大石静×阿部サダヲ×松たか子「しあわせな結婚」第1話振り返り座談会で語った“リアリティー”2025/07/18 08:00

7月17日に、テレビ朝日系の木曜ドラマ「しあわせな結婚」(木曜午後9:00)の第1話が放送された。大石静氏が書き下ろしている完全オリジナルドラマの本作は、主演の阿部サダヲが演じる原田幸太郎と、松たか子が扮(ふん)する美術教師の鈴木ネルラ役の電撃婚から物語の確信を突くかのような“ネルラの秘密”が暴露され、視聴者の度肝を抜いた。
サスペンス要素がふんだんに盛り込まれているとはいえ、「ホームドラマを作りたい」という大石氏の構想からスタートした本作。だからこそ、謎の多い“鈴木家”の描写も非常に緻密に描かれていく。このたび、1話を振り返りつつ、大石氏&阿部&松の鼎談をおくる。今後の展開を匂わせるエピソードトークで本作の魅力に触れてみよう。
第1話だけを見て理解していただくのは難しい(大石)

──夫婦の愛を問う“マリッジ・サスペンス”がコンセプトの本作は、「ホームドラマを作りたい」という大石さんの構想が出発点だとお聞きしました。こういう形のドラマになるまでの経緯を教えてください。
大石 「最初は、もっとのどかなホームドラマを書こうと思っていたんです。ですが、テレビ朝日の方が『うちの視聴者はちょっぴりサスペンス要素があった方がいいんです』とおっしゃるので、サスペンス要素を加えることになって。ホームドラマの軸となる夫婦のお話とサスペンスをどう融合させるか、そこはとても難しかったですね。でも、阿部さんが、“日常の暮らし”と“ずっと抱えてきた謎”を見事にリアルに表現してくださっています」
──阿部さん、松さんの“夫婦のお芝居”をご覧になってのご感想は?
大石 「お二人の相性があまりにも良くて、こんなにご機嫌がいい阿部さんは初めてです」
阿部 「え、以前ご一緒した時、そんなに機嫌悪かったですか?」
大石 「あの頃はコロナ禍で、皆さんマスクをしていたので表情がよく分からなかったのもありますが。阿部さん、私が何度あいさつしても反応がなくて(笑)」
阿部 「コロナの後遺症だったのではないかと思います……」
大石 「阿部さんは今、日本で一番輝いている俳優さん。ネルラが『うちにきませんか』と言った時の『ハッ!』という顔から始まって、どの表情も完璧だと思いました。松さん演じるネルラはなかなか難しくて…ミステリアスと一言で言えばそうなんですが、ネルラって一体どんな人物なんだろうと。私もそう思いながら書いているんですが、その表現力が見事なんですよね。松さんはそもそも歌舞伎の家のお生まれで、生まれた時からその道を生きるという宿命を持っていらっしゃる。堂々とした感じとはかなさ、その存在感でネルラの不思議な魅力を見事に表現されていて。さすがだと思いました」

──具体的に、「予想を超えてきた」と感じたシーンはありますか?
大石 「一話の難しさは、(ネルラと幸太郎が)エレベーターを降りてから一緒に暮らすことになまでを短いストロークで描いているところ。実は私、その流れを勢いで書いてしまったんですが、お二人の演技にとてもリアリティーがあったのがよかったと思いました」
阿部 「おお…。ありがとうございます」
大石 「ただ、第1話だけを見て理解していただくのは難しいなと思うんですよ。2話からは、サスペンスと家族の話がよりうまく交錯していきますので、ぜひ期待していただきたいです」
──松さんは、ご自身が演じられているネルラが幸太郎にひかれた理由をどうお感じになりますか?
松 「私の個人的な解釈ですが、エレベーターの中で一緒になったことで『この人は私にとっての“そういう人”』だとネルラは感じたんじゃないでしょうか。きっと、幸太郎さんと同じくらいこの出逢いに衝撃を受けたからこそ、結婚する気持ちになったんじゃないかなって。だから、私としては、それ以上は理由は求めずにお芝居を始めたんです。でも、今後は幸太郎さんとの出会いを振り返る場面も出てきますし、ネルラの気持ちはお話の中で丁寧に描かれていくと思います」

嫉妬深さや既読にならないと怒る性格は役と似ているかも(阿部)
──第1話で幸太郎・ネルラを演じてみて、ご自身に重なる部分を発見したりはしましたか?
阿部 「嫉妬深さや既読にならないと怒る性格、そういう部分は似ているかもしれないです」
松 「えーーーー!!(笑)」
阿部 「『こんな時によく眠れるな』とか、僕も奥さんに言ったことがあるような気がしますね。大石さんのお話にはちょっと毒っ気があるんですよね。男と女の人の関係の中での嫉妬とか、そういう部分が僕にはすごくよく分かるから、自分の中にあるものなのかもしれないなって」
松 「自分と似ていると思うかという話とはそれますが、私は、“面白いな”と思うところがネルラにあるんです。第1話で、幸太郎さんに『何か困っていることがあるなら言った方がいいよ』と言われますよね。その時、ネルラは『ある。でも、今は言えない』と返すんです。これってなかなか言えないことだと思うんですよ。『ある』と正直に言うけど、『でも言えない』って。どっちも正直なところがネルラの面白さ。私だったら、バレバレのうそをついて『なんでもない』と言うと思うんですよね。だからこそ、ちょっと憧れる答え方だなと思いました」

──今作はオリジナル脚本ですが、当て書きをした部分もあるのでしょうか?
大石 「配役が決まってからは全部当て書きですよ。でもそもそも、阿部さんが主役であることを念頭に考えた作品ですから」
──大石さんにとって、今回のキャストはまさに理想的ということでしょうか。
大石 「とてもぜいたくなキャストの方々です。阿部さんは私にとって日本一の俳優さんで、(ネルラの父・鈴木寛役の)段田安則さんは日本の宝。松さんもトップクラスの女優さんですし、皆さんのお芝居を見ていて、『ここはもっとこうしてくれたらいいのに』と思うことがまったくありません。特に、家族のシーンは『皆さん本当にうまいな』と思いながら見ています。(板垣)李光人くんも岡部(たかし)さんもとても演技が達者ですから」
──第2話以降の見どころを教えてください。
阿部 「家族旅行に行く回でカラオケを歌うシーンがあるんですよ。選曲が面白いんです。大石さんが考えたんですか?」
大石 「意外性のある曲がいいなと思って、私だけではなく、プロデューサーも入れてみんなで考えました(笑)」
松 「監督に『歌っている時はいいんだけど、(他の人の歌を)聴いている時に素が出てます』と言われまして…。『あれ、松さんじゃないですよね?』と聞かれたので、『ネルラだったと思います』とは答えたんですよ。でも、私だけじゃなく、家族のみんなが素のリアクションをしていたようで…完成をとても心配しています(笑)」
阿部 「それとですね、今後も、1話ごとに隠しゲストが出てくることはアピールしておきたいです」

──第1話には、小雪さん、野呂佳代さん、戸塚純貴さんが予告なく出演され、視聴者もビックリしたかと思います。
大石 「今後も、主役をやるようなビッグな方々がちょっとした役で登場してくださいます。皆さん、阿部さん、松さんと共演したいんですよ」
阿部 「そういった皆さんが来てくださって、うれしかったです」
──そして気になるのは、原田夫妻、そして鈴木家の皆さんは“しあわせ”になれるのかということですが……。
大石 「人生、そんなに簡単ではないです(笑)。最終回はこれから打ち合わせをして書くことになるので、どうなるのかまだ私も分かりませんし。ただ、“一緒に支え合って生きていく”ことを大切に考えてはいます。だって、人は一人では生きられませんから。だから、幸太郎とネルラの2人が巡り合ったことには意味があったんだと思えるように……。そこを楽しみに見ていただきたいと思っています」

【番組情報】
「しあわせな結婚」
テレビ朝日系
木曜 午後9:00~9:54
取材・文/TVガイドWeb編集部
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