Feature 特集

松本潤に宿る“徳重晃”―原作者・富士屋カツヒト氏が感じた実写「19番目のカルテ」の説得力2025/08/07 12:00

松本潤に宿る“徳重晃”―原作者・富士屋カツヒト氏が感じた実写「19番目のカルテ」の説得力

 松本潤が主演を務めるTBS系の日曜劇場19番目のカルテ」(日曜午後9:00)。 富士屋カツヒトさんによる連載漫画「19番目のカルテ 徳重晃の問診」(ゼノンコミックス/コアミックス)を原作に、「コウノドリ」シリーズ(同系)の坪田文さんが脚本を手がける本作は、病気を診るだけでなく、心や生活背景をもとに患者にとっての最善を見つけ出し、生き方そのものに手を差し伸べる19番目の新領域・総合診療医を描く新しいヒューマン医療エンターテインメントだ。松本は、患者の心に深く寄り添う総合診療医・徳重晃を演じている。

 「人の部屋には、その人の無意識がにじむ」。そんな視点で日常の機微をすくい取り、総合診療医という存在の輪郭を丁寧に描いてきた富士屋先生。本作の映像化が決定した時、富士屋先生の胸には喜びと同時に、どこか現実味のない“夢のような”感覚が広がっていたという。

 放送が始まった今も「“ただの視聴者”として画面を楽しんでいる」。そう語る富士屋先生の言葉からは、原作への誇りと、新たな手で広がる表現への信頼がにじむ。主演・松本潤の徳重晃像や、共演陣への印象、そして“背景”がもたらす説得力まで。原作者だからこそ語れる、実写版「19番目のカルテ」への思いを聞いた。

放送が始まってもなお“夢のよう”なドラマ化の実感

松本潤に宿る“徳重晃”―原作者・富士屋カツヒト氏が感じた実写「19番目のカルテ」の説得力

――ドラマ化の話を聞いた時の心境を教えてください。

「率直にうれしかったです。事前にコアミックスの方から『日曜劇場で企画が出ています』とふんわり聞いていて、『通ることは難しいだろう』と思っていたんです。なので、実際に『決まりました』と聞いた時は『うそでしょ?』というリアクションでした(笑)。本当に“夢かな”という感覚で、放送が始まっている今もその気持ちが続いているような気分です」

――実際に放送をご覧になって、いかがでしたか?

「脚本の構成もそうですが、作品全体の雰囲気が原作の持つ空気感とリンクしているように感じました。あえてそれを狙っているかどうかは分かりませんが、いち視聴者としても楽しめる、ワイワイできる仕上がりで。『こういうドラマが好きなんだよな』とあらためて思いました」

キャラクターと響き合う配役の妙

松本潤に宿る“徳重晃”―原作者・富士屋カツヒト氏が感じた実写「19番目のカルテ」の説得力

――松本さんが演じる総合診療医・徳重晃を映像で見た印象を教えてください。

「どう表現したらいいか難しいのですが、きちんと“コミュニケーションがうまくない人”という徳重らしさを感じます。『99.9 -刑事専門弁護士-』シリーズ(TBS系)を拝見していたので、『徳重という役柄にうまくスライドしてくれそうだな』と思っていました。実際に撮影現場での松本さんから作品と役柄に対する真摯(しんし)な姿勢が伝わってきて、その演技に自然と引き込まれていきました」

――整形外科から総合診療科に転科した滝野みずきを演じる小芝風花さんや、外科医の東郷康二郎を演じる新田真剣佑さんについてはいかがでしょうか?

「小芝さんは、ビジュアルの雰囲気や、バラエティーなどでの印象から滝野というキャラクターっぽさを感じました。実際、小芝さんがインタビューで答えているバックグラウンドと滝野には共通項もあって、『きちんと役柄に合ったキャスティングをしていただいているんだな』と思いました。新田さんについては、Netflixの『ONE PIECE』(2023年)での姿などから、侍みたいな雰囲気のある方だなと思っていました。実際に映像を見た時に、スクラブ姿の表情がまさに康二郎でしたし、その他のシーンでは『そんな表情もするんだ』と新たな一面が見えて。僕の中でも、康二郎というキャラクター像の幅が広がりましたし、親しみやすさのようなものを感じました」

松本潤に宿る“徳重晃”―原作者・富士屋カツヒト氏が感じた実写「19番目のカルテ」の説得力

漫画と実写、それぞれの背景が伝える“人物像”の奥行き

松本潤に宿る“徳重晃”―原作者・富士屋カツヒト氏が感じた実写「19番目のカルテ」の説得力

――撮影現場を訪れた際、実写ならではの“情報量の多さ”に感動されたと伺いました。

「僕が描く人間ドラマが中心となる漫画では、特に背景を大事にしているんです。背景って、その人物の“らしさ”を出すための情報や、キャラクターのバックグラウンドを表現できる場所。ですが、漫画だと毎回同じ背景を描く必要がありますし、作画コストもかかってしまうので、少ない線で“それっぽく”見せる場合もあります。一方で実写は、単純に情報量が多くて、技術的な小物の存在感も強い。さまざまな方の判断やセンスが詰まっていて、『これはもうプロの仕事だな』と感じました。そういう背景の作り方に感動を覚えて、感想が湧き出てきます」

――総合診療医があらゆる角度から患者を診るように、視聴者の人たちもまた徳重について、総合診療科の診察室から情報を得ると思います。それは、原作の第6巻で描かれている訪問診療で、日常の様子から情報を得ていることと似ている気がします。

「そうですね。人の部屋って、ある意味その人の頭の中を無意識に表現しているようなものだと思っています。訪問診療の場面では、そういう“背景の情報”がそのまま目の前にある状態なので、視覚的にその人を理解できるんです。それと診察室の作りは、どこかでつながっているのかもしれませんね」

――最後に視聴者の方にメッセージをお願いします。

「原作ファンや、松本さんをはじめとする出演者の皆さんのファンも見てくださっていると思います。せっかく原作をもとにここまで丁寧に作っていただいているので、さまざまな角度から味わっていただけたらうれしいです。僕自身も、放送前後のSNS投稿をご覧になった方には伝わっているかもしれませんが、『ただの視聴者としてワクワクしながら見よう』と思っているくらいで(笑)。皆さんにもぜひ、一緒にその世界に触れていただけたらと思います」

松本潤に宿る“徳重晃”―原作者・富士屋カツヒト氏が感じた実写「19番目のカルテ」の説得力

 実写化によって新たな表情を見せ始めた「19番目のカルテ」。富士屋先生の言葉の端々には、原作に込めた思いやキャラクターたちへの深いまなざし、そして映像表現への敬意が滲んでいた。その世界がどのように広がっていくのか、物語の行方を、これからも見守っていきたい。

【番組情報】
日曜劇場「19番目のカルテ」

TBS系
日曜 午後9:00〜9:54

文/TVガイドWeb編集部



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.