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原菜乃華、朝ドラ「あんぱん」で見せたメイコの成長と、健太郎(高橋文哉)との結婚で感じた変化2025/08/07 08:15

原菜乃華、朝ドラ「あんぱん」で見せたメイコの成長と、健太郎(高橋文哉)との結婚で感じた変化

 NHK総合ほかで放送中の連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜午前8:00ほか)。今田美桜が主人公・朝田のぶ役を演じる本作は、脚本家の中園ミホさんがアンパンマンを生み出した漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さんをモデルとした柳井嵩(北村匠海)と、嵩の妻・のぶの激動の人生を描いている。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、”逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどり着くまでの愛と勇気の物語だ。

 そんな「あんぱん」で、のぶの妹・朝田メイコを演じるのが原菜乃華。歌が大好きな天真爛漫(らんまん)な三女として朝田家を明るく照らし、第19週では念願の上京、そして初恋の相手・辛島健太郎(高橋文哉)との結婚と、大きな転機を迎える。

 作曲家・いせたくや役のMrs. GREEN APPLE大森元貴とのシーンでは、歌の指導を受ける場面も。15歳から大ファンだったという大森との共演は、「走馬灯に出てくる」と思えるくらいの夢の時間だったという。

 少女から母へと歩んでいくメイコの成長とともに、自身も大きな経験を重ねた原に、朝ドラ出演の思いと、役柄に込めた気持ちを聞いた。

オーディションで感じた“正解のない自由”

――「あんぱん」のオーディションは、どんな内容だったのでしょうか?

「すごく印象に残っているのは、『アンパンマンのマーチ』の詩を読むという課題です。ほかにも“木刀を振りながら、やなせさんの詩を決め技っぽく読む”みたいなこともあって。普通のオーディションだと台本を何度も読み直したりするんですが、今回は“何を見られているのかまったく分からない”という感覚でした。でも逆に、それがすごく自由で。“もう思いきりやるしかない”と振り切って臨めました」

――メイコ役での出演が決まった時は、どんなお気持ちでしたか?

「最初はヒロインオーディションを受けたんですが、落選の連絡をいただいていたんです。なので数か月後に連絡をいただいた時は、本当にびっくりしました。『また関われるなんて、夢みたいにうれしい!』って。ただ“歌が好きな女の子”と聞いて、思わず、ボイトレ通ったほうがいいかな…と焦っちゃいました(笑)」

――所属事務所の社長である小栗旬さんが撮影現場を訪れることもあったそうですね。

「はい、ありました! 私たちが休憩中にトランプをしていたら、ふらっと小栗さんが現れて。『おはようございます』とごあいさつしたら、『トランプに戻りなさい』って返されて(笑)。時々ふらっと現場をのぞきに来てくださって、優しくて頼もしい社長です」

――演技についてアドバイスをもらうことも?

「直接お芝居についてお話する機会は多くはないですが、現場にいてくださるだけで、すごく安心できるというか。背中を預けられるような、そんな存在です」

急展開に思わず「早い!」

原菜乃華、朝ドラ「あんぱん」で見せたメイコの成長と、健太郎(高橋文哉)との結婚で感じた変化

――第19週では、上京したメイコが健太郎と再会し、結婚、そして出産まで一気に描かれます。台本を読んだ時はどんな印象でしたか?

「びっくりしました。ほんとに“早い!”と(笑)。メイコが結婚して、子どもが2人生まれることは、事前に聞いてはいたんですが、この1週間の間に何が起こったの!? って思うくらい、ものすごいスピード感で進んでいて。ただ驚きました」

――そうした展開は、あらかじめ聞かされていたわけではなかったんですね。

「全然知らされていなかったです。健太郎さんと結ばれるということも、最初はまったく聞いていなくて。台本をいただいて、初めて『そうなるんだ!』って。驚きの連続でした」

――そんな急展開の中で、演じるうえで難しさを感じた部分はありましたか?

「メイコは結婚する前と後で、性格や口調もがらっと変わるんです。視聴者の方からすると“あれ、いきなり大人っぽくなった?”と違和感を持たれるかもしれないなと。だからこそ、みそっかすだったメイコが、ちゃんと自立して成長したんだと伝わるように、描かれていない空白の時間を自分の中で補いながら演じていました」

――健太郎とのシーンの中で、特に印象に残っている場面を教えてください。

「やっぱり、メイコが健太郎さんに告白するシーンですね。“長かったな…”と思わずしみじみしちゃいました。メイコにとっては初恋がようやく実る瞬間で、ピュアで真っすぐな恋が報われる、温かくて涙が出そうなシーンでした。しかもその告白を見守るのぶ姉ちゃん、蘭子姉ちゃん(河合優実)、嵩さんの表情がもう完全に親の顔になっていて(笑)。現場では、その3人のリアクション用のカットをみんなで見ながら、『この3人、完全に保護者だね!』と笑い合っていました」

――夫婦になってからのシーンでは、どんな場面が印象に残っていますか?

「子どもが生まれたあと、ヤムおんちゃん(屋村草吉/阿部サダヲ)を東京で見かけたと、健太郎に言われるシーンです。『どうして教えてくれなかったの?』と強く問い詰めるんですが、あれは今までのメイコだったら絶対にしない言い方だったなと。ちょっと“尻に敷き始めてるな”と、自分でも思いました(笑)。でもその一言に、母としての強さやたくましさがにじんでいて。ちゃんと成長しているんだなって、自分でも感じたシーンです」

衣装とメークが導いてくれた“年齢の幅”

――少女時代から母親になるまで、幅広い年齢を演じるうえで、難しさは感じましたか?

「最初に感じたのは、衣装とメークの力は本当に大きいんだなということです。支度部屋の鏡に映る姿を見ながら、“この時代のメイコなら、こういう口調で話すかな”とか、“もう少し年を重ねたら、こういう立ち居振る舞いをするかも”と、自然と想像が広がっていくんです。メイコらしさは大切にしつつ、無邪気な部分やちょっと子どもっぽいところ、おちゃめなおばあちゃんのような一面もにじませながら、大人へと変化していく彼女を表現できたらと心がけていました。大きく一変させるというより、時間を重ねた“延長線上のメイコ”として、成長の積み重ねが感じられるように意識しています」

――母親役を演じるのは、今回が初めてだったのでしょうか。

「以前にも母親役を演じたことはあるんですけど、今回のように、出産や育児と向き合う等身大の母親を演じるのは初めてでした。妊娠中の動き方や生活の様子などは、実際の母にたくさん聞きました。私には11歳年下の妹がいるんですけど、母が妊娠していた頃の記憶をたどりながら、『どう歩いていた?』とか『何をよく食べていた?』とか、一つ一つ教えてもらって。それをヒントに役に落とし込んでいきました」

Mrs. GREEN APPLE・大森元貴との夢の共演

原菜乃華、朝ドラ「あんぱん」で見せたメイコの成長と、健太郎(高橋文哉)との結婚で感じた変化

――第19週では、Mrs. GREEN APPLEの大森さん演じる作曲家・いせたくやから歌の指導を受ける場面もありました。共演の感想を教えてください。

「キャスティングを聞いた瞬間、思わず『えっ!?』って声が出るほど驚きました。一緒のシーンがあると分かった時は、本当に飛び上がるくらいうれしくて。もともとMrs. GREEN APPLEさんの音楽が大好きで、仕事の原動力にもなっていたので、大森さんとお会いできるだけでも信じられない気持ちだったのに、まさかお芝居でご一緒できるなんて……。夢のような時間でした」

――ファンであることはご本人に伝えられたのでしょうか?

「最初はスタッフさん経由で、お伝えしてもらったんですが、そのあと自分でもちゃんとごあいさつして。『この曲が本当に好きで…』って伝えたら、『どこが好きなんですか?』と聞いてくださって。でも、言いたいことがあふれちゃって、自分の中で混乱してしまって(笑)。最終的には『歌詞が好きです』の一言にまとめてしまいました。でも翌日も撮影があったので、頭の中を整理して、あらためて思いを言葉にしました」

――その「本当に好きな曲」というのは?

「『ゼンマイ』という曲です。この曲の歌詞に、本当に救われたことがあって。“お芝居を続けてきてよかった”って、前向きになれたきっかけでもあるんです。だから、いつか大森さんにお会いできたら絶対に伝えたいとずっと思っていました。一緒に歌うシーンの後には、『間違いなく私の走馬灯に出てきます!』ってお伝えしました(笑)。」

――“のど自慢”の予選に挑戦するシーンも登場します。撮影はいかがでしたか?

「もちろん歌の練習もきちんとしましたが、メイコってとても緊張しやすい性格なんです。だから“緊張してるけど、一生懸命歌ってる”という空気が出るように、目線や表情の動きも細かく意識しました。実際に自分自身もかなりドキドキしていたので、そのリアルな気持ちをそのまま役に重ねることができた気がします」

原菜乃華、朝ドラ「あんぱん」で見せたメイコの成長と、健太郎(高橋文哉)との結婚で感じた変化

「バランスの良い三姉妹」と理想の恋人

――「あんぱん」では三姉妹として描かれていますが、原さんから見たドラマの三姉妹の関係性についてはいかがですか。

「とんでもなくバランスのいい三姉妹ですよね。のぶ姉ちゃんは太陽みたいな存在で、いつも朝田家を明るく照らしてくれる人。蘭子姉ちゃんは第2のお母さんみたいで、のぶ姉ちゃんが気付かないことや足りない部分を、陰でしっかり支えてくれているんです。そんな2人が本当にしっかりしているからこそ、メイコはどこかいつも“ふわふわ”していられる(笑)。その絶妙なバランスが最高です」

――メイコというキャラクターについてはどう捉えていますか。

「みんなメイコには甘いんですよね、特に、釜じい(釜次/吉田鋼太郎)とか(笑)。すごくかわいがられていて、自由奔放に見えるんですけど、意外とちゃんと周囲を見ている子なんです。末っ子って、そういうところあるのかもしれません。ふわっとしてるように見えて、実は一番俯瞰で物事を見てる。そんな不思議なバランスを持っている子だなと思いながら演じています」

――原さんご自身、天真爛漫なキャラクターに合っているように思うのですが、11歳年下の妹さんがいるということで、実はしっかり者のお姉さんタイプなのでしょうか。

「全然そんなことなくて(笑)。1人っ子歴が長かったこともあって、むしろしっかり者というタイプではないです。どちらかというと、私も周りの人に支えられて生きてきたタイプなので、メイコにはすごく共感できるんですよね。だから自然と入り込めるし、演じていてもすごくしっくりきます」

――現場では、“2人のお姉ちゃん”である今田美桜さんと河合優実さんがいますが、その関係性はいかがですか。

「本当にお二人にたくさん助けてもらっています。現場に入るたびに優しく声をかけてくださるし、『これ食べな』とか『これ良かったよ』って、いろいろ教えてくれるんです。“こんなお姉ちゃんたちがいたらいいな”と思うくらい、本当のお姉ちゃんみたいな存在。今田さんはまさに“のぶ姉ちゃん”そのもので、河合さんも“蘭子姉ちゃん”そのまま! 控室ではカードゲームで遊んだりもしていて、本当にすてきな関係性です」

――“理想の姉妹”がそろう朝田家ですが、もし“理想の恋人”を選ぶとしたら、どのキャラクターが近いと思いますか?

「恋人にするなら…次郎(中島歩)さんです! 紳士的で、王子様っぽい雰囲気があるし、優しさで包み込んでくれるようなところがあって。実は私、初恋が“しょくぱんまんさま”だったんです(笑)。小さい頃、本気で恋していました」

――次郎さんと健太郎さん、両方から告白されたら迷いますか。

「うーん、あまり考えたことはないんですけど…健太郎さんは“カレーパンマン”がモチーフで、次郎さんは“しょくぱんまん”と言われていますよね。なので正直、迷わず次郎さんを選んじゃうかもしれません(笑)」

――では、理想の「父親」は?

「難しいですね。登場人物がみんなすてきで、悪い人が本当に出てこないので。でもやっぱり“竹野内豊さん”(柳井寛)かな。名言もたくさんあるし、包み込むような優しい声で、必要な時にちゃんと響く言葉をくれるんです。“愛の深さ”をすごく感じるので、まさに理想の父親像だなと思います」

アンパンマンへの愛「横浜のミュージアムにハマった」

――子どもの頃からアンパンマンに親しんでいたそうですが、どんな思い出がありますか。

「5~6歳くらいまで、すごく楽しんでいました。初めてサンタさんにもらったクリスマスプレゼントが、アンパンマンのキャラクターが描かれたコップセットで、私はしょくぱんまんのコップばっかり使っていたんです(笑)。横浜のアンパンマンミュージアムにも、家族で何度も行きました。気付いたら妹より私のほうがハマっちゃって、写真をたくさん撮ったり、グッズを買い込んだりしていて(笑)。やなせさんにしか描けない、温かいキャラクターや、少し哀愁のある歌詞も含めて、とっても魅力的だなと思っていました」

――あらためてアンパンマンの魅力を感じましたか。

「今あらためて、やなせ先生の歌や詩、キャラクターを見ると、“こんなに深い歌詞だったんだ”“こんなに味のあるキャラクターだったんだ”と驚かされます。あらためて魅力の深さを実感しました。あれだけ長い間、子どもたちに“絶対に好き”と思われ続ける作品は、なかなかないですよね」

――のぶと嵩を小さい頃から見てきたメイコとして、なかなか結ばれない2人をどんな気持ちで見守っていましたか?

「メイコとしては、千尋さん(中沢元紀)の思いも知っていたし、単純に“応援したい”だけでは済まされない、すごく深い思い入れがありました。周りから見たら、あれ以上にお似合いのカップルはいないと思うくらい、でこぼこで完璧な2人なんですけど、千尋さんの気持ちがあったり、蘭子姉ちゃんの言葉があったりして、なかなか一歩を踏み出せないままでいて…。もどかしかったですね」

――2人の思いが通じ合った瞬間、どんな感情が込み上げてきましたか?

「見ていてもつらかったし、メイコとしてもきっと同じだったはずです。だから2人の気持ちが通じ合った時は、力がふっと抜けたような感覚がありました。“一緒にいるべき2人なんだ”と感じたし、“やっとのぶ姉ちゃんは大丈夫だな”と、確信できたんです。つらい経験をたくさんしてきたのぶ姉ちゃんのことをずっと近くで見てきたからこそ、『嵩さんに任せたい』と自然に思えたし、感情があふれて涙が止まりませんでした」

――嵩の魅力はどんなところにあると思いますか。

「強がらないところ、ですかね。ありのままでいてくれるし、情けない姿もちゃんとさらけ出せる人だなって。自分のことより、周りの人のために動ける人だからこそ、強がりな分、実はすごく傷ついているのぶ姉ちゃんを、真正面から全部受け止められるのは、やっぱり嵩さんしかいないと確信しました」

――朝ドラという貴重な経験を通して、今後への意識に変化はありましたか?

「今田さんや北村さんをはじめ、本当に素晴らしいキャストの皆さんに囲まれて撮影していく中で、すごく自然体でフラットに現場にいらっしゃる姿を間近で見て、“本当にすごいな”と思いました。常に周囲に目を配っていて、みんなが芝居しやすいように空気を作ってくださる。そういう姿を見て、“私もこんなふうになれるかな…”と、ちょっと怖くなるくらいのまぶしさがあって。まさにのぶ姉ちゃんのような、太陽みたいな温かさは、憧れてもなかなかまねできないなと感じています」

――今後、俳優として挑戦してみたい役はありますか。

「今『虎に翼』を見ているのですが、伊藤沙莉さんが演じている主人公のような猪突猛進に突き進む強い女性っていうのに、すごく憧れがあるんです。それから、今まで学生服でのお芝居が多かったので、専門的な用語を使うようなお仕事系の作品にも挑戦してみたいと感じています」

原菜乃華、朝ドラ「あんぱん」で見せたメイコの成長と、健太郎(高橋文哉)との結婚で感じた変化

【プロフィール】
原菜乃華(はら なのか)

2003年8月26日生まれ。東京出身。2023年、大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)に千姫役で出演。同年、「こむぎの満腹記」(テレ東系)でテレビドラマ初主演。現在、日本テレビ系のドラマ「ちはやふる-めぐり-」に月浦凪役で出演している。

【番組情報】
連続テレビ小説「あんぱん」

NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15 ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月~金曜 午前7:30~7:45

取材・文/斉藤和美



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