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三谷幸喜×神木隆之介が語る初共演の印象「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」2025/09/28

三谷幸喜×神木隆之介が語る初共演の印象「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」

 フジテレビ系では10月1日より、脚本家の三谷幸喜が25年ぶりに民放ゴールデン・プライム帯連ドラの脚本を手がける、「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(水曜午後10:00)がスタート。1984年の渋谷を舞台にした青春群像劇で、三谷の完全オリジナルストーリーだ。

 主人公は、自分の才能を信じ、昭和後期を駆け抜けた演劇青年・久部三成。菅田将暉が主演を務め、共演には、二階堂ふみ神木隆之介浜辺美波らが名を連ねる。

 若い頃の“三谷青年”をモチーフにした新人の放送作家・蓬莱省吾を演じる神木と三谷が、本作の誕生秘話や見どころなどを語った。

──初タッグとのことですが、お互いの印象を教えてください。

三谷 「もちろん、神木さんの名前は知っていたし、映像も見たことはありますけれど、『いつか彼と一緒に作品を作るかもしれない』という目線ではなかったんですよね。初めてこの現場でご一緒して、いろいろな体験をさせてもらいましたが、すごく新鮮で、それまではなかった感覚を味わいました」

神木 「三谷さんは、テレビ画面から伝わって来るとおり、博学で何でも知っている人というイメージがあります。だから、直接お会いさせていただく際は本当に緊張しましたし、話についていけるのか、ちゃんと理解できるのか心配でした。三谷さんから見て、『この人、理解力ないな』と思われたらどうしようと。テレビで見ていた時の印象と、初めてお会いした時の印象は変わらなかったです」

三谷 「神木さんだけでなく、若い俳優さんと会って話をすると、間違った“大家”の印象を僕に持っていらっしゃるなと感じます。でも、全然違って…。過大評価されているような空気の中で、とても居心地の悪さを感じています(笑)」

神木 「“三谷幸喜作品”となると、スケールも大きいですし、宣伝もすごいですよね。三谷さんの映画が公開されるとか、ドラマが放送される時って、ナレーションに必ず『三谷幸喜作品!』という言葉がドンって絶対に入ってくるじゃないですか。それが印象的なので、とてつもなくすごい方だなと感じています」

三谷 「やりづらい世の中になりましたね(笑)」

■“三谷青年”をモチーフにした役への挑戦

──神木さんが演じる蓬莱省吾は、三谷さんがモチーフと聞いていかがでしたか?

神木 「うれしい気持ちもありましたが、同時にプレッシャーも感じました。三谷さんとご一緒させていただくのが初めてでしたし、三谷さんの動きや話し方をどこまで役に反映させるべきなのか、一生懸命考えました。だけど、今回は蓬莱という人物であって、三谷さんを演じるわけではない。蓬莱として自然に動くべきだけど、そのキャラクターのベースには三谷さんの要素もある。だからこそ、そこをどのように表現するのかは、演じながらじゃないと分からない部分もありました。三谷さんらしさをどこまで出すのか、それとも出さないのか…。そのあんばいは今でも難しいですし、お話を伺った時はすごく悩みました」

三谷 「僕のことは知っていたんですか?」

神木 「もちろんです! 僕、朝ドラ(2023年前期のNHK連続テレビ小説『らんまん』)の撮影中にお見かけしたことがあります。三谷さんが、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22年)の撮影現場を訪問された時に、遠くから『本物の三谷さんだ!』と言いながら、騒いでいました(笑)」

三谷 「僕もそうですよ。『本物の神木くんだ! 大きくなってー』みたいな話をしていました。僕は、神木さんとご一緒して印象が180度変わりました。今ここにいらっしゃる神木さんは、多分皆さんが考えている通り、すごく真面目な好青年。でも、本当は人を笑わせたり喜ばせたりすることに全勢力を傾けている人なんですよ。びっくりしました。とにかく人を笑わせたい思いが常にあって、振ると何でもやってくれるし、物ボケとかでも瞬間に笑わせてくれる。だから、ものすごく新鮮でした。人を笑わせることが好きだから、コメディーも好き。僕もコメディーをやっている人間だから、自分が描いたものをこんなに正確に面白く具現化してくれる俳優さんと、正直、初めて出会いました。さらに何倍も面白くしてくれるし、若い方なのにこんな力を持った人がいるんだと感動しました」

■ 1984年の渋谷と三谷の原体験

──令和の今、1984年が舞台のお話を描くことになったきっかけは?

三谷 「20代の後半に、実際に渋谷のストリップ劇場でバイトをしていたことがありました。そこでショーとショーの間に披露するコントの台本を書いていたんです。その時の自分を投影させる人物を登場させて、彼の視点から当時の空気感を描きたい思いがあって…。今の現代は、さまざまな価値観が揺らぎ、固定概念がどんどん崩されていて、不安定な時代だと感じています。それは悪いことだとは思いませんが、先がどうなるか分からない。かつては、永遠に続くであろうと思っていたものがどんどん崩れていく。そんな時代の中で、どこか常に不安を抱えて生きている人が多い気がしているんです。でも、あの頃の80年代の渋谷は、夢を実現させようと必死にもがく若者たちの熱気であふれていた。この輝きがずっと未来永劫続くと信じているあの時代の人々を描くことで、現代の人たちに対して、何かしらのメッセージやエールを届けられたらいいなという思いが、この物語の出発点になりました」

──本当に三谷さんの実体験が台本の中に入っているのですね。

三谷 「ドラマで描かれる物語は、9割フィクションではありますが、設定としては、ほぼ僕の実体験に近いものを描いています。また、今回のテーマとして“舞台”というものがあるので、自分が劇団を作った頃から今に至るまでの演劇界の裏側や、体験したエピソード全部をそこに埋め込んだみたいな。そんな気持ちで描いています」

──神木さんは三谷さんの話を聞いて80年代の時代の若者たちをどんなふうに受け止めたのでしょう。

神木 「僕は1993年生まれなので、その年代のことは分からないのですが、実際にその年代の物語の世界に入ってみたら、みんな元気だったんだろうなと感じました。今が元気じゃないというわけではありませんが、その当時は、三谷さんがおっしゃったように、活気にあふれていて、みんな目がキラキラしていたような気がします」

三谷 「ポケベルの時代ですか? ポケベルは全然知らないんでしたっけ?」

神木 「僕の時はガラケーがあったので、ポケベルは見たことないですね」

■ 昭和の街並みを再現した巨大セットの魅力

──今回当時の渋谷の街を再現した巨大セットで撮影をされたそうですね。三谷さんは懐かしい風景だったかもしれませんが、神木さんは初めて当時の渋谷をご覧になられたと思います。それぞれ、ご感想をお聞かせ願います。

三谷 「タイムスリップした感じはありました。特にストリップ劇場の前に坂道があって、坂道を挟んで反対側にある古いアパートとかね。そこの2階が控室になっていて、お笑い芸人の人たちと僕がたむろして、そこで台本を作ったり、稽古をしていました。劇場の楽屋にはダンサーの方が集まっていらっしゃるから、お笑い芸人たちははじき出されてアパートに行かされるんですよ。そこで稽古をして、部屋を出て階段を降りて外の通りを通って劇場に入っていくという。その感じが完璧に再現されていたので、僕は、あの頃の自分に『いずれこの瞬間がドラマになるんだよ』と教えてあげたい気持ちになりました」

神木 「学生の頃、学校帰りに渋谷で遊んでいたのですが、この地区には行ったことはなかったんです。今回、セットを拝見して、色が多いのですが、今とは違う色合いだなという印象でした。僕は夜のシーンの撮影が多かったのですが、現場では散水車で道路を濡らしていて、ネオンが路面の水に反射している様子がとてもきれいでした。最近は、ノスタルジックな“ネオ東京”みたいな世界を好む若者も多いですし、僕もすごく好きなので、たくさん写真を撮りました。今とは全然違う、この時代にも行ってみたかったです」

──今、昭和レトロブームで、今作ではそんな昭和によくあった怪しげな路地が舞台のお話もあるそうですね。

神木 「今は、怪しげな路地ってなかなかないですよね。その先に何があるか分からない。危険があるかもしれないし、逆に楽しみがあるのかもしれない。怪しげだからこそ行ってみたいと好奇心に駆られるんですよね。そんなミステリアスな路地がすごく魅力的だなと思います。あそこをフィルムカメラで撮ったら、エモい写真が撮れるんじゃないかとワクワクしました」

三谷幸喜×神木隆之介が語る初共演の印象「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」

【プロフィール】
三谷幸喜(みたに こうき)
1961年7月8日、東京都出身。大学在学中の83年に旗揚げした劇団「東京サンシャインボーイズ」の作・演出を手がける。93年に「振り返れば奴がいる」(フジテレビ系)で連続テレビドラマの脚本家としてデビュー。94年「古畑任三郎」(フジテレビ系)を担当し、大ヒット。97年には映画「ラヂオの時間」で映画界にも進出し、映画監督としても成功を収める。大河ドラマは「新選組!」(04年)、「真田丸」(16年)に続いて、「鎌倉殿の13人」(すべてNHK総合ほか)を執筆し、「鎌倉殿の13人」で第41回向田邦子賞を受賞した。25年11月に「ショウ・マスト・ゴー・オン(仮題)」が新作歌舞伎として上演することが決まっている。

神木隆之介(かみき りゅうのすけ)
1993年5月19日生まれ。埼玉県出身。主な出演作品は、2023年、連続テレビ小説「らんまん」(NHK総合ほか)、映画「ゴジラ-1.0」、24年、日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)など。オフィシャルファンクラブ「神木駅」では、様々なコンテンツを展開。12月には東京・大阪にてトークイベントの開催が決定した。

【番組情報】
「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」
フジテレビ系
10月1日スタート
水曜 午後10:00~10:54 ※初回は30分拡大



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