「終幕のロンド」で遺品整理人を演じる草彅剛。自分らしい人生の終幕とは?2025/09/26

フジテレビ系で10月13日にスタートする、草彅剛主演のドラマ「終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに―」(月曜午後10:00、初回15分拡大=カンテレ制作)。
5年前に妻を亡くし、幼い息子を男手一つで育てるシングルファーザーの遺品整理人・鳥飼樹(草彅)が、遺品整理会社の仲間たちと共に遺品整理を通して、さまざまな事情を抱えた家族に寄り添っていくヒューマンドラマ。そんな感動的な人間ドラマの裏では、せつない大人の恋も描かれる。
遺品整理人として人々に寄り添う樹を演じている草彅に、本作の魅力や自身が演じる「遺品整理人」について聞いた。

──遺品整理人に焦点が当たった脚本を読んで、どんな感想を抱きましたか?
「自然と涙が出るようなすごい本でした。カンテレさんには、1997年の『いいひと。』からお世話になっていて、ここ最近は2015年の『銭の戦争』からの“戦争シリーズ3部作”など、ガツンとパンチのある作品が続いたので、それとは対照的に、今回はゆったりとした大人のテイストが感じられますね。毎日(中村)ゆりさまとドキドキワクワクしつつ、戸惑いもありながら、初めての感覚を楽しんでいる感じです。じんわりとしたぬくもりを感じられて、後になって温かみが効いてくるような、そんな余韻が心に残るドラマだなと思いました」

──演じる鳥飼樹のキャラクターをどう捉えていますか?
「どんなドラマのどんな役でも、自分とは違うわけで、鳥飼樹も僕自身ではないからよく分からないなと。だけど、自分じゃ分からないような余白がある役で、ゆりさまとお芝居をする中で、リアルな気持ちが湧き起こってくるものを出すことができれば、魅力的な人物になりそうだなと思いました。樹はすごくおせっかいなんです。自分の仕事以外でも顔をツッコんで、何かしてあげちゃう。そういう面では、今の時代と逆行しているような感じだと思います。でも、樹は後先考えずに、その人の事を思って突き進んでいっちゃうところがすてきだなと感じました」

──樹と出会い、徐々に距離が近づいていく絵本作家の御厨真琴を演じる中村ゆりさんとの共演はいかがですか。
「ゆりさまがキュートで、現場で僕は監督みたいになっています(笑)。ゆりさまが撮影しているシーンをのぞいて、監督が『カット』と言う前に僕が先にカットをかけちゃって…(笑)。カットと言った瞬間のゆりさまが美しいので、このドラマは勝ったなと思っています! ゆりさまのお顔を拝見すると、樹の揺れ動く気持ちもいろいろなバージョンが浮かんでくるので、本当に助けられています。毎日ゆりさまと会うのが楽しみです」
──遺品整理人と聞いていかがでしたか。
「亡くなった方の遺品から真実が突き止められて、そこから展開していく人間ドラマに感動すると思います。遺品整理って、誰にでも必ず訪れることで身近なものだけど、普通は意識していないですよね。意外なところに隠された人間ドラマがあるんだなと、脚本を読んで知りました」

──遺品整理を通して、生と死について考えることになりそうですね。
「自分もいつかは死ぬんだって、毎日考えていますよ。“死”は、突然訪れるものだなと、常に意識しています。その思いは、僕がまだこの先長く生きていくのであれば、もっと深まっていくと思います。『いつ死んでもいいように全力で生きよう』とか、『悔いのないように生きる』とか、すてきなことを言える人間でいたいですね。死っていつか絶対に100%訪れますからね。でも、それを分かっているだけで、日頃の行動や意識が少し変わってくるなと思います。ドラマの題材は『遺品整理』ですが、ネガティブじゃなくて、ポジティブな面で死というものを意識できるような作品になればいいなと思います」
──「終幕のロンド」というタイトルを聞いてどう感じましたか。
「作り手のセンスがありますよね。ロンドは繰り返すみたいな音楽用語で、超かっこいいタイトルだなと思いました」

──自分らしい“終幕”について考えたことありますか?
「終幕って言葉は初めて聞いたのですが、自分らしく人生の幕を降ろすということですよね。悲しい感じがするかもしれませんが、終わりは始まりでもあるからね。僕はエンターテイナーなので、舞台の幕が降りた瞬間に次の公演が待っているわけですよ。だから、幕の向こうにファンのみんなが待っていると思うと、幕が降りたとしても、そこからまた始めなきゃと思っています。それと同様に、自分らしい終幕を迎えた後、新しい人生がまた始まるのかもしれません」
──自分の亡き後、何が遺ると思いますか。
「僕たちには、今まで出演してきた作品が残ると思います。大げさかもしれませんが、ドラマや映画などは、命をかけて作っているので、自分の遺伝子というかDNAが作品に刻まれていると思うんです。僕の人生が終幕したとしても、自分の作品が残り続けるんじゃないかな。それは本当に特別なことで、僕たちは幸せな環境にいますね」

──役作りで参考にしたことはありますか?
「遺品整理人の方が現場に来てくださって、いろいろなアドバイスをいただいたので、100%大丈夫です(笑)。手袋をしてから遺品に触れることや、お客さまへの対応など、細かく監修していただきました。脚本の高橋美幸さんがリアルを追求される方で、すごく調べてくださって、今回の遺品整理人という職業が、より広く皆さまに丁寧に伝えられる役になっています」
──視聴者に向けたメッセージをお願いします。
「遺品整理人という仕事を通して、誤解や迷いなど、遺品から真実が解き明かされる瞬間がとても感動的です。そこに、ゆりさまと僕の大人の恋愛も入り混ざって、皆さんに楽しんでいただけるストーリーになっていると思います。とても温かいドラマになると思うので、視聴者の皆さまが幸せだなと感じて、新しい明日を一歩踏み出していこうという気持ちが起こるようなドラマにしたいと思っています。よろしくお願いします」

【プロフィール】
草彅剛(くさなぎ つよし)
1974年7月9日生まれ。埼玉県出身。主な出演作は、ドラマでは「僕の生きる道」(2003年/フジテレビ系)、大河ドラマ「青天を衝け」(21年/NHK総合ほか)、「罠の戦争」(23年/フジテレビ系)など。映画では03年に「黄泉がえり」、20年に、「ミッドナイトスワン」、24年には「碁盤斬り」で主演を務めた。25年4月23日に、Netflix映画「新幹線大爆破」が配信された。
【番組情報】
「終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに―」
10月13日スタート
カンテレ・フジテレビ系
月曜 午後10:00~10:54
※初回は15分拡大
取材・文/松下光恵
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