切っている。ばーちゃんと一緒にしたラジオ体操を今は一人でしている。ばーちゃんと作ったカツサンドを、一人で作れるようになっているヒロト。というような(ばーちゃん絡みばっかりで恐縮ですが)……同じ場面でシーンを変えると、時の流れを感じてもらいやすいのです。さらには、前のシーンを裏切るようなシーンを入れることで、クスッとできる要素にもなります。あかりんが泊まりに来るのを迎えるなっちゃんの大はしゃぎから、鯛の目にビビる、のような。『ヒロト、早まるな!』も、原作上ではあの場面で映画を見ないのですが、ドラマでやらない手はないだろうと脚本に入れ、なっちゃんとヒデキのリアクションをどこでどう入れたら面白いだろう……と工夫しました。映像になったらさらに最高でしたね、『ヒロト、早まるな!』」

「忘れていた時間がよみがえった」岡山天音主演「ひらやすみ」脚本家・米内山陽子が語る原作愛

――ナレーションやモノローグの扱いについても聞かせてください。

「ナレーションは今回小林聡美さんのすてきな声で届けられる、いわゆる天の声。モノローグは登場人物の心の声です。原作の天の声はとてもユニークで、結構感情があるのがすてきです。心の声も、登場人物が口には出せないけれど思っていることを伝えてくれます。天の声を、思いきってキュッっと少なくしました。心の声も、独り言でできる、セリフで言外に匂わせられる範囲に留めました。監督が切り取る画面と俳優さんの演技を通して、感じていただきたい。その一心からです。時間の流れと光と表情を、ゆったり感じていただきたい。終電を逃した帰り道に見た景色。歩道橋から見た景色……。ささやかな気持ちの『点火』を感じ取っていただけたのではないかと思います」

――視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

「放送も残すところあとわずか。ドラマが最終回を迎えても、原作のヒロト達の生活は続きます。願わくばその先もドラマに──という私の野望は消えませんが、こればかりはどうなるか分かりません。(でも願望は明文化するとよいらしいです。私調べ。)今後の回では真造先生のリクエストでもあった大切なエピソード、『白いアジサイ』も出てきます。どうか最後まで、一緒に散歩するようにご覧いただけたらうれしいです」

「忘れていた時間がよみがえった」岡山天音主演「ひらやすみ」脚本家・米内山陽子が語る原作愛

 なお、番組公式ブログでは撮影エピソードやキャストのコメントなどが随時更新されている。詳しくは、https://www.nhk.jp/g/ts/KZ5YJ87J38/blog/bl/py3OQGMGay/まで。

【番組情報】
夜ドラ「ひらやすみ」
NHK総合
月~木曜 午後10:45~11:00

文/TVガイド編集部

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